日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 ウイグル人はその故地を、中共政権によって強制収容所に変えられてしまった。

 ……という印象が、強く残りました。日本ウイグル協会が主催する緊急シンポジウム「ウイグルで何が起きているのか?」に出席しての感想です。

 今日のウイグル、チベット、内モンゴルは明日の台湾であり、明後日の日本である。……との危機感も、再認識させられました。

 コア層のコア層によるコア層のためのシンポ、というべき内容で、平素からウイグルをはじめ中国情勢に留意している人にとってはサプライズに乏しい面があったかも知れませんが、パネリストの方々に間近に接し、直接語りかけられると、テーマについての問題意識や感慨もまた新たになります。

 個人的には意義深く非常に良いイベントでした。





 ウイグル人はその故地を、中共政権によって強制収容所に変えられてしまった。

 ……との感想を改めて掲げておきます。



「ウイグル人はすでに自分の地域で二等市民になっているんです」

「職場を奪われ、自由を奪われ、自分の行動が自分の考え方で自由にできない、それが全てです」

「ウイグル人は現地で、命だけは自分のものとして持っていますけど、それ以外の文化、宗教、全部、全てが中国、つまり政府や漢人によって奪われているんです」



 ……とは、今回のメインキャストで日本ウイグル協会会長・世界ウイグル会議日本全権代表のイリハム・マハムティさんが当ブログのインタビューに際して語ってくれたことです。今回のシンポジウムでは、イリハムさんをはじめ各パネリストがこの点を強調し、また中共政権の覇権主義に警鐘を鳴らしました。

 ウイグル人の直面している苛酷で悲惨な状況は、すでにチベットや内モンゴルにおいても現出していること。

 台湾では対中融和路線を掲げる馬英九・総統が国民党主席にも選出され、中国のカネとヒトに呑み込まれそうな形勢にいよいよ拍車がかかりそうであること。

 そしてこうした状況は、日本にとっても、決して他人事ではないこと。民主党が掲げる諸政策を観じれば、総選挙による政権交代が行われた場合、その危険性はいよいよ高まることでしょう。

 他人事では、ないのです。

「ウイグル地域やチベットだと警察は何かあると5分もかからずにやって来る。降って湧いたように多数の警官や武装警察が駆けつけてくる。しかし6月26日に広東省の玩具工場で起きた漢人によるウイグル人暴行事件では、警察は5時間後にようやくやって来た。しかも漢人の暴行を眺めるばかりで制止しなかった」

