ケイの読書日記

個人が書く書評

エリック・キース 森沢くみ子訳「ムーンズエンド荘の殺人」

 | 翻訳もの

 探偵学校の卒業生のもとに、校長の別荘・ムーンズエンド荘での同窓会の案内状が届いた。山の上にあるムーンズエンド荘に行くには、つり橋を渡るしか方法がなく、9人の招待客が別荘にたどり着いた後、つり橋は爆破され、彼らは孤立する。そして、密室など不可能状況下で、1人また1人と殺されていく招待客たち。
 アメリカ版・雪の山荘の『そして誰もいなくなった』。

 翻訳ミステリは最近読んでないので、とても楽しめた。犯人の手がかりが、登場人物たちの会話や描写の中にちりばめられていて、フェアな作品だと思う。

 こういった外部との接触を絶たれ、犯人が自分たちの中にいるだろうという状況下の中、私だったらどういう行動をとるか、クローズドサークル物を読むといつも考える。それぞれ個室になっている自分の部屋にこもるか、互いをけん制しあいながら、一塊になって行動するか。
 だいたいのミステリは前者だけど、私は絶対、後者だね。いくら鍵がかかる部屋と言っても、その中に一人でポツンといたら、命が助かっても気が狂いそう。
 でも、多くの推理小説では、それぞれ自分の部屋にこもって用心しているはずなのに、次々殺されていく。まあ、そうじゃなかったら、推理小説として成り立たないけど。

 私だったら、トイレなども戸口まで集団で移動してもらう。たえず人の目に触れる場所に自分を置いておきたい。寝るのも広間で2~3人ずつ交代で眠る。
 そして食事。こういった作品の中で一番違和感を覚えるのが飲食。殺人鬼が徘徊している屋敷の中で、皿に盛った料理をどうして食べる? 封が切ってない、注射針の跡がない缶詰を、缶からじかに食べる。

 この『ムーンズエンド荘の殺人』の中でも、最初の遺体が転がり出てきて、その後、すぐに厨房で夕食を用意している。そして一人が毒殺されている。いわんこっちゃない!アホか!あんたらは、それでも探偵か!!

 そうそう、探偵学校という存在も不思議な気がした。でもアメリカでは私立探偵はライセンス制だから、専門学校があってもおかしくない。だけど、卒業試験に本当の事件を扱わせるかなぁ。まあ、解決できなかった15年前の卒業試験の事件が、この『ムーンズエンド荘の殺人』の伏線となっているけど。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

フカザワナオコ 「おひとりさまのはじめて料理」 角川書店

 | その他
 フカザワナオコさんのコミック「毎日がおひとりさま」「あいもかわらず毎日がおひとりさま」「いまだに毎日がおひとりさま」(主婦の友社)は、3冊とも、以前とっても面白く読んだ。
 なんといっても、この人は愛知県在住なので、私が勝手に親近感を抱いているのだ。ご近所さんかもしれないと。
 今度は角川書店か…。いやぁ、出世しましたね。フカザワさん。

 作者のフカザワさんは、1973年生まれのマンガ家&イラストレーター。実家を出て、一人暮らしをはじめて10年以上。でもお料理1年生。と書いてあるが、料理が上手でないというだけで、基本は自炊なのだ。ご飯はちゃんと炊いて、おかずはテキトーなものをササッと作る。そして、夜は晩酌が何よりも楽しみ。365日アルコールは欠かさない。といってもほとんど発泡酒だけど。
 独身だったら、誰でもそんなもんだって。凝ったものは作らないよ。ホームパーティが趣味の人なら別だけど。自分を責めないで。
 とにかく彼女は「一人暮らしだし今まで料理なんてしなくても別にいいやって思ってたけど、ここまで何もできずに年だけ取るのは、やばいような気がしてきた」「もしも、このままずーっと一人で生きるってなった時、80歳になった時点で、歯もまだあるし内臓も元気ですと、せめて健康面だけは死守したい」と一念発起して、料理に取り組むことになる。
 
 ハンバーグ、出汁、肉じゃが、野菜炒め、カフェ風ワンプレート、乙女スイーツ、唐揚げ、常備菜、そしてカルフォルニアロールとテリーヌを作って、友人宅の持ち寄りパーティに持って行き大好評。すごいなぁ、めきめき腕を上げたね。
 
