因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

新宿梁山泊 第65回公演『蛇姫様 わが心の奈蛇』

2019-06-19 | 舞台

 唐十郎作 金守珍演出 公式サイトはこちら 新宿・花園神社境内特設紫テント 24日終了1,2,3,4,5,6,7
 1977年、状況劇場が九州筑豊のボタ山から各地を巡演ののち、東京は青山墓地で上演された伝説的作品だ。梁山泊の場合、テントというより、テント風の芝居小屋といった風情だ。役者への大きな祝い花が賑々しく飾られ、周囲をぐるりと回って場内に入ると、客席前方こそ桟敷だが、あとは椅子席が組まれている。小屋内には煌々と明かりがつき、数台の扇風機がうなっている。

 物語を追ったり、筋道を考えたり整理することはせず、舞台で起こっていることに心身を委ねることがだいぶできるようになった唐十郎作品であるが、2回の休憩を挟んだ3時間の長丁場を乗り切るには心身のスタミナが必要だ。舞台にはところ狭しと次々に人物が登場し、大道具小道具、歌やダンスも盛りだくさんだ。客席から舞台を水路が貫き、役者は劇中何度もそこへ踏み込み、ときには倒れ込む。周辺の観客がビニールシートで水を防ぐところも感興のひとつである。

 舞台の見せ場を作ることについては金守珍と梁山泊の力は大いに発揮されている。派手な衣装や大掛かりな舞台美術、水を多用する演出は、確かに観客の気持ちを強く掴む。しかしそのことによって、言葉を聞くこと、唐十郎戯曲の台詞を発する役者自身を見ることの醍醐味が薄まってはいまいか。「見たい」という欲求もさることながら、「聴きたい」という気持ちが湧いてくるのも唐作品の魅力のひとつであり、高揚感に包まれながらも、どうしても欲が出てしまうのである。

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