写真家・宮本和義さんの近著で、建築ガイドブックの決定版として東京・横浜編と同時に刊行されました。
以前、「大大阪モダン建築」という本を紹介しましたが、そちらは大阪市内の近代建築が対象でした。それに対して本書は京都・大阪・神戸が対象で、京都市・大阪市・神戸市を中心としながらも周辺都市の建物も採り上げられています。京都は京都市だけみたいですね。
大阪の建物については当然のことながら「大大阪モダン建築」との重複がかなりあります。「大大阪~」が1つ1つの説明の文章が結構長いのに比べて、本書は各建物の説明文は短めで(もちろん、基本データはきちんと記載されています)、より多くの建物を紹介しようという意図が読みとれます。住所の多くが番地まで入っており、地図を片手に探訪するときはとてもありがたいです。「大大阪~」はじっくり探訪型、本書は対象エリアの関係もあって網羅的探訪型のガイドブックでしょうか。
最近、建築ブームということもあって類書も多いので、写真だけをさーっと見ればいいかなと思っていたのですが、さすがは宮本和義さんの本です。全説明文を含めて結構熱心に読んでしまいました。著者の宮本和義さんが写真家の方なので、紹介されている全建物の写真付きです。また殆どの写真が垂直をピシッと出したプロならではの仕上がりです。カラーと白黒が混在しているのですが、大きさ・枚数などの扱いにかなり差があり、自分のお気に入りの建物がカラーで大きく紹介されていると”おおーっ!”と唸り、逆に扱いが小さいと”何でやねん!”とちょっと憤ったりも。単に個人の嗜好の問題なのですが、自分だったらこの建物を大きく採り上げたいなあとか、とっておきのお気に入り建物を紹介すべきかマル秘で温存すべきか・・・などと考えながら読むのも楽しいです。
建築ガイドブックの決定版の一つであることは間違いなく、多少なりとも公共性のある建物はほぼ網羅されていると思います。本文中にも書かれていますが、残されたのは個人住宅ですね。これは各人が静かに探訪すべきなのかもしれません。
約500件あると、さすがに見たことがあるのは8割強で、やはりちょっと離れたエリアに1つだけポツンとあるような建物などは取りこぼしています。この本によって未見の建物を探しにいく楽しみがまた増えましたが、うーーーん、京阪神から永久に抜け出せないような気もしてきました。。。
~本の帯より~
街なかに残された古きよき建築を、訪ねてみたい、由来を知りたい、もっと味わいたい。
●赤レンガの校舎と教会を訪ねる 御所周辺コース
●商都の面影を求めて歩く 心斎橋・ミナミコース
●モダンな家並みがつづく 神戸異人館コース
など、厳選した近代建築を訪ねる17の散歩道。
*************************** 小学館のホームページより ***************************
町中に残る古きよき建物を写真とともに紹介
都市にいまだ残る良質な近代建築(明治以降1955年頃までに建てられた建造物)を写真とともに紹介。街角に取り残されたように、あるいは威風堂々として存在感を示す古き良き建築を、訪ねてみたい、由来を知りたい、そんな要望に応える都市散歩ガイドです。この京都・大阪・神戸編では500件を超える写真を掲載。阪神・淡路大震災以後、急速に進められる耐震化の波のなか、補強して残すか、取り壊して新築するか、あるいは移築、あるいは部分保存にするのか。登録文化財制度の整備や土木遺産、近代化遺産などの選定と相まって、いまふたたびブームになりつつある近代建築めぐりの決定版です。