中国が政治・経済ともちょっとざわついてきたように感じます。この一週間ばかりの印象です。「12.6」事件ばかりではありません。ちょっと散漫になりますが関連記事を拾い上げてみます。
●北京の「直訴村」取り壊し 中国、陳情者ら多数拘束(東奥日報 2005/12/13)
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20051213010019891.asp
例の地方から上京してきて中央の担当窓口に陳情する農民らが集まり滞在しているバラックのような場所ですね。陳情制度については法改正でなるべく地元当局に対して行うように、それも直接出向く「上訪」ではなく書面による「信訪」を主とするようにはなっていましたが、中央への「上訪」も違法ではありませんでした。
単純に北京市の美化政策の一環なのかも知れませんが、それにしてはタイミングが合い過ぎていますよね。国内の反体制系知識人や人権活動家が「12.6」事件への非難声明を国際人権デーの12月10日に発表し、同時にネット署名活動を開始したようですが、こうした動きに対する面当てという可能性もあります。
●「明報即時新聞」(2005/12/13/21:10)
http://hk.news.yahoo.com/051213/12/1jj4f.html
あるいは、人権活動家は以前から陳情者を支援していたので、「12.6」事件の情報が陳情者の耳に入り、思わぬ事態に発展するかも知れないから先手を打った、ということかも知れません。
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それからこれはバブルが弾けはじめたのか、それともバブル崩壊が顕著になったと言うべきなのか、上海で購入を予約した住宅物件のキャンセルが相次ぎ、「退房風潮」と呼ばれています。
「从上海“退房風潮”看楼市之變」(上海の「キャンセルブーム」からみる不動産市場の変化)
という記事が国営通信社の電子版である「新華網」(2005/12/12/09:33)に出たのですが、いま引用しようとしたら削除されていました。あれ?と思って大手ポータルの「新浪網」(SINA)で調べたらこちらも転載されていた該当記事が全削除。何なんでしょうか一体。
香港の親中紙『香港文匯報』(2005/12/14)もモルガン・スタンレーの観測として「中国では上海にのみバブルが存在する」という思わせぶりな記事を掲載しています。
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512140024&cat=002CH
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一方で全国の販売住宅物件(商品房)の空家率が10月末時点で26%に達した、これは危険水域だという警告を国家統計局が発しています。
●「新華網」(2005/12/13/10:29)
http://news.xinhuanet.com/house/2005-12/13/content_3914218.htm
で、これを下敷きに香港の親中紙『大公報』(2005/12/14)が「銀行の不良債権増加による経営悪化も懸念される」みたいな記事を出しています。
http://www.takungpao.com/news/05/12/14/MW-497220.htm
こういうことで足並みが揃うというのはもちろん吉兆ではありません。記事になるくらいですから現地はよほど深刻な状況になっているのでしょうか?それにしても記事の全削除が気になります。
バブル自体の行方も気になりますが、これまで上海をはじめとする各地方政府が不動産開発で巨利を得ていたことを考えると、糧道を絶たれた怒りが不動産高騰抑制策を講じた中央政府への反発という形に転化される可能性があります。経済問題であると同時に、「中央vs地方」の力関係に影響を及ぼす政治問題でもあるのです。
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続いては南京何たら事件。12月13日が68周年ということで記念式典が開催されたのですが、出席者は3000人。しかも近所の学校から動員された観がありありと出ています。
そして「1937・南京真相」というテレビドキュメンタリーが放映されたのですが、どうもこれはいけません。いやネーミングがです。だって中共が「真相」と銘打ったものほど嘘臭いものはないのですから(笑)。
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/13/content_3915517.htm
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/12/content_3911716.htm
私が中国に留学していた時期に天安門事件(1989年)が発生したのですが、その直後から「事件の真相」という番組がテレビで嫌というほど流されました。要するに天安門広場を占拠していた連中は反革命の暴徒で、それを鎮圧した人民解放軍は英雄だ、という内容なのですが、他に「××的真相」と題された民主化運動の指導者たち(例えば劉暁波)を貶める書籍なども出版されました。
