ケイの読書日記

個人が書く書評

細川貂々「ツレがうつになりまして」

2007-08-31 11:14:02 | Weblog
 最近、うつ病関係の本を読んでいるのには理由がある。それも専門的なものではなく、家族にうつ病の人がいて、どう対応したか、という素人の体験記のようなもの。

 実は1年ほど前の事だろうか、ダンナが「仕事の能率が極端に落ちた。オレはうつかもしれない」と私に告げたのである。
 その時、私は大変驚いた。ダンナは全くうつ病になりそうな人と正反対の性格だと思っていたからである。

 わがまま、自己チュー、自分の都合のいいことしか考えないB型人間。アンタがうつになるなら、私はうつうつうつ病になっちゃうよ、と心の中で毒づいた。もちろん口には出さなかったが。

 仕事の能率が悪くなっている事は、私も気づいていた。しかし、それは年齢のせいだろうと考えていた。だって亭主は、わたしより9歳年上の団塊の世代なのである。

 しかし、どきんとしたのも事実。ダンナの実姉がうつ病で通院していると、聞いていたし。
 「お医者さんに行って来たら」と勧めても「イヤだ」で終わり。

 仕方ないので、私も「売り上げ」「納期」といったプレッシャーになるような言葉を極力いわず、ほっておいたら、自分の好きな仕事だけをするようになって落ち着いた。


 でも、心臓の具合が悪い、と総合病院で診察してもらった2日後に、富士山に山登りに行ってしまうから、自分勝手だ、と私が怒るんだよね。



 さて、この細川さんのマンガ「ツレがうつになりまして」は、細川さんのご主人の職場で人員整理があり、おかげで仕事が大変ハードになったご主人はうつ病になってしまい、会社を退社。
 それからの一進一退の療養生活がコミカルタッチに描かれています。
 もちろん最後には「少しずつ上を向いて歩こう」「ありのままを受け入れる」と明るい展望がみえています。よかったね。ダンナさん。

 以前読んだ「ダンナがうつで死んじゃった」と全く違った終わり方。これはそれぞれの家族構成に原因があると思う。
 細川さんちは、奥さんとダンナさんの2人家族。奥さんはマンガ家で収入あり。 「ダンナがうつで死んじゃった」の方は、ダンナさん、奥さん、中学生と小学生の2人の子ども。奥さんは専業主婦で収入なし。
 ダンナさんも先のことを考えると、おちおち療養も出来なかったんじゃないだろうか?
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島田荘司「Pの密室」

2007-08-26 20:01:23 | Weblog
 名探偵・御手洗潔は女性に絶大な人気があるようだが、私はそんなに好きというわけではない。だから、さほど期待しないで読んだのだが、なかなか面白かった。
 
 キヨシちゃんが幼稚園児の時の事件「鈴蘭事件」とキヨシ君が小2の時の事件「Pの密室」の2編が収められている。

 ここまで幼いと、御手洗潔の子ども時代としてではなく、江戸川コナン君とオーバーラッピングしてしまう。どうしても。
 読んでいて、幼稚園児のキヨシちゃんが「でも、もしぼくが本当のことを言っても、誰が信用するの? 幼稚園児の言うことだよ。証拠がなくなったってことが一番だいじだ」というセリフなど、自分の頭の中でコナン君の声に自動吹き替えされている。

 しかし、コナン君は一応高校生の工藤真一が小さくなった仮の姿なんだから、すごい推理力を発揮するのはまだ分かるけど、正真正銘の5歳児のキヨシちゃんがねぇ…。いくらなんでもちょっと無理な設定ではないだろうか?


 それにしてもキヨシちゃんの血統の凄いこと!! 父親は早死にしたけど官僚エリートで、母親は元大名家の出身、数学者で大学教授。
 母方の祖父は明治政府の要人。母の姉は女子大の理事長。
 いくらなんでも、持ち上げすぎじゃない?

 デビュー作「占星術殺人事件」の時の、うらぶれた占い教室の冴えない御手洗先生からは想像できない。それはそれで魅力があったのに、残念。えらくなりすぎちゃって!

 でも、このぐらい出生のランクを上げておかないと、ファンが納得しないのだろう。
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「ワーキンブプア」(日本を蝕む病)

2007-08-21 10:29:26 | Weblog
 あまりにも暑いので、涼もうと思って入った本屋でこれを見つけた。
 NHKスペシャルをテレビで見ていたので買う必要はなかったが、この本を買うことによって少しはワーキングプアの人にお金が渡るかしら(ンなはず無いね)と期待して、大枚\1260をはたいて買った。


 うーん、本当にほんとにホントに気が滅入りますね。

①全給与所得者の5人に1人が年収200万以下。(2005年統計)
②15~34歳の非正規雇用者の割合 27.2% (2006年統計)
③女性給与所得者の約4割が年収200万円以下 (2005年統計)
④年金をもらえない高齢者 公的年金受給権なしの者 約444000人(2004年統計)


 一体、いつから日本はこんな事になってしまったんだろう。
 スポット派遣って、信じられないです。学生アルバイトならいざ知らず、既卒者をスポット派遣で働かせて、その先どうするんだろう。
 社会保険料を払えない大勢の人間を作り出すという事は、将来、大量の生活保護受給者が出てくるという事。
 そこらへんを分かっているんだろうか?
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酒井順子「先達の御意見」

2007-08-16 14:38:02 | Weblog
 「負け犬の遠吠え」で一躍時の人になった酒井順子の対談集。対談相手10人のうち1人は男であと9人は女。その顔ぶれがすごい。

 阿川佐和子、内田春菊、小倉千加子、上坂冬子、瀬戸内寂聴、田辺聖子、林真理子、坂東眞砂子、香山リカ、ね、すごいでしょう?


