日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 今回は「おフランス」の話にするつもりだったのですけど、急きょ差し替え。初動期である現在の様子をみるに1日放置しても大丈夫ですし、それより何より、チベット暦の元日である昨日2月25日の様子について、『東京新聞』の素晴らしい記事を目にしてしまった以上、これをスルーする訳にはいきません。

 という訳で『東京新聞』さん、タイトルまで借用して申し訳ありませんです。m(__)m

 では電子版に出たその記事から。現地報告です。限られた行数の中でチベット人の怒りと悲しみ、そして中共当局による厳重なる監視態勢という緊張した状況を見事に表現した、私にしてみれば「さすがはプロ」な文章。「抗議込め読経響く」というタイトルからして、胸に迫ってくるものがあるではありませんか。



 ●チベット旧正月祭り自粛 抗議込め読経響く(東京新聞 2009/02/26)

 【黄南チベット族自治州(中国青海省)=小坂井文彦】チベットの旧正月を迎えた二十五日、昨年三月のチベット騒動の犠牲者に対する哀悼と、中国当局への抗議を込めた僧侶たちの読経が各寺院に響いた。例年行われる競馬などの祭りを自粛し、静かな新年の始まり。街では暴動を警戒して、新年には不釣り合いな武装警官隊が巡回を続けていた。

 同日早朝、青海省都の西寧市からチベット人居住区に向かう途中、出会ったチベット人男性(32)が携帯電話を差し出した。チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ十四世の所蔵写真を見せる。

 昨年の騒動弾圧以降、ダライ・ラマの写真を所蔵するだけで公安当局による拘束の理由となるが、「信仰は絶対だ」と話す。中国当局によるダライ・ラマを批判する教育にも、僧侶は「信仰がいけないのか。国連は何と言っているのか」と訴えた。

 午前八時半、青海省海東地区のシャチュン寺で読経開始の太鼓が鳴った。僧侶たちが経堂に集まる。近くの村人たちは、経堂の脇で祈りをささげた。今年は「喪に服す」ため、新年のごちそうも、服の新調も控えた。

 経堂の外では、警官約百人がにらみを利かせていた。約一週間前から毎日、警官が巡回に来ている。

 シャチュン寺も昨年三月に抗議のデモを行った。直後、警官約五十人がデモを封じ、警官は北京五輪の終わる八月末までテント生活をしながら監視を続けたという。

 僧侶の一人は「例年は漢民族と一緒に中国の春節(旧正月)も祝うが、今年は高僧の指導で祝わなかった」と話した。抗議の一環で地元政府からの爆竹費用の提供も断った。

 チベット自治区のほか、周辺省内のチベット族自治州にも数万人の警官が動員されている。来月まで警戒にあたるようだ。

 僧侶の一人は「できるか分からないが、騒動一周年の来月十四日には抗議行動を起こしたい」と語った。



 紙面ですとこの記事の隣には中共当局が無理矢理に新年のおめでたさを盛り上げようとしているとか、チベット統治の正統性を強調するとかいった記事もあり、できるなら紙媒体で是非、御覧頂きたいところです。その記事の中には、中共政権側のチベット人研究者が記者会見において、



 チベット族がダライ・ラマの写真を持つだけで拘束される現状をドイツ人記者が正すと、「ドイツでヒトラーの宣伝ができないのと同じで、ダライを公共の場で宣伝してはならない」と言い切った。



 という驚きの一節もあります。

 冒頭の電子版の記事を目にした私は、すぐ家を出て近くの売店に新聞を買いに走りました。売り切れたものもあり、手に入ったのは『東京新聞』のほか、『読売新聞』『朝日新聞』『産経新聞』の3紙でした(いずれも2009年2月26日付)。

 『産経』は全く報じていませんが、『東京新聞』『読売新聞』『朝日新聞』はいずれも現地からのレポート。ただしさすがにチベット自治区には入れなかったようで、四川省・甘孜チベット族自治州などで取材活動を行ったようです。

