ICUROK!!

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グランドマスター

2020年12月30日 14時24分27秒 | 映画

2020年の映画10選諸々。いつもの感じでまとめます。

『イップ・マン完結』
シリーズの集大成。人生の終局に向かうイップ・マンと次世代に受け継がれる武術を通じた魂の作品。
本作はリー師父に始まりリー師父に終わるというリー師父へのリスペクトが溢れまくった作りになっている。個人的ベストバウトは待ちに待ったドニーさんVSアドキンスではなく路地裏の闘いである。美術から振り付けまでドラ道リスペクトで初回に劇場で観たときは思わず涙が出てきた。愛と尊敬にまみれた描写の数々に昨年ワンスアポンアタイム~でタランティーノに滅茶苦茶ムカついていた私は拳を握り締めながら「わかったかタランティーノ!!」という気持ちになってしまった。
ドニーさんの怒りの連撃は今作も健在だし親子の話の落とし込み方などドラマ部分の作りも良い。あと中盤の中秋節で米国軍人相手にキレキレの技で応戦する女武術家チョン師匠が大好きで弟子入りさせてほしい。最後は川井憲次さんの例の力強いテーマ曲で引き締まる。鑑賞後にはベスト盤的サントラが出ていたので速攻買ってしまった。パンフレットも締めくくりに相応しいボリューム満点な内容で総合的に満足度の高い作品だった。因みに、シリーズで好きな順に並べると3⇒1⇒2⇒4かな。番外編マスターZの続編も引き続き期待したい。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』
今一つパッとしないDC映画の中でこちらの作品はダントツだとおもう。まあ、マーゴット・ロビーが大好きってことも贔屓目であるんだけれど、警察署へのカチコミをはじめアクションの完成度は高いしコミカルな描写とのバランスも抜群なのだ。それに加えてまたまた大好きな“強いお姉さん映画”という要素も加わっていて最高でしかない。特にこの点において、この頃舶来エンターテインメント界隈において時折執拗に持て囃される自称先進的な定型的人権意識の押し付けが鼻につくことも無く、前向きにな姿勢で普通に楽しめる作品に纏まっているのも好感が持てる。ここのところ個人的に感じている一見耳ざわりの良い思想の押し付けとその後進性に関しては語る機会があればいずれどこかで…といってやらないお約束構文。
主役のみならず他のキャラクターも皆良かった。脇を固める“クロスボウ・キラー”の残念っぷりがちょう可愛いし、キレッキレのブラックキャナリーには尻を蹴飛ばされたい。冒頭とエンディングに出てくるハーレイ・クインの好物のエッグサンドが滅茶苦茶美味そうで、家に帰ってからチリソース振りかけて何度か真似させていただいた。スナイダーカットとか今更どうでもいいからハーレイ・クインでもう一本やってくれ。

『ランボー ラスト・ブラッド』
2020年最高の人体破壊映画。舐めていたジジイがジョン・ランボーだったという、喧嘩売りまくってたメキシカンマフィアたちが哀れになるストーリー。
はじめに書いたように、まあ、人体破壊がとんでもない。散々、溜めに溜めて最後に思いきり炸裂する構成になっていることも作用し、クライマックスでスクリーンいっぱい飛び散る肉片がグロっと爽やかすぎて心の中でおもわずガッツポーズしてしまった。ランボー怒りの殺しの下ごしらえをするシーンも最高だったよ。
時代遅れな暴力映画と切り捨ててしまうのは簡単だ。しかし、ランボーは未だにPTSDに苦しむ描写があり、自分の“蓋”を開放して暴力で相手を叩きつけても何も終わらないことはとっくに理解しているのだ。自分には暴力しか成す術がないという、かの戦争での一人の犠牲者でもある老兵の哀愁が沁みる。第一作の「何も終わっちゃいねぇ!何も!(CV渡辺謙)」なのである。
礼儀として吹き替え版も観たのだが翻訳は平田勝茂先生の安定クオリティだった。ささきいさお御大の枯れ具合も程よくマッチするよね。ケンコバは意外と役柄がハマっていた一方、某多才な筋肉俳優はかなり微妙であったことを付記しておく。

