保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

角倉了以率いる朱印船「角倉船」に乗船する条件として掲げた「舟中規約・其の参」

2018-06-19 14:07:29 | 角倉プロジェクト・世界遺産事業
角倉了以率いる朱印船「角倉船」に乗船する条件として掲げた「舟中規約・其の参」

(原文)
「上堪下与の間、民胞物与、一視同仁、況んや同国人に於いておや、況や同舟人おや、
患難、疾病、凍あれば同じく救わん。恰も独り脱れんと欲するなかれ。」


(訳)
「天と地の間にあって人間はすへて兄弟であり、
ましてや同国人や同じ船に乗り合わせる者同士においてはなおさらである。
ひとしく愛情を注くべき存在てあるから、病や飢え、寒さなど苦労をともにする時こそ、
助け合わなければならない。その苦しさから一人だけ逃げようと考えてはならない。」


角倉船は長崎から出航するのが常で、冬の北風を活かし安南(ベトナム)やカンボジア、
ルソン(フィリピン、)シャム(タイ)などアジア諸国をめざし、
翌年の春から夏にかけて南風を受け帰国するコースをとっていました。
船員には日本人だけでなく、操縦技術に優れていたヨーロッパ人を先頭に、
黒人やインド人など航海経験豊かな外国人を多数雇用し、国際色豊かな日本の船でした。
その航海の中、相互扶助の精神を徹底することで、大海原を乗り切ったのでした。

角倉了以率いる朱印船「角倉船」に乗船する条件として掲げた「舟中規約・其の弐」

2018-06-18 17:00:50 | 角倉プロジェクト・世界遺産事業
角倉了以率いる朱印船「角倉船」に乗船する条件として掲げた「舟中規約・其の弐」

(原文)
「異域之我国に於ける、風俗言語異なると雖も,其の天賦之理、未だ嘗て同じからざるなし。
其の同じきを忘れ、其の異なるを怪しみ、少しも詐欺慢罵すること 莫れ。
彼且つ之を知らずと雖も我豈之を知らざらん哉。信は豚魚に及び、機は海鷗を見る。
惟うに天は偽欺を容れず。我か国俗を辱むる可からず。
若し他に仁人 君子に見れば、則ち父師の如く之を敬い、
以て其の国の禁諱を問い、而て其の国之風教に従え。」
(訳)
「異国とわが国とを比べれば、その風俗や言語は異なるが、天より授かった人間の本性においては
、なんの相違もない。お互いの共通するところを忘れ、違いを怪しんだり、あざむいたり、あざけったりすることは、いささかもしてはならない。たとえ先方がその道理を知らずにいようとも、 自分はそれを知らずにいても良いものか。
人のまごころはイルカにも通し、心ないカモメさえも、人のたくらみを察する。
天は人の偽りを許さないだろう。心ない振る舞いによって、わが国の恥辱をさらしてはならない。
もし異国において、仁徳に優れた人と出会ったら、これを父か師のように敬って、
その国のしきたりを学び、その他の習慣に従いなさい。」

何度もいいますが、これは16世紀後期、西欧諸国が「七つの海」を制覇する夢を持ち、
アジアなど発展途上の国に進出した時のものです。この先進性は、まさに目を見張る商業思想であり、
それを遵守させ、実践したことに世界経済史に燦然と輝く事業家として、偉大なる価値を覚えるのです。

角倉了以率いる角倉船に掲げた「舟中規約」其ノ壱

2018-06-17 07:57:07 | 角倉プロジェクト・世界遺産事業
角倉了以率いる朱印船「角倉船」に乗船する条件として掲げた
「舟中規約・其ノ壱」

(原文)
(原文)凡そ回易の事は、有無を通して人・己を利するなり。
人を損てて己を益するには非ざるなり。利を共にすれば、小と雖も還りて大なり。
利を共にせざれば、大と雖も還りて小なり。謂う所の利は義の嘉会なり。
故に曰く、貪之を五とすれば、廉賀は之を三とすと、これを思え。

(訳)貿易の事業は一方にあって他方にないものを互いに融通し合うもので,、
相手にも自分にも利益をもたらすものである。相手に損失を与えることによって、
自分の利益を図るためのものではない。ともに利益を受けるならば、
その利は僅かであっても、得るところは大きい。利益をともにすることがなければ、
利は大きいようであっても、得るところ は小さいのだ。ここにいう利とは、
道義と一体のものである。だからいうではないか、
貪欲な商人か五つのものを求めるとき、清廉な商人は三つのもので満足すると。
よくよく考えよ。

という訳になります。今の時代は当たり前ともいえる「均等な分配」という
貿易のグローバルスタンダードですが、時は16世紀後期、西欧列強が大航海時代として
世界の海に繰り出し、アジア諸国を植民地化していった時代に、
民間でありながら世界的視野に立った「共益の精神」で貿易を実践したことは
当時の世界状況を考えると、その先見性と人間性には驚嘆いたします。

