■8月月例ネット句会入賞発表■
2023年8月14日
39句(13名)
【金賞】
21.田草取り水の濁りを遠ざかる/吉田 晃
田の草取りは、一人、もくもくとする静かな作業だ。田に足を入れ、田草を取るとき、田水は濁る。田草を取り終えて、その濁りを後にする。「遠ざかる」は、田をそっとそこに置き、何事もなかったように田を去る感じで、田の作業はあまりにも静かなのだ。鳥が田水を濁して飛び去るにも似ている。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
「今朝の秋」を覚える野のひろがり、そこに道がひとつ。絵画的な印象の句に、涼しさを感じ、何かを思う。(髙橋正子)
34.歓声と重なる花火大輪に/髙橋句美子
打ち上げ花火が揚がる。花火が揚がるたびに大勢の観客の歓声が、花火の大きさに合わせたように、上がる。大輪の花火には大輪の花火のような華やかな歓声。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
22.新秋の雲ひとつなき夜明けかな/多田有花
「新秋」の言葉のひびきが爽やかで、さっそうとしている。新秋の夜明けの空は雲ひとつない空。新秋は初秋と同じ意味ながら、すっきりとした心を感じる。実にさっぱりしている。(髙橋正子)
25.大切りのメロンをぐいとジューサーに/川名ますみ
メロンが大切りにされて、ジューサーの口にぐいと押し込まれ、ジュースがしぼられる。「大切り」「ぐいと」はメロンのフレッシュさを言い得て力強い。(髙橋正子)
32.花火のあと星が畳みかけて出る/西村友宏
花火が終わったあと、見物の人たちは、家路についているが、空を見上げておれば、星がつぐつぎに、花火の美しさになおも畳みかけるように生まれ出ている。花火も星々も美しい。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
この道は秋の野を横切って山のふもとの村に伸びているのだろうか。「野のひろがりに道一つ」から、初秋の涼しさを感じた。風の涼しさを感じる句だと思った。 (吉田 晃)
12.夏座敷みるみる雲の湧きにけり/弓削和人
座敷に座っておられるのか、寝転んでおられるのか。いずれにしてもその窓の外でわずかの間に積乱雲が成長していきました。そのスピードこそ夏のエネルギーそのものです。 (多田有花)
28.花南瓜今朝満開の畑土踏む/柳原美知子
丹精込めて育てられたかぼちゃの花が次々咲いています。野菜を育てることの楽しさが御句全体からあふれています。(多田有花)
34.歓声と重なる花火大輪に/髙橋句美子
花火はいろいろの光や形象を表す。打ち上げて花の様に開く揚花火は、雄壮な爆音のあとの五彩の火は、夏の夜空に誠に美しいです。 (小口泰與)
25.大切りのメロンをぐいとジューサーに/川名ますみ
夏の暑い盛りに、みずみずしいメロンを大胆に大きく切ることによって、涼風が過ぎていく感があり、「ぐいと」の表現が活きていて真実味があります。 (弓削和人)
メロンジュースを手慣れたてえづきで作る様が浮かびました。メロンのフレッシュさも感じる爽やかな時間です。 (西村友宏)
32.花火のあと星が畳みかけて出る/西村友宏
花火大会、さきほどまで大輪の花火が開いていた夜空。それが終了すると同時に星の瞬きが戻ってきました。星空の輝きにさきほどまでの花火の華やかさが一層印象的に思い出されます。 (多田有花)
12.夏座敷みるみる雲の湧きにけり/弓削和人
21.田草取り水の濁りを遠ざかる/吉田 晃
22.新秋の雲ひとつなき夜明けかな/多田有花
【髙橋句美子特選/7句】
07.艶やかに舞ひを奉納立秋祭/廣田洋一
品の良さを感じます。立秋は暑さの極みのころです。その中で凛とした雰囲気で神に奉納する舞が舞われました。 (多田有花)
31.素潜りを終えて朝から氷菓食う/西村友宏
素潜りした後の氷菓、夏休み感満載です。日焼けした若々しい肌に白い歯、80年代のコカ・コーラやネスカフェのCMを連想しました。理屈抜きに気持ちがいいです。 (多田有花)
朝の早い時間に一素潜りをして、一息く様子が、氷菓で爽やかで涼しそうになっています。(髙橋句美子)
02.かなかなの忽と入日の茜かな/桑本栄太郎
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
12.夏座敷みるみる雲の湧きにけり/弓削和人
