<写真>ペットオタクはいないのかな?
■野村総研がオタク市場を分析
05:【デザイン相談室】第1回
10月6日に株式会社野村総合研究所が日本国内のオタク市場の調査結果を発表しました。
いろいろな意味で大変興味深い内容ですが、ここではこのような調査結果を、中小製造メーカーが商品開発にどのように役立てたらいいのかという視点で見てみようと思います。
■調査方法について
この調査では1万人規模のインターネット調査を行い、12分野の市場を分析しています。資料を読むにはまず、調査方法自体が結果に影響を与える事を考慮しなければなりません。
野村総研のような著名なシンクタンクが調査を行う場合、調査対象者の身元はしっかりしており、基礎データの信憑性は高いです。ただし、調査対象者は自宅にパソコンがあり、常時インターネットにアクセスできる人達だけだということを忘れてはいけません。
「組立PC・AV機器・携帯型IT機器」の分析精度は高そうですが、「旅行・ファッション」の分析も同じ精度かどうか、判断が難しいところです。
■『ターゲットの類型化』と『マーケティングフレーム』
この調査では、主要なオタク市場を12分野に分けています。しかし、今回の調査は分野よりも『ターゲットの類型化』と『マーケティングフレーム』に注目するべきでしょう。オタクの分野が12に限られ、例えば、「音楽」「映画」「スポーツ」や「園芸」「釣り」「ペット」等の分野にオタクがいないと言う意味ではないはずです。(これも調査方法によるバイアスかもしれません。)
■ターゲットの類型化
これからの商品開発は、ターゲットの明確化が重要です。「これからはオタクの時代だ。オタク向けの商品を開発しよう」と言っても、オタクの実体がわからなければ、調査もできず、その先のアクションに結びつきません。
類型化する事により、ターゲットが明確になり、調査などもやり易くなります。「隠れオタク」と「同人女子系オタク」では構成層、消費動向が全く違うと言う訳です。
■マーケティングフレーム
『マーケティングフレーム』は、より有効です。野村総研の資料でも、今回のマーケティングフレーム「3C」を一般的なマーケティングフレーム「4P」(Product:製品、Price:価格、Place:販売チャネル、 Promotion:プロモーション)と同列に扱っています。
オタクのマーケティングフレーム『3C』(Collection:収集、Creativity:創造 、Community:コミュ二ティ)は、オタク市場だけでなく、全ての商品開発において今後、重要なキーワードになると考えるべきでしょう。
■トレンドリーダー
野村総研はオタクの分野別市場規模を2004年8月と2005年10月の2回発表しています。今年の調査結果は昨年と較べ、より『コアなオタク層』を抽出したから大きく変化したのだと説明しています。
そして、産業のライフサイクルの中で「コアなオタク」を『トレンドリーダー』だと位置付けています。
産業ライフサイクルには「萌芽期」「成長期」「成熟期」「安定/衰退期」があり(この定義は一般的なものです)、その『萌芽期』において、コアなオタクに評価されれば、その産業は成長する。コアなオタクは『トレンドリーダー』というわけです。
今「萌芽期」にあり、コアなオタクが注目しているのは『ロボット』『売出し中のアイドル』だそうです。
■狙い目は「旅行・自動車・ゲーム・ファッション・デジカメ」
昨年と今年の調査結果を較べてみました。昨年の市場規模順に並べ直し、今年の数字の後ろの%は筆者が追加しました。%は今年の数字を昨年の数字で割ったもので、コアなオタク層の構成比を表しています。
┼──────┬────────────────┼
昨年8月発表 今年10月発表
(オタク層全般)(コアなオタク層)
┼──────┼────────────────┼
旅行 220万人 25万人 (11%)
(成熟期) 7,120億円 810億円(11%)
┼──────┼────────────────┼
自動車 45万人 14万人 (31%)
(成熟期) 1,720億円 540億円(31%)
┼──────┼────────────────┼
コミック 100万人 35万人(35%)
(安定期) 1,000億円 830億円(83%)
┼──────┼────────────────┼
ゲーム 80万人 16万人(20%)
(成熟期) 780億円 210億円(27%)
┼──────┼────────────────┼
ファッション 25万人 4万人(16%)
(成熟期) 760億円 130億円(17%)
┼──────┼────────────────┼
デジタルカメラ 20万人 5万人(25%)
(成熟期) 750億円 180億円(24%)
┼──────┼────────────────┼
芸能人 80万人 28万人 (35%)
(萌芽期) 600億円 610億円(102%)
┼──────┼────────────────┼
AV機器 22万人 6万人 (27%)
(安定期) 420億円 120億円(29%)
┼──────┼────────────────┼
組立PC 5万人 19万人 (380%)
(成熟期) 320億円 360億円(112%)
┼──────┼────────────────┼
鉄道 14万人 2万人(14%)
(安定期) 260億円 40億円(15%)
┼──────┼────────────────┼
アニメ 20万人 11万人(55%)
(成長期) 200億円 200億円(100%)
┼──────┼────────────────┼
携帯IT機器 15万人 7万人(47%)
(成長期) 150億円 80億円(53%)
┼──────┼────────────────┼
合計 延べ646万人 延べ172万人(27%)
1兆4,080億円 4,110億円(29%)
┼──────┴────────────────┼
マーケティングでは、成熟期の商品が儲け時です。市場規模が大きく成熟期の「旅行・自動車・ゲーム・ファッション・デジタルカメラ」で、市場規模は1兆1130億円。オタク市場全体の約80%を占めます。
オタクに「旅行・ファッション」が含まれるのに、「音楽・映画・スポーツ・園芸・釣・ペット」等がなぜ含まれないのかは多少疑問ですが、野村総研は、オタク市場では「旅行・自動車・ゲーム・ファッション・デジタルカメラ」が旬だと考えているようです。
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■野村総研がオタク市場を分析
05:【デザイン相談室】第1回
10月6日に株式会社野村総合研究所が日本国内のオタク市場の調査結果を発表しました。
いろいろな意味で大変興味深い内容ですが、ここではこのような調査結果を、中小製造メーカーが商品開発にどのように役立てたらいいのかという視点で見てみようと思います。
■調査方法について