 料理のレシピも描いてあるし、料理豆知識や簡単テクニックも書かれてあるし、彼女のペットの金魚2匹のツッコミも面白いし、何より読んでいて楽しい。


 話は大きく変わるが、ドラマはめったに見ない私だけど『東京タラレバ娘』だけは見ている。(東村アキコ原作)
 アラサーの独身3人娘の恋と仕事と友情の話なんだけど、この3人娘が、たえず居酒屋で女子会をやってるんだ。エンゲル係数、めっちゃ高そう!! お金は大丈夫?!って思っちゃうよね。特に主人公の倫子はフリーの脚本家で、現在、仕事もなく家賃の支払いにも困っているくらいなのに、スーパーでキャベツ半玉148円を高いと言ってカゴに戻すほどなのに、スナックや居酒屋でご飯食べてる。自炊すればいいのに。友人を自宅に招いて、家飲みにすれば、すごく安くすむけど。
 まぁ、脚本家という仕事柄、人気の飲食店で情報収集も必要なんだろうけど、お財布がもたないよ。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

伊坂幸太郎 「フィッシュストーリー」

 | 伊坂幸太郎
 『フィッシュストーリー』の内容紹介で、「最後のレコーディングに臨んだ売れないロックバンド。いい曲なんだよ、届けよ誰かに。テープに記録された言葉は未来に届いて、世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が胸のすくエンディングへと一閃に向かう」と書いてあったので、すごーーーく期待して読んだが、たいして胸はすかなかったなぁ。設定は面白いがリンクが足りないと思う。でも、これって映画化されたんだよね。確か。

 他に『サクリファイス』『ポテチ』に、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍と書いてあるが、この本業・空き巣で、たまに探偵をやる黒澤って、そんな人気あるの? ちょっと貴志祐介の防犯探偵・榎本を思い出した。あの人も、本業は泥棒だから。
 この黒澤は、容色が整っていて、性格もヒドくないが、とらえどころがない。ハッキリ言うと魅力に乏しいような気がするなぁ。
 考えてみれば、伊坂幸太郎の主要キャラって、美男美女が多いような…。(たいして読んでないが)書きにくくないかな。美男美女キャラって。

 『動物園のエンジン』は…叙述トリックが仕掛けられていて「彼」が自分の思い込んでいた人物とは全く違うのには驚いたが、それ以外は無理があると思う。


 以上、あれこれマイナスの面ばかり書いた。確かに、伊坂幸太郎にしてはイマイチというだけで、水準高い作品集。
 一番良かったのは『サクリファイス』。黒澤が、人を探すため宮城と山形の県境にある小さな村に出掛けるが、そこには「こもり様」という奇妙な習慣が残っていた。現在は洞窟にこもるだけだが、昔は生贄をそこに閉じ込め、岩でふたをして神にささげた。
 人柱などもそう。この生贄の風習は、全国各地にあったろうが、その選び方は…。そうとう恣意的な物だったろうね。だって、村の有力者の息子が生贄になったなんて話、聞いた事が無い。
 権力者からみて、邪魔もの、死んでほしい者をを生贄に祭り上げるのだ。「葉を隠すなら森の中」じゃないが、殺したい相手がいるから、生贄をでっち上げた、なんてことが起こっただろうと推測される。
 不都合な真実を、宗教がらみでカムフラージュするって、よくあるだろうね。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

泉鏡花 「高野聖」

 | その他
 「高野聖」は日本文学史に残る名作なので、大昔に読もうと試みたが、途中で挫折したことを覚えている。やっぱり、明治時代の小説は読みにくい。
 でも、それではいけないと再チャレンジ。最初の方は我慢しながら読んでいたが、結構、通俗的で面白かった。適度なユーモアもあるし。
 
 内容は有名なので知っていた。
 年若いお坊さんが、飛騨の山を越えて松本に行こうとする時、深山で、色っぽい中年増と、知的障害がある年下亭主が暮らす一軒家にたどり着く。あまりに疲れていたので、一夜の宿を乞い、泊めてもらえることになる。
 家の下を流れる小川で、お坊さんは汗を流すが、女が背中を流したりさすったり、いろいろもてなしてくれる。若い僧はよろめきそうになるが、なんとかふみとどまる。