 とイリハムさんは今回のシンポジウムで語っています。これをパネリストの一人である西村幸祐さん(ジャーナリスト・チャンネル桜キャスター)が受けて、

「日本でも去年の長野で、聖火リレーのときに同じことが起きたではないか。日本の警察官は中国人たちの横暴を眺めるばかりではなかったか」

 という趣旨の発言を行いました。まことにその通りであって、「他人事ではない」ことが、すでに日本でも起きているのです。

 ――――

 中共政権によるウイグル統治60年の歴史をイリハムさんの発言から拾ってみると、次のようになります。



 ●60年前に中国の軍隊がウイグル地域(東トルキスタン)に入ってきた。

 ●中国の軍隊はウイグル地域を軍事的に制圧した。

 ●制圧完了後、進駐軍の一部が新疆生産建設兵団として屯田兵のような形で同地に残留した。

 ●新疆生産建設兵団がまず手をつけたのは、工業ではなく農業だった。

 ●新疆生産建設兵団はウイグル人から最も好適な農地を奪い、さらに水源を奪ってその付近を開拓した。

 ●ウイグル地域の農業は地下水ではなく、山からの雪解け水に頼っている。

 ●このため新疆生産建設兵団の駐屯地はいずれも山の近くにある。

 ●水源を奪われたウイグル人の農民は、新疆生産建設兵団から水を買わざるを得なくなった。

 ●やがて新疆生産建設兵団は工業建設に着手した。

 ●中国は「各職場において地元少数民族の占める比率を65%以上とすること」との法律を定めた。

 ●これによって多数のウイグル人が職を得ることができた。当時はウイグル地域へ定住しようという酔狂な漢人(漢族=中国人)などいなかったから。

 ●しかし文化大革命での下放運動を契機に、中国当局による植民政策(漢人の強制移住)がどんどん推進された。

 ●漢人が激増した結果、ウイグル人は職を奪われ、「65%雇用」の法律は有名無実化した。

 ●貧困のため売血に走ったウイグル人たちが同じ注射針を使ったことにより大量のエイズ感染者が出現した。

 ●事態を打開しようと当局に善処を求めるウイグル人は「民族主義者」として弾圧された。

 ●2000年からはウイグル語で教育を行う自由が奪われた。いまではどんな僻村でも中国語教育が強制されている。

 ●2006年から「就職斡旋」という名目でウイグル人女性を中国本土へ連行し、漢人のやらない低賃金の仕事をやらせるようになった。

 ●連れていかれた女性は15~25歳の未婚の処女のみ。これは明らかな同化政策としてウイグル人の反発を呼んだ。



 こうして蓄積された民族の怒りが、6月26日の広東省の玩具工場で発生した漢人によるウイグル人暴行事件で頂点に達します。

 ウイグル人はこの事件を、インターネットで知りました。YouTubeに出回り、日本のテレビニュースでも使われた、あの暴行映像です。しかもこの映像は撮影者が漢人であるばかりか、一方でウイグル人を暴行した漢人たちを英雄扱いし、ウイグル人を軽侮し罵倒する言論が中国国内の掲示板にあふれ返ったといいます。

 この情報に接して驚愕したウイグル人は、怒りを秘めつつも事件の真相を説明してくれるよう地元当局に請願し、その回答を待ちました。5日間待っても回答がないため、ネットを通じて集まったウイグル人大学生が、ウルムチ市でデモ行進を実施したのです。

 「官逼民反」という中国語があります。「官」による横暴が極限にまで達したとき、追い詰められた「民」はその成否を問わずに蹶起する、という意味です。

 ところが、ウイグル人学生たちによるこのデモは、「蹶起」ではありませんでした。中国の国旗である五星紅旗を掲げ、ウイグル人も同じ中国国民として漢人と平等に扱ってくれ、そして事件の真相を説明してくれ、という意思表示だったのです。

 このデモに他のウイグル人も合流し、膨れ上がったデモ隊が政府庁舎のある人民広場へ入ろうとしたとき、その前に立ちはだかった治安部隊が群衆に実弾射撃を行い、また装甲車をデモ隊に突入させてウイグル人を次々に轢き殺していったといいます。

 ……が、当ブログが以前指摘したように、その現場を捉えた「流出画像」「流出動画」が現在に至るまで出て来ないため、全ては想像するしかありません。

 ――――

 想像の根拠となりそうなものはあります。

「7月7日未明時点で公安部門は暴力・破壊・略奪・放火の容疑者としてすでに1434名を逮捕。このうち男性は1379名で、女性は55名」

 という新華社電です。

 ●「新華網」(2009/07/07/08:40)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/07/content_11664971.htm

 当局発表ということになりますが、これは当ブログでしばしば指摘しているように、尋常な数字ではありません。中国当局はデモ隊を暴徒に置き換えていますが、その総勢は3000名とも1万名ともいわれます。

 異常ではありませんか。「1434名」という数字の多さと、逮捕劇の迅速さ(たった丸一日)が、です。

 デモ隊が3000名とすればその半分、1万名としても参加者の15%が逮捕されているのです。官民衝突があったとすれば、治安部隊が懸絶した武力、例えば密集した強力な火力でウイグル人を圧倒しない限り、短時日にかくも高い比率の逮捕者が出ることは考えられません。

 ここからさらに想像することもできます。「1434名を逮捕」というこの1434名の中に、治安部隊による武力鎮圧での負傷者はもちろん、実は死者数も計上されているのではないか、ということです。