世界交易を崇高な精神で実践した日本人実業家

2018-06-16 09:42:02 | 角倉プロジェクト・世界遺産事業
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という天下人と渡り合った豪商・角倉了以とその子素庵。

河川流通の祖であり、近世日本を代表する交易商です。

「様々な国土開発を私財で実行し、交易により日本の発展に貢献した偉大な事業を数々実施しましたが、
その素地となった精神が「利他・共生の志」でした。「人を損(す)てて己(おのれ)を益するに非ず」
と思想でした。

その思想を乗船の条件として乗員に遵守させ、ベトナムやタイ、フィリピン、台湾など
東南アジア易諸国と貿易を展開しました。

「他国に損失を与えて、自国の利益を得ようとしてはならない」との思想を
ビジネスの現場でしっかり実践してみせたことで、
対等な立場での「ビジネスパートナー」として交易相手国の信頼を得ました。

欧州諸国がアジアへ進出した16世紀後半の大航海時代に、
ここまで崇高な精神により事業を実践した角倉親子とその一族の存在を、
日本人は忘れてはならない。

その事業を引き継ぐ者としての強い信念から、
来年も諦めることなく再度「日本遺産」認定を目指していきます。

皆さんのご支援を何卒、よろしくお願いいたします。

近世京都の物流革命を構築せよ!

2018-06-08 09:49:44 | 角倉プロジェクト・世界遺産事業
1606年、保津川を開削し川船を開いた角倉了以は、1614年の高瀬川開削により、
京都の洛中二条と伏見を結ぶ、物流の大動脈を築きました。

この舟運整備により、保津川が流れる京都の背後地・丹波・丹後の経済圏と京都洛中経済圏、
さらに伏見の港を出入り口とする大坂経済圏をつなぐ物流ルートを構築しました。

この事業は政治の中心が江戸に移り、経済の中心が海外に開かれた海を持つ大坂に移ったことを受け、
衰退の危機にあった近世初期の京都の命運を左右するもので、
京都そのものの改造を何う一大プロジェクトでした。

河川を活かした物流革命に成功により、京都の物価は下げ止まりで安定し、
経済のみならず技術や文化も高水準に保つことができ、京都は大いに活性化し栄えました。

日本文化の源として地方各地に影響を与え続けた近世の京都は、江戸、大坂と並び3大都市として発展しました。

了以の卓越したビジネスモデルは近代化へむかう京都の礎を築いたのでした。

川に挑む先人の知恵、航路の整備作業

2018-06-07 07:33:56 | 保津川下りものがたり
これは歴史を懐かしむイベントではありません。

現在も保津川で生きる為に日々当たり前の様に続けられている作業風景です。

1300年間、京の都と丹波を結ぶ物流ルートの大動脈だった保津川。

その中で最も難所と呼ばれたのが中流域の保津峡でした。

狭窄にして急峻、激流が大岩を噛む保津峡は、猛者の筏士ですら度々命を落とした自然の要害です。

筏しか流せなかったこの要害に、舟運を切り開いたのが京都の豪商・角倉了以。1606年のことでした。

以来、洪水により漂着した巨岩や堆積土砂が航路を塞ぐたびに、
船頭たちは昔ながらの手作業により復旧工事を施してきました。

その技術は重機の進入を許さない険しい峡谷の条件のもと、
当時のまま、今も保津川船頭に受け継がれています。

急流に身を投じ、川底を潜り、岩に綱を掛け、取り除くのです。

自然とともに生きることを宿命づけされた「川人」たち。

その激しい川との闘いの姿に、不撓不屈の意志で開削した角倉了以の技術と精神が、
息づき守られている「川と人」の物語が今この時も展開されています。

川とともに生きてきた丹波、嵐山の人々の知恵と技術、そして精神。

これこそが保津川流域特有の生活文化であり、希少な無形遺産だといえるのではないでしょうか?

角倉了以が可愛がった黒猫

2018-06-06 15:05:44 | 角倉プロジェクト・世界遺産事業
<角倉了以と黒猫>

ご朱印船により海外貿易に乗り出した角倉了以は、
安南国までの航海の船内に黒猫を乗り込ませました。

黒猫は航海に必要な食料をネズミなどが食い荒らさないよう、
番犬ならぬ番ネコの役割を果たすとともに、猫の仕草や怯え方で、
海に吹く風の向きを読んだり、嵐の到来を予感したといいいます。

17回も渡航した「海外貿易成功の影に黒猫あり!」

その後、黒猫は角倉一族の守り主として崇められ、商売繁盛の象徴と呼ばれました。

京角倉の邸宅があった二条高瀬川沿いの家々にも、角倉繁栄の象徴となった
右手を上げた黒猫のお札を配ったと伝えられています。

そして現在、保津川遊船の乗船場に角倉了以さまがお入り込みになり、その傍らにも「黒猫」が!

これで保津川下りも「商売繁盛」間違いなし!といきたいものです