富士乃屋B&C

つれづれなるままに。

寄生木

2005年11月25日 | Book Review
寄生木(長坂秀佳) 「弟切草」シリーズ三部作の最終作品。シリーズ第三作の構想を始めた作者の元に、一通の電話がかかってくる。その相手は、自身を「弟切草」の登場人物だと語り、次回作品の執筆を止めるよう懇願する。過去二作品で書かれた内容は作者の空想ではなく事実であり、そして今回もまた作者の着想のままに恐るべき事件が起ころうとしている…と警告してきたのだ。 連続殺人と、その中で疑い合う人々を描いている . . . 本文を読む

彼岸花

2005年11月24日 | Book Review
彼岸花(長坂秀佳) 「サウンドノベル」というジャンルでゲームと小説の新しい姿を示した「弟切草」を手がけた作者による、小説版「弟切草」シリーズの2作目。 三人の少女が同じ新幹線で京都を目指す。偶然かと思われた出会いだったが、その出会いは実は何者かの意図により仕組まれた必然だった。それぞれが背負った過去を清算すべく訪れた旅で、三人は身の毛もよだつような恐怖を体験する…。 サウンドノベルらしさを敢 . . . 本文を読む

回廊邸殺人事件

2005年11月22日 | Book Review
回廊邸殺人事件(東野圭吾) 発端は、ある旅館で起きた無理心中事件だった。旅館の一室から火が上がり、その後一人の若者が毒を飲んだ変死体で発見される。生き残ったのその部屋に宿泊していた女は、その若者の恋人だった。やがて、その女も失踪する。先に逝った恋人を追って海に身を投げたと推察された…。 時間が流れ、舞台は同じ。その火事の起こった旅館にて、またしても事件が発生する。遺言状の公開のため集まった人々 . . . 本文を読む

ゆがんだ闇

2005年11月18日 | Book Review
ゆがんだ闇(短編集) ホラー小説に新たな境地を示した実力派作家6名による短編オムニバス、らしい。 小池真理子「生きがい」鈴木光司「ナイトダイビング」篠田節子「小羊」坂東眞砂子「白い過去」小林泰三「兆」瀬名秀明「Gene」以上6作品を収録。 しかし、これは、という程興味深い作品はなかったような・・・。「生きがい」はまぁ面白かったけれどショート・ショートのような物足りなさもあり。「ナイトダイビン . . . 本文を読む

ケータイ

2005年11月09日 | Book Review
ケータイ(吉村達也) なんというか…あらすじを紹介する気もあまりしない作品。女子中高生が次々と殺害される。しかも殺される直前に友人のもとに自ら電話をかけ、自分が殺される場面を「実況中継」させられながら・・・。 うーん、この程度かなぁ。特に意外性のあるあらすじではないし、登場人物が魅力的なわけでもない。終盤に向かう展開もこちらが想像した域を出ないし、ラストシーンも予想通りである。ホラー小説といっ . . . 本文を読む

スタンド・バイ・ミー

2005年11月07日 | Book Review
スタンド・バイ・ミー(スティーヴン・キング 山田順子訳) ホラー作家スティーヴン・キングの作品。映画化もされたので知名度も極めて高いと思う。僕は映画はテレビでやってたのをちらっと見た程度で、あの有名な「ヒルのシーン」くらいしか印象になかった。こうして読む機会を得てようやくこの作品とスティーヴン・キングが結びついたわけで。 実はキングの作品を読むのも初めて。国内のホラー小説はまあまあ読んできたの . . . 本文を読む

倒錯の死角 201号室の女

2005年11月03日 | Book Review
倒錯の死角(アングル) 201号室の女(折原一) 翻訳家の大沢は古い家に伯母と二人暮しをしている。二階の書斎の窓からは向かいのアパートの様子がよく見える。ある春の日、向かいの部屋に清水真弓という女性が入居してきた。「覗き」の病癖を持つ大沢は彼女に惹かれ、やがて現実と妄想の境界線が曖昧になっていく・・・。 折原一の代名詞というべき叙述トリックを駆使した作品、らしい。折原一の作品は初めて読んだので . . . 本文を読む

アナザヘヴン

2005年06月18日 | Book Review
アナザヘヴン(飯田譲治、梓河人) TVドラマ、映画で映像化されている有名な作品。幸いにも映像作品の方を観たことがないので先入観なしに読むことができた。 深夜、捜査一課の刑事飛鷹の家に部下の刑事早瀬から連絡が入った。2体の変死体が発見されたという。その死体にはどちらも首がなかった。しかし、現場に駆けつけた飛鷹が目にしたものは、さらにおぞましい光景だった…。 衝撃的な猟奇殺人事件だが、それは始ま . . . 本文を読む

