■2018年5月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年5月13日
【金賞】
★湖へ差す強き朝日や更衣/小口泰與
湖へ差す朝日の変化。湖の波をきらめかす今朝の朝日は強いのだ。更衣の季節だ。朝日の強さ、更衣の身軽さが夏が来たことを実感させてくれる。泰與さんは取り合わせの句と得意とされるが、不即不離の関係が上手くいっている。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★新緑に手を伸ばしつつ児の歩む/河野啓一
幼い児も新緑の季節は嬉しいのだろう。新緑に触れようとしてか、手を伸ばしながら歩く。かわいらしく、のびのびとした新緑のような児の姿が微笑ましい。(高橋正子)
★草笛の真直ぐ届く空の青/柳原美知子
草笛を巧みに鳴らす人にたまに出会うことがある。その音色が、真直ぐに青空へ響いていけよ、と願いたくなる。(高橋正子)
【銅賞/3句】
★もてなしの砥部の大皿初鰹/藤田洋子
砥部焼は、全くの白磁ではなく、やや乳白色で厚手の民芸磁器。それに藍色を大胆に染め出した模様が特徴。もてなされる人たちの真ん中にでんと出された砥部焼の大皿の初鰹。初夏の爽やかさに、遠慮なくいただけそうだ。(高橋正子)
★ふくらみを確かめ葉陰の豌豆採る/古田敬二
豌豆は、莢も葉も緑。葉陰の莢も見落とさないように、ふくらみ具合を確かめて収穫する。熟れすぎず、よく実の入った豌豆こそが美味しいのだ。そこは経験がものを言う。(高橋正子)
★束の間の甘き香りやパイナップル/廣田洋一
夏らしい色と匂いが思い浮かぶ句。パイナップルの甘酸っぱい匂いが一瞬ぷんとたつ。そのことで夏の明るさが出た。(高橋正子)
【高橋信之特選/9句】
★草笛の真直ぐ届く空の青/柳原美知子
子供の頃を思い出して鳴らす高音の草笛。鋭く鳴った。青空へ届くようだ。 (古田敬二)
★鮓飯をひろげ冷ましつ母思う/柳原美知子
鮓飯をひろげ、鮓の香りの清々しい初夏です。懐かしく優しい母の味はきっと受け継がれるのでしょう。お母様への思いがしみじみと温かく伝わります。(藤田洋子)
★児の帽子シロツメクサの花輪つけ/祝恵子
野で摘んだシロツメクサの花輪をつけた清楚でかわいらしい帽子に、夏野の日の匂うような少女の笑顔が目に浮かびます。 (柳原美知子)
★新緑に手を伸ばしつつ児の歩む/河野啓一
★湖へ差す強き朝日や更衣/小口泰與
★登校の児童賑わうえごの花/桑本栄太郎
★ふくらみを確かめ葉陰の豌豆採る/古田敬二
★豆ご飯つやつや子らと卓囲む/藤田洋子
★茅花吹く風を荒しと見ていたり/高橋正子
【高橋正子特選/9句】
★もてなしの砥部の大皿初鰹/藤田洋子
砥部焼の大皿に盛った初鰹で客人をもてなそうとする方も、ご馳走になる方も、季節感に話が弾みます。窓の外は青葉がきらきらと輝いて見えるし、嬉しい鳥声が聞こえるかもしれません。(河野啓一)
★蹲に滴る山の丸く映ゆ/古田敬二
新緑の明るさがうれしいころです。ふと気がつくと蹲に山の姿が映っていました。清々しい五月の朝を感じます。(多田有花)
★一時を椅子に座しおりバラ香る/祝恵子
バラ園なのか、それともご自宅なのか、庭なのか、いずれにせよ、ひとときの寛ぎの感覚が新鮮です。(多田有花)
★窓越しの空の明るさ五月来る/高橋信之
★野に出でてわが誕生の月五月/高橋信之
★束の間の甘き香りやパイナップル/廣田洋一
★草笛の真直ぐ届く空の青/柳原美知子
★新緑に手を伸ばしつつ児の歩む/河野啓一
★湖へ差す強き朝日や更衣/小口泰與
【入選/16句】
