かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞  54

2013年12月01日 | 短歌一首鑑賞
          【からーん】『寒気氾濫』(1997年)38頁
       参加者:崎尾廣子、鈴木良明(紙上参加)曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
        レポーター:渡部慧子
       司会と記録:鹿取 未放


88 直立の腰から下を地のなかに永久(とわ)に湿らせ樹と育つなり

(レポート)(2013年11月)
 「樹」として育つことの定めを他者(人間)が詠っていると考えると、「腰」に納得できない。「腰から下を地のなかに永久に湿らせ」をどう理解すればよいのか。これは通常の尺度をあてはめて、常識の穴に落ちている故のとまどいだろうか。樹そのものに、そしてあるとき樹に成りきる作者には通常根と呼ばれているところは腰なのかもしれない。


(記録)(2013年11月)
 ★あのやっぱり私なんかは樹の根を足から下くらいにしか思っていないけど、渡辺さん
  は腰ととらえている。やっぱり渡辺さんは樹の中に入っていける人なんだと改めて思
  います。腰から下なんって思いつきはできませんね。根は大事な所ですから。(崎尾)
 ★樹は上っ面だけでなくて腰から下を土の中に入れているからこそ永久に育っていける
  のだ、なかなか本当のところをよく見て表現されていると思う。(曽我)
 ★何で慧子さんがそんなに悩んじゃったのかよくわからないんだけど。腰ってわりと単
  純な比喩だと思うけど。(鹿取)
◆◆
 ★「足から下」ではなく、「腰から下」と詠んだところに、平凡でない樹の実感がある。
   (鈴木)