『フォードvsフェラーリ』
ローアングルでかっ飛ばすキメ画尽くしに音響が超絶迫力満点ですげえカッコよかったという馬鹿みたいな感想。映画として完成度が高いのでモータースポーツに疎くても十分楽しめる。
自動車メーカーが勝利を目指すドラマといっても所詮サラリーマンが回してるわけで、同じ組織内で足の引っ張り合いが始まったり手柄を横取りしたがったり等、ああいうクソいるよなぁみたいな感じも面白い(傍から見れば)。心理描写や各種説明もどこぞの爆売れ漫画のように一々無粋に語ることなどなく淡々とさりげなく処理されているのが好印象だった。個人的に好きな場面はマット・デイモンとクリスチャン・ベールが和解するのに子供みたいなヘナチョコ喧嘩するところと、フォード二世が親父にも乗らせたかったと嗚咽するところ。あと、親父と息子が滑走路で語り合うシーンの夕暮れ空が格別に美しく印象的だった。とにかくこの映画、キメ画しかないのよ。最後のル・マンでの戦いは正々堂々フェアプレイかとおもいきや、こっそりフェラーリチームのストップウォッチをパクったり、ピットにナットを投げ込んでパニックにさせたり泥啜っても勝つぞみたいな人間臭さが堪らなく好き。良い役者も揃って堅実な作りの一本だった。

『エクストリーム・ジョブ』
今年の映画初めに観た一本。ポンコツ麻薬捜査班がチキン屋さんを装って張り込み捜査を始めたら思いもよらない大繁盛店になってしまうコメディ映画。
役者陣が終始とぼけた顔して分刻みでボケをかましてくるので劇場でかなり腹筋が鍛えられた。ただボケっぱなしかというとそうではなくて、チキン屋の流行から本業の麻薬捜査に繋がる話の流れが綺麗で話もちゃんと出来ている。また、さすがは韓国映画といったところで、コメディ映画であってもアクションに手を抜かずクオリティがかなり高い。最後の波止場の乱闘は本当に見ごたえバッチリで、急に香港ノワールでも観ているかのような雰囲気だな…などと感心していたら締めにレスリー・チャンの「當年情」が流れ始めて完全に止めを刺された。しかも引きのショットからズームインして闘いを終えて座り込んでる姿を映しながらという、バカすぎて分かってらっしゃりすぎて劇場で涙目になりながらヒーヒーいってた。
兎にも角にも、水原カルビ味チキンが滅茶苦茶食べたくなってくる。

『ディヴァイン・フューリー/使者』
これまた韓国映画。特にインパクトのある予告編ではなかったものの、何だかどうにも気になって観に行ったら意外な拾い物感のあった一本。エクソシスト映画なんだけどバトルものという熱い展開が待っていた。
人の善性が根底にある話が好きなのでこの作品で描かれる父と息子の愛やエクソシスト師匠との師弟関係も凄く良くて、愛が悪に打ち勝つというストーリーへの絡ませ方も上手かった。まあ、あとはバトルね。聖水片手に悪魔とガチンコの殴り合いという期待以上の展開に笑いを堪えるのが必死だった。しかもこれまた韓国映画御馴染みの気合の入ったアクションなので、ワンカットで見せ場まで作ってくれるから堪らない。あとは悪魔に取り憑かれた子供の演技が最高だったな。悪魔に憑かれるとゲロを吐くのは万国共通なのだろうか。

『初恋』
さて、ここまで書いてくると例によってバテてくる。今年はやむを得ない事情によって劇場公開作品の大幅な減少があったこともあり、10本選ぶのも中々苦労する。などと言い訳を済ませ、残りの5本はサクッといきまっせ。(そう言って上手くいった試しがない……。)
三池崇史の映画は正直得意かといわれればかなり苦手なほうなのだが、これは普通に楽しむことができた。奇をてらわず方向性が明確な話なうえコンパクトな仕上がりで肩肘張っていないのが良い。
個人的にはクライマックスの舞台が思い出のユニディだったのが何とも。小道具やら調達に行った黒歴…思い出が……。車が大ジャンプするカースタントを急にアニメーション映像に転換するという、自由かつ大胆な手法で予算を抑える方策は上手いなとおもった。あとは方々で語られてるけどベッキーの狂気にまみれた演技が最高。

『透明人間』
はい、皆さん、今夜の作品は透明人間。透明な人間。怖いですねー恐ろしいですねー。(突然の淀川先生降臨)
透明な人間ですよ。タイトルからネタバレしてんですよ。もう世界中で何百、何千、同じ題材で作品作られてんですかってんですよ。監督は異色のSFアクション作『アップグレード』のリー・ワネルってことで一応期待値60%くらいで臨んだところ、これが中々良い塩梅の仕上がりじゃないの。徹頭徹尾緊張感を持続させる演出は見事だし、『アップグレード』でも感じたダークでひんやりした質感が背筋も凍るソシオパスの静かな暴走に上手く調和している。ソシオパス男の大豪邸などの美術も不穏さを醸成して良い相乗効果を生んでいたとおもう。散々やり尽くされた題材を美味しく料理してくれた。
まあ、でも、個人的にはやっぱりヴァーホーベン御大の“淫靡視ぶるマン”かなぁ……。

