あくまでも「兆し」ですから当てにされても困るのですが、中国国内メディアの対日報道に変化が起こりつつあるように思います。
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それよりもまず「釣り師」の話をしましょうか。「ファンタジスタ。・下」(2005/11/04)の冒頭でふれた麻生外相による就任記者会見の第一声です。日米関係の強化を最優先し、日中関係の優先度はほとんど最後の最後。しかもインドの次に名前が出たということで、ファンタジスタ外相が意識的に狙ったものなのかどうかはともかく、中共政権のプライドはズタズタにされたようです。
すぐに「新華網」(国営通信社の電子版)が釣られたのですが、その後も対中優先度の低さを根に持ったような記事が何本か出ました。
●受け継がれる小泉政治の血統、後継者は誰に?(2005/11/06/09:09)
http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/06/content_3738304_1.htm
●日本の新外相、毎年靖国参拝を行い、日中関係の優先度を最低に(新華網 2005/11/06/15:35)
http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/06/content_3739416.htm
前者が『新京報』、後者は『世界新聞報』の報道を「新華網」が転載したものです。いずれも「外相就任記者会見の第一声」を具体的に描写しています。中国の名前が最後の方になってやっと出たことをかなり根に持っているようです。やっぱり相当悔しかったんでしょうね(笑)。
同時に、戦慄もしたことでしょう。よほど強腰らしいキャラの上に靖国参拝支持派、しかも現在の日中関係を「基本的に総じて上手くいっている」と評しているのです。孔泉が靖国参拝について「話し合う余地はない」といくら力んでみせても、空回りするばかり。力むだけ無駄なのです。
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だからなのかどうか、まあ小泉参拝や内閣改造の話題も一段落したことで、中共政権はメディアにバランスを取らせにかかったかのような動きが相次いでいます。
●中国経済学者「日貨排斥は愚かなやり方」
http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/06/content_3739606.htm
中国では有名な経済学者・芽于軾が11月5日、広東外語外貿大学でスピーチしたもののようです。端折って訳出しますと、
「我々がこの世で生きているのは何のためか?私の答は単純明快、ひとえに人生を楽しむためだ。なぜ祖国の建設や平和維持を人生の目標としないのかと諸氏は思うだろう。でも祖国を建設するという目的は何か?他人が人生を楽しめるようにすることではないか」
「ひとりの人間が偉大であるかどうかの基準は、自分が人生を楽しむと同時に他人にもそれを及ぼせるかどうかだ」
「この道理に照らして、私は日貨排斥には賛成しない」
「日本製品を買えば自分の生活にプラスになる。我々は自分にとってマイナスになるようなことはしないものだ。買わなければプラスにならない。自分の生活にプラスにならないことをして他人にもマイナスをもたらす。何でわざわざそんなことを」
「私は日本人を批判すべきでないと言っているのではない。第二次大戦がどんなものであったかを国民みんなにわからせなければならない。だがそれは日貨排斥によってではない。その方法はとても愚劣なものだ」
……という趣旨のスピーチで、今春の反日騒動に当てはめればこれは疑いなく火消し役の論調です。ただ現在、中国社会には日貨排斥をやろうという気運が高まっているのかどうか。そこまで「反日」で盛り上がっているのかどうか。その答が否であれば、ちょっとピントのずれた内容といえます。
ともあれ自称愛国者で反日教徒たる「糞青」どもに水をぶっかける話題ではありますし、対日批判が主流である昨今の報道や論評の中では際立つ存在です。
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それからこれです。
●APECでの関係改善に日本が意欲――NHK報じる(新華網 2005/11/07/10:16)
http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/07/content_3743751.htm
標題通りの内容です。日本はAPECの場で日中外相会談を実現させることに意欲を示しており、それを関係改善の突破口にしたいとの狙いがある、とのこと。記事に拠ったイメージを結べば日本が頭を下げてお願いしてくるという構図になるので、「中華」の面子が立つことになります。
日中外相会談が実現するかどうかはまだわかりません。でも実現させるつもりが中国側にあるなら、まず流しておきたいのがこういうニュースでしょう。「そこまでへり下ってくるなら仕方がない、会ってやるとするか」というイメージを国内向けに打ち出そうとしているのです。
小泉首相による靖国参拝への報復措置は、外相会談のキャンセルではなく、延期でした(笑)。今後に含みを持たせたというショボすぎる措置でしたが、その高度な政治的配慮(笑)が生かされようとしているのかも知れません。
かたや「日中関係は基本的に総じて上手くいっている」との認識を示した麻生外相と、対中外交の優先度が最低レベルであることを麻生外相に指示し、「10年、20年、30年」と腰の据わっている小泉首相。それに対し、
「中日関係は小泉首相による靖国神社参拝問題で国交正常化以来最も困難な時期に入った」
とする中国側。外相会談、やらなくて困るのは日本と中国のどちらでしょうか。……どちらでもいいんですけど、「日本側が外相会談をやりたいと頭を下げてきている」というニュースが出てきたのは注目すべきことだと思います。
