日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「上」の続き)



 (3)「極めて遺憾」と中国に抗議=官邸に連絡室-尖閣への活動家接近(時事通信 2007/10/28/23:15 )
 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007102800177

 中国の反日民間団体の活動家が乗った船が尖閣諸島(中国名・魚釣島)に接近を図ったことについて、政府は28日、外交ルートを通じて「尖閣諸島がわが国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いがない。このような事態が発生したことは極めて遺憾だ」と中国側に抗議した。

 これに対し中国側は島の領有を主張し、「日本側の申し入れは受け入れられない」と応じたが、「日中関係の大局の観点から日本側においても冷静に対応してほしい」とも要請した。

 一方、政府は、情報収集体制を強化し、抗議行動や上陸の動きに備えるため、首相官邸の危機管理センターに官邸連絡室を設置した。




 「外交ルート」って何ですか?中国側って誰ですか?誰が誰を呼びつけて抗議したのですか?意図的な領海侵犯なのですから外相が中国大使を呼びつけて然るべきところでしょう。昨年もそうでしたが、こういう馴れ合いはそろそろやめにした方がいいと思います。でないときっと後悔することになるのではないかと。

「得寸進尺」

 という熟語が中国語にあります。一歩一歩既成事実を積み重ねていって最終的には目的を達成しよう、という姿勢を示すものです。

 譲れば譲る分だけ遠慮なく踏み込んでくる。尖閣問題でもそうなのです。

 【去年】香港のボロ漁船で意図的に領海を侵犯したものの日本側は追い出すだけで拿捕などの実力行使に出なかった。
 【今年】中国のボロ漁船で意図的に領海を侵犯したものの日本側は追い出すだけで拿捕などの実力行使に出なかった。

 ほら一歩前進しています。「香港」が「中国」になりました。正に「得寸進尺」なのです。次は何をしてくるやら。

 ……ああそうでした。申し遅れましたが、今回は香港ではなく中国の漁船なのです。『読売新聞』(電子版)になると、


 (4)中国の反日団体、尖閣諸島の領海内に侵入…海保が進行阻止(読売新聞 2007/10/29/01:45)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20071028i313.htm

 【香港=吉田健一】尖閣諸島(中国名・釣魚島)に対する中国の領有権を主張している中国の反日民間団体「中国民間保釣連合会」は28日、中国本土を出発した抗議船1隻が、上陸を目指して同諸島に向かったことを明らかにした。

 同連合会によると、抗議船には中国人活動家4人が乗り込み、26日に福建省アモイを出発。28日夕、いったん尖閣諸島付近の領海内に侵入したが、海上保安庁の巡視船に進行を阻止された。同連合会は、出港に際し、中国政府に通知していないとしている。(後略)




 と、中国人活動家4名が乗り組んでいること、漁船が中国本土のアモイ発であることが「保釣運動」の大元締めであり反日サイトの総本山のひとつでもある中国本土の民間組織・中国民間保釣連合会によって明らかにされています。

 明らかにされてはいますが、自分でやったとは言っていませんし、事前の告知もなければ「犯行声明」も出していません。ただ中国民間保釣連合会の掲示板で実況めいたスレッドが立っただけです。

 http://www.cfdd.org.cn/bbs/viewthread.php?tid=49929&extra=page%3D1

 目下のところ中共系メディアはこの件を報じていませんが、中国国内からもアクセスできる香港の親中紙『大公報』電子版などが速報していますし、中国本土でも基本的に視聴可能なフェニックスTVのニュースでも報じられています。下のURLで視聴できますが、このニュースもなかなか興味深いです。

 ●土豆網:フェニックスTV28日18時のニュースから(2007/10/28)
 http://www.tudou.com/programs/view/pEixar2w_yE/

 ニュースキャスターと中国民間保釣連合会のスポークスマン殷敏鴻氏のやり取りの中で、殷敏鴻が今回の挙について、

「今回は秘密行動に属するもので、われわれも今日(28日)午前11時になって(航海中の実行犯から)電話で初めて知らされた。それによって、そういうことが行われていることをわれわれもようやく知ったのだ」

「船には中国からの『志願者』4名が乗り組んでいる」

 と語っています。中国民間保釣連合会の首脳部も関知していなかった有志による抜き打ち的な突発的行動、ということです。少なくとも中国民間保釣連合会は関知していなかったということにしたいようにみえます。「志願者」というのも有志とかボランティアといった意味で使われる単語です。ただこの船の最新状況については、