 ――――

 シンポジウムが始まる前に、唯一冷房のよく効いていた喫煙室にて偶然、イリハムさんと連れションならぬ連れモクをする格好になりました。

 イリハムさんによると、いまウルムチでは武装警察が令状なしでウイグル人の住まいを家宅捜索しているのだそうです。実質的な戒厳令状態といったところでしょう。

「銃器を所持しているかも知れないから」

 という理由で、武装警察がウイグル人女性の「身体検査」を行う、というセクハラも横行しており、怖くてとても外出できない状態だ、とのこと。

 また最悪の場合、「流出」や連携成立を恐れる当局がウイグル人から携帯電話を強制的に回収し、中のデータを全て消去してから返還するという措置すらとられるかも知れない、ということでした。

 自民族の土地が強制収容所になってしまう怒りと悲しみと恐怖。他民族による苛酷な統治を受け動物のように扱われ、せめて人間としての尊厳を求めんとするや、待っているのは容赦ない武力弾圧。

 それが正にいま、ウイグルで起きていることなのです。

 ――――

 パネリストの一人である横浜桐蔭大学教授・チベット文化研究所所長のペマ・ギャルポさんが、

「こうして見渡すと、大体いつも集会にお見えになる同じ方々で、喋る人たちも同じで」

 という意味の話をして聴衆の笑いを誘ったあと、

「本当はこの話を、ここに来ていない人たちに聴いてもらうべきだと思います」

「だからこそ、ここにいる人たちは、他の人たちにどんどん情報発信していかなければならないのです。今日のシンポジウムの意義のひとつも、そこにあります」

 と語っていたのが印象的でした。

 質疑応答を終えて閉会の挨拶に際し、イリハムさんに最後の質問として「日本人と日本に望むことは何か?」という問いかけがなされました。

「日本人に望むことは、貴重な一票、良い人を国会に送って、日本を本当に変えてくれる方々を選んでほしいということです。国会が変われば政府が変わって、私たちの運命に関心を持つ政府になってくれる。そうすれば私たちのいまの状態は必ず、早めに改善されるだろうと私は思っています」

 というのが、イリハムさんの回答でした。

 ――――

 余談になってしまうかも知れませんが、今回のシンポジウムでは、先日当ブログにトラックバックを打って下さった西村幸祐さんに初めてお目にかかり、ご挨拶させて頂くことができました。西村さんからは温かい言葉で励まして頂き、身の引き締まる思いがしました。

 また、西村さんはやはり今回のパネリストでチャイナウォッチャーである拓殖大学客員教授の石平さんに私を引き合わせて下さいました(西村さん、ありがとうございました)。石平さんからは、

「互いに頑張って、中共にとっての『大毒草』をあちこちで育てましょう」

 という激励の言葉を頂きました。かくなっては、不肖御家人も相勤めなければなりません。

 ……そして、ここまで読んで下さった皆さんも、もはや御同朋であります。

 一人ひとりそれぞれが、「大毒草」の輪を広げていこうでは、ありませんか。





 余談の余談です。会場では多彩なウイグル関連グッズが販売されていましたが、その中で一冊の本に目が留りました。平積みにされているものが、どんどんさばけていくのです。

「中国、発禁の書!」

「ウイグル文学初の邦訳」

「『中国の火薬庫・新疆ウイグル』は、なぜ独立を求め続けるのか?その原点を描いた壮大な歴史小説。封印された物語がここに甦る!」

 ……といった帯の文字が目を魅かずにはおれません。


 
英雄たちの涙―目醒めよ、ウイグル
アブドゥレヒム・オトキュル
まどか出版

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「ウイグル人の怒りと悲しみの理由が、これを読めばよく理解できます」

 という説明にも誘われて、迷わず購入しました。

 「ウイグル文学」ということが、何よりもまず魅力的。養生に努めつつ、じっくりと読んでみるつもりです。








コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
これは衝撃です (おむら)
2009-07-28 01:58:21
>●新疆生産建設兵団はウイグル人から最も好適な農地を奪い、さらに水源を奪ってその付近を開拓した。

