■2018年10月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年10月15日
【金賞】
34.踏むところ踏むところ皆曼珠沙華/柳原美知子
曼珠沙華は、一度に燃え始め、あっという間に姿を消すが、今は、踏みゆくところ、ゆくところ曼珠沙華があがあかと咲いている。日本の秋を象徴する曼珠沙華の見事さ。(高橋正子)
【銀賞/2句】
33.手術二度乗り越へ祝う今日の菊/廣田洋一
「今日の菊」がいきいきと晴れやかで輝かしい。二度の手術を乗り越えた命そもものの菊の花だ。(高橋正子)
37.秋の雲遠く流され青空に/高橋句美子
秋の雲は、雲で雲で美しい。その雲が遠くへ流されて、真っ青な青空が広がった。澄んだ青空の爽快感。(高橋正子)
【銅賞/3句】
05.きんもくせい祭太鼓の聞こえ来る/多田有花
きんもくせいの匂いがすると祭りが近いと気づかされる。金木犀と秋祭りはぴったりと呼応して私の脳裏にある。それを直截に詠んでいるのがいい。(高橋正子)
13.登校生の声近づきて金木犀/古田敬二
登校時間帯の朝の金木犀は爽やかによく匂う。がやがやと登校する生徒たちの健やかな声が聞こえる。健やかですがすがしい句だ。(高橋正子)
16.秋夕焼け港が染まるあかね色/高橋秀之
景色が良い句。夕焼けに染まる秋の港。波はゆったりと、空は広々と茜色を広げる。釣瓶落としの陽はやがて沈む。その前の港の華やぎがいい。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
05.きんもくせい祭太鼓の聞こえ来る/多田有花
きんもくせい祭太鼓の聞こえ来る金木犀の甘い香りが風に乗って祭り太鼓と共に聞こえてくる素敵な景ですね。(小口泰與)
34.踏むところ踏むところ皆曼珠沙華/柳原美知子
踏むところ踏むところ全てが曼殊沙華しかないというという豪快さが、秋真っ盛りを感じさせてくれます。(高橋秀之)
11.杖突ける八十路の狭庭小鳥来る/河野啓一
身近な狭庭に来る小鳥に、いっそう親愛感が湧き明るく励まされます。ありのままの御身に、日常の季節の風景をさりげなく詠まれ感銘を受けました。(藤田洋子)
12.子らの手を引きし頃あり月今宵/河野啓一
美しい十五夜の月を眺めながら、若き日の幼子らとのお月見の思い出や来し方の感慨に浸るひと時。しみじみと月今宵を愛でることのできる幸せが思われます。 (柳原美知子)
23.声揃え起こす幟の空高し/藤田洋子
何人もの男手が要る秋祭りの立派な幟。威勢よく掛け声を揃えて徐々に起こし、秋天に直立した時の爽快感。無事に秋祭りを迎える安堵感と喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)
32.まつすぐの道を探して秋の暮/廣田洋一
「まつすぐの道に出でけり秋の暮/高野素十」を連想しました。道を探して、いつか道に出る。そんな秋の暮です。(多田有花)
13.登校生の声近づきて金木犀/古田敬二
【高橋正子特選/7句】
24.今朝ふいに金木犀の風の窓/藤田洋子
昨日の暑さが嘘のように今朝は急な涼しさである。気が付くと金木犀が庭に漂っている。 (古田敬二)
33.手術二度乗り越へ祝う今日の菊/廣田洋一
私のささやかな経験でもそうでしたが、作者の晴れやかなご気分がよくわかります。「今日の菊」がすべてを言い尽くして素晴らしいですね (河野啓一)。
34.踏むところ踏むところ皆曼珠沙華/柳原美知子
踏むところ踏むところ全てが曼殊沙華しかないというという豪快さが、秋真っ盛りを感じさせてくれます。(高橋秀之)
35.刈りたての田の広々と夕焼ける/柳原美知子
稲刈りを終え、にわかに景色の広々となる刈田。夕焼けに染まる美しい日本の田園風景に、心落ち着き、ひとときの安らぎを感じます。 (藤田洋子)
16.秋夕焼け港が染まるあかね色/高橋秀之
海を眺めれば波の音、港を見れば、夕日に染まったひとときの美しい港の景ですね。 (祝恵子)
28.どの屋根も上向く秋の天を向く/高橋信之
視野にある屋根と秋天の、隔てるもののない空間の清々しさ。「向く、向く」の語句のリフレインのリズムも心地よく、秋天の候の到来の喜びを感じさせていただきました。(藤田洋子)
37.秋の雲遠く流され青空に/高橋句美子
【入選/7句】
01.雨あがり滴きらめき萩は実に/桑本栄太郎
萩の葉に雨あがりの滴が花のように煌めき、可憐に咲いていた花はいつの間にか実となり、静かに秋冷の季節の訪れが感じられます。流れるような調べにも惹かれます。 (柳原美知子)
08.紅葉鮒日ざしは湖にとけ込んで/小口泰與
秋の日差しの輝く湖の澄んだ水に、鮒が鰭を赤く染めて泳ぎ、水面には色付き始めた木々の揺れている美しい情景が目に浮かびます。 (柳原美知子)
10.山門をついとくぐりし赤とんぼ/河野啓一
晩秋の候になるにつれ、赤とんぼが増えて来ました。赤とんぼの群れも、穏やかな秋を言祝ぎ参詣しているようです。「ついとくぐり」との措辞に、沢山の群れが次々に山門をくぐっている様子が窺えます。 (桑本栄太郎)
17.昼飲みの友と分け合う初秋刀魚/高橋秀之
「折角だから初秋刀魚と行こうか!」「良いね!」と言う具合で昼間から秋刀魚を肴に酒を飲む旧友の感じを良く詠んでいる。 (廣田洋一)
20.秋蝶の舞うよゆったり子規の句碑/祝 恵子
秋に見られるいくらか弱々しい蝶の姿と、子規の生涯がふと重なります。句碑に舞う秋蝶のゆったりとした時に、しみじみと子規が偲ばれるようです。(藤田洋子)
07.日は西に噴煙流るは刈田かな/小口泰與
浅間山の噴煙を朝夕眺めるところにお住まいなのでしたね。変わらぬ浅間山の姿。麓の田は一年のリズムを的確に刻んでいきます。(多田有花)
22.垂張られ風新しき秋祭り/藤田洋子
秋祭りに備え、神社の垂れ幕が張られました。新調されたものなのかもしれません。秋祭りを迎える人々の心の高揚感が伝わってきます。(多田有花)
■選者詠/高橋信之
28.どの屋根も上向く秋の天を向く
29.草の実に正午の晴れ日がそそぐ
30.高層の窓を流れる鰯雲
■選者詠/高橋正子
25.秋澄みて首都円盤のはるかまで
超高層ビルかスカイツリーなどの上から首都の町並みを眺めておられるのでしょう。水平線が丸く見えるほどです。美しい秋晴れの下、ビルの群れが連なっています。(多田有花)
26.帚木の紅を刷きたり嵐あと
27.コスモスの花が花屋に育ちけり
■互選高点句
●最高点(5点)
20.秋蝶の舞うよゆったり子規の句碑/祝 恵子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)※コメントのない句にコメントをお願いします。