くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか?」牧村朝子

2017-08-18 05:28:02 | 社会科学・教育
 図書館の社会科学コーナーで面陳されていました。牧村朝子「ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか?」(イースト新書Q)。
 このタイトルからわかるように、LGBT(この本ではLGBTs)について語られています。
 牧村さん自身がフランス人女性と同性婚されているのですが、Q&A方式で様々な質問に答えていきます。
 それは何もLGBTsにかかわること限定ではなくて、誰かと人間関係を結ぶには当たり前で大切なこと。
 
 わたし個人としては、後半のLGBTsの歴史が非常に興味深いものでした。
 ニューヨークの政治家マレイ・ホールが死去し、男性として活動していた彼が、実は女性だったと判明。死因は乳癌で、病院に行けば女性であることが分かってしまうからと恐れたためだとか。
 FtM(女として生まれたけど、心の性は男)の殺人事件があったとか。
 わたしは結構LGBTs関連の本は読んできたと思います。そういう本も図書室に入れたいと思っているので、この本はオススメできると感じました。
 ところで、ネタバレしてしまうので敢えてここに書きますが……。
 篠田真由美「閉ざされて」(角川書店)を読みました。函館が舞台、閉ざされた一族の破滅の物語です。
 ただ、冒頭で主人公がMtFだというのは推測できてしまったので、世間的にはそこまで悲観したり破滅を選んだりするように見られているのかなあと悲しくなりました……。
 独白、手紙、手記で構成されています。主人公の汀は、全寮制の学校を中退して函館に戻ってきています。
 函館山の裏側にある雪鼻荘は、亡くなった母が持参金で建てたもので、汀はそこで車椅子の父、お手伝いの杉浦など若干の使用人と暮らしています。
 父は再婚した彩子と、二人の娘(早苗と緑)がいるのですが、市街地(五稜郭近辺)でマンション暮らし。
 また、兄は東京の大学に在籍しており、ほとんど帰ってきません。
 汀は、自分の願いを兄に理解してもらい、味方になってほしいのですが。
 父の財産を巡り、様々な思惑が行き交います。結婚式で身につけていたティアラがどこに隠されているのかを気にする彩子や、母が結婚に乗り気でなかったことを知って憂鬱を募らせる汀、財産を手に入れるには手術を諦める必要があると語る弁護士など、どんどん不穏な雰囲気に。
 ペンダントトップのジルコニアが重大な役割を果たしますが、えーと、保育器に入っていたから本当は4月生まれって、どういうこと? 学校で生年月日使われるでしょう。緑も、本当は「7ヶ月年長」ではないわけ? と、ちょっと釈然としないのでした。
 それから、このラストだとLGBTsは遺伝みたいな印象を残すので、それもどうかと思うのでした。