江沢民が出てきましたね。
いや他でもない9月3日の「抗日何たら記念イベント」のことです。胡錦涛が記念演説を行いました。その場に出席した要人の名前もズラリ。その筆頭、つまり胡錦涛に次ぐ序列ナンバー2の位置に江沢民の名前がありました。
下記URLはそれを伝える『人民日報』(2005/09/04)一面のPDF版です。ある意味節目になるかも知れませんので、こういうものはとっておく方がいいかと思います。
http://www.people.com.cn/pdf/200509/04/0904A1.pdf
実は大きな流れの話をしたいのです。江沢民の出現もその文脈で語るべきなのですが、いまちょっと手が離せない(仕事優先)ので遺憾ながら手近な話題にとどめます。上っ面をなぞるだけになるかも知れませんが、まあ予告編のようなもの、ということで諒として頂ければ幸いです。
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さて江沢民。表舞台に姿を現わしたこと自体がニュースですけれど、やはり「序列2位」というのが眼をひきます。
●江前主席、今も序列2位か=肩書なくても扱い異例-中国人民日報(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050904-00000036-jij-int
【北京4日時事】4日付の中国共産党機関紙・人民日報は、抗日戦争勝利60周年を記念した3日の胡錦濤国家主席の演説を1面トップで報じた中で、記念式典に出席した江沢民前国家主席を胡主席に次いで2番目に紹介した。江氏は昨年9月、共産党中央軍事委員会を退任、今年3月には国家中央軍事委からも退き、公式な肩書は何もなくなったが、異例の扱いとなった。3日の新華社電も同様の序列で伝えている。(2005/09/04/15:02)
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確かに異例です。中国について報じる海外マスコミにとっても、常識的に考えても、ひいては中国の一般庶民にとっても、これは異例でしょう。
ただ『人民日報』は中国共産党中央の機関紙です。そこでこの序列が明らかにされたということは、一般庶民や末端幹部はどうあれ、党上層部においてはこの序列がいちばんしっくりくる、ということなのでしょう。異論もあったかも知れませんし、事前に様々な綱引きが行われたのだろうと思いますが、何はともあれこのランキングに落ち着いた、と。
とりもなおさず、これは党上層部における主導権争いの現状を反映したものです。肩書がなく、事実上引退した江沢民が序列ではいまなお胡錦涛に次ぐナンバー2に収まっている。それが党上層部の最大公約数的感覚(あるいはある政治勢力が押し切った結果)として「一番しっくりくる形」なのですから、野次馬である私たちはやはり「異例」と言わざるを得ません。そして中共は、上層部において政治的に何事かが進行しつつあると外部から勘繰られても仕方がありません。
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「いまなお胡錦涛に次ぐナンバー2に収まっている」と迂闊に書いてしまいましたが、果たして「いまなお」なのかどうか。ここ半年、あるいはもう少し長い時間、例えばここ1年近くといった流れの中で、紆余曲折を経つつも、江沢民がナンバー2に居座る状況がようやく形成された、と言うべきかも知れません。
3月の全人代(全国人民代表大会)では、国家中央軍事委員会主席から引退するという花道イベントがありながら、ついに姿を見せなかった江沢民。それがここで出てきたというのは、半年近い党上層部における主導権争いを経て、全人代当時には望めなかった状況、例えば出てくるに相応しい格式(ナンバー2という序列)が用意されたからなのかな、と私は考えます。
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この状況が国家主席+党総書記+党中央軍事委主席を務める序列第1位・胡錦涛にとって望ましいものとは当然ながら考えにくいです。下のニュースはそれを裏付けるものといっていいかも知れません。
●胡錦濤・中国国家主席、胡耀邦・元党総書記を復権か(ロイター通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050904-00000609-reu-int
【北京4日/ロイター】中国の胡錦濤・国家主席は最近、改革開放路線を指揮したが失脚し1989年4月に死去した胡耀邦・元党総書記を復権させる決断をした模様だ。11月20日に人民大会堂で、胡耀邦氏の生誕90周年記念式典が共産党主催で行われるという。胡耀邦氏の家族に近い筋と生誕記念式典の関係者が明らかにした。