標的はひとり

2005年06月12日 | Book Review
標的はひとり(大沢在昌) 日本という国を維持するため、決して表沙汰にされない仕事を請け負う機関がある。「研修所」と呼ばれるその機関は、国家に危機をもたらすと危惧される人間を人知れず排除する。加瀬崇、38歳。彼は「研修所」に所属していた、元殺し屋である。 ある事件をきっかけに心に傷を負い、組織から身を離していた彼に、かつて恋人であった三津子から連絡が入った。彼女は石油ビジネスで確固たる地位を築く . . . 本文を読む

天使の梯子

2005年05月31日 | Book Review
天使の梯子(村山由佳) 「天子の卵」から10年を経て書かれた続編。歩太、夏姫、2人。あれから10年が経過していた。歩太は建築会社で勤めながら細々とデザインの仕事を行い、夏姫は一時期教師となり、現在は信販会社に勤めている。物語は、夏姫の元教え子、慎一の視点で描かれる。 大学生の慎一は幼い頃に両親が離婚し、理容店を営む母方の祖父母に育てられた。それ故、人を信用すること、人に心を許すことを良しとせず . . . 本文を読む

天使の卵

2005年05月29日 | Book Review
天子の卵-エンジェルスエッグ-(村山由佳) 昨年「星々の舟」で直木賞を取った村山由佳の作品。この作品自体は小説すばる新人賞を受賞している。とはいっても、僕はあまり肩書きとか受賞とか気にして読む方ではないので、会社のお友達から薦められるままに読んでみた。 19歳の予備校生、歩太は画家志望。芸大を目指すべきか、はたまた普通の大学を目指すべきか、未だ決めかねていた。その迷いが元で受験に失敗したことも . . . 本文を読む

夏からの長い旅

2005年05月27日 | Book Review
夏からの長い旅(大沢在昌) 工業製品のデザインを手がけるインダストリアル・デザイナーの木島には、戦場カメラマンとしてベトナムで活動していた頃の苦い思い出があった。それは、思い出というより、木島という人間に刻み込まれた傷痕というべきものだった。幾度忘れようとしても、決して自身から引き離すことのできない、刻印であった。 そんな木島が偶然出会った女性久仁子。彼女が木島の家に初めて泊まった夜、木島の家 . . . 本文を読む

灰の迷宮

2005年05月26日 | Book Review
灰の迷宮(島田荘司) 新宿駅西口で不可解なバス放火事件が発生した。放火犯はバスそのものではなく、一人の客の持っていたバッグに集中的にガソリンを撒いた。そしてそのバッグを持っていた客はバスから真っ先に逃走し、通りかかったタクシーに撥ねられ、やがて死亡した。 警視庁捜査一課の吉敷はこの事件について疑問を感じ、調査を進めた。やがて、逃亡した放火犯の逮捕に成功する。しかし放火犯の口から告げられた言葉は . . . 本文を読む

2005年05月22日 | Book Review
鍵(乃南アサ) 相次いで母と父を失った家庭。中学校教師の長女秀子と、無職生活に浸る長男の俊太郎、そして聴覚の不自由な高校二年生の次女真理子。しっかりした性格の姉と、障害を持ち兄に頼る妹に挟まれ、複雑な心境を抱える俊太郎。幼い頃から母を妹に奪われ、そして妹の面倒が自分に押し付けられたと感じる俊太郎は、両親の死を契機にして妹真理子と距離をとるようになる。 そんな中、俊太郎たちの住む地域では通り魔事 . . . 本文を読む

東京ナイトメア

2005年05月21日 | Book Review
東京ナイトメア(田中芳樹) 田中芳樹らしい、体制に反発するテイストが滲み出ている作品。容姿端麗・頭脳明晰・文武両道・才色兼備・・・そんな四字熟語が次々浮かんでくるようなスーパーヒロイン、警視庁刑事部参事官の薬師寺涼子が「お供」の泉田純一郎とともに怪奇事件を解決する「薬師寺涼子の怪奇事件簿」シリーズの第二段である。 涼子の出席した結婚式で、空から突然死体が降ってきた。死体を運んできたのは、翼を持 . . . 本文を読む