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そして、最後にこれを出しておきます。
●「憤青」の現実世界――罵倒から理性への変化、徐々に(新華網 2005/11/07/14:55)
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-11/07/content_3744923.htm
「憤青」とは当ブログでいう「糞青」のことです。発音が同じなので「憤青」を揶揄する際に「糞青」が用いられます。もちろん中国発祥の単語です。便宜上ここでは使い慣れた「糞青」で通します。
それはともかく、この記事にはサブタイトルというかリードみたいなものがあり、
「絶対多数の糞青はこれまで如何なる日本人にも実際に接したことがなく、日本人に対する認識や知識は全てインターネットなどのメディアから流れる情報によるもの」
となっています。これで記事の概要がわかろうというものですが、まず最初に何人かの糞青を登場させ、連中の現実生活を紹介しています。親の遺産で気ままな生活を送っている者もあれば、修士号をとるべく勉強しつつ、その合間に反日ブログを書いている学生も登場します。
この志高き反日ブログはこれまでに700本のエントリーを書いてアクセス総数は15万ヒットだそうです。700本も書いてたったの15万ヒットですか。
PV(page vew)なのかIPで数えているのかは知りませんが、いずれにしてもエントリー数がその半分ほどの娯楽でやっている当方に比べれば、総アクセス数は当ブログの足元にも及びません。糞青はより励む必要があるようです。
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さてこの記事は『瞭望東方週刊』から「新華網」に転載されたものですが、ネットでは反日論を唱え、現実生活では生真面目に日貨排斥を貫かんとしているこれら糞青が、現実社会の中で浮き上がっている様が描かれています。
大学卒業の日にクラスメートの前で日本製の腕時計を叩き壊した糞青。職場で買い入れるプリンター100台を日本製にしないよう運動してついにそれを実現させたことを誇らし気に語る糞青。それに対しこの記事は、
「ある調査によれば、日貨排斥という行為について、多くの中国人は不支持を表明している」
と冷たくあしらっています。ただ糞青歴が長くなると日本に関する情報も増えて、当初イメージしていた日本・日本人像が崩れて動揺していることを正直に吐露する糞青の姿も描かれています。
で、最後はサブタイトルの通りになって、
「極端な民族主義は危険だ」
というオチです。要するにネット世論の台頭とその偏向ぶりに警鐘を鳴らす形になっていますが、こういう記事が出てくるというのもある種の変化だといえるでしょう。糞青に対し「騒ぐな」と暗に命じているようでもあります。
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当ブログの場合、1カ月や3カ月、ひいては半年といったタームで眺めるのではなく、ほぼ1日ごとのヲチですから結論を下すのはなかなか難しいものです。
ただ、相変わらず対日批判報道が主流を占める中で、これら毛色の変わった記事が出始めた。……というのは、中国側に意地を張り通せない事情があり、APECでの外相会談が実現するかどうかはともかく、対日姿勢がやや軟化しつつあることの表れではないかと愚考する次第です。
でも本当にAPECで外相会談をやるのでしょうか。仮に実現したとすれば、靖国参拝の一件以来、李肇星や孔泉、それに王毅などを使って大見得を切り続けてきた中国がカッコ悪すぎるように思えるのですけど。
でも無理に意地張ってこの機会を流してしまうと、今度は李登輝氏訪日の一件が控えていますから、外相会談なんて次にいつセットできるかわからないですよねえ(笑)。どうなるのか。……いや、どうするのか。実に楽しみです。
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是非とも、麻生外相にAPECでの会談を丁重に断って頂きたいですね。
ま、鳥インフルエンザがついに中国内で人への感染が始まったのではないかと騒いでますから、これを機に中国からの鶏肉(加工品含む)輸入の全面禁止、渡航自粛勧告と進出企業へ現地駐在員の引き上げを勧告とかして欲しいものです。後、密入国者の徹底取り締まりと強制送還を。文句言いにくい理由ですしね。
まあ~中国も粒が小さく成りましたね、現在の日本の政権の方が大人と思いたいね、日本を腰砕けだけは止めて頂戴。
となれば、お互いの面子を立てつつ、適当な着地点を探るのがオトナというもの。
隣の半島にもそれができれば良いのですが(タメイキ
ちかごろしなではやるもの おせん、はいえん、さんせいう
さいばん、ぼうどう、つかいこみ やすもの、にせもの、ばったもの
失礼しました。
人災の百貨店ですな。
ttp://orientaldaily.orisun.com/srch_result/516337_btm.html
怖いのは彼等3名の任期が終了した後かも。
ここぞとばかりに手段を選ばず反撃してきそうな不安もありますが、
それまで中共が持つかは怪しいです。
かと言って中共が倒れた後の政府(国家?)でも、
根の深い反日教育ですから洗礼を受けた輩が、しゃしゃり出てくるかも。
(特に政治活動をする連中なんて…)
今回の中側軟化を揺るぎ無いものにして頂きたい所です。
もっと早くに発見していれば良かった。
主催者の方の深い知識と教養に、脱帽いたします。
すばらしいです、全く素晴らしい。
にしても、鳥インフルエンザの騒ぎは本当に予断を許しませんね。
いったい、どうなるんでしょう……。
人民元が高くなると、中国の原油や資源の購買力が高まりますので、本音としては安い人民元を放置させたいのでは?
