西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

『大往生したけりゃ医療とかかわるな』中村仁一著を読む

2012-02-27 | 食物栄養・健康・医療・農業・教育
最近、京都の医者の中村仁一さんが書いた『大往生したけりゃ医療とかかわるな』(幻冬舎新書)をざっと読んだ。どうも中村さんは、私と同時期に京大(医学部)に通っていたようだ。私は工学部だったが・・・。1960年入学で宇治分校にも通われたようだ。

で、現在、社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所長でれっきとした医者である。その医者が「大往生したけりゃ医療とかかわるな」というのだから、まあ尋常ではない。

しかし、読み進めるうちに「そりゃそうだ」と思える部分が多くなってきた。

本人の現在の社会的役割として「生きものとして賞味期限の切れた後の重要な役割は、「老いる姿」「死にゆく姿」をあるがままに後継者に「見せる」「残す」「伝える」ことにあります。」と言っておられる。

まあ「生きものとして賞味期限が切れた」とは、例えば鮭が川を遡上して排卵し射精したらメスオスとも役割を終えるということである。人間の場合、子供をつくらない場合もあるので、まあ種としての子孫に最後の生きざまをきちんと「見せる」「残す」「伝える」ということであろう。

で、本の「帯」に「死ぬのは「がん」に限る。ただし、治療はせずに。」とある。これも中身と理由を読んでいくと「なーるほど」ということになる。

他に「帯」に書いていることは、
・ワクチンを打ってもインフルエンザにはかかる。
・解熱剤で熱を下げると、治りは遅れる。
・鼻汁や咳を薬で抑えるのは誤り。
・”老衰死”コースの目安は7日~10日
・食べないから死ぬのではなく、「死ぬ時」だから食べなくなる。
・「がん」で死ぬのではなく、「がんの治療」で死ぬ。
・手遅れのがんでも苦痛なしに死ねる。
・年寄りに「過度の安静」はご法度。

で、「自然死」は、いわゆる”餓死”ですが、その実体は?
「飢餓」・・・脳内にモルヒネ様物質が分泌される。
「脱水」・・・意識レベルが下がる。
「酸欠状態」・・・脳内にモルヒネ様物質が分泌される。
「炭酸ガス貯留」・・・麻酔作用あり。

つまり「死に際は、何らの医療措置も行わなければ、夢うつつの気持ちのいい、穏やかな状態になる」ということのようだ。

勉強・研究していきたい。

脳の可塑性と多様性

2012-02-22 | 色々な仮説や疑問
最近、東大薬学部准教授の池谷裕二さんの『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社)という本をざっと読んだ。大変刺激を受ける本だった。

その多彩な内容から「脳の可塑性と多様性」が人類生き延びの要件では、というところに気が行った。「脳の可塑性」とは、脳は遺伝で先天的に決まってしまうのではなく後天的に努力によって、その能力は伸びるということで、努力家にとっては有難いことだ。

しかし、人類(というとオーバーだが)皆伸びて、いわゆる「秀才」「100点人間」ばかりになったら、これはヤバイということになる。

社会も伸びている間はいいが、一旦「コケル」と全体がコケテ滅亡に落ち込む危険も一気に出てくる。

そこで重要になるのが秀才もいるが鈍才も自由に生き延びる可能性を確保していることだ。アリの行列を例に紹介したい。アリが行列をつくってえさを巣に運んでいるのを目撃したことはないだろうか。この行列は、どのようにして出来るのか。

アリがえさを見つけて運び出すと、誘因性と揮発性のフェロモンを出すように進化したようだ。そうするとそのルートにえさを探しているアリの仲間が一斉に集まって次々えさを運びだし同じフェロモンを出すので列が続くのである。

ところで、アリはそういう働きアリばかりでなくぶらぶらしていて、そのルートを外れて歩いているアリも許容して生み出している。

これらは、何のために存在するのか。これらは、端的に言って、先に見つかったえさルートより「短い直線的なルート」を見つけつくるための「遊撃隊」と言ってよい。

そのルートを見つけると、やはり誘因性、揮発性のフェロモンを出してえさを運ぶが、直線でルートが短いので揮発性のフェロモンは先の曲がりくねって長いルートより残りやすく有利である。えさを運ぶ労力も少なくなって良い。

