黄色い表紙の「てぶくろ」という絵本。
子どもが小さい頃、何度も何度も読んだものだ。
私の本棚にはその頃の絵本がたくさん残してある。
久しぶりに開いてみると、あちこちにシミがついていた。
この本も繰り返し読んだものだ。
おじいさんが子犬と一緒に森の中を歩いている。
歩いているうちに手袋を片方落として、そのまま行ってしまった。
すると、ねずみがかけてきて手袋にもぐりこんで「ここでくらすことにするわ」という。
そこへ、ぴょんぴょんがえるが来て「わたしも入れて」という。
先にいたねずみは「どうぞ」と迎える。
次に来たのは、うさぎ。
その次は、おしゃれぎつね。
もうこれで4匹だが、そこへおおかみが来る。
「だれだ。ここに住んでいるのは」
「くいしんぼねずみと ぴょんぴょんがえると
はやあしうさぎと おしゃれぎつね。あなたは?」
「はいいろおおかみだ。おれも入れてくれ」
「まあ、いいでしょう」
その次は、いのしし。
手袋の家はかなり増築している模様だが、住人は増えるばかりで狭そうだ。
「ちょっとむりじゃないですか」
「いや、どうしてもはいってみせる」
「それじゃ どうぞ」
ぎゅうぎゅうづめの手袋。
そこへやってきたのは、のっそりぐま。
「どうしても入る」
「しかたがない。
でもほんのはじっこにしてくださいよ」
手袋は今にもはじけそうだ。
さて、
手袋を落としたことに気づいたおじいさんが、探しに戻ってきた。
子犬が先にかけていき、むくむく動いている手袋を見つける。
「わん、わん、わん」と子犬がほえたてる。
みんなはびっくりして、手袋からはいだすと、森のあちこちへ逃げて行った。
そこへおじいさんがやってきて、手袋を拾った。
それで、お話は終わる。
読んでいた子どもたちは「??」と不思議な印象を抱きつつ、現実に戻っていく。
「てぶくろ、ぎゅうぎゅうだったね」
「せまそうだったね」
「おもしろかったね」
。。。なんて話しながら。
さて。
数日前からロシアに侵攻されているウクライナ。
この「てぶくろ」の絵本は、エウゲーニー・ミハイロヴィチ・ラチョフという画家が、ウクライナ民話をもとに描いたものだそうだ。
Wikipediaによると、シベリアで生まれ、キエフ美術大学で学んだロシアの絵本作家とあった。
それ以上の寓意を私は持ち合わせていない。
しかし、この絵本に出てくる動物たちのなんと寛容なことか。
どんどん満員になっていくのに、来た人を絶対に拒否しないで受け入れていく。
正直、ウクライナの知識は大して持っていない。
・バターを抱いたキエフ風カツレツ。
これはおいしい。
・チェルノブイリ原発のあったところ。
(ちょうど原発事故のあった時、新婚旅行でヨーロッパにいた。外国語のニュースではよく分からず、帰りの日航機の中の新聞で内容を知り怖くなった)
そしてネットで流れてきた情報で、この「てぶくろ」の絵本がウクライナ民話だったと分かった。
この世界は、おじいさんの落としていった手袋のようなものだ。
ねずみ、かえる、うさぎ、きつね、おおかみ、いのしし、くま。
大きいものもあれば、小さくて弱いものもある。
それぞれ違いはあるが、仲良くひとつの手袋に住むことはできるのだ。
子犬がほえて、おじいさんが手袋を拾って、みんな森のあちこちに逃げていき、物語は唐突に終わる。
さて。
私たちのできることは何なのか。
私のできることは何なのか。
絵本を閉じて、私も考えてみよう。
午前中は暖かく感じたが、午後からは強い風が吹いた。
多分、花粉がたっぷり混ざってる。
目がかゆくなりそうだ。