職場の談話室で「国境」の話になった。
仕事柄、越後湯沢に行くこともしばしばあり、あの「國境の長いトンネルを抜けると雪国であった」のフレーズが話題になり、文学界では今でも見解が分かれているということで、それぞれが持論を展開した。
源太郎「"くにざかい"と読むのが正しいだろうね。昭和40年ごろの松竹映画(たしか岩下志麻さんが駒子役だった?)の冒頭はたしか"くにざかい"と言っていたような気がするよ」
A氏「でも響きから言えばこっきょうと読むのが普通だろうね」
B氏「どっちでもいいんじゃないのかなぁ」
源太郎「国と国の境じゃないんだから、くにざかいの峠とも言うだろ」
C氏「音声アーカイプの朗読じゃ、こっきょうと読んでいたぜ」
源太郎「辞書ではさ、"くにざかい"は国境/国界と書いてある。河川や山脈などによる自然的なものと、協定などによって人為的に決定するものとあるよ。ここは山脈だ分断されていて、開通した清水トンネルによって抜けたんだから、やっぱり"くにざかい"だよ」
B氏「翻訳されているから、英文を見たら」
C氏は、得意のスマホでググっている。
源太郎「そもそも、英語でこの冒頭を表現できないよ。訓読み、音読みで意味が違う難しさ、日本語の奥ゆかしさは無理だよ」
C氏「The train came out of the long tunnel into the snow country.らしいぞ、国境について書いていない」
源太郎「そもそも、連中(英語圏)には表現できるわけがない。直訳すれば、汽車は長いトンネルを抜け雪国に出ただろ、まったく味もそっけもない」
C氏「確かに、これじゃ汽車が主語だなぁ」
源太郎「病人に付き添う葉子と島村が乗っている汽車なのに、この英訳なら自己完結文になっているじゃないか。日本語はやっぱり文脈依存型じゃないと雰囲気が出ない」
B氏「こっきょうだって、国と国との境を表しているし、日本には律令国制度があったから、上野国と越後国と国と国じゃないか」
源太郎「確かにそう言われてみれば・・・ただ岩手に国境峠(くにざかい峠)があるしなぁ、でもあれは藩を跨いでいるから・・・」
C氏「結局、ネットではどっちが正しいか結論が出ていない見たい。川端さんに聞くしかないね」
源太郎「ところで、駒子と葉子、どっちがいいかなぁ」
C氏「そちらの話の方がまとまるよね」(笑)
柚子の花芽が、暖かい2日間で白くぷっくり膨らんできた。