 『読売新聞』は短めの囲み記事でしたが、



 ●四川省甘孜チベット族自治州では、昨年3月14日のチベット自治区ラサ暴動に端を発した反政府デモ弾圧に抗議し、市民や僧侶らが恒例の祝賀を拒否した。

 ●「何百人もの仲間が投獄されたままだ。新年の気分ではない」。約100台の軍用車両を高台から見下ろすチベット仏教寺院・甘孜寺では、昨年3~5月に何度かデモが発生。州内では最大の厳戒態勢となっている。年配の僧侶は「犠牲者と投獄者のために読経をするだけだ」と話した。



 などと報道。

 一方、『朝日新聞』がなかなか頑張っています。

「チベット追悼一色 旧正月、人影まばら 自治州、警察が監視」

 というこれもビジュアルっぽい見出しを掲げ、甘孜自治州の州都・康定の様子を詳報。



 ●中心街では、例年なら鳴る爆竹の音は聞こえず、広場の人影はまばら。大通りでは約100人の治安部隊が「おう!おう!おう!」とかけ声を発して行進。

 ●ホテル従業員によると、1週間ほど前から携帯電話のメール機能が使えなくなった。

 ●甘孜自治州内に住むあるチベット族男性は「平日と同じように過ごす。私たちはひたすら読経するだけ。理由は聞かなくてもわかるだろう」と、昨年の騒乱の犠牲者を追悼する意思を示した。



 また、亡命チベット人の街であるインドのダラムサラ発の記事もあります。



 ●チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が亡命した59年以来、「身内に不幸がある人は新年を祝わないが、社会全体での自粛は初めて」(亡命政府報道官)という。

 ●ダライ・ラマは24日、新年に寄せて声明を発表した。「昨年は数百人の命が犠牲となり、数千人が拘束、拷問された。内外のチベット人の新年を祝わない決意をたたえる」と表明。チベットで中国当局による抑圧が厳しい現状に触れ、「外出して自らの希望をわずかに示唆しただけで、拷問と拘束に直面する。挑発に乗って命を犠牲にしないように」と呼びかけた。



 とのことです。……あ、『朝日新聞』の記事は電子版にも出ましたね。

 ●チベット、凍る正月 まもなく騒乱1年、強まる監視(asahi.com 2009/02/26/08:00)

 『朝日新聞』はこのほかマカオで反体制活動を厳格に取り締まる国家保安法(国家安全法)が成立したことも報じており、ポイントが高いです。

 ●マカオ、国家保安法スピード可決 反体制活動に罰則(asahi.com 2009/02/26/00:03)

 なーにマカオがどうなろうと痛くもかゆくもないんですけど、この法律が香港でも成立すると、私はコソーリ活動ができなくなってしまいます。当ブログも文字通りの「大毒草」で、私がこれを香港で発表すれば即逮捕間違いなし。

 ――――

 ともあれ。中国国内においてチベット人は「私たちは正月を祝わない」運動を見事にやり遂げたようです。

 米国では在米チベット人約300名がニューヨークの国連本部前でデモを行ったとのこと。

 ●(明報即時新聞 2009/02/26/07:50)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20090226/ca40750i.htm

 ダライ・ラマ自らが賞讃しているのですから、何のタブーもない筈です。日本でもTSNJをはじめ関係各団体による何か呼応する動きがあったのでしょうか?





コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
ついでと言っては何ですが。 (御家人)
2009-02-26 12:51:44
昨年3月のチベット騒乱については、宜しければこちらを御参照下さい。

●シリーズ:チベット弾圧2008
http://blog.goo.ne.jp/gokenin168/e/595b6dccc4d1ee0d265ae8fac86b72fb
 
 
 
武士は食わねど (シンセン在住)
2009-02-27 00:39:39
マカオの立法の仕組みは香港と似たような感じ、というような程度の理解ですが、このタイミングで国家保安法がスピード成立というのは、世界的な景気悪化に加え、中国政府の大陸人へのビザ制限が追い討ちをかけている状況で、中共のご機嫌取りに必死ということでしょうか。