ではなぜ中国に人民元の切り上げ圧力を掛けたのでしょうか? それは海外投資により得た所得を今年中に米国に還流させた場合、本来の所得税を大幅に軽減するという雇用創出法が関係していると思います。そのときだけは人民元が高い方が有利になるからです。小幅な切り上げなら中国の資源購買力を高めることにもなりません。
ここで大切なことは米国は今年中に中国から資金をできるだけ引き上げてしまおうとしていることです。つまり中国の崩壊が来年にでもある、あるいは来年にでも崩壊させるということではないでしょうか。
人民元が上がれば、安いだけがとりえの中国産業には痛手になります。逆に下がれば資源購買力が衰える---どちらに転んでも、幅が大きくなれば中国は困難に直面することになります。米国は為替を使って中国を揺さぶり、ヨレヨレしてきたところで「打落水狗」とばかりに一気に攻勢を掛けるような気がいたします。 以上の見方はいかがでしょうか?
さて当の主席様は、欧州漫遊中ですがさっそく素晴らしい出迎えがあったようで…
中国の胡錦濤主席、英を公式訪問・チベット独立派がデモ
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20051108AT2M0802F08112005.html
ダライ・ラマ14世(70=写真)が同日、ホワイトハウスでブッシュ大統領と会談することを
明らかにした。同報道官によれば、会談にはローラ・ブッシュ大統領夫人も同席する。
ブッシュ氏はダライ・ラマと会うのを楽しみにしているという。
一方、ダライ・ラマはこの日ワシントンで米国の科学者らとの対話行事に出席するのに
先立ち記者団に対し、中国がチベットで「非常に、非常に弾圧的な政策を取っている」
と激しく非難した。
ダライ・ラマの特使ギャルツェン・ギャリ氏によれば、ダライ・ラマはブッシュ大統領に
対し、今月北京で胡錦濤中国国家主席と会談する際には、チベットに真の自治権を
与えるよう説得を要請する方針。マクレラン報道官はブッシュ大統領が胡錦濤氏との
会談でチベットの人権問題を持ち出す予定であることを示唆した。ブッシュ大統領は
2001年と03年にダライ・ラマと会っているが、中国はその都度、怒りを表明している。
ダライ・ラマは中国軍がチベットに侵攻した1959年にインドに逃れ、
北部のダラムサラに亡命政権を樹立した。
http://news.goo.ne.jp/news/jiji/kokusai/20051109/051108204205.hto7hxoy.html
思い詰めた顔でやってれば、日本人は恐れ入って他のに、中共が50年営々として気づいてきたイメージが一週間で消し飛んでしまいました。
どうでもいい話ですが、私は世界一恐ろしいのはアメリカの有権者と日本の女だと思っております(笑)
両方を敵に回しつつある中共の命運やいかに!?
ttp://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2005/11/08/linmu/
(普通語)
http://www.rfa.org/english/news/politics/2005/11/08/china_hongkong
(英語:こっちの方が詳しい)
ソースが自由亜細亜ラヂヲなのでアレなのですが・・・
「中国は儲けを国外に持ち出してはいけないので、利益が出ると支店を増やすしかない。」という話もあるのですが、中国から米国に利益を送金できるのでしょうか?
http://blogs.yahoo.co.jp/blogger2005jp/12624595.html
「茅于軾」ですよね?
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