ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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鈴木宗男議員逮捕

2006年11月18日 | サ行
 少し遅くなりましたが、鈴木宗男議員の逮捕について考えたことをまとめます。

 これについては(2002年)06月23日付け朝日新聞の「私の視点」欄が特集を組んでいます。

 朝日新聞はこの03月までは「論壇」というコラムを持っていましたが、04月から「私の視点」に換えました。それで変わったことは、第1に1つの意見の字数が1800字から1300字に減ったことです。

しかし、第2に、それによって載せる意見数を大幅に増やしました。そして、このような重要な問題については複数の意見をまとめて載せることも出来るようになりましたし、実際にしています。

 私はこの第2点を評価します。そしてこれを可能にしたのが第1点ですから、第1点も支持します。

 今回の鈴木宗男議員の逮捕についても4つの意見が載っています。

 第1は北海道大学の新川利光教授(政治学)の意見で、それは「保守政治のあしき面を凝縮」と題されています。内容は、鈴木氏の最大の政治的罪は外交の利権化だとしながら、それには触れないと断って、口利きの問題を論じています。

 それは北海道では特に目立つこと、鈴木氏のような本流に属さない議員にはそれ以外に手はなかっただろうということです。

 そして、その対策として、有権者の意識改革と官僚への政治的コントロールを提唱しています。

 第2は、評論家の早坂茂三氏(元田中角栄秘書官)の意見で、「政治の錬金術は終わった」と題されています。

 内容は3点です。加藤紘一氏や辻本清美氏では動かなかった検察当局が鈴木宗男氏の場合だけ動いたことに触れて、「日本は成熟した法治国家のはずである」と疑問を投げかけていますが、自分の意見は述べていません。

 次に鈴木氏の逮捕と東郷和彦元局長の失脚でロシア外交は担い手を失ったのではないか、と言っています(先日、ロシアの外務事務次官は「鈴木氏がいなくなっても困らない」旨の発言をしていましたが、外交官の発言をそのまま受け取る人は少ないでしょう)。

 最後に、政治とカネの不倫関係を論じて、人間の性が変わらない以上、不正をなくすことは難しいだろうと言っています。

 政治の世界の裏表を知り尽くした人らしい表現に満ちていて面白かったです。

 第3は衆議院議員の川田悦子氏(無所属)の意見で、それは「背中押す権力者の恍惚感」と題されています。

 議員になってみて、議員というのは再選されて議員でありつづけることを最大の目標にして活動するものだということを知り、自分はどう対処しているかを述べています。

 第4の意見はジャーナリストの魚住昭氏のもので、「腑に落ちない国策捜査」と題されています。

 私なりに整理しますと次のようになると思います。国策捜査の目的は、事件の真実を追求するより、国民の前に「生贄のヒツジ」を差し出して失政に対する怒りや不満をそらすことで、そのために予め狙った対象の摘発を優先させる、ということです。

 今回もまず、佐藤元主任分析官や地元秘書を逮捕したことがおかしかった。これらは逮捕に値する容疑ではない。北方支援事業での鈴木氏の罪を問おうとして、その証拠を集めようとしたのである。

しかしそれが無理だったので、今度は支援事業とは無縁な古い事件を使って「あっせん利得罪」容疑で逮捕した。

 最近の検察の捜査では、正義とずれていることが多い。その最大のものが、先日の前大阪高検公安部長・三井環氏の逮捕である。

 これは三井氏が検察庁の組織ぐるみの裏金作りを暴露しようとしているのに対して、口封じを狙ったものである。

 日本にはこのような検察の暴走に歯止めをかける機関も法律もないのが大問題である。以上、魚住氏の主張です。

 これらを読んでまず思うことは、同じ事件に接しても人によって考える事が随分違うということです。「群盲ゾウをなでる」の話を思い出します。

 しかし、「群盲ゾウを撫でる」の話は、小人は大人物の一面しか理解できず、それを全てと思ってしまうということの譬えだそうですが、ここでの4人の発言は、自分の意見は事件の一面であることを自覚した上で、自分のよく知っていることを述べているのだと思います。

 そしてこれらの意見はどれも、この事件を多面的に考えるのに役立っていると思います。

 しかし、同時に考えなければならないことは、どの意見も同等の価値を持っているとは限らないということです。同じ一面でも、対象の本質に係わるものもあれば、派生的な面にかかわるものもあると思います。ゾウを撫でても、ゾウの本質が鼻の長いことだとするならば、鼻を撫でた人はゾウの本質を経験したことになります。

 今回の4つの意見でも、どれもが同じ価値を持つとは言えないと思います。本質的と派生的と分けるのが正しくないとするならば、問題の重要性の軽重ということは言えると思います。

 私はやはり魚住氏の意見が一番重要な点を衝いていると思います。法治国家を支える最後の砦である検察庁の捜査が真実追求から逸れてきているというのですから、大問題です。まして、裏金作りをし、それを暴かれそうになると口封じをするというのは言語道断です。

 今回の鈴木氏逮捕では、多くの国民が、その逮捕理由がこれまで全然報じられていなかったやまりんとかいう会社と関係したあっせん利得罪だったことに、何か違和感を感じたと思います。

 新川氏は最大の罪は外交の利権化だとしながらそれを避けましたが、魚住氏はこの逮捕理由に対する国民の違和感の近くまで行っています。「多くの国民がこの逮捕理由に違和感を感じたのではあるまいか」と書き出したら、一層好い文章になったと思います。

 鈴木氏逮捕事件で私自身の撫でたのはどこか、それは回を改めて述べるつもりです。

 検察庁の裏金作りは仙台市民オンブズマンが追及しています。07月02日付け朝日新聞は、オンブズマンが三井元部長から聞き取ったメモを裁判所に提出したこと、三井氏の証人採用を求めていることを報じています。

 私は仙台市民オンブズマンの活動を注視し、応援したいと思います。(メルマガ「教育の広場」2002年07月15日発行)

     そ の 後 の 話

 第86号の「鈴木宗男議員逮捕」の中で、本当の問題は検察庁の裏金疑惑隠しであると書きました。

 その後、元大阪高検公安部長の三井環氏の初公判がありました。新聞でもNHKでも「渋々」「なるべく目立たないように」これを報じました。

 週刊朝日は最新号でこれを詳細に報じています。

 さて、もう一つ、これに関連した事が07月17日の朝日新聞に載りました。検察庁の公金不正流用疑惑を告発した元検察事務官の大田原昌嗣氏が、建造物侵入の疑いで逮捕された、というのです。

 この事件も三井氏の逮捕と同じように我々は注視し続ける必要があると思います。

 検察庁はどんな事があっても自分の公金流用問題、裏金作り問題を隠し通すつもりのようです。そのため、これを告発する内部者は何かの理由をつけて逮捕するつもりなのだと思います。(2002年08月04日)