昔から「良薬は口に苦し、忠言は耳に逆らう」というが、日ごろ、耳に痛い忠告や苦言を聞かされ、また思い通りにならないことがあってこそ、人は徳を身につけ、自分を磨き、向上させることができるのである。これに反して、耳障りのいいお世辞やほめ言葉ばかりを聞かされ、思い通りになることばかりであったなら、人生を猛毒の中に放り込んでしまうに等しい。これ以上に不幸なことはない。(「菜根譚」齋藤孝氏訳)
およそ戦争をする者は、正攻法をもって相手に対峙し、奇策をもって勝つ。したがって、神出鬼没に現れたり消えたりするさまは、天地のように窮まることがなく、黄河のように枯れることがない。終わってから再び始まるさまは、四季のようである。死して再び生き返るさまは、月日のようである。声は5種類に過ぎないが、5つの声の組み合わせは、聞き尽くすことができない。色は5色に過ぎないが、5色の組み合わせは、見尽くすことができない。味は5種類に過ぎないが、5つの味の組み合わせは、味わい尽くすことができない。戦いの勢いは、奇と正の2つに過ぎないが、正奇の組み合わせは、窮め尽くすことができない。奇策と正攻法を次々と繰り出すさまは、円い輪に端がないようであり、どのようにしてこれを窮め尽くすことができようか(とても窮め尽くすことはできない)。
呻吟語(しんぎんご)は、中国の古典籍の一つ。著者は明代の哲学者・呂坤。呂坤が30年に及ぶ長年に亘って良心の呻きから得た所の修己知人の箴言を書き記し、収録した自己啓発の書。六巻本で、内篇・外篇に分かれ、全17章より成る。(ウィキペディアより)