国民に人気のあった胡耀邦氏の追悼集会は、1989年6月の天安門事件に発展。中国の国営メディアでは今でも、その名はほとんど言及されない。
ある関係筋は「胡錦濤・国家主席は、胡耀邦氏の名を借りることで、その政治的な資産を受け継ごうとしている」と述べた。(2005/09/04/20:41)
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同様のニュースは香港紙でも流れました。元ネタはやはりロイター電です。
●『明報』(2005/09/04)
http://hk.news.yahoo.com/050904/12/1g9lq.html
そして今日の親中紙の筆頭格『香港文匯報』もこのニュースを掲載。ニュースが事実であることを中共政権が認めたといっていいでしょう。
●『香港文匯報』(2005/09/05)
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0509050003&cat=002CH
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なぜここで胡耀邦?ということですが、ロイター電のいう、
「(胡耀邦の)政治的な資産を受け継ごうとしている」
というのは曖昧ですね。
第一に言えることは、世代が異なるとはいえ、胡耀邦も胡錦涛も共産主義青年団(共青団=ユース共産党)人脈ということです。同じ系列の人脈に属するのです。胡錦涛は共青団を足場に主として党務ポストを重ねつつ抜擢されていった訳ですが、トウ小平はもちろん、胡耀邦も生前、共青団人脈の有力なホープとして胡錦涛を可愛がっていたのかも知れません。要するに、胡錦涛を頂点とする共青団人脈を改めて固め、気合を入れ直すといったところでしょうか。
『明報』の報道ではこのほか、胡錦涛が今回切った胡耀邦カードのもうひとつの効用として、
「一部の自由派学者から賞賛されることを狙っているとみられる」
としています。「自由派学者」とは、端的にいえば1989年の天安門事件の名誉回復を求めるような知識人ということでしょう。そういう側面があるかも知れませんが、それがどうした、権力闘争に何か効果あるの?といえば甚だ疑問です。
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で、私にはもうひとつの見方があります。胡耀邦を持ち上げることで、長老たちや物故した元老の子女などからの支持を強めよう、あるいは関係修復を図ろうとしているのではないかということです。むろん、何の根拠もないのですけど。
長老というのは胡耀邦と同時代(80年代)に第一線にいた人物、もはや現役を引退して80代から90代になろうかというところですが、元々は胡錦涛にとって有力な支持母体であったこの勢力が、今年1月の趙紫陽・元総書記の死去に伴うゴタゴタ(生前の事蹟の再評価を求めた)で、胡錦涛との距離を置いたように思えます。物故した元老の子女はいま現役で中堅よりちょっと上のポスト(地方の指導者から閣僚クラス)まで昇格してきていますが、この2代目グループも趙紫陽死去当時、長老連と同じ立場をとりました。
趙紫陽を再評価しろという要求は故人への友情云々というより、趙紫陽の業績を抹殺してしまうと、中国の改革・開放は長老たちが第一線にいた1980年代をすっ飛ばして、江沢民時代から本格化した、ということになってしまうからです。江沢民を子供扱いできる長老連にとっては許せることではありません。そういう関係から、胡耀邦を改めて持ち上げることで、胡錦涛は支持母体との関係修復を狙っているのではないかと愚考する次第です。
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以上は事態のほんの一部分にすぎないのですが、いま時間的余裕がなくてこれだけしか書けず申し訳ありません。一度腰を据えてここ1年の流れを振り返りたいと思います。
ちなみに、日本のマスコミは胡耀邦を「復権」としていますが、これはどうでしょう。確かに胡耀邦は総書記の座から引きずり下ろされましたが、ただそれだけで、党中央政治局員、さらに最高の意思決定機関ともいえる党中央政治局常務委員のポストからは外れておらず、趙紫陽のように公職追放・軟禁といった扱いを受けた訳ではありません。1989年4月に死去した時点でも「偉大なる革命家」などの様々な賛辞とともに、大がかりな国葬(あるいは党葬?)が行われています。
