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CLSI M100 31st アップデート要点

2021-11-04 | 微生物:細菌・真菌
論文名Overview of Changes to the Clinical and Laboratory Standards Institute Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing, M100, 31 st Edition
雑誌J Clin Microbiol. 2021 Sep 22
著者名Romney Humphries, et al.

アジスロマイシンと赤痢菌
  • 耐性メカニズムを持たない株の疫学的カットオフ値(ECV)は、Shigella flexneri ≦8 μg/mL、Shigella sonnei 16 μg/mLであった
  • バングラデシュの侵襲性下痢症患者にアジスロマイシン(成人1日500mg)を5日間投与した観察コホートの新しいデータに基づき新しいブレイクポイントを策定
  • アジスロマイシンのSを≦8μg/mL、Iを16μg/mL、Rを≧32μg/mLとした
  • 多くの臨床検査室ではShigellaを種レベルで識別していないことから、CLSIでは属レベルのブレイクポイントを推奨
淋菌に対するディスク拡散法によるブレイクポイント
  • M100 29th Editionにおいて、淋菌に対するSのみのアジスロマイシンのMICブレイクポイントを≦1µg/mLとした
  • M100 31st Editionでは、Sのみのディスク法のブレイクポイントを≧30mmとした
  • セファロスポリンアレルギーのある患者に対しては、アジスロマイシンとゲンタマイシンの併用療法が治療の選択肢
セフトロザン・タゾバクタム 
  • M100 31st EditionでH. influenzaeに対するセフトロザン・タゾバクタムのブレイクポイントを追加
  • β-ラクタマーゼ陽性/陰性のH. influenzaeの99%以上は,セフトロザン・タゾバクタムに対するMICが≦0.5 μg/mLであり、これをSのブレイクポイントとした
  • セフトロザン・タゾバクタムを用いたH. influenzaeの検査方法は限られており、CLSIでは現在のところルーチン検査を推奨していない  
イミペネム・レレバクタム
  • 米国食品医薬品局(FDA)より、感受性の高い好気性および嫌気性のグラム陰性桿菌によって引き起こされる成人の複雑な腹腔内感染症(cIAI)および腎盂腎炎を含む複雑な尿路感染症(cUTI)の治療薬として承認
  • レレバクタムは、クラスAおよびCのβ-ラクタマーゼを阻害するが、クラスBおよびDのβ-ラクタマーゼは阻害しない
  • Morganellaceae(Proteus, Providencia, Morganella spp.)の標的ペニシリン結合タンパク質(PBP)は、イミペネムに対する親和性が低く、その結果、これらの属の間でイミペネムに対する低レベルの自然耐性が生じている
  • FDAで承認されている既存のブレイクポイントとの整合性を考慮して、腸内細菌(Morganellaceaeを除く)、P. aeruginosa、嫌気性菌の感受性ブレイクポイントをそれぞれ≦1/4μg/mL、≦2/4μg/mL、≦4/4μg/mLとした
直接ディスク法
  • 好気発育するグラム陰性菌を対象に、血液培養ボトルから直接行うディスク拡散検査が評価されている 
  • 自動検出システムで血液ボトルが陽性と判定されてから8時間以内に検査を設定しなければならない
  • さらなる詳細やガイダンスは、今後のM100およびM02のドキュメントで提供される予定
ブドウ球菌の検査の注意点 
  • S. aureusとS. lugdunensis以外のStaphylococcus spp.のオキサシリン(メチシリン)耐性を検出するための表現型法の使用に関する推奨が何度か改訂されている 
  • M100 31st EditionのMICブレイクポイントは、S. epidermidis、S. pseudintermedius、S. schleiferi、その他のStaphylococcus spp.に対して、Sは≦0.5 μg/mL、Rは≧1 μg/mLに改訂された
  • mecAおよびPBP2aの検査がすべてのブドウ球菌種のメチシリン耐性を検出するための最も確実な検査であり、mecAまたはPBP2aが陽性であるか、推奨される表現型検査法のいずれかで耐性を示した分離株は、メチシリン耐性として報告するべき 
  • S. aureus complexの2つの新しいS. argenteusとS. schweitzeriについて:S. argenteusは重篤な侵襲性疾患の原因菌であり、S. schweitzeriはまだヒトの感染症に関与していない
  • S. argenteusの臨床分離株28株(mecA陽性株3株を含む)を検査したデータでは、S. aureusのブレイクポイントを適用した場合、mecAの結果とセフォキシチンのディスク法およびオキサシリンのMICの結果が100%一致した
テジゾリドの感受性予測のための代替検査薬
  • テジゾリドとリネゾリドは、S. aureus、E. faecalis、S. pyogenes、S. agalactiae、S. anginosusによるABSSSI(急性細菌性皮膚軟部組織感染症)の治療薬として承認されている
  • テジゾリドの感受性試験の選択肢は少ない
  • EUCASTは、リネゾリドに感受性のある分離株をテジゾリドに感受性があると報告できるとしている
  • MICでリネゾリドに感受性と判定されたすべての分離株が、MICでテジゾリドに感受性と判定された。一方、リネゾリドに耐性を示した8株(S. aureus 7株,E. faecalis 1株)はテジゾリドに感受性であった
髄液AST報告における「警告」 
  • CSFから分離された細菌について、血液脳関門を容易に通過しない抗菌剤の報告を控えるべき
  • ドリペネム、ertapenem、イミペネム、LefamulinはCSF分離株の場合は報告すべきでない 
  • メロペネムは含まれておらず、髄膜炎の治療に有効であることが示されている
「^」の使用方法の明確化 
  • 「I」ブレイクポイントに「^」を加え、どの薬剤が特定の解剖学的部位に集中する可能性があるかを示した 
  • この現象が主に発生する解剖学的部位は尿であり、尿中に濃縮する可能性を「I^」とした
  • 腸内細菌、Enterococcus spp.、P. aeruginosaに対するβ-ラクタム、アミノグリコシド、フルオロキノロンに「I^」を記載
  • セファゾリンと腸内細菌に対しては、尿で別の検査値が用意されている  
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2 コメント

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CLSI M100 34 (とおりすがり)
2024-02-29 23:34:05
CLSI M100 34アップデート要点の記事を書いていただけるとうれしいです
Re (管理人)
2024-03-02 10:00:07
コメントありがとうございます。
協力者も増えておりますので上記検討致します。

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