日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「上」の続き)


 旧正月前の「事件」をいまさら蒸し返すことになりますが、ちょっと気になる動きですし、展開次第では胡錦涛政権の足を引っ張りかねない状況に発展するかも知れませんので、旧聞であることを承知でとりあげておきます。

 と「上」の冒頭に書きましたが、どうやら「気になる動き」は本物だったらしく、「事件」は旧聞どころか中共政権内部で蒸し返され、現在進行形の様相を帯びてきました。

 蒸し返されたのは、毎年恒例の3月に開かれる政治イベント「全人代」(全国人民代表大会=立法機関)と「全国政協」(全国政治協商会議=50年前に有名無実化した対中共政権チェック機関)を目前に控えているからでしょう。別種の思惑も絡めつつ、「事件」の波紋が広がりつつあるように思います。

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 まずはその「事件」についてふれなければなりません。「大年初一」つまり旧正月の元日を翌日に控えた2月17日、中共系通信社の中国新聞社が唐突にコワモテな論評記事を配信したのです。

 ●解放軍中将「歴史教科書が革命教育を弱めるとは思いもよらぬこと」(中国新聞網 2007/02/17/09:33)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-02-17/093312341517.shtml

 「上」の末尾で書いたように、先代の親玉である江沢民が始めた反日風味満点の「愛国主義教育」を、現在の最高指導者である胡錦涛は「愛国主義教育」という名前はそのままに、内容を変質させつつあります。

 端的に表現するなら江沢民時代の「鬼畜米英」(反日)から「ぜいたくは敵だ」(刻苦奮励)的内容へとシフトさせるもので、当然ながら反日色もレベルダウンすることになります。レベルダウンであって「反日」が消える訳ではありませんが、その対日外交路線を反映するように、江沢民のようにことさらに「歴史問題」を言い立てて反日反日と騒ぐことは避ける、といったスタンスです。

 また、いわゆる「抗日戦争」に対する歴史的評価も大幅に改まったことを受けて、歴史教科書の内容も変化することとなりました。つまり胡錦涛型「愛国主義教育」に沿った「新しい歴史教科書」が制作された訳ですが、上の記事は「解放軍中将」がそれを槍玉にあげたもの。前軍事科学院副院長の李際均・中将が『瞭望新聞週刊』に寄稿した評論を紹介する内容となっています。

 ちなみにこの李際均、今年1月に人民解放軍の機関紙『解放軍報』に寄稿した際の肩書きは「退役陸軍中将」となっています。朝鮮戦争の従軍経験があるそうですから相当年配で、口うるさいジジイというイメージが浮かびます。

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 さて、中国新聞社電の記事タイトルにある「思いもよらぬこと」とはつまり「言語道断」という含意で、この「李際均論文」は「新しい歴史教科書」が以前の教科書に比べてイデオロギーや愛国心に対する力の入れ方が弱まり、革命や戦争への記述が減っていることを強烈に批判しています。

「性格は往々にしてその人の運命を決定づける。民族の性格も民族の運命を往々にして左右するものだ」

 とする李際均に対して、

「爺さんなかなかいいこと言うじゃねーか。確かに中国は漢族のヘタレた民族的性格のおかげで21世紀になってもマトモな国家になっていないからなw」

 とツッコミを入れてもいいのですが、もう少し阿呆の叫びを聞いてやることにしましょう。李際均によると、中国には秦による中国統一以前から奮闘精神や浩然たる気概といったいいものがあったのに、儒教の悪い一面がそれを消し去ってしまい、儒教の良い面も文化大革命ですり潰されてしまったそうです。

 春秋戦国時代とはこれまたえらく昔の話ですが(笑)、要するに「昔の中国にあったいいもの」を中国人は取り戻すべきだ、それなのに「新しい歴史教科書」はその逆をやっている、とでもいいたいのでしょう。これはこれで一理あります。

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「民族精神(進取、団結、創造、献身、信仰、規律)は国家にとって最大の財産であるのに、一切の価値判断がカネを基準にして行われるという風潮にあって、それらは顧みられることがない。中国人民は中華の振興という大業において、正確な思想・文化・理論を身につけ、愛国主義精神を育み、闘志を高めなければならない。金銭万能・私有万能といった社会における良からぬ傾向は修正されなければならない」