★夏来たるを振る影畝に濃し/古田敬二
光の変化が最も確実に季節の変化を教えてくれます。ほどよい気温の立夏のあたり。しかし、日差しは確実に夏の強さになっています。農作業に勤しむなかでそれを感じられました。 (多田有花)
★鞘豌豆実りて陽に透く玉の列/古田敬二
蔓に生る鞘豌豆が陽に透けてみずみずしい限りです。収穫の時を迎えての実りの喜び、初夏の明るい季節感が感じ取れます。(藤田洋子)
★新緑や陰で足湯を待つ時間/祝 恵子
新緑のまぶしき季節。日差しもきつくなってきました。
そんな日差しを陰でかわしつつ、足湯の順番を待つ。初夏の季節感をあふれて感じます。 (高橋秀之)
★窓若葉娘の滞在のピアノ鳴る/藤田洋子
いつもは学校生活等であろうか?不在勝ちの娘がゴールデンウイークに帰宅していて、ピアノを奏でています。大きく開けた窓より、新緑の若葉が目に沁みるように心地良く、久しぶりに帰宅した娘のピアノの音を通して、懐かしくそして嬉しく想う親の心が良く出ている。 (桑本栄太郎)
★ふと母に問いかけしことカーネーション/藤田洋子
母は娘にとって常に道標であるような気がします。母の日のカーネーションを前に亡き母への敬慕の念が溢れてきます。 (柳原美知子)
★青き目の遍路姿や様になり/廣田洋一
異人さんもお遍路されているのですね。ご無事で旅を続けられますように。(祝恵子)
★たんぽぽの絮の揃いて夕茜/柳原美知子
入日のあかあかとした中たんぽぽの絮が入日を一杯に受けてどこまでも飛んで行く素晴らしい景ですね。 (小口泰與)
★青梅が木々の葉裏に育ちおり/多田有花
木々の葉裏に実を結ぶ青梅のみずみずしさがありありと目に浮かびます。これからも丸く育ちゆく梅の実に季節の喜びを感じます。(藤田洋子)
★新幹線トンネル抜ければ緑濃き/高橋秀之
トンネルを抜けて、いっそう鮮やかな木々の緑が目に入ります。新幹線の爽快さに、より緑美しい季節の旅の心地よさを思います。(藤田洋子)
★友送り悼むこの日や花は葉に/桑本栄太郎
長くお付き合いが続いていたご友人が亡くなられました。花が咲いて散り、葉桜となり、巡る季節にさまざまな思いが去来したことでしょう。(多田有花)
★雲の峰飯盒飯の炊きあがり/小口泰與
炊きあがった飯盒飯に歓声が聞こえ、青葉の向こうに
早くも立ち上がる雲の峰に解放感あふれる夏のキャンプ場の様子が目に浮かびます。(柳原美知子)
★D51の鋭き汽笛夏の河/小口泰與
★鍵ひとつ加え五月のキーホルダー/多田有花
★植えし苗確と根付きて夏に入る/古田敬二
★戯れる二頭の蝶は青空へ/高橋秀之
★幼子の声響く居間夏に入る/藤田洋子
■選者詠/高橋信之
★野に出でてわが誕生の月五月
明るい野の日差しの中で、心地よい風に吹かれ、真っ青な空を仰げば、今年もまた誕生の月、五月の到来が喜びをもって実感されます。28日にはお誕生日、おめでとうございます。 (柳原美知子)
★窓越しの空の明るさ五月来る
★無事大事卓上の皿のそら豆よ
★食卓のそら豆に亡き母を思う
★生きていることを喜びそら豆食う
■選者詠/高橋正子
★茅花吹く風を荒しと見ていたり
茅花の白い穂を大きく揺らす荒々しい風に驚き、しなやかに吹かれる野花の力強い生命力に夏の季節の到来が実感されます。 (柳原美知子)
★バスを降り眼前大きな竹の秋
★夏鶯憩えば天辺より鳴きぬ
★空へ空へポピーは赤き花を立て
★若竹の伸びたる宙の橋渡る
■互選高点句
●最高点(6点)
★もてなしの砥部の大皿初鰹/藤田洋子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。