ここで分かるのは、世の中エリートの「100点秀才」ばかりでは、強靭な社会は築けず、多様な人材が集まっていることが大事ということだ。

日本の教育は、せっかく「ゆとり」教育という「多様人間」への試みをしていたのに、また「秀才人間」教育に「逆戻り」、長い目で考え抜く癖が出来ていない。情けないね。

「地域居住懇話会」関連の集まり

2012-02-19 | 地域居住学
16日(木曜日)夕方、奈良で「地域居住懇話会」関連の集まりがあった。奈良女子大で、2005年3月まで、私が、地域居住学を担当していた関係で、私のゼミ関係のメンバー、当時、助教授で今は教授の中山 徹さん、中山ゼミ在籍者と卒業・修了生で「地域居住懇話会」をつくって、毎年一回3月頃に研究発表、情報交換、懇親の会を開いてきた。

最近は、一寸滞っている。そこで、近くにいるメンバーに呼びかけて夕食・懇親会を奈良でしたのである。私は、地域でやっている「けいはんな市民雑学大学」の4年間の講座一覧表を皆に配って概略や私にとっての意味などを話した。中山 徹さんは奈良女子大での「苦労話」をされた。国立大学(法人)は、私が7年前にいた2005年頃よりさらに「厳しく」なっているようだ。

一市民、国民として、もう少し先進、新興諸国並みに国立大学(法人)を大事にしないと、知的環境が急速に荒廃して大変なことになる、と強く訴えておきたい。

私と中山さん以外7人は、それぞれ学部、大学院を卒業、修了して社会で活躍している。皆、女性らしく、粘り強く前進してくれるものと期待している。また集りましょうね。

精華町総合計画

2012-02-14 | 地域居住学
今、私が住む京都府精華町では、第五次総合計画をつくる過程にある。

で、今日、私は住まいづくり、まちづくりの「専門家」の一人として精華町のI.課長、H.係員、コンサルのW.さんの訪問を受け、聞き取り調査をされた。

まあ前から言われていたので若干準備していた。聞き取りをされた場所は、「つなね」居住地の集会所である。

どうも私はこういう聞き取りの初っ端であるらしい。

で、こういう専門家聞き取り調査をしたり、町民100人による様々なワークショップをしたりするのは、まちづくり計画の新しいやり方と思い、高く評価したい。

今までは、「偉い」先生方による審議会での議論しかやっていなかったからである。

私も今日は「言いたいこと」を言っておいた。

私が言ってみた新しい言葉(コンセプト):
(1)地域祖父母、地域孫(別の言葉では、爺世代と次々世代)、(2)町並みと庭並み、(3)「グリーン・サンドイッチ」、(4)隠居と顕居(けんきょ)、(5)中学校区位の「循環開発方式」、(6)「市松模様防災地区計画」、

あたらしいまちづくりで、何処ででも考えるべきこと:
(1)大災害に対応する準備、(2)長期的に「人口減」になるということに対する対応、(3)エネルギー、食料の地産地消方向、(4)徹底した住民参加

「まとめ」が送ってきたら又改めて考えようと思う。

住居学試験問題2011年度奈良教育大

2012-02-13 | 地域居住学
住居学の非常勤で「最後の」試験をやった。以下がその問題である。終わったので公開しても良いと思う。

皆さん、やってみてどうですか。


○2011年度 奈良教育大 住居学試験 学生番号¬¬_____氏名__________

(1) 住宅と住居の違い(または、住宅学と住居学の違い)を述べよ。

(2) 住居立地の重要性を災害時の例をあげて説明しなさい。


(3) 一般に日本住宅の玄関扉は外開き、欧米住宅の玄関ドアは内開き、何故か。


(4) 木造住宅の耐震性をあげるため、一つには、構造材(柱や梁)が構成する形を安定化させるため挿入材によって三角形を作ればよい。その方法を二つ以上あげよ。

(5) 引越し時の「挨拶回り」何のためするのか。戸建住宅と積層型集合住宅では最小範囲が異なる。どういう風に?また、それは何故か?