そんな訳で私のいた上海の市民は「また政治運動か」と諦め顔ながらも軍隊が自国民を殺戮したことに怒りを隠さなかったのですが、当事上海市長だった朱鎔基がテレビ演説の中で、
「事件の真相はやがて歴史が明らかにするだろう」
と政治的に極めて際どい発言(実際後で保守派に叩かれて失脚しかけています)をして市民の心をつかみ、上海を取り巻いていた軍隊が市内に侵攻して戒厳令施行、という最悪の事態を回避することに成功しています。
昔話はともかく、南京何たら事件について。香港の最大手紙『蘋果日報』(2005/12/14)によると、当局は民間による記念活動開催を禁じたようです。このため糞青(自称愛国者の反日教徒)どもは仕方なくネット上でそれらしきことをやるしかなかったとのこと。この「民間の活動を禁じた」というのも中央の社会状況に対する見方を反映している訳ですから留意する必要があるかと思います。
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そして「12.6」事件。12月13日に開かれた外交部報道官定例記者会見で当然のようにこの事件に関する質問が出され、秦剛報道副局長がこれに言及しています。
「今回の事件(「12.6」事件)と1989年に発生したあの事件(天安門事件)を同列に論ずることはできない」
「1989年の事件については我々はすでに結論を下している。だが今回の件(「12.6」事件)について、私は関連資料が手元にない」
……だ、そうです。この記者会見では「12.6」事件に関する質問が相次いだようですが、秦剛はこれについて、
「私もメディアの報道から関連情報を耳に入れている状況で、事件の具体的な状況はよくわからない」
とかわし続け、最後には記者に対し、この件に関しては「もう手を上げないでくれ」(質問するな)と言う始末。もちろんこの一切は中国国内メディアの報道ではカットされています。
http://hk.news.yahoo.com/051213/12/1jj6e.html
ともあれこれでとりあえずわかったのは、天安門事件と「12.6」事件は別物だということと、中央はまだ「12.6」事件に対する結論を出していない、ということです。結論が出ていれば秦剛もスラスラと答えることができたでしょう。
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結論が出ていないから天安門事件と同列に論じられない、というだけではないでしょう。
「私もメディアの報道から関連情報を耳に入れている状況で、事件の具体的な状況はよくわからない」
というよそよそしさは、はからずも広東省当局、そして事件現場の汕尾市当局に対する中央の不満を示してしまったように思います。
前回書いたように、現在の「公式報道」は広東省当局から出たもので、中央によるものではありません。ですから「新華網」もこれを全国ニュース扱いせず、地方欄に「公式報道」を掲載したのです。「公式報道」の内容に中央が満足していれば、全国ニュースとして扱い、また秦剛も苦労することがなかったでしょう。恐らく、
「広東省党委・省政府は事件を高度に重視、地元党委・政府は法に則って事件を適切に処置」
という「公式報道」のサブタイトルからして気に入らなかったのだと思います。手ぬるい、ということです。そしてこの「公式報道」はその文末において、
「現在、『12.6』事件の調査・処理が進められているところだ」
としています。つまり取り調べは済んでおらず、事件の全容が未だに解明されていないということです。この進捗ぶりも中央にストレスを感じさせているのではないでしょうか。
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天安門事件と「12.6」事件を同列に論じられないとする中央の姿勢は、もう一点、「双方に悪者がいる」ということに起因するものかも知れません。
天安門事件においては民主化運動側の学生や市民が「反革命暴乱」を引き起こした悪玉とされ、それを武力鎮圧した人民解放軍を善玉としました。白黒がはっきりついている訳です。ところが「12.6」事件はそうではありません。発電所を襲撃し警官隊と衝突した農民が悪玉なら、手際の悪い警告射撃で農民側に死傷者を出してしまった現場指揮官も悪玉、ということで汕尾市公安副局長が刑事拘留されています。
……と、ここまでは広東省による「公式報道」にもあるのですが、そもそも農民がずっとこの問題で騒いできたのは土地収用に関するトラブル、具体的には当局側による土地売却益の横領疑惑と農民側に対する補償額の少なさによるものです。「公式報道」がこの部分に全く言及していないのも中央が同意できない理由かと思います。
