精神病院の隔離室には、布団があって、壁に時計がかけられていた。隅にはむき出しの便器があった。トイレットペーパーがないときがあって、大便のあとにしりがふけないときがあった。隔離室には、監視カメラがあって、24時間監視されていた。入院してからいろんな人が隔離室に訪ねてきたが、知らない人ばかりだった。「何か困ったことはないか?」「時間がない」と言っていたが、別に困ったことはないと答えた。右隣の部屋の人は、ドイツ人らしく、ドイツ語で医者と話をしていた。左隣の人は、壁に指でトントン叩いて、リズムを取っているようだった。遠くの部屋で、女の人がひっきりなしに泣いていた。あれだけ泣くと、さぞや体のエネルギーを消耗するのではないか。窓の外には、施設のような所から人が歩いて出るのが見えたが、医者に聞くと、研修生だそうだ。入院して何日目かの夜に多くのお坊さんが「般若心経」を唱える声が聞こえたが、何だったんだろう?幻聴か?