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最近の拾い読みから(186) ―『沈黙の宗教-儒教』

2007-10-07 04:09:36 | Book Review
道徳規範と思われがちな儒教の、宗教的側面を指摘し解説した書。

儒教の宗教観の基礎は、東北アジア共通のシャーマニズムにある、とするのが著者の見解です。
「儒教の発生はシャマニズムにある。死者の魂降(たまおろ)しである。しかも魂(精神)降しだけではなくて、魄(肉体)も呼びもどす。そして神主(しんしゅ)に依りつかせ、〈この世〉に死者を再生させる。招魂(復魄)再生である。」
それでは、仏教や道教とはどこが異なるのか。
「この三者の死生観を比べると、意図するものが異なる。仏教は輪廻転生という〈苦しみの連続〉から解脱して、仏となることを目的とする。道教は不老長生という死生観が目的となっており、それを達成できたものが、たとえば仙人である。しかし儒教は、死生観としては招魂再生であるが、それが目的ではない。そういう考えかたを基礎として、現実に生きてあるうちに到達しようとする目標は聖人である。」

このような宗教としての儒教が、日本的仏教の儀式に採り入れられている、というのが、著者の指摘で、小生には「目からウロコ」の部分。

まずは位牌。
これ、仏教的なものと思われているけれど、儒教の〈神主(しんしゅ)〉(招魂再生のための依り代。頭蓋骨の換わり)から採り入れたものだったのね。
その他、献花や燈明、線香なども、儒教的な起源を持っている、というのが著者の指摘。

まあ、本来の仏教ですと、輪廻転生という死生観なので、死者を悼む必要もない。死後49日経てば、もう既に別の存在に生まれ変わっているのですから。

ということで、儒教の持つ宗教性に関して、全般的な知識を得るには有益な書といえるでしょう。
しかし、「〈生命の連続〉の自覚ー孝と利己的遺伝子と」などの節や「儒教から見た現代」の章は、お説教臭くて、鼻白む思いがするのも確かなことです(どうも、この著者、家族制度の崩壊や出生率の低下というものに、過剰な危機感を抱いているようです。それに対峙するものとしての「家の宗教として生きている沈黙の宗教」儒教を説く、という使命感があるみたい)。

加地伸行(かぢ・のぶゆき)
『沈黙の宗教-儒教』
ちくまライブラリー
定価 1,470 円 (税込)
ISBN978-4480051998

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2 コメント

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やっぱし (Junco)
2007-10-07 21:30:11
そうなんだぁ。

香港や台湾の孔子廟に行くとお線香の煙で薫製になりそうだったから、こりゃぁ宗教なんだなぁって思ってたんですが・・・へぇ、そういう宗教でしたか(^o^)

私はどっちかていうと道教のほうが好きですけれどね。(^_^)v

やっぱしって思ってるだろう(^w^)
お線香も (一風斎)
2007-10-08 08:54:24
天空に漂っている魂を
祭壇に迎え入れるために
焚くものだそうです。
だから、本当のこと言えば、

>お線香の煙で薫製になりそう

ほど焚いていれば、
孔子廟には、もう既に孔子さまの魂が
戻ってきているはずなんですけどね。
でも、中国人は現世主義だから、
その孔子さまにご利益を願っているんでしょ。
孔子さまも、きっとお困りでしょうな。

では、また。