 とする李際均に対して、

「進取、団結、創造、献身、信仰、規律?……中国人に欠落しているものばかりだなw」

 と茶化したいところですけど、まあいいでしょう。具体的にいうと、李際均中将が憤懣やる方ないのは「新しい歴史教科書」が革命や戦争、毛沢東、長征、帝国主義侵略、南京大虐殺、狼牙山の五勇士などに関する記述を大幅に削減または削除していることだとか。

 そしてさらに腹立たしいのはそれらに代わってモルガン・スタンレー、ニューヨーク証券取引所、日本の新幹線、ネクタイの流行などを紹介する内容が増えていることだそうです。

「歴史教科書はイデオロギーと愛国心に関する教育を重視すべき」

 とする李際均にとって、なるほど「新しい歴史教科書」は受け入れ難いものでしょう。

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 そろそろこの中将閣下が制服組ゆえの批判論なのではなく、「電波ゆんゆん」なのに気付かれる方もいるかと思いますが、ビンゴであります。

 過去に李際均が書いたものを読むと、いわゆる「抗日戦争」の勝利を人間形成の拠り所としている観があり、「反日」を掲げるのはもちろん「反米」傾向も垣間見えて、

「台湾併呑のために北京五輪が吹っ飛んだり経済制裁を喰らっても構わない」

 といったノリの電波系対外強硬派らしいことがうかがえます。

 http://jczs.news.sina.com.cn/2004-08-31/2317222556.html
 http://jczs.news.sina.com.cn/2005-01-20/1039260105.html
 http://jczs.news.sina.com.cn/2005-05-16/1103289099.html

 ただ米国相手に「核戦争」をチラつかせる朱成虎少将や、同じことを10年も前にやった前人民解放軍総参謀部副総参謀長である「核戦争の熊さん」こと熊光楷・中国国際戦略学会会長よりはマトモに近く、孫子の研究家としても知られているようです(中国孫子兵法研究会会長)。

 とはいえ胡錦涛風味の「新しい歴史教科書」に噛み付くくらいですから、当然ながら軍主流派の一員ではないでしょうし、胡錦涛のお気に入りでもないでしょう。少なくとも昨年6月末に「胡錦涛のお中元」で中将から上将に昇進した10名の中には入っていません。

 ●胡錦涛から軍部へのお中元?一挙10名が大将に昇進。(2006/06/25)

 退役しているのなら候補に上らないのも当然ですが、中将になったのが1988年ですから、退役したのがつい最近だとすれば、出世街道に乗った軍人人生でなかったことは確かです。

 ちなみに現在は「核戦争の熊さん」が会長を務める中国国際戦略学会の高級顧問でもあります。やっぱり御同類なのでしょうか(笑)。少なくとも強烈な危機感に後押しされた軍拡論者であることは確かで、たぶん例の弾道ミサイルによる衛星破壊実験には喝采した一人かと思われます。

 ●「新浪網」(205/05/16/11:44)
 http://jczs.news.sina.com.cn/2005-05-16/1144289110.html

 ●「核戦争の熊さん」に存在感? (207/02/15)

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 ところで、私は上で中国新聞社による「李際均論文」記事の配信を「唐突」だと表現しました。それからこの「李際均論文」の登場を「事件」としています。この論文とそれが出現するプロセスの不自然さに政治的要因がありそうな気配を感じたからです。

 なぜ「唐突」かといえば、中国新聞社が配信したのが「大年初一」(旧正月の元日)の前日だったからです。

 日本でいえば12月31日の大晦日。中共政権はこの歳末期間になると現役指導部が江沢民をはじめとする引退した「老同志」を見舞う御機嫌伺い活動をしたり、中共の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員会がなんちゃって野党の代表らを招いて一足早い迎春お茶会を開いたりします。一方で出稼ぎ労働者や大学生の帰省ラッシュが報じられ、私などはそういうニュースに季節感を感じたりするものです。

 ともあれ旧正月を目前にした心浮き立つような時期であり、御機嫌伺い活動や迎春お茶会はそれを象徴する縁起モノでもあります。要するにおめでたく和やかなニュースが並びがちなこの時期、しかもよりによって「大年初一」の前日に胡錦涛風味の「新しい歴史教科書」を強烈に批判するという毒々しい「李際均論文」が配信された、というのがムードをぶち壊すような「唐突」さなのです。