華南地区の製造業はえらいことになっていますが、これまで散々優遇されていて狡いなあとやっかんでいた同業大手の某台湾企業では、中国政府系の新興国策会社に人や技術情報を引き抜かれ、裁判を起こすも負けまくっているものの、今までの投資が大きすぎ、身動きが取れなくなっているそうです。
近い将来、台湾という国自体も似たような状況になってしまう危険性があるのではないかと嫌な予感がします。

アメリカ新政権の中国への対応も、背に腹は代えられない、どこも貧すれば鈍ずる、ということなんでしょう。

中国人は金で人の頬を叩くのがうまいと言うか、金=力=正義、民主主義とか人権とかいう絵空事で飯が食えるの?というような考え方が証明されているようで、嫌な気分になります。

こういうことを大陸で働いている自分が言えた義理ではないのですが、それだからこそ、一層、チベットの反骨に惹かれるものであります。
 
 
 
Unknown (や。)
2009-02-27 01:36:42
明報と言えば、↓というのもありました。
http://www.mingpaonews.com/20090226/cab2.htm

さすがにこれだけでは判断しかねるところはありつつも、「敏感な3月」の訪れを予感させます。
 
 
 
御家人さん大ピンチ (?!)
2009-02-27 10:45:06
香港人が直ぐにデモなどをおっぱじめる熱い性格ゆえたまたま「国家保安法」が成立しないだけであって、香港政府自身は同法律の制定を目指しているはずです。
最終的には、市民の突っ張りを無視して、この物騒な法律が成立する可能性があります。

日本の外国人参政権やら人権擁護法案やらも、同じような紆余曲折を経て成立する事になるんでしょうな。
 
 
 
コメントありがとうございます。 (御家人)
2009-02-27 18:08:57
>>シンセン在住さん
 マカオは香港に比べるとド親中ですからタイミング的に早すぎることはないと思います。条文に接してみないと2003年に香港で廃案になったものとの相違点などがわからないので、そこら辺は何ともいえませんけど。

 世界的な景気後退局面ですからどの国も必死でしょうけど、一党独裁制である中国に対する米国の距離感が劇的に変化することはないと思います。例のクリントン発言も散々叩かれているようですし。

 私はやはり中国社会の方が心配です。官製報道や要人の講話の中にも「失業者の群れに対する敵対勢力の浸透を警戒せよ」などという、いままでは見なかった種類のキナ臭い文言が登場しているので、中共政権の危機感は相当なものだと思います。ある意味1989年の天安門事件直後よりもひどいです。当時は敵対勢力云々ということは言われても「失業者の群れ」なんてものは存在していませんでしたから。今回のロシアとフランスに対するネット世論の盛り上がりに対する抑制もちゃんと行われていました。これが日本相手で,尖閣問題だと政争も絡んできますからどうなるか……。

 先日は来日した兄貴分のカリスマ教授と一献汲みつつ、中国経済なんざ所詮は空中楼閣、という話になりました。数字がどうあれ、日本など西側先進国と比べれば、身体の構造から基礎体力から免疫力までがまるで違う、とのことでした。先進国はやはり年数を重ねている分だけベテラン選手で見た目の勢いはなさそうだけど、新人とは鍛え方も違うし修羅場の経験も比較にならないから、中国などとても、という意味です。カリスマ教授はカリスマゆえにその解説や論文は中国国内のネット媒体でよく目にするのですが、普段はカナーリ楽観論を混入させているのか、いつも私の前では言うことが全然違います(笑)。

 有事シナリオとか、危機管理のあり方がそろそろ問われることになるのではないかと。中国の日系企業は、です。

 ――

>>や。さん
 チベット絡みであれば、当局の自作自演の可能性の方が強いような。それにしてもチベット暦の元日風景が報道の通りなら、治安当局は過敏すぎるように思います。締め付けが強いほど反発や抵抗も大きなものになる、と金鐘さんが喝破した通り。むしろ、いざとなれば都市部の漢族の方が当局にとってより危険なパワーになる気がするのですが。

 ――

>>御家人さん大ピンチ (?!)さん
 いやー香港で国安条例が成立しちゃったら本当にピンチです。サブカルチャーものなら問題はありませんけど、時事評論みたいなものは私が書いている内容だと全て不可になるでしょう。台湾の原稿料は一般に香港の三分の一くらいしかないので……ってそういうピンチ(笑)。でも、たとえサブカルものでも書いているのが御家人だとバレれば副業先に政治的圧力がかかると思います。いま現在もそれなりに気を遣っていたりするのです。