支那企業が、日本でこれやろうとしたんですよね。
幸い、大半が国有地なので失敗したようですが。
全然他人事じゃありません。恐ろしい……。

ちなみに、東南アジア地域でも昨今「水の確保」が問題になってます。
工業力アップの結果、水不足・水質汚染が表に出てきて、地下水汚染もひどい状態です。
 
 
 
Unknown (いいちこ)
2009-07-28 11:12:52
感恩 です
 
 
 
Unknown (t)
2009-07-28 11:15:51
御家人さんお疲れ様です。
貴重な情報いつもありがとうございます。
私もここで知ったことを周囲に話していこうと思います。

中国「強烈な不満」 ウイグル会議議長きょう来日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090728-00000103-san-int
中国外務省は27日、「日本政府は中国が何度も申し入れたことを顧みず、カーディル(氏)が日本を訪問し反中分裂活動を許したことに強烈な不満を表明する」とする報道官談話を発表した。

政府は頑張っていますが、あいかわらずマスゴミは黙殺してますね。

 
 
 
Unknown (だるま)
2009-07-28 12:21:40
遠方で聴けなかったですが、
自身感じた事や思ってる事はブレなく一致してます。
ヒトモドキが人を支配出来るワケない!

 
 
 
Unknown (ざる)
2009-07-28 12:38:53
ここでシンポジウムを知り初参加してきました。
動機は(話はネットで拾えるから)頭数を増やすことでしたが、リアルで貴重な話が聞けて有意義でした。ありがとうございました。
ただ、パネリストが揃っていたのでもっとたくさん集まると思っていました…。

西村さんの「日本は敗戦後19年で東京オリンピックを開いたのに、平成になってから何をしてきたのか。」という問いかけもショックでした。

>一人ひとりそれぞれが、「大毒草」の輪を広げていこうでは、ありませんか。

はい。なにかしなければ。と思うようになりました。
御家人さんのご活躍をお祈りするとともに、どうぞ、お体を大切に!!
 
 
 
国民党に関して (Unknown)
2009-07-28 17:04:45
曾ての「党国制」の否定もあって、総統と党主席との兼任を否定して来た国民党ですが、ついに「公約破り」の形で、馬英九が党主席に就任してしまいました。
日本に於いては、現在次期与党になるであろう民主党が、マニュフェストの内容を取っ替え引っ替えしていますが、馬も就任前はそうでした。
「発言がコロコロ変わる」と揶揄され、馬本人は、「北京オリンピックボイコット」を声高に叫んだり、下手な台湾後でしゃべったりして、反共分子や、本土派を安心させる戦略に出ました。
しかし、蓋を開けたら何の事は無い、媚中まっしぐらでした。
 
 
 
コメントありがとうございます。 (御家人)
2009-07-28 20:25:45
>>おむらさん
>支那企業が、日本でこれやろうとしたんですよね。
 そんなことがあったんですか!知りませんでした。是非是非kwsk御説明をば。m(__)m

 ――

>>いいちこさん
 とても良いシンポジウムでしたよ。豪華なパネリストを揃えた主催者に拍手です。

 ――

>>tさん
>私もここで知ったことを周囲に話していこうと思います。
 みんなで「大毒草」を育てましょう!

>政府は頑張っていますが
 私は今回ツンデレを装いましたが、ビザが下りたことはやはり嬉しかったです(笑)。

 ――

>>だるまさん
 実はそのヒトモドキもまた中共人による被抑圧民族だったりするので救いがありません。まあ漢人に同情したりはしませんけど。……て、これもツンデレ?

 ――

>>ざるさん
 当ブログの告知がざるさんの背中を押す形になったのであればとても嬉しいです。開場前から結構人が集まっていたのに、結局人数は意外に伸びなかったのが残念でしたね。かくなる上は出席した私たちが拡散に努めるのみです。

>西村さんの「日本は敗戦後19年で東京オリンピックを開いたのに、
>平成になってから何をしてきたのか。」という問いかけもショックでした。
 同感であります。ですから靖国神社に参拝するときには、いつも感謝の心のみです(現存の戦前・戦中派の方に対しても)。
 
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