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自己免疫疾患の1型糖尿病発症の抑制に関わるCD8陽性制御性T細胞(CD8Treg)の誘導メカニズムを発見

2020-04-27 | 医学
 理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの下川周子客員研究員(国立感染症研究所寄生動物部主任研究官、群馬大学大学院医学系研究科生体防御学協力研究員)と大野博司チームリーダー、国立感染症研究所寄生動物部の久枝一部長らの共同研究グループは、自己免疫疾患の1型糖尿病(Type 1 diabetes;T1D)発症の抑制に関わるCD8陽性制御性T細胞(CD8Treg)の誘導メカニズムを発見した。
 本研究成果は、現代病(花粉症や自己免疫疾患)が増加したのは感染症が減少したからだとする「衛生仮説」を科学的に証明するとともに、T1Dの新たな予防・治療法の開発につながると期待できる。T1Dは、インスリンを分泌する膵臓の細胞が自分の免疫細胞によって破壊され、高血糖が引き起こされる自己免疫疾患で、近年患者が増加している。
 今回、共同研究グループはマウスを用いて、腸管寄生線虫のHeligmosomoides polygyrusが感染すると、T1Dの発症が抑制されることを見いだした。そしてそのメカニズムとして、寄生虫がトレハロースという糖を分泌することでRuminococcus属の腸内細菌が増殖し、この菌によってCD8Tregが誘導されることにより、膵臓の細胞の破壊が食い止められ、T1Dの発症が抑えられることを明らかにした。さらに、T1Dの患者では血液中のCD8Tregが減少しており、Ruminococcus属の腸内細菌が少ないことも明らかにした。
 本研究は、オンライン科学雑誌「Nature Communications」(4月22日付)に掲載。
 背景
 近年、衛生環境の改善によって、寄生虫病や結核などの感染症は減少したが、アレルギーや自己免疫疾患などの現代病は増加の一途をたどっている。特に、薬剤の普及により寄生虫の感染者数が劇的に減少した地域では、自己免疫疾患の患者数が増加していることが疫学的に証明されている。このように、現代病が増加したのは、感染症が減少したためではないかという考えを「衛生仮説」という。
 寄生虫に感染すると、宿主(ヒト、マウスなど)は免疫機能を発達させ、寄生虫を体外へ排出しようとする。これに対して、寄生虫は宿主の免疫機能を低下させるシステムを持つため、宿主の攻撃を回避できると考えられている。したがって、寄生虫の感染症の予防・治療にはそのシステムの解明が重要であり、寄生虫が誘導する(免疫抑制性の)細胞の種類や分泌する物質を同定する研究が世界中で盛んに行われている。
 共同研究グループは、自己免疫疾患の中でも、近年特に発症者が増加している1型糖尿病(Type 1 diabetes;T1D)をターゲットとし、寄生虫の一種である腸管寄生線虫の感染がT1Dに与える影響を調べた。T1Dとは、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞が自己の免疫細胞によって破壊され、そこから分泌されるインスリンの絶対的な不足が原因となり、高血糖が引き起こされる疾患である。ちなみに、いわゆる生活習慣病である2型糖尿病(Type 2 diabetes;T2D)は、肥満などによってインスリンが出ていても十分に効かない、つまりインスリン抵抗性によって血糖値が上昇する病気であり、T1Dとは病態が全く異なる。
 研究手法と成果
 T1Dのマウスモデルは、ストレプトゾトシン(STZ)を低濃度で繰り返し投与することで作製した。STZは膵臓のβ細胞を特異的に破壊するため、マウスに投与するとインスリンが産生されなくなり、その結果、高血糖が引き起こされる。しかし、あらかじめ腸管寄生線虫であるHeligmosomoides polygyrus (H. polygyrus)をマウスに感染させると、T1Dを誘導しても血糖値の上昇が抑えられ、β細胞の破壊も見られなかった。このことから、H. polygyrusはT1Dの発症を抑制することが分かった。
 次に、そのメカニズムを調べるために、H. polygyrusが感染した際の免疫応答を調べた。これまでH. polygyrusの感染において、さまざまな免疫抑制性の細胞が誘導されることが報告されていたが、共同研究グループは、その中でCD8陽性制御性T細胞(CD8Treg)に着目した。実際、マウスにH. polygyrusが感染するとCD8Tregが増加し、感染マウスからその細胞を除去するとT1Dを発症した。また逆に、非感染マウスにCD8Tregを移入することで、T1Dの発症が抑制された。これらの結果から、H. polygyrusによるT1D 発症の抑制にはCD8Tregが重要であることが明らかになった。
 次に、H. polygyrusがどのようにCD8Tregを誘導するのか調べた。H. polygyrusは、主に小腸上部(十二指腸)に寄生する寄生虫である。そこで、H. polygyrus感染マウスの小腸内容物に存在する代謝産物を、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)[9]を用いて解析した。すると、感染マウスでは腸管内で糖のトレハロースが増加していること、そのトレハロースはH. polygyrus自身が分泌していることが分かった。
 トレハロースは腸内細菌の餌になることから、次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢の変化を解析したところ、H. polygyrusが感染することでRuminococcus属の細菌が増加していることを突き止めた。その中でも特にトレハロースを投与したマウスで増加したRuminococcus gnavus(R. gnavus)を野生型マウスに経口投与すると、CD8Tregが誘導され、さらにSTZを投与することでT1Dの発症を誘導しても血糖値の上昇が抑えられることが分かった。この結果から、H. polygyrusによるT1Dの発症抑制に関わるCD8Tregは、寄生虫が分泌するトレハロースで増殖したR. gnavusによって誘導される可能性が示された。
 さらに、T1Dの患者では血液中のCD8Tregが減少しているとともに、CD8Tregを誘導するRuminococcus属の腸内細菌が少ないことも明らかにした。
 今後の期待
 CD8Tregはこれまでに、多発性硬化症や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患に効果があることが動物モデルで示されているが、その誘導メカニズムは分かっていなかった。今回の研究で、CD8Tregの誘導には、寄生虫が分泌するトレハロースとそれによって増殖した腸内細菌が必要であることが明らかになった。
 T1Dには膵移植や膵島移植といった治療も選択肢の一つとして考えられるが、ドナー不足などの問題から現実的ではなく、現時点では一生涯にわたるインスリンの注射による投与という、生活の質(QOL)に対する悪影響が極めて大きい治療法しかない。今後、このCD8Tregの誘導メカニズムや膵臓での抑制メカニズムが明らかになることで、T1Dの新たな予防・治療法の開発へつながると期待できる。
 ◆補足説明
 〇自己免疫疾患
 本来は、外来から侵入してくる全ての異物から生体を守るはずの免疫システムが異常を来し、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう疾患。
 〇CD8陽性制御性細胞(CD8Treg)
 1970年に報告された白血球の一種で、これまでのさまざまな研究から炎症性疾患、腫瘍免疫、移植寛容、自己免疫疾患などに対する新たな治療戦略の糸口になると考えられている。しかし、いまだにその機能などの全貌は明らかになっていない。
 〇衛生仮説
 乳幼児期の衛生環境が、個体の免疫系の発達に影響を及ぼしているという仮説。近年アレルギーや自己免疫疾患の患者が増加している背景には、衛生環境の改善や生活水準の向上、予防接種の普及、食生活・栄養の変化、抗生物質の乱用による幼少時の感染症の減少が関与していることが、多くの疫学調査でも証明されている。
 〇Heligmosomoides polygyrus
 齧歯類に感染する腸管寄生性線虫の一種。さまざまな免疫応答を引き起こしながら数カ月以上感染しているため、慢性感染のモデルとして使用される。
 〇トレハロース
 グルコースがグリコシド結合してできた二糖の一種である。食品以外に化粧品、飼料などに使用されている。また、耐糖能改善の効果、神経変性疾患抑制の効果、細胞保護の作用など、多種多様な生理機能があることが知られている。
 〇Ruminococcus属
 セルロース分解能を持つグラム陽性菌。培養には強い嫌気度を要求する。
 〇膵臓ランゲルハンス島
 膵臓の内部に島状に散財する内分泌を司る細胞群であり、様々なホルモンを分泌している。
 〇ストレプトゾトシン(STZ)
 天然由来の有機化合物であり、特に哺乳類の膵臓のβ細胞への毒性を持つ。アルキル化剤系の抗がん剤としても使用される。
 〇ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)
  試料を注入口で加熱して気化させたガスをキャピラリーカラム(中空の細長いガラス管)に送り出し、ガスとカラム内部との親和性による移動スピードの違いやカラムを昇温加熱した時の沸点の違いを利用してガス中の成分を分離させ、質量分析計で測定する装置。
 〇次世代シーケンサー
 大量のDNA配列を高速で決定する実験機器。数千から数百万ものDNA分子配列を同時に決定できる。