 夜になると、この一軒家の周囲に、おびただしい数の猿・ヒキガエル・コウモリ・羊・馬・むささび・牛・鳥などが集まり、ぐらぐらと家を揺らすほど。まるで畜生道の地獄絵。その一夜の怪奇陰惨を書いてある。


 この獣たちの前世は、お察しの通り、色っぽい中年増の色香に迷った者たち。特に、市で売り飛ばされようとする馬は、このお坊さんをバカにした富山の薬売り。宿場の飯盛り女が大好きといったタイプの男だったので、すぐに中年美女の罠にはまり、馬にされてしまった。
 馬になっても、女への執着は消えず、テコでもここを動くか!売られてたまるか!と必死に踏ん張っていたが、女が馬の前で裸になると、ふらふらくらくらと身震いし、すぐさま馬子に引かれていった。情けない。それだけ女の魔力が凄いんだろう。


 考えるに、この泉鏡花という人は、年上の女性が好きなんだろうね。清らかな乙女ではなく、芸者さんやお女郎さんといった玄人好み。

 話は大きく変わるが、この若い僧が一軒家にたどり着く前、巨大な蛇に何度も遭遇し、それもかなりゾッとしたが、それ以上に気持ち悪かったのは、大きな森の中の出来事。上から何かポタポタ落ちてくる、何だろう?木の実かしら?と振ってみたが、くっついて取れない。掴もうとすると、ずるずるすべって指の先へ吸い付き、ぶらさがる。みるみるうちに縮みながらブクブク太っていくのは、生き血をすう山蛭。
 木の枝の至る所に蛭がぶら下がり、恐怖のあまり叫ぶと、蛭の雨がザーッと身体に降りかかってくる。うげーーーーっっ!!!

 本当に恐ろしい。こんな所が、昔は飛騨の山奥にあったんだろうか? 恐ろしや。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

桐野夏生 「錆びる心」

 | その他
 表題作を含め6編の中短編集。みな粒ぞろいで読み応えあるが、特に印象に残ったのが「月下の楽園」。

 荒廃した庭園に異常に惹かれる35歳の男を主人公にした作品。
 彼は、きちんと手入れされた名園には魅力を感じない。かつて栄華を誇ったであろう名家が没落し、昔は大勢の客が愛でたであろう庭が、荒れ果てているのが好きなのだ。そういった物件を探し出し、その離れを借りるのに成功したが、離れと母屋の屋敷との間に高いコンクリートの壁があるので、庭を散歩するどころか、眺めることもできない。しかし、どうしても壁の向こう側の庭に行きたい男は、壁の際をうろついていると、戦時中に作ったと思われる防空壕の跡を見つけ出した。そして…。

 悲劇的な結末で終わる。自業自得だという人も多いだろう。
 しかし、私がショックを受けたのは、その結末ではなくて、この短編の中に「廃墟が好きな人は、死体愛好家だ」という意味の記述があったのだ。がーーーーん! 
 うっそぉぉぉぉ!!!

 廃墟マニアって結構いると思うけどなぁ。誰でも、友達と一緒に夕暮れ時に、町はずれにある廃屋を探検したことってあるんじゃない?!
 「なつくさや つわものどものゆめのあと」だったっけ?かって素晴らしく壮麗だったものが、落剝した姿って風情があってグッとくるけどなぁ。

 以前、クリスティの「スリーピング・マーダー」を読んでいた時、その中に出てくる広大な敷地だが荒れ果てた庭園、特に朽ちた温室の描写が好きだったなぁ。特にイギリスは、ガーデニングが盛んな国だから、お金持ちは庭師を何人も雇って、素晴らしいお庭と温室を整え、お客さま達を招待したんだろう。

 この「月下の楽園」の寂れた庭の描写も素晴らしい。特に、雪の降った後、月が出て、雪景色の庭を青白く幻想的に見せている。そういえば、雪見酒っていう娯楽も昔はあったそうな。時代劇に出てくる。雪景色のお庭を眺めながら、熱燗をキュッと一杯。


 日本庭園って手入れを怠ると、すぐに荒れるだろうね。日本家屋もそう。なんといっても木と紙の家だから。そして、ちゃんと維持しようと思うと、べらぼうにお金がかかるのだ。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

伊坂幸太郎 「アヒルと鴨のコインロッカー」

 | 伊坂幸太郎
 タイトルが変わっているけど、伊坂幸太郎だからハズレはないだろう、創元推理文庫なのでミステリのつもりで読んだが…これって純愛小説?!


