goo

飛び級

塾でも飛び級ができる塾とそうでない塾があるようですが、私のいた塾では飛び級を認めていました。確かに優秀な子どもはいますから、先に進んだ方が子どもの興味が続いていいという場合もあるでしょう。しかし、実は受験カリキュラムにひとつの問題があるのです。

 塾ではそれぞれがカリキュラムを工夫していますが、だいたい4年生の3学期から6年生の1学期までの間に、出題される範囲を勉強し、6年2学期は入試問題を中心にしたカリキュラムが一般的のようです。ところが4年3学期と6年1学期では子どもたちにできることの差がありますから、4年3学期から6年1学期までの本カリキュラムに対して3年3学期から4年2学期までの間の予備カリキュラムを持っている場合があるのです。この予備カリキュラムは本カリキュラムの基礎版ですが、だいたい本カリキュラムができた後から付け加えられたという側面があるので、本カリキュラムのうち4年3学期から5年1学期ぐらいまでの内容を繰り返し履修するような形になっています。これを1年間かけて勉強し、また本カリキュラムに入ってから同じことを勉強するというやり方は、ある子どもたちにとってはていねいであるかもしれませんが、まどろっこしいという側面もあるのです。

したがって3年3学期からの予備カリキュラムを飛ばして、最初から本カリキュラムに入ってしまうというやり方がでてくるわけです。これはもちろん最初は大変ですが、逆に考えれば4年3学期から6年1学期までの内容を1年余分に学習することができるので、ある意味、余裕をもっているのです。予備カリキュラムを加えた学習は4年3学期から5年1学期までの間の学習を繰り返していきますが、飛び級の場合は、5年2学期から6年1学期までの間の一番入試に出題される部分を2回履修することができるというメリットがでてくるのです。ただし、それを早く勉強するために、最初が大変になるということで、もちろん全員に勧められる方法ではありません。

ところがこういう話の一部だけを聞いて
「やはり難しい学校にいれるためには、飛び級ができなければだめだ!」
という議論が出てきてしまうのです。これはまったく間違っています。無理に飛び級させてしまって、失敗する例はたくさんあります。まして飛び級は予備カリキュラムを飛ばすということに意味があるので、5年生になって本カリキュラムに入っているのに、無理に飛び級させて、本カリキュラムの一部を飛ばすなどということはまったく無意味になるのです。ですから4年生から塾に入って、4年のカリキュラムを飛ばして5年のクラスに入ることは意味がありますが、5年生から塾に入って6年のクラスに入ることは、まったくナンセンスなのです。
飛び級のデメリットは、最初が大変だということをお話ししましたが、それ以外にもあります。
5年2学期、もしくは5年3学期から原級にもどるわけですが、そのときは、さすがに先にやっていますから、原級で勉強していた子どもたちよりもできます。ところが、また同じところにもどりますから、原級で勉強していた子どもたちが次第に力をつけて追いついてきます。最初はずいぶん差があったのに、どんどん差をつめられてくるというのが実感でしょうか。これは心理的に他人を気にする子には向きません。本来は余裕をもって勉強する方法ですが、意外に子どもたちを追い込んでしまう可能性があるのです。特に熱心なご両親が、飛び級をさせて、その後、このワナにはまってしまうことがあります。
「以前はできたのに、だんだん落ちてきてしまって」
という気持ちになられるかと思いますが、みんなが追いついてくるだけなのであって、その子どもが努力していないわけでもなんでもないのです。

うちの息子は、最初この予備カリキュラムを飛ばしましたが、そのときは2教科しかやらなかったので、5年生になったとき算国は6年生、理社は5年生ということになってしまいました。したがって5年生のうちはテストを受けられませんでした。のんびり屋の彼にとっては、これが良かったのではないかと思います。5年のうちに、成績で何かいわれることはほとんどなかったのですから。6年生になって、ようやく4教科が原級にもどったので、それから試験を受けましたが、算数だけはできるようになりました。(国語は悲惨なものでしたが。)ただ本人は「算数はできる」と思ったようでこれが最後まで彼を支えた感じがします。
下の娘の場合、女の子ですから、精神年齢の成長は兄より早いので、4教科とも予備カリキュラムを飛ばして、5年生の本カリキュラムに入りました。今度は4教科そろいますので、テストを受けていましたが、だいたい全体の上から3分の1と真中の間ぐらい、偏差値で55程度だったと思います。ただ子どもをほめるのには、結構いい材料で、
「1年先をやっているのだから、たいしたもんだ」
という感じになってきて、これはこれで親として良かったと思います。成績が悪くても、仕方がないねという気になってきますから。
 6年生になってからは、テストを受ける回数を減らし、大きな試験だけにしてしまいました。最初のうちは成績がいいのはわかっていても、だんだん追いつかれてしまうのは明らかなので、プレッシャーがかからないようにしようと思ったのですが、本人はあまり関係がなかったようです。逆に通塾は週2回で済みましたから、早く始めて、のんびりやるスタイルを守れたのではないかと思います。

 この方法は特にお勧めするわけではありません。なぜなら、私が塾に勤めていたので、うちの子どもたちは小学校1年生から塾に通っていたからです。小学校3年生まで週1回でしたが、週1回通えば、それだけ勉強します。ずっとそういうスタイルが生活の中にあったので、特に難しさを感じずに飛び級させられましたが、ふつう進学塾は4年生から始めるのが一般的です。それでも3か月ぐらいは塾になれるのに時間がかかるでしょう。さらにそこで飛び級という負担をさせてしまうことが子どもたちにプラスになるかどうか、わかりません。

 飛び級をさせても、全員が第一志望に合格したわけではないのです。子どもたちにはそれぞれ個性があり、それぞれ成長するペースがあります。それに合わせて学習法を考えてあげればよいのであって、何も画一的にこうしなければならないということはないのです。飛び級もひとつの選択肢であって、それはすべての子どもたちに向く方法ではないのです。もちろん、デメリットもあります。このあたりのことは、よく専門の先生に相談されると良いでしょう。

gorisan2010をフォローしましょう
コメント ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おけいこごと しつける »