 いわば「空気読め」という声が上がりそうなタイミングなのですが、あえてムードをぶち壊そうとするところに政治的意図を感じます。

 ただ、だから「事件」なのだというのではありません。実はこの「李際均論文」、私の調べた限りでは1週間前の2月10日に大手ポータル「SOHU.com」のニュースサイトで全文転載の形で報じられているのです。

 ●『瞭望』記事:国魂、軍魂の振興を(SOHU.com 2007/02/10/08:37)
 http://news.sohu.com/20070210/n248160084.shtml

 それから1週間寝かせておいて、「大年初一」の前日(2月17日)になってやにわに蒸し返した、という出現の形がいよいよ怪しさを感じさせます。……さらに、元日である翌18日には国営通信社の新華社が中国新聞社電を転載する形で記事にしています。

 ●「新華網」(2007/02/18/10:29)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-02/18/content_5752499.htm

 1週間前の旧聞でありながらにわかに蒸し返され、さらに国営通信社の配信記事にまで「昇格」しました。こうなると、それなりのパワーを持つ政治勢力が仕掛けた一種のメディア攻勢、と疑わざるを得なくなります。

 仕込んだ側は中国新聞社に「李際均論文」という鮮度の落ちたネタをわざわざ旧正月直前を選んで配信させ、さらに元日には新華社電に昇格させるだけの力があるのですから、現場指揮官の独断専行といったような鉄砲玉的行動とはまるでレベルが違うといえます。

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 この行動、私自身はもう政治的アクションとみているのですが、少なくとも軍主流派によるものではなさそうです。というのはこの「李際均論文」記事、中国新聞社と新華社が配信したことで全国各地のメディアが報じる結果となったのですが、肝心の『解放軍報』はこれを完全無視でスルー。メディア攻勢を仕掛けた政治勢力は軍主流派と同腹ではない、ということです。

 ところが少し間を置いてかすかな動揺がみられるように……という話は次回に回します。現在進行形の「事件」になってしまったため様子見が必要な部分もあるのです。

 最後に2点だけ。まずはこの「李際均論文」、ネット世論では話題になったものの、ブログなどでは賛否両論で評価が分かれています。ただ糞青(自称愛国者の反日信者)どもの集まる掲示板では絶賛されており(笑)、活動家の童増(中国民間保釣連合会会長)や理論派の林治波(『人民日報』評論員)に続いて、李際均が糞青のイデオローグとしてデビューした観があります。

 もう一点は中国通信社・新華社版の「李際均論文」はかなり端折られたもので、2月10日に報じられた全文に比べるとかなり削除されている部分があります。ひと段落がまるまる削除されている部分が3カ所ありますが、それよりもある段落の中で一部だけ削除されている文言に興味を覚えます。

「とりわけ我々の国家、我々の党については、自らの過去の栄光を否定することは許されない」
「愛国主義をいわゆる『狭隘な民族主義』として批判すべきではない」

 ……などがその「削除された一句」です。なるほどやや際どい文言ではあります。ただ華々しくメディア攻勢をかけた割にはこうした及び腰な部分もあるところが不思議なのです。

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 ともあれ、「李際均論文」は江沢民型「愛国主義教育」を胡錦涛路線へシフトさせることに対して明確に「No」を突きつけたものだといえます。マスコミ露出のプロセスを考えると、単に電波系の馬鹿が飛び出してきた、というにしては仕込みが見事すぎるきらいがあり、ある政治勢力の蠢動を感じさせます。

 旧聞がこうして現在進行形になってしまったので、まずは李際均の叫んだ「No」に賛同者がどれほど出るのか、またこれがひとつの流れとなって盛り上がっていくのかを見極めなくてはなりません。もちろん、政治勢力の蠢動なのだとすれば、それがいかなる顔ぶれによるものなのかも突き止めなくてはなりません。