 大学に入学するため、仙台にやってきたばかりの椎名は、アパートの隣人・河崎の口車に乗せられ、書店を襲う羽目になる。モデルガンを手に、書店の裏口に立ち、店員が逃げ出さないようにするのだ。

 次に、いきなり2年前の話になる。
 琴美という若い女の子は、ブータン人の留学生・ドルジと一緒に暮らし始め、ペットショップに勤めている。二人は偶然にも、犬猫殺しの犯人を目撃してしまい、琴美はつけ狙われる。そこに、琴美の元カレ・河崎がからんでくる。

 
 この椎名の視点から書かれた現在と、琴美の視点で書かれた2年前の出来事が、交互に登場し、どういうふうに結びつくんだろうと、私もビクビクしながら読み進める。

 なんせ、このペット殺しが本当に気持ち悪いんだ。最初は、野良猫を捕まえてはバラバラにし、それだけでは飽き足らず、ペットショップの大型犬までも盗み出し切り刻み、次に人間も殺したいという願望をもっているキモイ男女の3人組。
 彼らは、犬猫を殺しても、キャンキャンと鳴くだけで「助けてくれ!」と命乞いしないので、つまらない。人間に命乞いさせたいらしい。そこで、琴美が彼らのターゲットになる。

 琴美も、危機感が薄いというのか…。読んでいてイライラする。
 定期を落として、住所が犯人たちに分かってしまい電話もかかってくるのに、その音声の録音を消すなんて、うっかりにもほどがある。
 狙われているのが分かっているのに、自宅がどこかも知られてしまったのに、夜道をぼんやり歩くだろうか? 私だったら、いや、ほとんどの人が怖くて自宅に帰れないよ。実家に戻るか、友人知人の家にしばらく泊めてもらうかするね。

 この犯人たちも、知能犯という訳でもないのに、なかなか警察に捕まらないのは、どういう訳? それもイライラするなぁ。

 最後に、本屋襲撃事件と、2年前のペット殺し事件は結びつく。
 ブータンの宗教観では「死んでも、生まれ変わるだけだから悲しくない」はずだが、悲しい結末。でも、3人は来世でまた出会うんだろう。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

細川貂々 「タカラヅカが好きすぎて」

 | その他


 タカラヅカと言えば思い出すなぁ。
 小学校高学年から文通していたペンフレンドが大阪にいて、遊びに行った時、友達から「どこか行きたい所、ある?」と聞かれ、「タカラヅカを観たい!」と答えた。そしたら友達が「えーーー!タカラヅカって、そんなに有名なの?」って驚いていたことを覚えている。45年くらい前。
 彼女は、タカラヅカって、関西に知られているだけで、他の地域では全くの無名だと思っていたらしい。結局、宝塚市への行き方を彼女は知らなかったので行かず、かわりに吉本新喜劇を観た記憶がある。
 その後、再び彼女の家に遊びに行った時、タカラヅカに連れて行ってくれた。たぶん、宝塚大劇場で観たんじゃないかな?
 私は大感激、彼女は「日本人って西洋の物まねが上手いなぁ」と妙なところに感心していた。

 私の高校時代になると、『ベルサイユのばら』の大ヒットで、タカラヅカの人気は沸騰! チケットも取れないし、宝塚音楽学校の入試がべらぼうな倍率になって、ニュースでもたびたび取り上げられた。
 そうそう、若い方たちは知らないかもしれないが、『ベルサイユのばら』って映画化されたんだよ。もちろんオール外国人キャストで。

 その頃と比べると、今は人気は落ち着いているね。でも、やっぱり好きな人は好きみたい。先日、昔の同僚が、和央ようかさんの追っかけをやっていたのが判明! 今は退団して結婚したので寂しいと言っていた。


