ケイの読書日記

個人が書く書評

都筑道夫「最長不倒距離」

2010-05-29 09:41:03 | Weblog
 幽霊が出るのが売り物の温泉宿から「どうゆうわけか幽霊が出なくなったので、また出してくれ」と依頼された、心霊探偵・物部太郎(ものぐさ太郎)とアシスタント片岡。
 ものぐさ太郎はスキーが目的、後はコタツで丸くなって過ごし、依頼はアシスタントが片付けるという予定だったが、野天風呂で女性の全裸死体が発見されたり、殺された女性から太郎に電話がかかってきたりで大騒ぎ。
 しかたなく事件にかかわる事になり…。

 設定やストーリーは面白くてどんどん読めるが、なんせ肝心の殺人事件がパリッとしない。
 第2の殺人で被害者はダイイングメッセージとして五七五七七の狂歌を残すが、加害者の顔を見てるんだから、いくらなんでも名前の方を言い残すと思うけど。

 それに、そのダイイングメッセージの狂歌の出来がサッパリ良くない。何十通りの解釈が出来そう。

 ものぐさ太郎とアシスタント片岡のやりとりも、掛け合い漫才みたいで面白いが、太郎のお父さんをワトスン役にした方がもっといい作品になるかもしれない。

 なんせ、太郎のお父さんはお金儲けの天才で何をやっても商売繁盛の人だが、息子の太郎は全く仕事をする気なし。働いたらご先祖様のものぐさ太郎に申し訳が立たないと本気で思っているのだ。
 でも、親子不和ではなし。息子は父親をうまく受け流す術を身に付けているし、父親は息子を大きな愛で見守っているのだ。
 ああ、パパさん大好き! なんだかリチャード・クイーンを思い出すなぁ。


*イラストは「十五夜」の作品です。
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奥田英朗「無理」

2010-05-24 10:15:29 | Weblog
 3つの市町村の合併で出来た架空の地方都市“ゆめの市”で暮らす5人のそれぞれの日常が書かれている。横のつながりは無くバラバラの5人だが、最後の最後にドリームタウン下交差点でそれぞれの日常が交差する。

 景気が悪く閉塞感が漂うこの“ゆめの市”からなんとか脱出しようとする5人。

 その中の一人、相原は社会福祉事務所に勤めるケースワーカー。しかし「自分は弱者だから援助しろ」という身勝手な市民にほとほと嫌気がさしている。
 そうやって人を非難しながら、自分は人妻売春サークルに電話し、勤務時間中なのにラブホテルで過ごす。
 自分のことは棚に上げ「この国の行く末が案じられる」なんて憤慨するから面白い。オマエが言うな!オマエが!!

 加藤裕也は暴走族上がりで、詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン。「○○保安センターです。配電盤の保守点検に参りました」と言って老人世帯に上がりこみ、インチキ漏電遮断機を売りつけている。
 原価500円の商品を、相手を見て3万円、5万円とか言って。

 最初のうちは私も「コイツふざけてる!バアさん、騙されるな!」と怒りながら読んでいたが、段々慣れてきて、加藤裕也が「今日1日のセールス20万」なんて言うと「うわー!頑張ったね!」と褒めてあげたくなっちゃう。
 加藤の上司が「(詐欺まがいの)セールスで頑張って稼いで、フィリピンパブでパーッと遣ってゆめの市の経済に貢献しよう」なんて意味の事をのたまうと、それが正しい様に錯覚しちゃう。

 こうやって「オレオレ詐欺」のメンバーも、仕事に抵抗が無くなっていくんだろうね。

 なかなか読みでのある作品。

*イラストは「十五夜」さんからです。

 
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有栖川有栖「孤島パズル」

2010-05-19 10:29:57 | Weblog
 この江神さんが名探偵のシリーズは、青春小説の趣もある。
 よかったね、アリス。前作『月光ゲーム』でヘンな女の子に引っ掛からなくて。
 マリアみたいなかわいい女の子が推理研に入部してくれて、おまけにアリスといいカンジで、私も読者として嬉しいです。
 でも、推理研って1年生が1人もいないの? もっとしっかり新入生を勧誘しなくちゃ、つぶれちゃうぞ!

 さて、本題です。
 マリアの伯父さんの別荘がある南海の孤島にやって来た3人。宝探しが目的だったが、楽しむ間もなく起こった殺人事件に巻き込まれてしまう。
 バカンスに集う男女。3年前の溺死事件。連絡船の再来は5日後。典型的なクローズド・サークルの中で、江神部長の推理が冴える!!

 有栖川有栖らしく、整った論理的な作品。

ここにパズルがある。どうかあなたの手でこの小宇宙に秩序をもたらしていただきたい

 なんて素敵な<読者への挑戦状> 動機から考えれば「この人」しかいないんだが、証拠品からそれを立証していく。自転車のタイヤ跡が残る1枚の紙切れから。
 さすが、有栖川有栖。

 ただ論理的にはきちんとしているが、情緒的に「そんなのアリ?」と思える部分も。
 2人の人間が殺された翌日、犯人がこの島にいることが分かりきっているのに、1人住まいの自分のロッジへ平気で帰る人物がいるが、いくらなんでも不自然じゃない?
 連続殺人が起こっているのに、パニックにならず、皆さん落ち着いている。単独行動を好む人が多いのも不思議。
 私だったら、絶対一人にはなりたくないと思う。
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猫の貯金箱

2010-05-17 11:19:06 | Weblog
猫の貯金箱〓嘘です。みぃ太郎です。
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島村洋子「品格バカが多すぎる」

2010-05-14 09:50:42 | Weblog
 数年前に「女性の品格」とかいった品格シリーズがバカ売れしたが、その便乗本。
 奥付を見ると、2008年12月初版第1刷発行。

 あれ…?! 島村さんって、ちょっと前に亡くなったよね。ニュースでやってたし、新聞の訃報欄で見た覚えがある…。
 ということで「島村洋子」をインターネットで検索してみる。出てくる。しかし、どこにも死亡したなんて書いてない。
 おかしいなぁと、奥付に載っている発行所「株式会社ヴィレッジブックス」に電話して尋ねてみる。

 「あの…『品格バカが多すぎる』の島村洋子さんって少し前に、お亡くなりになってますよね。」
 「…。いえ、そういった話は聞いておりませんが。」
  
 あーーーーー!! 私は、いったい誰と混同しているんだろうか? 島村先生、ごめんなさい。でも気持ち悪いなぁ。ひょっとして夢を見た? それとも見間違い?(聞き間違い?)
 この謎を解くためだったら、労力を惜しまないぞ。

 という事で、今まで書いた読書ノートをひっくり返して書名・著者名を読む。あった!! 分かりました。2008年8月に、くも膜下出血のため急逝なさったのは『島村麻里』さんだったのだ!

 ああ、スッキリした。
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