「軍内部の一派による一連の独断専行的アクションのひとつ」

 と安易に位置づけていいものか、どうか。

 そのあたりがまだ十分にみえてこないのです。困った困った。




コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (すくらんぶル近藤)
2007-03-01 15:11:45
え、え~と…あの~御家人先生。
コキントーは反日路線を少し修正したい…ということでしょうか。
今年はナンキン映画を雨後のタケノコみたいに作ってるし、記念館を3倍に拡張して五輪に備えてるって聞くし、修正どころか反日を盛り上げたくてたまらないように見えます。
コキントーは独裁者じゃないから、反日したい勢力は別にいて、そっちはそっちでやっているのをコキントーは止められない…ということでしょうか。
 
 
 
南京て (pko)
2007-03-01 15:46:10
日本でいうところの忠臣蔵なんかな~
虐殺蹂躙が彼らの美徳ちゅうことっすかね。
 
 
 
Unknown (御家人)
2007-03-02 02:43:41
『趙紫陽軟禁中的談話』1冊入手しました。よろしければどうぞ。
http://page5.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/e64586784
 
 
 
Unknown (御家人)
2007-03-02 03:25:38
>>すくらんぶル近藤さん
>修正どころか反日を盛り上げたくてたまらないように見えます。
 そういう見方があってもいいと私は思います。当然ながら2004年9月の胡錦涛政権発足以降の対日姿勢の変化と党上層部内の政争、及び外交部報道官の定例会見における対日姿勢の変化を後づけた上で、江沢民政権の対日外交路線との比較もなさっているのでしょう?その結果そういう見解に至ったのであれば、それでいいのではないかと。
 ちなみにエントリーでも書きましたけど、私のいう「修正」とは反日度をレベルダウンさせることであって反日をやめるということではありません。

>コキントーは独裁者じゃないから、反日したい勢力は別にいて、そっちは
>そっちでやっているのをコキントーは止められない…ということでしょうか。
 そういう可能性はあると思います。総じていえば、現在の中共政権は「反日」よりもその抑制により大きな力を注いでいるように私の目には映ります。ただ御指摘のように完全に押さえ込むほどの力量が胡錦涛にないという面もあるかと思います(まあ完全に押さえ込んでフラストレーションがたまって反作用が起こるのも怖いでしょうけど)。もちろんこれは「2004年9月の胡錦涛政権発足以降の……江沢民政権の対日外交路線との比較」を行った上での私の見方です。

 ちなみに、真偽は不明ですがこういう情報もあります。抑制しているのは「反日」だけではない、というのは去年と今年についていえば確かにその通りだと思います。

 ●『明報』(2007/03/01)
 ttp://hk.news.yahoo.com/070228/12/22qkh.html


>>pkoさん
 思うにこれは美徳ではなく、ふた昔くらい前の感覚でいえば「12月なのに忠臣蔵のドラマがない」「大晦日なのにレコ大も紅白もない」といったようなものではないかと。
 山の高さを際立たせるには谷の深さが欠かせません。南京虫事件がないと中共の「抗日戦争勝利物語」が盛り上がりに欠けてしまうのでしょう。死者も30万ぐらいいないと形にならない(笑)。
 中共の扱っている「歴史」なんざ所詮は「すごいぞ中共!」を主題に書かれた戯曲ですから。その証拠に都合の悪いことは「×周年記念活動」なんてやりません。反右派闘争も大躍進も三年困難も文化大革命もそうです。天安門事件に至っては香港の歴史教科書からも削除されています。
 
 
 
どういう裏工作なのか? (dongze)
2007-03-02 22:59:22
御家人さん、
「上」の関連で最新の「エコノミスト」3/6号に元獨協教授が中国の新中学歴史教科書のこと書いてますね。
中共の意図的には国内の反日レベルをすこし中立にしつつ、国外の主にアジア以外の(特に人権に敏感な白人エリア、かつアジアの状況や歴史的な背景が一般レベルでは認識が薄い)外国での日本へのネガティブキャンペーンプロパガンダに精を出すような方向に(アジアの盟主を名実ともに我が手にかな?)、すこし巧妙になりつつありますね。そろそろこちらのスピーカの音量も上げないと、、、、
 
 
 
1989 (職人)
2007-03-02 23:03:27
『中華四十而不興、民主七十而不全』

1989年に学生たちが掲げたスローガンの一つだそうですね。
私は世代的にはだいぶ下るのですが、この時代と比較して考えると、その後の江沢民がいかに歪んだ反日愛国教育を推し進めたかが解ります。
 
 
 