 私は…好きは好きだが、適度な距離を取ってるなぁ。贔屓さんもできなかったし、お芝居に感情移入もできない。ただ、レビューは本当に華やかで夢の世界にいるみたいだった。

 タカラヅカにハマって破産するだけじゃなく、犯罪に手を染める人もいるらしい。全国ツアーにくっついて追っかけするのも、お金がたくさん必要だし、自分の好きなスターに高価なプレゼントをせっせと贈り、お金が無くなって、勤め先のお金に手をつけたという犯罪も過去にはあったようです。


 細川さんは、子供の頃からファンだったという訳ではなく、ファン歴は10年ほど。でも、春野寿美礼さんが大好きになり、退団までの残された日々を思い切り全力で追っかけした日々を描いています。
 タカラヅカが好きすぎて、東日本大震災の後、宝塚市に引っ越したそうです。宝塚市かぁ…いいかも。ゆったりした子育てができそう。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

益田ミリ 「OLはえらい」

 | 益田ミリ
 またまた益田ミリ。やっぱり売れてる人の作品は面白い!!

 益田さんは、上京するまでの6年間、地元の大阪でOLさんをしていた。その時の経験をベースに描き下ろした、32歳の時の4コママンガ作品集。

 女主人公ロバ山ロバ子は、大阪の老舗の会社の営業3課で一般事務をしている。ものすごくやりがいがある訳ではないが、どうでもいい仕事でもない。何といっても古い会社なので、管理職はみな男性。長年勤務している女性もいるが、出世には全く関係ない。
 でもね、社員食堂があるので、結構な大手だと思う。転勤はもちろん男子社員だけ、そして一番いいなと思うのが、女子社員は定時で帰れること!残業はまず無いらしい。お給料は少ないらしいが、これ、大事なポイント。電通に教えてあげたい。
 まあ、言い換えれば、大事な仕事を任されていないという事なんだろうが。

 でも、古き良き時代だよね。今は、一般事務で正社員という求人は、ほとんど無いんじゃないだろうか? どんどん派遣さんにそういう仕事は移っている。

 そして、一番ビックリしたのが、生理休暇を女子社員の皆さんが、堂々と取っている事!!! 1990年代の事なのに?! 驚かない?

 私が結婚前に働いていた所も、生理休暇は制度としてはありました。でも…使ってる人なんか、いなかったよ。先輩が使わないと下っ端は使えない。このロバ山ロバ子さんは、先輩がきっちり生理休暇を取っている素晴らしい人だったので、心強かったようだ。

 ロバ山さんの人柄が良いってこともあるが、上司も同僚も、とても良い人で、会社の慰安旅行や忘年会・新年会・歓送迎会などなど、しっかりあります。それは楽しみでもあるが、上司には気を遣うし、会費は徴収されるので、お金はどんどん飛んでいく。痛しかゆしです。

 この作品だけでなく、益田さんのコミックエッセイ全般の特徴なんだけど、ドロドロが無い! こういったOL物って、給湯室内でのイケメンを巡っての女同士のいさかいとか、不倫の噂で盛り上がるとかがメインの物が多いのに、このロバ山ロバ子さんとその友人たちの清く正しい事!! 素晴らしい。尼寺にいるみたい。
 ロバ山さんも実はそれを気にしていて「家族に彼氏いないんだろうな、と思われてるだろうな」と少し落ち込んでいる。
 でも、こんなアットホームな会社に勤めているんだったら、そのうち上司が誰か紹介してくれるよ。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

益田ミリ 「僕の姉ちゃん」

 | 益田ミリ
 すっごく面白い!! 益田ミリさんは『すーちゃん』シリーズで有名だが、この『僕の姉ちゃん』も、それ以上に面白いと思う。

 新社会人らしい僕と姉ちゃん(30歳)の二人暮らしなので、先に就職して東京に出てきていた姉ちゃんのアパートに、新しく社会人となった弟が、次の住居を見つけるまで居候しているという設定かな?と思っていたが、どうやら二人は自宅住まい。両親は海外赴任していたようです。マンガの最後に戻ってきます。