21.田草取り水の濁りを遠ざかる/吉田 晃
27.揚花火横浜港のリズミカル/川名ますみ
【入選/17句】
01.落蝉の翅透けて居りうすみどり/桑本栄太郎
落ちたばかりなのだろう。うすみどりの翅が瑞々しい。息絶えたばかりのその姿に作者は心を寄せているのでしょう。 (吉田 晃)
02.かなかなの忽と入日の茜かな/桑本栄太郎
厳しい残暑の一日が暮れ、あたりが夕陽の色に染まる頃、にわかに蜩の声が聞こえ始めました。あたりの空気を冷やすようなその声に耳で涼んでおられます。 (多田有花)
06.百舌鳥高音朝の味噌汁沸騰す/小口泰與
初秋の朝の空気に鵙の高い声が響き、新たな季節の到来が実感されます。温かいお味噌汁もほしい肌寒さとなり、「沸騰す」と「鵙高音」とが一気に移り変わった季節をうまく表現されていて素敵です。(柳原美知子)
09.珊瑚樹の実たわわに光るテニスコート/廣田洋一
照り返しの厳しいテニスコートだが、夏風に珊瑚樹の実が揺れながら光っている。暑さの中に涼を感じることができます。 (吉田 晃)
14.落蝉の一つ二つと軒先に/祝 恵子
落蝉が仰向けに倒れている様は、秋の侘びしさを感じさせる。一つ二つが良い。(廣田洋一)
15.立秋やするべきことを問うてみる/祝 恵子
梅雨も長く酷暑だった今夏、思いどおり出来ないことも多かった。ようやく立秋となり、改めて今後すべきことを問うてみる。前向きなお姿に惹かれます。 (柳原美知子)
16.今日と明日賑わう食卓盂蘭盆会/高橋秀之
お子さんたちも成長され、家を出てそれぞれの道を歩かれています。お盆には久しぶりに実家に戻ってこられます。ご夫婦がそれを楽しみにいろいろ準備されている様が浮かんできます。(多田有花)
20.鈴なりのトマト生き生きした緑/吉田 晃
農家の畑なのか家庭菜園なのか。これから赤く色づくであろうトマトが鈴なりになっている、若々しいトマトの様子です。(高橋秀之)
23.早秋や暁の月高くあり/多田有花
秋の気配のただよう暁の空にまだ色を残し高く浮かんでいる月。長い暑さからようやく解放され、心やすらぐ情景ですね。(柳原美知子)
35.りんご飴夜店の光りにあかあかと/髙橋句美子
夜店の露天のりんご飴は、こども心に赤々として美味しそうに見えたのを思い出します。いつの時代になっても、光にあたってあかあかとしてこその、りんご飴です。 (高橋秀之)
29.持ち上がらぬ初成り西瓜叩いてみる/柳原美知子
思い出します。庭の畑での収穫のことを。大人の真似して耳を寄せて叩いていたことを。(祝 恵子)
04.磯鴫や貴婦人の如歩みをり/小口泰與
11.街新た湖畔に映る揚花火/弓削和人
17.帰省の子台風予想とにらめっこ/高橋秀之
24.夜明けにはほっと息つくごと残暑/多田有花
26.旧友と分けるゼリーのきれいな色/川名ますみ
33.花火待つ今か今かと腕まくり/西村友宏
36.夏野菜切る手のリズム均一に髙橋句美子
■選者詠/髙橋正子
37.原爆忌少女少年詩をよみぬ
8月6日の原爆の日、平和記念式典で少女と少年が「平和への誓い」を読み上げました。二人の誓いは「詩」というべき強さで、胸に突き刺さるものでした。78年前の子ども達が詠んだかもしれない詩をも、想う句です。(川名ますみ)
8月6日、広島原爆被爆者慰霊平和祈念祭です。78年前人類が超えてはならない一線を超えてしまった、忌むべき原爆投下被災による犠牲者の御霊の安らかなる事と、又今なお苦しむ被災者の支援を誓い松田広島市長の平和への誓いを述べました。その中で「世界の核保有国は核兵器による抑止政策を今こそ改めるときである。」と述べ、小学校6年生の男女生徒は、「自分の意見を相手に押し付けるのではなく、相手の希望もよく話し合いましょう」と力強く正義感を持って詩を朗読しました。(桑本栄太郎)
38.雲の峰南方方位に生まれたる
39.遠雷のさまよい鳴るも近寄らず
■選者詠/髙橋句美子
34.歓声と重なる花火大輪に
35.りんご飴夜店の光りにあかあかと
36.夏野菜切る手のリズム均一に
■互選高点句
●最高点句(5点/同点4句)
10.今朝の秋野のひろがりに道ひとつ/弓削和人
14.落蝉の一つ二つと軒先に/祝 恵子
25.大切りのメロンをぐいとジューサーに/川名ますみ
34.歓声と重なる花火大輪に/髙橋句美子
※集計:髙橋正子
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