(6) 日本住宅の二大様式―寝殿造り、書院造り―について、時代背景と内容を要点的に述べよ。



(7) 高層、超高層住居の問題点をあげて、説明しなさい。


(8)「開発御殿」の問題性を「生活の下方硬直性」との関連で説明しなさい。


(9) 生活空間を高齢者、子供の「目線」で観察する必要性を例をあげて述べよ。


(10)コーポラティブ住居の特徴を三点あげなさい。

(11)貴方は将来どういう住居、居住地にすみたいか。何故か。分かりやすく述べよ。




「ふれあいサロン”わの会”」に久し振りに出席して

2012-02-08 | 食物栄養・健康・医療・農業・教育
今日、町内の集会所で、町内の「ふれあいサロン”わの会”」があった。毎月一回行われている主に「(元気な)高齢者(50歳代後半より80歳代までか・・・)」の集まり、今日は、「介護保険一次予防事業」で、栄養問題ー便秘対策ーがあった。

町の栄養士の女性二人と係の男性一人が「講師」としてやってきた。約30人(女性25人ほど男性6人)の参加だった。本題に入る前に自治会長のY.さんの「自治会報告」があり、次に私から2月、3月の「けいはんな市民雑学大学」の行事予定を話して誘っておいた。

2月は25日(土)午後14時~16時、古代の葬祭について(宮原晋一さん、奈良県立橿原考古学研究所調査部長)

3月は24日(土)午後14時~16時、人生とまちを楽しく!けいはんな市民雑学大学のこれまでとこれから(西村一朗、けいはんな市民雑学大学・学長)過去の市民教授40数人にも参加を呼びかけます。今後の「夢」などについて語り合いましょう。

場所は、いずれも高の原イオンモール4階こすもすホール。終了後、懇親会(実費)ありますよ。

その他、3月10日(土)、11日(日)と近くの奈良市北部会館3階にて「ニュータウンフェスタ高の原」があり、両日、けいはんな市民雑学大学と地域snsけいはんなで展示等を行うが、同時に11日は「東日本大震災1周年日」なので10時半~11時まで「祈念チャリティコンサート」を行う、出演は、ブルーメン(大フィル)弦楽四重奏団、ピアノ:上田賀代子(奈良モーツアルト会会長)、指揮・バイオリン:梅沢和人(元大フィルコンサートマスター)
市民100人と当日参加者で小学校唱歌(ふるさと、雪、紅葉、おぼろ月夜)を歌い、東北にネットで送信予定。一日合唱団希望者は、3月11日9時20分までにおいでください。楽譜配布でリハーサルします。本番は10時半より。


さて、今日の集まりで、女性講師から、「野菜10種類以上あげなさい」「魚貝類10種類以上あげなさい」といった問いかけがあり、必死に思い浮かべて書いた。幸いどちらも書けたが、10を僅かに上回る程度だった。30人全員の知識をまとめると、両方とも45種類程度あがった。聞けば「そうだな」と思うものが大半だが、中には全く想像すら出来ないものもあった。

その後、メンバー手作りのお菓子と蜜柑、お茶を頂いた。

今日の「人気ブログ」記事は?

2012-02-06 | SNS、地域SNS、ブログ
毎日、私のこのブログを何人ほど見て、何を見ているのか、今日は全部で325人ほどがアクセスしている。後者(何を見ているのか)についてはベスト20が分かるようになっている。そこで、今日のベスト20位までをあげてみる。

1 トップページ 87 PV
2 憤(いきどお)れ、怒れ!のうねり 2011-10-0  38 PV
3 多くの人が参加する共同行動の中の合唱 2012-02-05 35 PV
4 「縦割をぐちゃぐちゃにしたい」太田 光さ... 2012-02-04 25 PV
5 学習「平衡老化」(佐々木英忠著)-4 2011-11-27 12 PV
6 学習「平衡老化」(佐々木英忠著)-3 2011-11-26 9 PV
7 アーカイブ 9 PV
8 エンゲルス『猿が人間になるについての労働... 2007-01-16 8 PV
9 深井純一さんの思い出 2012-01-31 7 PV
10 大改造!!劇的ビフォーアフター批評 2005-12-29 7 PV
11 住宅すごろく 2007-02-23 7 PV
12 高齢者の心配ごと三つ-健康、家族、お金- 2012-01- 7 PV
13 月別表示 6 PV
14 宮台真司「過剰流動性に抗って生きる」を読む 2006-03-13 6 PV
15 新宮秀夫先生の「幸福論」を読む 2005-07-03 6 PV
16 願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎ... 2008-03-23 6 PV
17 ブレーメンの音楽隊、夏目漱石の病跡学的分析 2010-07-01 6 PV
18 懐かしのラジオ・テレビ番組主題歌など 2008-01-28 6 PV
19 学習「平衡老化」(佐々木英忠著)-1 2011-11-24 6 PV
20 ル・コルビュジェの「メッセージ」(BS・TB...