また、その名を出すことが決してタブーでなかった証拠に、記事検索をかけると今年の様々な記事に胡耀邦の名前が散見されます(以前視察に来たとか)。さらに昨年秋、趙紫陽系の改革派だった田紀雲が胡耀邦を追憶する文章を発表しています。あれは確か江沢民の党中央軍事委主席引退により胡錦涛政権がスタートした(四中全会)前後だったかと思います。とすれば田紀雲の文章発表はそれ自体が政治活動であり、胡錦涛系列のささやかな示威活動だったのかも知れません。
今回の胡耀邦カードも、胡錦涛系列によるより大がかりな示威活動というのが本質でしょう。それがどれほどの規模と勢いを持つものになるのかは興味深いところです(しまった紋切型)。
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死んだ人も権力闘争の道具ですね。
今日もどこかで暴動があって、窮状を訴える人々の声が響いているであろうに、この浮世離れした政治闘争。中国共産党は本当にお目出度い独裁政党と改めて思うわけです。
日本を訪問し国会で国会議員の礼賛のなかにいたコヨウホウ。それがあとで親日派というレッテル張りに使われ政治生命を絶たれてしまった。
コヨウホウは浮かばれない。趙紫陽はもっと浮かばれない。死者への勝手な評価は好い加減にしないと大火傷するだろうと思ったりします。
それより毛沢東の再評価も歴史的な問題として是非行ってほしいなと思ったりします。あるわけ無いか。
http://www.excite.co.jp/News/world/20050831183423/Kyodo_20050831a343010s20050831183426.html
でも、ご指摘のように、江沢民が2番目の序列で登場したと言うことは、こうした一連の動き(なんでしょうか)が江沢民の上海閥に打撃になっていないことなのでしょうか。或いは、逆に対抗手段として、江沢民側がそのような序列を要求したのか、私に見られる情報からではこれ以上何とも言えないですね。ただ、抗日戦の死者の数を水増ししたという報道は明らかに江沢民時代に取られた様々な反日運動へのアンチに、結果としてなっていることは確実でしょう。ご高見を伺いたいです。
えーと、胡錦涛さんてのは、どうしてトップに登り詰められたんでしょうか? そんだけ江沢民さんが影響力あるなら、ずーっと江さんがトップにいそうな気もするのですけど。
簡単に言うと、小平が正統後継者に胡錦涛を指名したから。
江沢民は胡錦涛の中継ぎとして指名されました。
小平に抗うほどの力が江沢民にあれば、そのまま権力を維持できますが小平ってのは晩年は既に生ける伝説と化していたので、元々人気のない江沢民では駄目でした。
これが概要。
これに軍閥、学閥、地方閥、出身母体、団体派閥、親戚がぐちゃぐちゃと絡み合い、経済・外交状況も大きく影響し、自身の功績で最後のアピールと相成ります。
胡錦涛は元々次代を担うエリートとして期待されており、第二次天安門事件後のチベット弾圧で小平のお眼鏡に適い、見事次期後継者に選ばれました。
清朝以前の皇帝選び(内紛含め)と基本は一緒です。
沿岸州を中心に大暴れしたようですね、13号。
被害金額27億元か...それともこれで土地の
接取が容易になったと言う事で台風様様なんで
しょうか..
アメリカでも今、被災者を地上げ屋&再開発業者がカネのカバンもって追い掛け回してるそうですよ。
中国なら、そのさらに上を行くでしょう。
半年ぐらい後の続報が楽しみですね。
http://snow.kakiko.com/korea02/e_select/e0135.html
2007年頃と思われる日朝紛争(現行自衛隊のまま有事)を契機として
・日本は憲法改正して普通の国、そして経済発展。
・南北朝鮮は統一し奈落の一途。
・シナは中華人民共和国、華南共和国、及び西部に三分裂(チベット・台湾は独立)
さしあたり、江沢民が華南共和国でしょうか。(^_^;
いるつもりでもドキリとさせられるような話が出てきた
り、かと思うと、緩い変化球がでてきたり、とブレという
か揺れというか、なにかふわふわと頼りない感じを受ける
んですね。
私は日本語のニュースしか読めませんので^^; 翻訳
やニュースを片寄って見ていて、たまたまそう感じるだけ
なのかもしれません、単に私の勘違い、と。
でも、なにかすっきりしない。
方向性が見えないというか。
確かに、反日はやりたい、でも投資は呼び込みたい、と
いうのはあるんでしょう。
でも、どうにも腑に落ちない。
で、江沢民さんがナンバー2で出てきたのを見て、やっ
ぱりコレなのかな、と思った訳ですが。
どんなもんでしょうねえ~~
……と、こっそり催促してみたりして。^ω^;
http://www.hakudai.jp/
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