「中国民間保釣連合会の掲示板で公布してある」

 としています。うーん。

 ――――

 何やら微妙です。中国民間保釣連合会は組織防衛を優先させたいようでもあり、しかしわが功を誇りたいようでもあります。

 ただひとついえることは、目下のところ中国当局はこの件について激怒してはいないということです。逆鱗にふれる行為であれば掲示板の実況スレなどはすぐ削除される筈ですから。ただし一方で国内メディアに報道させていないということで、現時点では黙認しているといったスタンスです。

 黙認している、そのこと自体に違和感を感じます。……とは、実は当ブログが2004年夏にスタートして以来3年余の間に、中国本土発による尖閣海域への到達および魚釣島上陸を目的とした「保釣」行動は一度も起きていないからです。

 この間、中国民間保釣連合会は無為に日を送っていた訳ではありません。江蘇省・南通港を拠点に何度か船出計画を準備していましたが、いつも出発間近になってから武装警察が有無を言わせずメンバーを拘束・連行するなどして、行動に移ることを中国当局によって常に実力で阻止されていたのです。

 それが今回は黙認。一党独裁政権下で政治活動を行う民間組織です。当然ながら党上層部に「飼い主」(政治的なバックボーン)が存在していることでしょう。

 「飼い主」の気分が変わったのか別の「飼い主」に替わったのかはわかりませんけど、何かのはずみで反体制勢力の拠り所になりかねないこういう組織に対して、中国当局が監視を怠っていたとは思えません。実際、中国民間保釣連合会も政治状況の変化=「飼い主」の政治勢力の消長によって掲示板を閉鎖されたりしたこともあります(2004年8月)。

 今回は福建省(アモイ)から出発したということですが、それは記事(2)の時事通信電における、

「11管によると、中国船は青色で、船名とみられる『※龍漁F839』(※=門ガマエに虫)との文字が書かれている」

 という一節によって裏付けられています。「門ガマエに虫」というのは福建省の略称だからです。じゃあアモイ当局の監視が甘かった?……もしそうなら、掲示板の実況スレはとっくに削除されていることでしょう。

 ――――

 結局、これも「十七大」を反映したものであるように思えます。厳密には、

「『十七大』で改められた新たな勢力図を反映したもの」

 といったところでしょうか。

 「飼い主」の気分が変わったのか別の「飼い主」に替わったのかはわかりませんが、つい最近までは香港の保釣運動に待ったがかけられたように神経質な対応を示していた中国当局が、久方ぶりに中国本土からの船出を黙認しました。中国民間保釣連合会が自らのサイトにある掲示板で今回の行動を実況することも許しています。

 要するに胡錦涛が、

「やれやれやってしまえ」

 と積極的にゴーサインを出したのか、あるいはアンチ胡錦涛系の政治勢力による示威活動に対し、胡錦涛が派閥力学から黙認することしかできなかったのか、のいずれかです。

 厳しい報道管制が敷かれていないことから、胡錦涛が「このくらいなら日本も大騒ぎすまい」と多寡をくくって、軍内部の士気旺盛な一派のわがままを許したのでしょうか。あるいは軍内部の士気旺盛な一派&無視できない実力を持つ地方の「諸侯」とか。いずれにせよ、「十七大」で生まれた新たな権力図を反映している可能性が高いのではないかと愚考する次第です。

 まあ、このネタは何日か転がしておいて様子を見る必要がありそうです。ただいずれにせよ、日本政府は領海侵犯に対してあるべき処置をごく事務的に行ってほしいものです。法治国家なんですから。

 政治的判断云々というなら、なおさらのことです。相手が「ちょっとオシャレな北朝鮮」たる一党独裁国家であることを念頭に、必要なら原則に則した厳しい態度を示さなければならない思います。日本政府に「日本国と日本国民の権益を守る」という行動原理があるのなら、ですけどね。

 「得寸進尺」という言葉、これは中国と中国人を考える上で決して忘れてはならないと思います。





コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
福建つながり (非典型日本人)
2007-10-30 00:54:25
福建つながりで、太子党というと習近平?!
 
 
 
Re:福建つながり (御家人)
2007-10-30 02:51:39
>>非典型日本人さん
 福建つながりなら賈慶林とか賀国強とか王兆国とかたくさんいますね。「福建閥」の方が「太子党」より何だかリアリティを感じます。

 それはともかく今回の事件、軍を含めた党内部の先走りといった観がありますが、翻って考えれば胡錦涛が日中関係にヒビを入れない程度で内政面でのガス抜きを行った、という気がします。……というにはもう少し材料がほしいところですね。

 ともあれ中国の対日政策変更を示すものではないと思います。あるいは、首相就任早々に任期中は靖国神社を参拝しないと明言した中国にとって「くみしやすい」福田内閣が尖閣問題ではどう出るか、というテストを行ってみたのかも知れません。
 
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