この調査では1万人規模のインターネット調査を行い、12分野の市場を分析しています。資料を読むにはまず、調査方法自体が結果に影響を与える事を考慮しなければなりません。
野村総研のような著名なシンクタンクが調査を行う場合、調査対象者の身元はしっかりしており、基礎データの信憑性は高いです。ただし、調査対象者は自宅にパソコンがあり、常時インターネットにアクセスできる人達だけだということを忘れてはいけません。
「組立PC・AV機器・携帯型IT機器」の分析精度は高そうですが、「旅行・ファッション」の分析も同じ精度かどうか、判断が難しいところです。
■『ターゲットの類型化』と『マーケティングフレーム』
この調査では、主要なオタク市場を12分野に分けています。しかし、今回の調査は分野よりも『ターゲットの類型化』と『マーケティングフレーム』に注目するべきでしょう。オタクの分野が12に限られ、例えば、「音楽」「映画」「スポーツ」や「園芸」「釣り」「ペット」等の分野にオタクがいないと言う意味ではないはずです。(これも調査方法によるバイアスかもしれません。)
■ターゲットの類型化
これからの商品開発は、ターゲットの明確化が重要です。「これからはオタクの時代だ。オタク向けの商品を開発しよう」と言っても、オタクの実体がわからなければ、調査もできず、その先のアクションに結びつきません。
類型化する事により、ターゲットが明確になり、調査などもやり易くなります。「隠れオタク」と「同人女子系オタク」では構成層、消費動向が全く違うと言う訳です。
■マーケティングフレーム
『マーケティングフレーム』は、より有効です。野村総研の資料でも、今回のマーケティングフレーム「3C」を一般的なマーケティングフレーム「4P」(Product:製品、Price:価格、Place:販売チャネル、 Promotion:プロモーション)と同列に扱っています。
オタクのマーケティングフレーム『3C』(Collection:収集、Creativity:創造 、Community:コミュ二ティ)は、オタク市場だけでなく、全ての商品開発において今後、重要なキーワードになると考えるべきでしょう。
■トレンドリーダー
野村総研はオタクの分野別市場規模を2004年8月と2005年10月の2回発表しています。今年の調査結果は昨年と較べ、より『コアなオタク層』を抽出したから大きく変化したのだと説明しています。
そして、産業のライフサイクルの中で「コアなオタク」を『トレンドリーダー』だと位置付けています。
産業ライフサイクルには「萌芽期」「成長期」「成熟期」「安定/衰退期」があり(この定義は一般的なものです)、その『萌芽期』において、コアなオタクに評価されれば、その産業は成長する。コアなオタクは『トレンドリーダー』というわけです。
今「萌芽期」にあり、コアなオタクが注目しているのは『ロボット』『売出し中のアイドル』だそうです。
■狙い目は「旅行・自動車・ゲーム・ファッション・デジカメ」
昨年と今年の調査結果を較べてみました。昨年の市場規模順に並べ直し、今年の数字の後ろの%は筆者が追加しました。%は今年の数字を昨年の数字で割ったもので、コアなオタク層の構成比を表しています。
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昨年8月発表 今年10月発表
(オタク層全般)(コアなオタク層)
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旅行 220万人 25万人 (11%)
(成熟期) 7,120億円 810億円(11%)
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自動車 45万人 14万人 (31%)
(成熟期) 1,720億円 540億円(31%)
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コミック 100万人 35万人(35%)
(安定期) 1,000億円 830億円(83%)
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ゲーム 80万人 16万人(20%)
(成熟期) 780億円 210億円(27%)
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ファッション 25万人 4万人(16%)
(成熟期) 760億円 130億円(17%)
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デジタルカメラ 20万人 5万人(25%)
(成熟期) 750億円 180億円(24%)
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芸能人 80万人 28万人 (35%)
(萌芽期) 600億円 610億円(102%)
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AV機器 22万人 6万人 (27%)
(安定期) 420億円 120億円(29%)
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組立PC 5万人 19万人 (380%)
(成熟期) 320億円 360億円(112%)
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鉄道 14万人 2万人(14%)
(安定期) 260億円 40億円(15%)
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アニメ 20万人 11万人(55%)
(成長期) 200億円 200億円(100%)
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携帯IT機器 15万人 7万人(47%)
(成長期) 150億円 80億円(53%)
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合計 延べ646万人 延べ172万人(27%)
1兆4,080億円 4,110億円(29%)
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マーケティングでは、成熟期の商品が儲け時です。市場規模が大きく成熟期の「旅行・自動車・ゲーム・ファッション・デジタルカメラ」で、市場規模は1兆1130億円。オタク市場全体の約80%を占めます。
オタクに「旅行・ファッション」が含まれるのに、「音楽・映画・スポーツ・園芸・釣・ペット」等がなぜ含まれないのかは多少疑問ですが、野村総研は、オタク市場では「旅行・自動車・ゲーム・ファッション・デジタルカメラ」が旬だと考えているようです。
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