汕尾市当局を叩けばもっと色々出てくる筈なのに、それをしていない。広東省当局は汕尾市当局をかばっているのではないか、とまで思ったかどうかはわかりませんが、事件翌日に広東省のトップである張紀徳・省党委員会書記が現地入りしていたそうですから(『大公報』2005/12/13)、時間があった割には仕事をしていないじゃないか、甘い、という印象を与えても不思議ではないでしょう。
http://www.takungpao.com/news/05/12/13/ZM-496758.htm
国際世論を考えれば、中央が事件に結論を下さない訳にはいかないでしょう。その内容によって中央と「大諸侯」である広東省の力関係も垣間見えるのではないかと思います。続報待ちです。
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私は上海浦東地区のローカル団地に住んでいる者ですが、周りは「どうしてこんなに建てるのだろう?」と思うくらい住居用マンションの建設がいまだに進んでいます。
ところが完成しても人が住んでいる気配があまりなく、まるでゴーストタウンのようです。夜になると分かります、明かりが10世帯中1~2世帯くらいでしょうか。
ご存知と思いますが、上海には日本人にババを掴ませようとする、不動産系フリーペーパー「スーパーシティ」がマンションを買わせようと必死です(笑
人民元で給与をもらっている私としては、バブル崩壊による人民元紙くず化を恐れるばかりでございます。
益々冴え渡る御家人様のチナヲチを期待しております。
中国様から歓迎されると思っていた、「靖国元凶」説が喝破されて功績はありますよ。これで新党の荒井や社民の福島が馬鹿だと丸分かりの売国奴、そして河野傭兵、加藤公一と仮面も剥げて見通しが良くなった。嘘つき中国王様はロバの耳という事が「中国は有史以来、他国を侵略しない平和国家だ」論には仰天。共産党軍は日本軍に勝利したと嘘つきで米国に噛みつかれたでしょうが・・。ネットは世界を飛び回りで新聞テレビ時代では無いのが分かってない。嘘もばればれ、中国国内のm農民虐殺又した事もばればれ.
だからなのよ。日中観首脳会談取り止めは「靖国」が問題では無いのよ。「靖国」呪文は効果が無いのが分からない老人大国か老人ボケでしょう。
大連で仕事してる友達がいるのですが、そいつからこんなメールが先日来ました。曰く、ホテルとは一カ月契約で住んでるんだが、今後の予定を教えてくれとしつこく聞かれた、と。
私は現地にいるわけではないので分かりませんが、ホテルの商用利用も減ってるんですかねー。友達が言うには、現地のビジネス仲間が自国に戻りはじめており、自分もそろそろ……と言ってましたが。
署名式では、温首相と小泉首相が隣り合わせの席順。
温首相が持参した毛筆ペンで署名を終えると、左隣の小泉首相は自席前に用意されたペンは取らず、
温首相の方に右手を差し出した。
温首相は一瞬戸惑った表情で右側のアブドラ・マレーシア首相の方を見たが、すぐに小泉首相の意図を
解して毛筆ペンを手渡した。小泉首相はこのペンで署名した。
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051214-00000138-mai-pol
アドリブ責めだw純ちゃん酷いw
当局からは何の連絡も指示もなかったそうですが、販売中止が決定したそうです。中国メディアがいっせいにこれを報道し、ネットでも取り上げられたそうです。
上海市の中国ソニーによると、この件は報道により始めて知ったそうで困惑している様子がうかがえます。ソニーでは、とりあえず事態の沈静化を目指して、販売停止に動いたそうですが…
中国で何があったんでしょう?詳細をご存知ですか?
しかしそれでもバカチョンモードでは普通に撮れるので「中国製だからしかたない」と諦めていたんですけどね。
科技前沿 http://tech.tom.com/2005-12-13/003B/04395233.html
網易
http://tech.163.com/05/1213/05/24R2LN58000915BD.html
ちなみにW-1はリストには入っていません。
しかし中国産ですから(ry
・・・プッ。
流石というか小技が利いてますね。
ひとつの筆で・・・を
友好的ととるか、侮辱ととるか、無視を決め込むか、
は報道陣営次第。
試されてますねぇ、マスメディアは(w)。
内政は・・・としても、外交において小泉さんはスゴイなぁ。
いつか俺も金持ちにという夢をもって、今に耐えていられる前提が崩れ始めたという事でしょうか? となると都市民の間でも暴動が頻発しそうですね。糞青によるものより深刻なものが。食えないとなるとまず政府が悪いになりますし。日本に責任転嫁もできんでしょう。しても白々しいものにしかならないから怒り煽るだけ。
>天安門事件と「12.6」事件を同列に論じられないとする中央の姿勢は、もう一点、「双方に悪者がいる」ということに起因するものかも知れません。
元をたどると官の横暴への抗議ですからねぇ。武装した農民も悪いが、撃った武警も悪いとしたら「じゃあ、彼らをそこまで追いつめたのは何処なんだ」というところに飛び火する。そうなると官が全部悪い事になる。大諸侯の勢力を削ぐ良い機会ですが、それをやる力が果たしてあるのか?
