「迷想中・迷走中・120」

山・34

靭帯（全十字）が無くても正常に暮らせる人がいる。
歩けない人もいる。
ラグビーをする人もいる。
だけど60歳を過ぎたら、杖を使う事を覚悟して下さい。
そう言われたが、60歳をだいぶ過ぎたが私は正常なままだ。

40歳を過ぎて、ヨガのインストラクターの道場に通っていた。
そこでも、足が悪いと気づかれた事もない。
私は、かなり特殊なケースだったようだ。
そういえば・・・
私が退院した日、手術が同じだった人は、まだベッドの上だった。

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「迷想中・迷走中・119」

山・33

リハビリは一日で卒業した。
専門医が診て、異例だが退院していい、と言った。
そしてその後この専門医に10年くらいモニターにされた。
1月後、３月後、半年後、１年後、３年後、５年後、１０年後。
通勤費と日当が出て、専門医の検査を受けた。
異例だが、とても良好なケースとして発表したらしい。

私の膝は普通に動き、かなりの負荷をかけても正常だった。
それでも２０キロの荷物を持って階段を下りると揺らいだ。
真っ直ぐなら全力で走れるが、コーナーを曲がるのは不安だった。
ジャンプが不安だった。
四季の変わり目、雨期では膝に重い痛みを感じた。
当時、山登りの他、茶道もしていた。
薄茶ならいいが、濃茶となると正座が持たなかった。
そして、茶道も中途半端で辞めた。

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「迷想中・迷走中・118」

山・32

目が覚めて、やはり靭帯が無くなっていた。
半月板の垂れ下がっていた部分を除去した。
トイレは尿瓶だと言われた。
だが私は片足でトイレに行った。
次の日には歩けた。
看護婦さんに怒られた。
でも専門医が診て、異例だが、動いてもいいと許可が出た。

ヒマだったので、外出した。
そして、また看護婦さんに怒られた。
でも専門医が診て、異例だがリハビリを始めていい、と言った。
リハビリに行った。
いろいろ負荷をかけ、動かされた。
そして、担当者が首をひねった。
本当に手術したのですか？

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「迷想中・迷走中・117」

山・31



足を引っ張る十字靭帯の検査も正常人と変わりなかった。

大学病院での検査と手術は日数がかかる。

私は当時仕事も忙しかった。

夜12時前に帰るのが目標だった。

現在では問題だろうが、当時はそんなものだった。

残業は200時間を超えた。



専門医は市民病院にも出張しているという。

私の地域からは遠かったが、そちらならすぐ手術できるという。

仕事を調整して、入院する事になった。

入院当日の夜、内視鏡での手術をした。

印象は・・・肩にした弛緩注射がとても痛かった。



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「迷想中・迷走中・116」

山・30

おそらく前十字靭帯が切れている。
原因から10ヶ月以上経っているので靭帯は吸収されている。
外れるのは半月板がこすれて変形している。
邪魔している半月板を内視鏡で診断してから取り除く。

他の整形外科で診断できなかった理由。
足の筋肉が非常に良いので、カバーしていた。
私の足の筋肉は特別太くも硬くもない。
専門医は、筋肉は量や強さではなく、質だという。
私のはとても質がいいのだそうだ。
レントゲンで撮っても、正常状態にしか映っていなかった。
異常なら、関節がもっと離れているそうだ。

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「迷想中・迷走中・115」

山・29

病院に行った。
担当医が首をひねった。
悪いところが無いですねぇ。
レントゲンも撮った。
でも特に異常は無い、と言った。
だが膝が外れるのは事実。
次の整形外科に行った。
院長が首をひねった。
そして、紹介状を書いた。
医大病院の膝専門医宛てだった。

専門医は違う。
診察が違う。
動かし方が違う。
レントゲンの仕方が違う。
枚数も違う。
そして、結論を話してくれた。

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「迷想中・迷走中・114」

山・28

やがて痛みも腫れもひいた。
そして身体を動かすのは好きなままだった。
変だと思ったのは半年経ってからだった。
ジャンプすると着地でよろける。
町のスポーツ大会での事だった。

山も登ったが、下りが危うくなっていた。
そして・・・
膝が、外れた。
自分で回して、ハメる。
動けるし、大した痛みでもないので運動を続ける。
すると、また、外れる。
そして、自分でハメる。
その頻度が多くなった。
さすがに、おかしい、と思った。
（遅すぎだろ・・・）

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「迷想中・迷走中・113」

山・27

一時間以上急斜面で仰向けでいた。
やがて、足に感覚があった。
これなら、何とか自力で降りられる、かも。
急斜面だから、斜滑降でゆっくり。
そして、駐車場までついた。
運転はできそうだった。
無事、家に帰れた・・・

その夜、右膝が腫れ、痛みも強かった。
何度も濡らしたタオルで冷やして、夜を過ごした。
そんなことを毎日していた。
病院には行かなかった。
もともと病院には行かないタイプだ。
痛みが少なくなっていたから、耐えられた。

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「迷想中・迷走中・112」

山・26

あこがれると、すぐ手を出す頃だった。
早速コブの練習。
そして・・・
数メートル飛ばされて、落ちた。
足がどちらを向いているかもわからなかった。
技術が伴わないのに、無理をしたからだ。
アホだった・・・

これは・・・折れたな。
全く動かなかった。
頭に浮かんだのは、地元なのに格好悪い、だった。
パトロールに連絡するのをためらっていた。
そのうちに、片足が動く。
手も動く。
それで、とりあえずゲレンデの隅まで這っていった。

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「迷想中・迷走中・111」

山・25

普通のコブならそれなりで滑れる。
苦労するが、その分達成感がある。
リズムが合えば、かなり綺麗に滑れた。
だがアイスバーンは苦手だ。
エッジがきかない。
曲がるところが流される。
しかも、転ぶと、痛い・・・

コブのアイスバーンなど最悪だ。
姿勢もリズムもとれない。
急斜面のコブはどこまで転げ落ちるか分からない。
それが、あの先輩は・・・
頭の位置が変わらない。
腰から下だけがコブに合わせて上下する。
アイスバーンをものともせずに滑り降りる。
す、凄え・・・

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