 つかの間の二人暮らしの間、2人は会社や仕事、上司や同僚、恋愛や結婚や友情、ファッションなどなどについて、おしゃべりします。それが掛け合い漫才みたいで面白い!!
 なんとなく、群ようこさんと弟さんの事を思い出しちゃったなぁ。群さんが家を出たのは24歳の時(弟さんは4歳年下)それからずっと離れて暮らしているけど、もし同居していたら…こんなおしゃべりしていたのかも。

 それにしても益田さんは売れっ子だけあって、本当に女の心情を掬い取るのが上手。例えば…姉ちゃんのセリフ「女って、かわいいが正解みたいな中で大きくなっていくでしょ」「けど、正解なんて誰もが出せるわけじゃない」「だからせめて持っていたいんじゃない?」「簡単に手に入るかわいいいを」と、きれいにネイルした爪を見て言う。
 結構、シビアな事も言ってる。「人に見下されたことって」「あとからジワジワくるのよねーーー」「自分の心の中だけでやってりゃいいのに」「わざわざ、今、見下しているぞって光線送ってくるヤツっているよね」「手に取って捨てたいよ、こういう気持ち」「捨てたところを確認できないから」「人は苦悩するわけよ」

 同じように見下された人にも2種類いる。反撃した人は、恨みを後にさほど残さない。でも、見下されたと感じても、穏便に済まそうとへらへらして反撃できなかった人は、何年たっても悔しさがぶり返す。フラッシュバックのように。嫌な思い出が蘇り、ムカムカする。周囲の人が何年前の話なの?ってあきれるくらい。
 自分自身、その負の感情を持てあましている。捨てられるものなら捨てたいよ。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

多和田葉子 「雲をつかむ話」

 | その他
 「雲をつかむような」ではなく「雲をつかむ」話。年代や場所がくるくる変わって、戸惑う。純文学の作家さんなので、文章が格調高すぎて、軽く読み飛ばすことができない。

 
 日本人だがドイツ在住の小説家が、獄中の人から面会を求められたり文通を依頼されたりファンレターが来たりすることは、一般の人よりも多いだろう。しかし、後に犯人として逮捕された人と、それとは知らず言葉を交わす機会が、そんなに多いとは思わないけどなぁ。
 この本に登場する、罪を犯した(とされる)人々には、何かしらのモデルがいると思うんだけど、それにしては数が多すぎる。何人かは、多和田さんの完全なフィクションなのかなぁ。そんな事を考えながら読んでいた。

 人を殺して逃げ回っていた男が、『本を売ります』という看板を見て、作家の家に一時的に逃げ込む話。
 思想的な問題で、警官を撃ってしまい、ジャマイカで暮らすドイツ人作家。
 詩の朗読会に招かれ、紹介された牧師夫人は、夫に殺されてしまった。
 何度も無賃乗車して、その請求書を無視していたら、逮捕されてしまった若い男。
 クリスマスに招かれた家の家政婦さんは、旦那を殺して服役し、最近出所したばかりのイタリア女性。
 かつてのルームメートだったベニータとマヤの間の確執。マヤはベニータの胸を刺す。


 もちろん自分も、いつ何時、罪を犯して塀の中の住人になるか分からないから、大きな事はいえない。しかし、ドイツは死刑がないし、複数の人を殺しても15年くらいで出て来るらしいし、刑務所改善運動というのが盛んで、刑務所の中より娑婆で更生させようという考えらしく、日本よりはうんと世の中の犯罪者率が高いのかもしれない。
 でも…幼女レイプ犯が近所にいるかもしれないと思うと、穏やかな気分ではいられないね。


 話は大きく変わる。ドイツ(というかヨーロッパ)では、文学祭(文化祭じゃないよ)や詩の朗読会が人気あるんだね。日本では映画祭はよく聞くけど、文学祭は聞いた事ない。それとも私が知らないだけで、あちこちで開催されているんだろうか?
 そして、詩人が、文学関係者の中で一番のステイタス。小説家より数段上らしい。「自分の職業は詩人」という人がいたら、私は絶対その人の顔を見る。どんな人が詩人なんだろうって。まだ歌人とか俳人という方が、受け入れやすい。自分の中では。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加