今後に注目というところでしょうか。
1月1日をもって日本へ帰国します。大陸をまたがり、各地方を巡り、様々な人々と出会い、感慨深い思い出です。
今せっせとDVDを収集してパイレシーの末期を楽しんでいます、他になにがこの国を魅力的にしているのでしょう?
人民元の昇級は何をもたらすのか、個人的規模より企業レベルの投資部分が心配です。
6年間の大陸生活で得た結論は、私はやはり日本人であり日本のためにがんばること、何も右翼だ左翼だというレベルではなく、帰るところは日本なのだと。同感の滞在者はたくさんいることを望みます。
というのも、
・中国ソニーでは、浙江以外で今回のような指摘を受けたことが無かった。
・今回、他国のメーカーは名指しされなかった。
・当局からの連絡や指示が全く無かった。
そうだからですが、
こういう乱暴なやり方は、中国ではあたり前なんでしょうか?それともソニーだから?何か「ざわつき」と関連があったら嫌ですねぇ。
http://tw.news.yahoo.com/051214/39/2n3r4.html
次に買うデジカメ「ソニー」1位、「オリンパス」躍進
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=0815&f=research_0815_001.shtml
とかありますから,単純にこっち方面かと。
ソニーだけ名指しなのもうなづけます。
確かに「ソニー」と聞くと「またか」と反射的になりますが,今回の場合は,その反射に乗っかってシェアの突き落としにかかったと見てようのでは。これぞシナクオリティ。
<12月15日>(木)
〇今日は日経新聞の後藤康浩氏の講演を聞いてきました。中国経済はすでに変調を来たしている、という観測でした。アメリカからの対中投資は、2002年をピークに3年連続でマイナスの見通し。人手不足、電力不足に貿易摩擦に感染症まで、中国特有のリスクが累積しているので、そうなったとしても違和感はない。
(後略)
http://tameike.net/comments.htm#new
うろ覚えですが、確か取引額では日本企業一であったかと・・・。
今後のイヤ~な展開としては、現地の日本人工場長あたりが無実の罪で逮捕されて人質に
取られてしまい、色々様々な圧力かけられたりして。
奇美集団の許文龍会長みたいな目に遭わないことを祈っております。
が、あの大陸に進出した企業についちゃ、まったくの自己責任だとも思いますけど。
しかし普通の国じゃまったく考えられない類のカントリーリスクではあります。
さすが五千年も人治を続けてきた国だけのことはあるなぁ。
まあ、残念ながら一部のことなんでしょうけど。
でも、あんまりそーゆーとこを中国化してほしくはないですけどねえ。>下に対策あり
でも、あの国へ行くには必要なのも確かだし、どうしょうも無いのかなーと。
で、ということは、今出ばってるとこはおおかた生き残ったしたたかなとこで、いざというときの対処はある程度期待できるというか心配しなくてもいいか程度には思ってていいんでしょうか。
でも、大陸がどうにかなるときって、想定の上行く事が多いような。
無事の帰還をお祈り……って、既に動乱決定してるような文章になってしまいますなあ。
私も「奇美迫害事件」が脳裏に浮かびましたよ。
今回他国のメーカーは名指しされなかった、と書きましたが、正確には「ソニー以外の企業名は一切明かされなかった」が事実のようです…(暗澹)
>>Unknown(2005-12-15 20:02:15)氏
シェアの突き落とし…
だとしたら、やり方が露骨過ぎますよね(苦笑)
これだけやり方が露骨なのに、魅力的な中国市場(ハート)などと絶賛されているのが恐ろしいです。
まあ、残念ながら一部のことなんでしょうけど。
中国「信頼せず」72%…読売・ギャラップ世論調査
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051214it16.htm
当然、企業も信用していないでしょう。
ずいぶん前ですが、初期の失敗を教訓に色々研修を行った(三菱グループ)という話も聞きましたよ。
日中関係は、従来の「政冷経熱」から「政冷経涼」へと変わりつつあるという何となくキナ臭い報道です。
最近では中国高官も「政冷経涼」を警告する発言をしばしば行っているようで、「今後は、政治の硬直状態が経済にも直接影響するであろうから覚悟するように」ということではないでしょうか?
日本製品締め出しなども関係しているんでしょうか?
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