これらを見ると、ブログを開設した2005年、次の2006年、2007年、2008年の記事も読まれている。勿論、最近の2010年、2011年、今年の2012年も出ている。20位は6人に読まれている。トップページへは100ほどのアクセスなので、昔のアーカイブから見ておられるのが2/3にあがっている。皆さんの見方は?皆さん、ここにあがっている記事を読んだことありますか。

多くの人が参加する共同行動の中の合唱

2012-02-05 | 時論、雑感
人と人の共感を得る共同の方法は、色々長い人類史の中で開発されてきた。

例えば、祭り、最近の朝ドラ「カーネーション」ではないが、岸和田の9月の「だんじり」もそれだし、京都7月の「祇園祭」もそうである。

応援団の皆で唱和する「フレーフレー○○」と言うのもそうだ。「一本閉め」とか「三三七拍子」というのもそれである。

ところで、参加者皆で合唱するというのも場の一体感を醸し出して良い。

今度3.11.(3月11日)に「けいはんな市民雑学大学と地域SNSけいはんなと仲間たち」で、「けいはんな」の中の平城・相楽ニュータウンの高の原にある奈良市北部会館で、10時半から11時までの30分の間に「1日市民合唱団」(100人募集中、参加希望者は3月11日の9時20分~40分に奈良市北部会館3階へ、リハーサルします、楽譜も配布します)で合唱します。

震災復興祈念チャリティコンサートの一部です。合唱の曲目は小学校唱歌4つ、雪、紅葉、おぼろ月夜 そしてふるさとです。前の三つは舞台の「1日市民合唱団」によります。最後の「ふるさと」はホール全員で唄います。その他、大フィル弦楽四重奏団、指揮:梅沢和人さん(元大フィルコンサートマスター)、ピアノ:上田賀代子さん(奈良モーツアルト会会長)の演奏もありますよ。  是非ぶらりとお出で下さい。そして合唱しましょう。

誰もが声を出す合唱は、皆が参加しうる有力な手段で、人々の絆を強くする方法だ。


「縦割をぐちゃぐちゃにしたい」太田 光さんの発言

2012-02-04 | 教育論・研究論
昨日、テレビ「あさイチ」で「爆笑問題」の太田 光さんのトークがあって面白かった。
案外、肩幅が「狭い」のだな、と思った。

で、太田さんと相方の田中裕二さんとでやっている「爆問学問」シリーズでの太田さんの専門家・学者に対する「鋭い追究」は何のため?との質問に対して、

「大学って学部がそれぞれ別々で総合大学と言っても総合ではない。医学部なんてのもそうだ。だから、ああいう番組では、出演者は皆同じ土俵、だから思ったこと、疑問に思っていることをぶつけて縦割学問を一度ぐちゃぐちゃにしなくっちゃ・・・」

別に「(追究して)切れた人はいませんでしたか?」の質問に「○○大のおじいちゃん(先生)が切れたかな・・・」とのこと。

分析的研究を「総合」するには、市民が率直に疑問を出す必要があるのだ。

太田さんが、ある意味、代弁している面がある。今後、そういう目で、「爆問学問」を見ていこう。

総合的まちづくりへの視点

2012-02-02 | 地域居住学
今、総合的まちづくり計画を立案する場合、どういう視点が必要だろうか。

先ず、昨今起こった東日本大震災や東電福島第一原電の大事故のような災害に対する「防災計画」の視点である。

第二は、長い目での「人口減少」の視点である。

第三は、食料やエネルギーの「地産地消」の視点である。

そして第四は、住民参加の「民主主義」の視点である。

今後、これらを身近な「けいはんな学研都市」での計画に生かしていきたい。

天草の洋(なだ)に泊(はく)す 頼 山陽

2012-02-01 | 生活・空間・芸術と俳句・川柳・短歌・詩
「雲耶(くもか) 山耶(やまか) 呉耶(ごか) 越(えつ)か

水天 髣髴(ほうふつ) 青(せい) 一髪(いっぱつ)

萬里(ばんり) 舟(ふね)を 泊(はく)す 天草の洋(なだ)

煙は 「ほうそう」(注:舟の窗(まど))に よこたわって 日 漸(ようや)く没す

瞥見(べっけん)す 大魚の 波間(はかん)に 跳(おど)るを

太白(たいはく注:金星、宵の明星)船に あたって 月似(つきよ)りも 明らかなり」


この詩を刻んだ石碑が、水俣の「湯の児温泉」の海岸べりにあったのではないか。
 水俣病が起こる以前は、この江戸時代の頼 山陽の詩にもあるように、不知火海、天草の洋は、名実とも、まことに美しかったと言えよう。

これを詩吟で練習を始めた。