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なぜ、高度成長期のイベントにこだわるのか -大阪万博‐

2024-04-12 17:25:31 | アラカルト

先日、JR東海が進めている「リニア新幹線」の2027年開業が、遅れると発表があった。
この開業の遅れの要因を、静岡県知事であった川勝平太氏が、ごねた為ということになっているのだが、実は工期が遅れているのは静岡工区だけではない。
東京新聞:「リニア」の遅れは静岡のせい?ほかの工区での後ずれする工事、未解決の問題を考えた 

数々の暴言を繰り返していた、という点では川勝静岡県知事の辞任は、当然だと思う。
反面、リニアに関していえば、JR東海側がスケープゴートに仕立て上げることで、他の遅れが出ている工事についての問題をごまかしていた、ということだ。
「リニア」に関しては、今後どうなるのか?行き先が不透明過ぎるところがあるので、JR東海側が難癖をつけていた川勝静岡県知事退場後、どのような説明をするのか、注目していく必要があると思う。

そして「工期の遅れ」という点では、来年開幕を引か癒えている「大阪万博」の方が、大きな問題かもしれない。
朝日新聞: 「現実を直視して!」訴えた万博事務方トップ 建設遅れるパビリオン 

2022年開催予定だった「東京オリンピック2022」は、「コロナ禍」という理由で工期が遅れても、さほど問題になることは無かった。
しかし「コロナ禍」ではなくなった現在、「大阪万博」の工期の遅れには、理由付けとなる社会的な問題がない。
建築資材の高騰や建設に携わる人材不足、という理由はもちろんあるのだが、これらの理由は日本国内の問題だ。
このような問題は、パビリオンの建設が始まった頃から、指摘されていたような気がする。

むしろ問題なのは、いくつかの国が参加を辞退している、という点なのではないだろうか?
参加予定をしていた国々が辞退すれば、建設予定地が更地になってしまう。
それでは、「万博」としてのイメージが大きく損なわれる。
だからと言って、その場所に日本企業のパビリオンを建設しようと思っても、新たに企業を募集するには時間がない、と思われる。
このような状況だから、当然前売り券もあまり好調ではないようだ。
朝日新聞:万博前売り券、伸び悩む売れ行き 開幕まで1年、コンビニ販売を検討 

そもそも、万博の収支で黒字になるのか?ということを、考える必要があると思う。
ここでいう「収支の黒字」というのは、「経済波及効果」ではなく、チケット収入等から建設費や運営費を差し引いた場合だ。
ニッセイ基礎研究所:大阪・関西万博について知っておきたいこと(2ページ目) 

このレポートが書かれたのが、1年前なので全く同じだと考えるのは難しいかもしれないが、ドイツのハノーバーやイタリアのミラノの収支が、現実的なのでは?と、考えている。
というのも、2005年の愛知で開催された「愛知万博(通称:愛・地球博)」の場合、協賛企業が相当従業員等に対して前売り券購入を勧め、購入補助までしていたからだ。
一般販売にしても、段階的な割引を設定し、愛知県はもちろん協賛企業の様々な販売努力があってのことだったからだ。
この時中心になったのは、トヨタ自動車とその関連企業であったことは、言うまでもない。

大阪、関西地域に大企業が無いわけではないし、おそらく協賛企業の販売促進等も行われていると思う。
しかし、「なぜ、今万博なのか?」という、開催理由を考える必要もあるのでは?
確かに1970年の大阪万博では、当時、万博史上最高の動員数と言われた。
その頃は、海外旅行に行く人も少なく(当時は、固定為替で1ドル360円だった)、海外パビリオンそのものがとても魅力的に感じられた時代でもあった。
それだけにとどまらず、アメリカ館では「月の石」が展示され、そのアメリカ館にほど近い場所には、ソ連館があった。
冷戦時代に、米ソが並びそれぞれの国のパビリオンに行ける、という魅力もあったはずだ。

それから50年以上の月日が流れ、海外旅行そのものが珍しい体験ではなくなってきている。
海外に対する「夢」等も、変わってきているのだ。
にもかかわらず、「高度成長期のイベント誘致で、経済の回復」のようなイベントを開催することそのものが、安直な気がする。
と同時に、「大阪・関西万博」後の跡地利用についても、IR(カジノ付き総合リゾート宿泊施設)についても、反対や懸念を示す人が少なくない。

既にパビリオン等の建設工事が始まり、遅れが懸念されているが、今一度「酵素成長期の成功イベントの夢」を開催する必要があったのか?考える必要があると思う。



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