天台小止観の原文についてⅡ

　この本も絶版になっていますが私は品川区立荏原図書館にお願いして国会図書館から取り寄せてもらい
ました。(｢微笑む禅」の元の本である「禅の源流をたずねて」を見つけたのもこの図書館で、大変お世話になったところです。その頃私は大田区に住んでいたのですが通勤定期を持っていたため大田区の図書館に通うよりここの方が都合が良かったのでした。安達賞の選考のため２人の広告代理店の人が大田区のアパートに
来た時もこの図書館にも行きました｡)
貸し出しもコピーも禁止で図書館内で見るだけ､という条件でした。
私は松居先生の大事な解釈の部分をとにかく確かめるのみでした｡

　　　諸悪莫作　諸善奉行
　　　自浄其意　是諸佛教

　冒頭のこの部分を松居先生は一生をかけて解釈して下さいました｡


　今、私はこの本を持っています。静枝さんの遺品整理を実弟の寛行氏がし､私に送って下さいました｡私が持っていても宝の持ち腐れですが、静枝さんの命日が近くなり､時々開いてみています。｢微笑む禅」のこの
部分の元はここだ、と確かめてみるのも楽しいです。よくぞこの難しい文を一般の衆生にわかるように解釈
して下さった､ありがとう､ありがとう､と｡

天台小止観の原文について

　「微笑む禅」を読まれた方は天台小止観の原文にも興味を持たれると思いますが、当然松居先生もそのための方策として柏樹社の初代社長に頼んで出版してもらっているのです。
その頃は当然オンデマンド印刷というものができていませんから、社長も困って「千人希望者が集まったら」ということで（中山社長は松居先生からの信頼を得たとはいえ、いろいろご苦労様されたことと思います）
実現しました。しかも版を重ねているのです。その頃の日本人のレベルがそれ程までに高かったのか、NHK
ラジオの威力なのか･･････

　田所(松居)静枝さんが寛永寺に通い、二宮守人大僧正に教えを受けながら読み下し文をつけていますが、
私には歯が立ちません。読み下し文がすでに難しいというのは困ったものですが･･･････

平成１０年４月３０日

　柏樹社の「禅の源流をたずねて」が「微笑む禅」というタイトルとなって再販されることになったのが４月でした。(本の奥付では４月３０日となっています｡)

　私が潮文社に入社した時、すでに一人の編集者が辞めることになっており、その人の送別会が３月末市ヶ谷駅すぐのレストランで行われました。
桜が美しく、最高の場所で再販の前祝いをし、別れを惜しむこととなりました。
彼は社長がこの本の再販を一読でOKしたことに驚き、この本を読み、｢いい本だねぇ～｣と言ってくれました。

　私は５月に実家に帰り､この本を母に見せました。私が随分晴れやかにしていたので母はこの仕事の意義を
分かったようです。

　３・４・５月の時期になるとこれらの一連の出来事が思い出されます。
そして５月４日は田所(松居)静枝さんの命日･･･････私にとってはうれしいこととかなしいことが混ざった、泣き笑いのような季節なのです。

昨日･今日が益子･普門院診療所に行った日でした

　田中雅博先生に｢静枝さんが話ができる内に早く来るように｣と促され､慌てて向かったのがエイプリル
フールだったと思います｡
寒くて強風で､新幹線乗り場で縮みあがりました｡

病院の施設に一泊させてもらって翌日は嘘のようにうららかでした｡施設から病院に向かう道でうぐいすが
鳴いてこんなに気持ちがいいというのに静枝さんが近く亡くなるというのは現実なんだろうかと思いました｡

命日は５月４日でしたから､亡くなる１か月前にお会いしたのですね･･････

知らせは今の著作権継承者･静枝さんの実弟である田所寛行氏より電話で受けました｡いつかその日が来ることはわかっていても、やはりおそれていたものが来た､と思いました｡

私は去年田所氏に英訳本を送り、監修者との引き合わせも終えました｡
これで静枝さんにした約束は果たしましたよ､という気持ちです｡