人民解放軍の立ち位置……、 (曙機関)
2007-03-02 23:41:14
 革命が成功して60年近くが経ち、共産党が私有財産を公式に認めようとする現在、人民解放軍とはいった『誰から誰を解放するための軍隊なのか? 』という点が、深刻な問題になっているのでしょうね。

 
 
 
Unknown (御家人)
2007-03-03 03:34:45

>>dongzeさん
>「エコノミスト」3/6号に元獨協教授が中国の新中学歴史教科書のこと書いてますね。
 おお。知りませんでした。さっそく読んでみます。

>そろそろこちらのスピーカの音量も上げないと、、、、
 同感です。ただ欧米に対する中共政権のネガティブキャンペーンは今後5~10年がヤマ場だと思います。主に従軍慰安婦とか南京虫事件とかのアレです。必死だと思いますよ。自称「体験者」が死滅すると説得力なくなりますから(笑)。あとは叫んでいる中共自身がキワモノ扱いされています。1989年の天安門事件を契機に実施されたEUの対中武器禁輸も未だ解除されていませんし。
 日本は堂々と反駁しつつ、中国の人権問題やチベットやウイグルの問題をつつくべきです。それを内政干渉というのなら靖国に口を出すなと。あとは平成の明石元二郎の出現を期待するのみです。まずは河野談話をみんなで潰しましょう。
 私はむしろ孔子学院のような中共のブランドイメージ確立と親中派養成に向けた動きに警戒しています。


>>職人さん
>『中華四十而不興、民主七十而不全』
 1989年は建国40周年の翌年で五四運動の70周年でしたからね。
 私はあの民主化運動~天安門事件~政治・経済両面の厳しい引き締め政策に留学先の上海で立ち会って、香港にわたってからもトウ小平の南巡講話や第14回党大会(1992年)、そして翌春の全人代を経て夏あたりまで非常に恵まれた環境でチナヲチ(素人の中国観察)をしておりました。
 そのあと10年余のブランクを経てこのブログでチナヲチを再開して驚いたのは、中国が別世界になっていたということです。上海いたころ、同世代の中国人大学生たちや一般市民との間ではまだ価値観を共有できる部分があったのに、2004年の中国にはそれが全く消え失せていました。
 その間に江沢民の愛国主義教育が行われて「反日」気運が高められ、それと引き換えに、私と同世代の中国人大学生や知識人がつかみとろうとした民主・自由・人権といった概念が失われ、それを求める意識が眠らされていました。それから銭ゲバ。「向錢看」という言葉は1980年代からありましたけど、それがホンモノになったのは大学がエリート養成機関からホワイトカラー量産工場になった1990年代後半あたりからでしょう。
 江沢民の愛国主義教育による負の遺産は余りに大きいです。「反日」だけでなく、中国を袋小路に踏み入らせてしまった点も重いと思います。


>>曙機関さん
 いまやっている「中国の『新しい歴史教科書』」は、現在進行形の事件になってしまったので次のエントリーが「下」になるかどうか未定です(笑)。いま先走っていえることは、この御神輿は軍内部の一派だけではなく、おそらく「物権法」制定に反対している左派あたりも一緒に担いでいるようにみえるということです。……ってそこまで言っちゃったらもう書くことないだろーが>>自分(笑)。
 人民解放軍は中共の私兵という点では現在も揺るぎないままでいると思います。ただ玩具がかなり揃ってきたので「もっとそれを見せびらかせよう」とか「いっそのこと一度使ってみよう」という向きがいたりする点が問題だと思います。
 ちなみに中共の価値観に照らせば、実際に台湾侵攻をやるかどうかは別として、「台湾併呑>北京五輪」であることは間違いないと思います。「んなこたぁーない」って思う人がいるかも知れませんね。私も1989年6月3日まではそう思っていました。
 
 
 
Unknown (三碧星)
2007-03-03 11:54:36
 今でも、紅眼病とか、官倒(流石にこれは無いですか?)などの言葉は残っているものなのでしょうか?
最新の世情を表す言葉があれば、教えていただけるか、参考になるサイトを御教示いただけたらと思います。

 人民軍が「ただの会社化」してしまえば、このまましばらく具体的な軍隊活動をしない時期が続いて産業活動に精を出していてもらえば、牙(あんのか?)が抜かれてちょうどいいのですが。
 
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