西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

サンデル教授のハーバード白熱教室@東京大学を見る

2010-10-03 | 教育論・研究論
今日、夕方のNHK教育チャンネルで8月に行われた「サンデル教授のハーバード白熱教室@東京大学」を見た。大変興味深いものだった。

サンデル教授はどうやら哲学の先生らしいが、ハーバード大学でディベート教育(白熱教室)をやっているので、問題の出し方、議論の誘導の仕方そしてまとめ方も誠に手際よいもので、現役の日本の大学教授にも参考になるものだったに違いない。

今日は、功利主義(イギリスのベンサム)、個人の道徳的権利の重要性(ドイツのカント)そして人間としての利他主義の擁護(アリストテレス)の三つの考え方を具体的事例を出しながら議論を導いた。最初の事例は、イギリスで起こった遭難して4人がボートで漂流し、最後に三人の家族持ちの一人、船長が身寄りのない弱った少年を殺して、その肉を食べて生きながらえることを提案し、その通りにして三人が生きながらえ助かった事例だ。

「これは許されることだろうか」これに対して賛否両論がでる。ベンサムに根拠をおく考え方とカントに根拠をおく考え方だ。ここで、議論が思わぬ方向にも向かう。個人は個人の身の処し方について自由がある、自殺したければ自分の責任で自殺したら良い、という意見がだされて反論も出る。

「個人の身体といっても、そこまで成長し生きてきたのには、親、兄弟、友達、先生、近所の人たちなど多くの人の支えがあったればこそであるから軽はずみに自殺する権利はない」、という考え方だ。これについてサンデル教授は「それは、不可譲(ふかじょうー譲ることの出来ない)の権利と言う」との説明をした。腑に落ちる考え方だ。

次に、イチローの年収は、オバマ大統領の40数倍だが、これは認められるか、という問い、関連して富の不平等を課税を通じて均すことは是か非かも議論された。

また、東京大学に少数だが高額寄付(5千万ドルとか1億ドル)した場合、入学を許可して良いかの問いもだされた。参加学生は、ほぼ全員(推薦等はないのかな)競争試験で入学してきたので、そういう問には「駄目」という答えがほとんどだった。しかし、多分、韓国からの留学生は、少数なら良いのでは、の意見だった。そのことによって、競争入試にほとんど影響がないし、1億ドル(83億円)も入れば研究・教育環境全体の改善にプラスになる。(イギリスでも、そういうことをやっていたことを思い出した。「高額寄付を受けて、その子弟を入学させても卒業するのは至難の業、それなら大学丸儲け」との考えらしかった。)

まあ、しかし、大体は課税を通じて所得再配分したら良い、との意見だったと思う。

しかし、サンデル教授は、ディベートを先導したが、どちらが「勝った」みたいな行司役はしなくて、多様な意見の位置づけをして整理しただけだった。

来週(10月10日午後6時)は、「戦争責任」の問題を議論すると言う。期待したい。

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