日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 前回のコメント欄で話題になっていた対中ODA(政府開発援助)凍結の話でもしますか。実は姉妹サイトの「楽しい中国ニュース」(2006/03/24)でもう扱っているのですが、とりあえずそこでの適当コメントを臆面もなく引き写します。

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 別に「白樺」への反発ではないんだけど、中共による相次ぐ不埒な悪行三昧への鉄槌でしょうな。「ODAがなくてもやっていける」と言ったのは温家宝か李肇星か忘れたけど、そりゃこれまで巨額の援助を受けた後だから平気でそんなことを口にできる訳だわな。……にしても舐めた振る舞いでしょこれは。

 とはいえ中共がカナーリ戦慄しているのはこの件を速報した上に外交部報道官がすぐコメントを発表したことでもわかる。少しは余裕みせたらどーよ。「ODAは一方的な施しではない。互利互恵のプロジェクトだ」なんて言ってたけど、日本にとってはもはや互利互恵じゃないから施しを止めたまでで。

 それにしても今回、日本側はサクサクと事を進めて決定・発表したね。中共の戦慄も援助云々よりそのあたりに起因しているに違いない。

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 ……今回はもう少し踏み込むことにします。問題はこの出来事をどう捉えるかということです。純粋に援助凍結とみるなら、前回コメント欄で「774」さんが指摘して下さったように、ODAだけじゃなくアジア開発銀行をはさんだ迂回融資のような形で日本のカネが中国に入っていることを考えなければなりません。ODAを語る上で忘れてはならない重要なポイントです。

 http://turbulent.seesaa.net/article/9414067.html

 ただ今回のケースについていえば、私はその角度から切り込むと問題を見誤るように思うのです。

 今回のケース、これは
「対中経済制裁」ではないでしょうか。

 援助額の多寡とか他の援助ルートの有無とは関係なく、日本政府が昨今の日中関係に鑑み、自ら決断して対中円借款の凍結に踏み切った。きわめて政治的なアクションです。

 1989年の天安門事件に対する経済制裁は西側諸国の動きに同調した、ある意味受動的な措置でした。でも今回は違います。「対話と圧力」でいうところの「圧力」を明確に行使したもの、と私は捉えています。

 その効果がどれほどのものになるのかはともかく、これは経済制裁なのです。先走って言ってしまうと、日本がそれを即断というに近い速さで決定し、実行へと移したことも大きなポイントであり、大きな変化ではないかと思います。

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 ともあれ時系列で事態を追ってみましょう。私のみた限りでは、このニュースを最初に伝えたのは『毎日新聞』(電子版)でした。3月23日の自民党外交関係合同部会で本決まりになる前に、外務省がその肚を固めたという報道です。

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 ●対中円借款:関係悪化で、閣議決定は当面見送り 05年度(毎日新聞 2006/03/23/03:00)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060323k0000m010174000c.html

 (前略)
外務省は05年度についても今月末に閣議決定する予定だったが、今月7日に北京で開かれたガス田協議で中国側が尖閣諸島周辺海域の共同開発を提案したことに自民党内から反発が噴出。当面の円借款決定を見送り、ガス田協議などでの中国側の対応を見極めながら検討することにした。

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 ……と、あります。このあと決定が出て各紙が報じることになりますが、『読売新聞』『毎日新聞』の記事を挙げておきます。

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 ●05年度の対中円借款、年度内の新規決定見送りへ(読売新聞 2006/03/23/13:11)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060323it04.htm

 (前略)
対中円借款は例年、年度末に新年度以降に実施する分を閣議決定している。しかし、今年度は、小泉首相の靖国神社参拝問題や東シナ海のガス田開発などを巡り、日中関係がぎくしゃくしているため、自民党内から「供与決定は慎重にするべきだ」という声が強まっていた。外務省によると、対中円借款の決定が年度をまたいだのは、過去、1979年度分がずれ込んだ例があるのみで、異例という。

 外務省筋は23日、「今、自民党内で決定できる雰囲気ではない。新年度に改めて協議するが、ガス田協議などでの中国側の対応などを見ながら決めていくことになるのではないか」と語った。塩崎副大臣は同日の記者会見で、「資金が先方にいくのは1、2年先なので、(決定先送りによる)大きな影響はない。与党内には日中間の様々な問題について様々な意見があり、(決定には)日中双方の努力が必要だ」と述べた。

 政府は対中円借款について、中国が急激な経済成長により、開発資金を自力調達できると判断し、北京五輪が開かれる2008年度をメドに、新規供与を終了する方針を、昨年3月に決定している。

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 ●対中円借款:閣議決定、当面見送り ガス田で関係悪化受け(毎日新聞 2006/03/23/12:52)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20060323k0000e010071000c.html

 塩崎恭久副外相は23日午前の自民党外交部会で、05年度の対中円借款について年度内の閣議決定を見送る方針を表明した。東シナ海のガス田開発をめぐる日中協議の難航などで自民党内の対中感情が悪化していることを受けたもので、塩崎副外相は同日の記者会見で「双方の努力がいる問題」と指摘し、ガス田協議などでの中国側の対応を見極めながら「06年度のしかるべき時期」の供与を検討する考えを示した。
(中略)

 これに関連し、安倍晋三官房長官は23日午前の記者会見で「日中関係の今後の状況を踏まえつつ、早期の供与が可能となるように政府内の調整を進めていく」と述べた。

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 凍結の原因のひとつとされた東シナ海ガス田紛争、具体的には3月6~7日に開かれた日中協議において、中国側が「白樺」(春曉)などに関するデータ提示を拒否した上に日本側の共同開発案も一蹴。その一方で、日本の固有の領土である尖閣諸島方面を含む共同開発案を新たに提案してきたことかと思います。これで日本側の態度が硬化しました。

 ●中国のガス田共同開発案は尖閣・日韓大陸棚周辺(読売新聞 2006/03/08/12:06)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060308it03.htm

 中国側の舐めた振る舞いには明確な意思表示が必要、ということで「対話と圧力」、つまり協議は今後も継続していくものの、一方で対中円借款凍結という前例のない「経済制裁」に踏み切ったのではないかと私は考えています。

 それにしても、決断までに1カ月すら要しなかったこと、しかも公明党など少数意見を除けば異論が出ずにすんなりと凍結案が通ったところに、日本側の変化を感じずにはおれません。構造改革の成果ではないでしょうか。

 私は小泉政権の掲げる「構造改革」には実は対中外交も含まれていて、具体的には麻生外相のいう「上下関係のない対等な二国間関係」の実現、という真っ当な課題に一貫して取り組んできたとみています。言うべきことは言う。やるべきことはやる。譲れない一線は絶対に譲歩しない。……極めて異例とされる今回の「経済制裁」も、その一表現ではないかと思うのです。


「下」に続く)



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