 今日は晴れ、雲が少し多く、風が少し強い。
 近所のお庭に”ゲッケイジュ(月桂樹)”を植えている。お花が咲いている。このお花は雄花。”ゲッケイジュ(月桂樹)”は雌雄異株。雌の木には実が付く。
 日本には明治に渡来して栽培され、「雌木は少ない」と聴く。近所に雌木があり、チョット嬉しい・・でもまだ咲いていない。
 古代オンピックでは枝を冠(かんむり)にした月桂冠は、名誉の象徴となっている。現代では、葉・実は月桂葉・月桂実と言い、香辛料などで用いられる。
 ゲッケイジュ(月桂樹)
 別名:ローレル(Laurel)、スイートベイ(Sweet bay)、Bay tree(ベイ・ツリー)
 学名:Laurus nobilis
 クスノキ科ゲッケイジュ属
 雌雄異株
 常緑高木(樹高:5m~10m)
 原産地は地中海沿岸
 日本には明治9年頃に入ってきた
 日露戦争(明治37年~38年)の戦勝記念に日比谷公園に植樹されたのがきっかけとされる
 開花時期は4月~5月
 黄白色で先が4裂した小花が沢山集まり花房を形成
 実(約8㎜の楕円状球形)は10月頃に黒紫色に熟す


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