『淪落の人』
人の善性を信じる救いと希望に満ちた優しい作品でボロ泣き状態だった。あの人肉饅頭売ってたアンソニー・ウォンが、ユンファに眼球ブチ抜かれたアンソニー・ウォンがなどといつまでも言っていてはいけないのだ。良い役者さんだよ、ホント。
現在台湾に居を移してしまったアンソニー・ウォン。ノーギャラでの出演には様々な想いがあったのだろう。インタビュー記事を読んでると香港映画は香港の変容と伴にかつての香港映画たり得なくなって来てしまっているということに気づかされ悲しくなった。それでもこういう作品は希望になるわけで灯はまだ消せはしないんだという思いが込み上げる。散々良い話やっといて友人との“AVマラソン”みたいな笑いどころがあるのも好き。優しさが一番なのよ。

『山猫は眠らない8 暗殺者の終幕』
劇場公開してくれて嬉しかった。正直シリーズの中でどうかと言われれば微妙ではある。しかし、このシリーズ、かなりのブランクがあってからの2作目以降、変に手抜きをせず堅実に制作を続けているのは偉いとおもう。しかも今回で第8作目だよ。
隠居したトーマス・ベケットはエンド・オブ・ステイツのニック・ノルティみたいになっていて笑った。そして、何といっても秋元才加嬢。良い役どころ貰ったよなあ。ユキ・ミフネakaレディ・デスって名前も馬鹿っぽくて堪らん。次作への登場も期待できる終わり方だったのが嬉しい。次は是非ビリー・ゼインも再登場していただきたい。午後のロードショーにもぴったりな一本だ。


というわけで、今年はこのような情勢下において10本選出するのにかなり苦悩した。正直5本迄でも良かったかもしれん。期待の新作公開が続々と翌年に延期される異常事態。007やワイスピの新作などが予定通り上映されていたらどうだったんだろうとおもわずにはいられない。そうした劇場で掛ける新作が少ない状況の中で、普段観ることも無かったであろう作品に出会えたのは禍を転じて何とやらである。また、『コマンドー 日本語吹替え4K版』『燃えよドラゴン ディレクターズ・カット』『トータル・リコール 4Kデジタルリマスター』といった大好きな往年の名作を劇場で観なおすことができたのも今年ならではであった。

さあ、ここからは恒例の各種オマケ大賞でございます。
女優賞は『イップ・マン完結』の中秋節で一目惚れしたチョン師匠に決定。近所に武館があったら是非とも通いたい。男優賞は今後の応援も込めて『淪落の人』のアンソニー・ウォンに。ってか、最近台湾で叉焼包を販売する計画があるって記事が出てて笑っちゃったよ。本当に頑張って欲しい。
さあ、どんどんいくわよ。戦うおじいちゃん大賞はベトナム繋がりの役柄を演じたお二方、シルベスター・スタローンとトム・べレンジャー。劇伴大賞はシンプル&クールなバンドサウンドと良質な音響で盛り上げてくれた『フォードvsフェラーリ』に。このシーン作った人頭大丈夫ですか大賞は超絶長回しワンカットアクションで度肝を抜いた『タイラー・レイク』。そして護られたい二の腕大賞は何と三年連続で『悪人伝』のマ・ドンソクが受賞。これは文句無しでしょう。張り手俳優No.1の称号も併せて差し上げます。続いて、食ってみたい映画飯大賞は『パラサイト半地下の家族』に登場したチャパグリ。強制脱水症状誘発大賞は私の目や鼻から体液ダダ漏れにしてくれた『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に。ベスト・ウィッグ・ドレッサーは『ファナティック ハリウッドの狂愛者』でキモオタストーカー役を怪演したジョン・トラボルタに決定。トラボルタとくれば今年のニコラス・ケイジも凄かったというわけで、ベスト・オブ・アルパカ映画部門として『カラー・アウト・オブ・スペース』が受賞。アルパカのおっぱいって飲めるのかという新たな無駄知識に加えトリップ映像と物体Xチックな造形が最高だった。最後に、今年のドラマ部門は『コブラ会』に決まり。語ると長くなるから止めとくけど、正直ここ数年で最高のドラマ。いよいよ年明けに新シーズンが配信されるのでワクワクさんが止まらない。

以上で2020年の映画総まとめは終わり。先述したように今年はとんでもない年になってしまった。とにかく来年は延期になった作品群が楽しみで仕方がないよ。まずは年明け早々ドニーさんのデブゴンが待っているし、いい加減はよう007を観させておくれ……。
何が何でも明るく楽しい年になることを祈念しつつ。
それでは、皆様良い年をお迎えください。



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