 ところで、香港は伝説の50万人デモを実現させたような2003年のころとは大きく変わっています。ぶっちゃけ、政治的には半ば終わっちゃってます。件の法律は「任期中には手をつけない」と行政長官が言明しているので2012年までは一応保証されているのですが、香港人の方が「私は香港に住む中国人」という自己認識を持つ新世代の台頭で様変わり。一攫千金より安定を求める社会へと転換しつつありますし、法律の内容も2003年当時のような無茶なものではないでしょうから、あと5年もすれば大きな抵抗もなくすんなり法案が成立するのではないかと思います。
 
 
 
在日チベット人と中国人の友好協会設立 (じゅんこ)
2009-02-27 22:22:13
2/10、京都でダライ・ラマ法王日本代表部事務所の
所長、ラクパ・ツォコさんの話を聞く機会があり
そのなかで言及されていた
在日チベット人と在日中国人の友好協会が、
2/25、この新年の日に日本で設立されました。

http://www.tibethouse.jp/news_release/2009/090225_friendship.html

大手メディアでは取り上げられていない、小さなニュースかもしれませんが
日本国内ではこうしたことが可能ですね。

とても嬉しかったので、お伝えします。

 
 
 
Unknown (que)
2009-03-01 10:10:23
チベタンのチャット友達と連絡取れました。2人とも正月は祝わないそうです。
日本で買ってきた本にダライラマ13世の写真が載ってるよっていったら、「ぜったいに汚い場所においてはだめ!」と念を押されました。
 
 
 
Unknown (御家人)
2009-03-01 13:47:52
>>じゅんこさん
 情報ありがとうございます。リンク先拝見しました。中共政権が漢族も少数民族もまとめて「中華民族」と呼び、中華民族の復興などと唱えている中国国内ではまず考えられないことですね。真の意味での共存。海外にしてようやくそれが可能というのはまことに皮肉なことです。

 ただ、このニュースを鵜呑みにしていいものかどうか、ちょっと調べてみる必要があるように私は思います。要するに中国側の背景が明らかにならない限り、素直に喜べない、というのが私の印象です。中国人が口にする「友好」ほど怪しいものはありませんから。

 ――

>>queさん
>2人とも正月は祝わないそうです。
 一般庶民まで徹底しているんですね。仮に日本をその立場に置くとすれば、「花見だ花見だ」と声高に叫ぶ統治者に反発して、開花目前である上野公園の桜の木を全て自ら伐採してしまうような激しさでしょうか。民族としての徹底した矜持を感じさせます。逆にいえば、チベット人はそれだけひどいことを中共政権からずっとされていた、ということなんでしょうね。

>「ぜったいに汚い場所においてはだめ!」
 中国に持ち込んでいる時点でアウトのような気が(笑)。ところで、その本を持っていることが露見しないよう御注意下さい。時節柄、これはマジメな話です。
 
 
 
Unknown (que)
2009-03-01 18:41:47
ご心配ありがとうございます。
しかし、「~軟禁中の談話」など禁書がうちの部屋には盛りだくさんです(涙)

チベタンチャット友達によると、13世の写真はもっていてもそれほどの危険はないそうです。誰にも見せませんけどね。
 
 
 
参りました。m(__)m (御家人)
2009-03-01 22:34:10
>>queさん
 やっぱり先生は敵対勢力のスパイだったんですね(笑)。
 
 
 
Unknown (que)
2009-03-02 05:33:45

御家人さんに送っていただいた本、能天気な母が勝手にこっちに送ってきました。小包あけたとき、のけぞりましたよ。息子を殺す気かと。
 
 
 
風の馬 ルンタ (que)
2009-03-05 06:21:11
福島さんのブログで知ったのですが、
チベットを題材にした映画がやっと公開されるようですね(1998年の映画です)
http://www.uplink.co.jp/windhorse/top.php

御家人さん、もしみたら感想をきかせてくださ~い
 
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