唐突ですが、戦争はやるかやられるかです。
例えば戦闘機同士の空中戦。どんな手を使っても相手を撃墜して、基地に生還する。それが肝要だと零戦の有名なエースだった故・坂井三郎氏は語り残しています。
墜とせばいいんです。不意打ちだろうと囮を使おうと何だろうと、どんな手を使っても。……騎士道精神なんていうのは第一次大戦までの話。
「それでは相手と同じレベルに落ちる」
というのは平時のBBSでならともかく、戦争ならそんなことを言っている奴から死んでいきます。坂井氏を含む第二次大戦当時の有名なエースたちは、その多くが背後から忍びよって一撃で敵機を葬るやり方でスコアを積み重ねていきました。
平時でも、相手によりけりです。真面目な討論ならまともに相手をしてやりますが、元々話の通じない畜類が喧嘩腰で挑んでくれば、それ相応に饗応してやるのが礼儀というものでしょう(笑)。
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いやー大人げない話ですが、香港人と一戦交えてしまいました。撃墜できたかどうかは分かりませんけど。
……もちろん相手は男ですし、夜戦や野戦じゃありませんよ。女性を相手に夜戦や野戦となったら笑顔で人を斬る配偶者が腰間三尺の秋水を一閃させて、いまごろ私は冥土喫茶。
いま考えてみると、香港人とはいえあれは「糞青」(自称愛国者の反日信者)ですね。とすれば、私にとっての現実世界における糞青初体験ということになります。香港人なので「亜種」ということになるかも知れませんけど。
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昨日の話ですが、元仕事仲間の仲のいい友人(30代前半)が香港からやってきました。来日は半分遊びで半分仕事。……というのは、来週末にゲーム業界の展示会があるのを取材するのが本来の目的なのですが、その手前一週間を有給休暇にして日本観光としゃれ込んだ訳です。
都心のホテルに着いて荷物を置くなり、事前連絡があった通りに初日から私を呼び出してカラオケです。カラオケといえば私はむしろ嫌いな方なのですが、香港や台湾の連中となら音痴同士で平気で恥をかけるので付き合います。
東京の場合は、中国語の楽曲の豊富な店となると行く場所が限られてしまいます。
……が、なぜか私の周囲の香港人はアキバ系&特撮大好きが多いので(普通なのは配偶者くらいかも)、本当はどこでもいいんです。ちなみに誤解されると困るのですが、私はアキバ系でも特撮ファンでもありません。
どうせまた「コンバトラーV」あたりから入るんだろうなあ、じゃあ「帰ってきたウルトラマン」あたりにしておくか、「仮面ライダー」はあいつの持ち歌だし。……などと考えつつ待ち合わせの場所に行きました。
特撮メドレーに付き合いつつ北京語の歌を何曲か混ぜて、最後は下手糞な広東語で「ミスターBOO」の主題歌を歌って愛嬌を振りまいて締める、というのが私の定石です。
……さて約束した場所に着いてみると、元仕事仲間には年格好の似た同行者が1名。仮にこの同行者をA君としておきましょう。中学以来の友人だそうです。長身の痩せ形で、服装などから察するに、やはりアキバ系の様子。
ところがこいつが曲者でした。自己紹介の挨拶を交わしたとき、何やら私に向けられた両目に不遜な光がみてとれたあたりからそもそも妙な気がしていたのです。
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一週間日本で遊ぶのに男連れとは不粋だなあ、お前まだ彼女できないのかよー、いや仕事が忙しくてさー、などと故旧との再会を喜んでいた私たちの空気を、このA君がかき乱したのが事の発端です。
カラオケは果たせるかな、元仕事仲間による「VVV!ビクトリー」で幕開けとなるセオリー通りの展開。……かと思ったらすぐに異変が起きました。続いてマイクを手にしたA君が選んだのは、
「大刀向鬼子們的頭上[石欠]去」
だったのです。要するに日本人をぶっ殺せ、という内容の中共軍歌というべきもので、あの2004年の中国で開催されたサッカーアジアカップでも昨年の反日騒動でも真っ先に歌われたポピュラーソング(笑)。私は元仕事仲間と顔を見合わせてアイコンタクトです。
(おい、こいつ大丈夫か?)
(うーん、こういう奴なんで勘弁してくれ)
特撮系カラオケなんだから、
「死ね(アー)死ね(ウー)死ね死ねー!日本人は邪魔っけだ」(レインボーマンの挿入歌)
……ぐらいのシャレを効かせればいいのに、いきなり直球勝負。しかし中国語の読める日本人(しかも初対面)の前でのっけから歌いますかね普通。
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私は元仕事仲間の顔を立てて構わずにいたのですが、A君が次に歌ったのは中国国歌。これも反日ソングです。それだけならまだしも、歌が終わってから、
「我想最後向日本人説一説:釣魚台是我們的!」(最後に日本人にひとこと言っておきたい。尖閣諸島は我々のものだ)
と、これは確か昨年の香港の映画祭で受賞者のひとりがスピーチの最後に口にして喝采を浴びた一節です。
しかもカラオケ屋への移動中に雑談したときから気になっていましたが、「日本人」のところが全て「[o架]仔」とか「蘿蔔頭」になっていました。この一節でもそうです。
「[o架]仔」
「蘿蔔頭」
というのは、広東語において日本人を貶めるときに使う一種の差別用語です。北京語の「小日本」よりひどいかも知れません。まるで私を「日本軍国主義」が人の形をした存在として見ているかのようで、ちょっと可笑しかったです。
しかし当然ながら、そういう言葉を使われて愉快ではありません。
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香港にいたころ、旧正月で配偶者の年配の知人の家に配偶者の友人らとみんなで夕食に招かれたことがあります。
この知人というのは配偶者やその友人が以前勤めていた会社の社長なのですが、日本人の私がゲストとして座っている前で、話題の中で日本人を指すときに「[o架]仔」という言葉を連発し、終始その単語を使っていました。
他意はなかったのかも知れませんが、客に対する礼を失していることは事実です。その場にいた日本人は私だけ。あのときはもう腹が立って、御馳走の並んだテーブルをひっくり返し、その知人とやらをぶん殴って帰ろうかと本気で思いました。
でも、配偶者の知人ということで我慢しました。アウェーでもあります。それでも怒りの収まらない私は帰路に配偶者に向かって、
「どうしてあいつが『[o架]仔』を使い続けているのに止めなかった?日本人であるおれに対して無礼じゃないか。お前ら香港人風に言うと、おれの顔は潰されたってことになるんだけど、お前はそれでも平気なんだな?」
と責めたのですが、配偶者はあいにく超天然が持ち前で、そういうことに気が回るようにはできていません。
「今度同じことがあったら、お前の家に招かれたときおれは『支那人』『支那豬』といった言葉を使うから覚悟しておけ」
と言ったらさすがに驚いて、ただならぬ事態であること、私がかなり怒っていることがわかったようでした。
(「下」に続く)
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