ケイの読書日記

個人が書く書評

平安寿子「風に顔をあげて」

2011-02-28 11:41:41 | Weblog
 この平安寿子さんの文章は、雑誌アエラで度々読んだ事があって、名前が変わっているので印象に残っている。(あすこ、と読む)
 それが、偶然、図書館の書架で目に付いて借りる事に。なんだ、この人、小説を何冊も出しているのだ。

 物語は、25歳のフリーターの女の子の日常を描いている。父親が女性関係が原因で家を出てしまったので、経済的な事情で大学に進学できなかった風実(ふみ)は、持ち前の明るさと行動力で、高校卒業後、自分でアパートを借り自活するようになる。(エライなぁ!)
 自称ボクサーの彼、ゲイに目覚め高校を辞めたいと言う弟、家を出て行ったダンナの愚痴話を際限なく繰り返す母。
 全く頼りにならない彼らを何とか支えようと奮闘するふうちゃん(風実)だが、自分自身、安定した正規の職に付く事が出来ず、次々に転職を繰り返す自分にいい加減嫌気がさしている。

 自称ボクサーの彼は、ボクシングをあきらめ、夜間託児所の保父さんになるが、そこに子どもを預けているキャバクラ嬢と仲良くなり、ふうちゃんはふられる。
 
 ふうちゃん、かえってよかったよ。自分の事たいして好きでもない男を追いかけて何になる!便利に使われるだけだよ。さ、一通り泣いたら、次いこう!次!若さを浪費しない!!

 最後には、ふうちゃんが栄養士や調理師の資格を取って、身体にいいオーガニック料理を一生の仕事にしようと決意する所で終わる。

 ふうちゃん、頑張れ!!って思わず声を掛けたくなるような小説です。
コメント (1)
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二階堂黎人「誘拐犯の不思議」

2011-02-22 09:55:35 | Weblog
 1987年、水乃サトル23才。留年して大学5年生だった時の事件。
 当時サトルがつきあっていた女子学生が、10ヶ月ほど前に誘拐された事を告白。警察には連絡せず身代金を払ったため、彼女は無事救出された。犯人は捕まらず、事件は未解決のまま。
 恋人が再び襲われないよう、サトルは捜査に乗り出す。

 サトルだけでもチャラいのに、その上、シオンというメイクアップアーチストを目指している専門学校生がワトソン役で登場するので、チャラ男が満載でげっそり!
 (サトルも就職して旅行代理店勤務になると、少しチャラ度が薄れるけど)


 しかし、さすが二階堂黎人の作品らしく、見事なアリバイトリックの本格モノ。でも肝心な所がどうも腑に落ちないな。
 「音大生誘拐事件」と「ホームレス殺人事件」をなぜリンクする必要があるのかな。それぞれに独立したしっかりしたトリックがあるのに。
 リンクさせる事によりそれぞれの事件の印象が薄まった気がする。
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フカザワナオコ「毎日がおひとりさま」

2011-02-17 15:19:21 | Weblog
 『ゆるゆる独身三十路ライフ』というサブタイトルがついている爆笑その後しんみりコミック。

 清く正しく美しく、という岸本葉子さんの独身女性ライフをいつも読んでいるので、フカザワさんのあまりのグータラぶりに驚いた。
 いっくらなんでも毎晩ビールで晩酌って、ゼイタクすぎやしませんか?
 そりゃ大きな仕事が終わったらビールで乾杯ってのなら分かりますが、毎晩とは…。
なんで発泡酒にしないのかな?味が違うから?
 でも、フカザワさんはカップ麺を高いといって食べず、袋入りインスタントラーメンをお鍋で作るほどの節約家なんですよ。
 うーん、よく分からん。一点豪華主義ってヤツでしょうか?

 しっかし36才フリーランスのマンガ家・イラストレーターで貯金0ってヤバかね?
 サナダさんを見習って欲しい。病気になっても入院できないよ。
 まぁ、ご実家が裕福みたいで、ナオコさんの将来を心配して、親が年金型保険を掛けてくれているようだ。(ナオコさんが60才になったら毎年37万円入ってくる)
 ああ、親はありがたいなあ。


 なんにせよ、この『毎日がおひとりさま』は売れているらしく、シリーズ化されて第二巻も出ているようなので、フカザワさんにもお金ががっぽり入ってきたと思われます。
 めでたしめでたし。
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泡坂妻夫「亜愛一郎の狼狽」

2011-02-12 18:58:50 | Weblog
 先日読んだ「DL2号機事件」が、とっても風変わりで印象的だったので、このシリーズを続けて読んでみたいと思っていた。予想以上。秀作揃いのバリバリの本格モノ、8編が収められている。

 みな面白いが、私は「掌上の黄金仮面」と「ホロボの神」が特にいいと思う。
 ファンタジックというか寓話的な雰囲気が(解説にも書かれているが)ブラウン神父シリーズに似ている。

 名探偵・亜愛一郎(あ あいいちろう)は、背が高く端正な顔立ちの青年で服装もパリッとしている。雲や虫、化石など、あまりお金になりそうも無いものを撮るカメラマンだ。
 見た目はいいが運動神経はまるでダメという彼が、抜群の推理能力を発揮して何事件を次々解決していく。
 しかし、事件解決の糸口が頭にひらめくと、亜は目を白目にして固まってしまうし、登場人物の名前はヘンテコな当て字で読みにくいし、「三角形の顔をした洋装の老婦人」がストーリーには関係なくいつも出てくるし…。

 読んでもらえば分かるが、不思議な読後感。

 名探偵・亜愛一郎の内面の感情も全く書かれておらず、彼に感情移入をしようとしても出来ない。
 そもそも、そういったタイプの作品ではない。推理パズルとして読めば一級の作品集。
コメント (4)
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宮部みゆき「R.P.G.」

2011-02-07 09:43:24 | Weblog
 先日読んだ『楽園』が、すごく面白かったので、今度も同じ宮部みゆきの家族をテーマにしたものを、と思い手に取ったが…つまらなくはないが、雑な気がする。宮部みゆきにしては。期待しすぎ?

 48歳の会社員が、自宅近くの新築中の住宅の中で刺殺された。その3日前に、女子大生がカラオケボックスで絞殺される事件が起こっていた。
 全く別の事件と思われていたこの二件には、実はつながりがあった。それぞれの現場に、特殊な青い繊維が残されていたのだ。

 殺された48歳の会社員は、実際の家族の他にネット上に擬似家族を持っていた。



 女房とは冷戦状態、娘は冷たい目で自分を見る、とっくに家族は崩壊している、離婚寸前とふれまわり、女の人の同情を引き親密になろうという手は古典的と感じるが、結構効果的なんだね。
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