 圧巻は、上坂冬子との対談。
「どいつもこいつも何れみんな平等に死んでいく」
「取り返しのつくことは努力で解決。つかないことは忘れる事で解決」
 素晴らしいお言葉です。


 印象に残ったのは、林真理子との対談。
「私、不思議なんですよ。酒井さんみたいな『高級負け犬』って、ちゃんと努力していい大学に入って有名企業に就職した人なのに、どうして結婚という努力だけはしないのだろうって」
「結婚にも、大学受験と同じような努力をすべきなんですよ、テキストに従って頭を使うべきです!」
 さすが、林真理子。


 ちょっと驚いたのは、香山リカとの対談。
 三砂ちづる著「オニババ化する女たち」の事が槍玉にあがっていてボロクソにこきおろしていた。でも、話題になった本で私も読んだけど、現代では言いにくくなっていることをハッキリ書いていて、売れるだけの事はある、と思ったけどなぁ。
 香山リカは、あまり人を悪し様に言わない人だけに、意外だった。
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杉山春「ネグレクト(育児放棄)」

2007-08-11 16:22:40 | Weblog
 皆さんは下記の事件を覚えていらっしゃるだろうか?

 2000年12月10日、愛知県武豊町にある大手鉄鋼メーカーの社宅の一室で3歳になったばかりの女の子 村田真奈ちゃんが段ボールの中に入れられたまま、ほとんど食事も与えられず、ミイラのような状態で亡くなった。

 北側にある3畳間のわずかな空間におかれた、底の抜けた段ボール箱の中に、真奈ちゃんは両膝を曲げた形で入れられていた。
段ボールの箱にはタオルケットが敷いてあり、上には使い古しの段ボールがかぶせられていた。
 オムツは糞尿で膨れ上がり、腰から太ももの辺りまでが便にまみれ、強い悪臭を放っていた。

 両親はともに21歳の夫婦だった。なぜ両親は女の子を死に至らしめたのか、女の子はなぜ救い出されなかったのか?



 この事件は、私の住んでいる地域から比較的近いところで起きたので、地元新聞が特集を組んだりして、関心は高かった。
 ネグレクト(育児放棄)は、さほど珍しい事ではない。しかし、ここまで悲惨なネグレクトは記憶にない。

 たしかに真奈ちゃんの両親は若すぎた。でも、出来ちゃったので仕方なく結婚したのではなく、望まれて真奈ちゃんは生まれた。
 それに両親とも地元の人で、両方の祖父母もすぐそばに住んでおり、複雑な事情を抱えていて裕福ではないとはいっても、健在であり、全員が真奈ちゃんの誕生を心から喜んでいたのである。

 育児に不慣れな母親に代わり、真奈ちゃんを預かったり、一緒に買い物に行って
おもちゃや洋服を買い与えたり、ファミレスで食事をしたり、ごく普通の幸せな家族だったはずだ。

 それが一変するのは、真奈ちゃんが10ヶ月の時、急性硬膜下血腫で入院し「後遺症が残るかもしれない」と医者から言われた時である。
 なぜ、急性硬膜下血腫になったかといえば、虐待ということも考えられるが「乳幼児揺さぶられ症候群」という可能性もあり、実際、この事故の直前、真奈ちゃんの父親が、真奈ちゃんを逆さにして足を持って時計の振り子のように揺すって遊んでいたらしい。
 ただ、それが問題視されることはなく、不安を残したまま、真奈ちゃんは退院した。


 発育の遅れるわが子を、両親は疎ましく感じ、次に生まれてきた長男をかわいがるようになる。
 弟に親の愛情を奪われたと感じた真奈ちゃんは、赤ちゃん返りをし、弟にイジワルをするため、ますます両親は怒る。

 あまりに痩せこけた孫を心配し、おばあちゃん(真奈ちゃんの父方の祖母)が2ヶ月ほど預かって育てると、ふっくらして元気になった真奈ちゃんを、真奈ちゃんの母親は拒絶する。

 ここらへんの母親の心理というのは、子どもを持った人なら誰でも分かるだろう。下の子が生まれたため上の子への愛情が失せたと感じる母親は多いし、姑が孫をかわいがると、子どもを取られたように感じ、あたりちらす母親は、日本国中ドッサリいるのだ。


 ただ、段ボールに入れて蓋をし、食事を与えず餓死させる親は他にはいないだろう(いないと思いたい)
 たしかに両親も複雑な家庭に育ち、気の毒な面もある。だけど、家族の病理と無縁の者など、はたしてこの世にいるだろうか?

 外から見れば恵まれた家庭も、なにかしらの問題を抱えているのだ。
コメント (2)
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