かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

高尾山とリュック

2013年10月21日 | エッセー


今は亡き佐々木実之さんと二人で高尾山に登ったことがある。10年前の2003年11月の下旬のことだ。その年9月に亡くなったかりんの歌友を偲んでの登山で、実之さんの提案だったが、なぜ高尾山だったかはもう覚えていない。

 高尾駅構内にリュックを吊した臨時の店が出ていた。その時、私が背負っていたリュックは、11月初めにネパールの旅に使ったたいそうなシロモノで、値段も高かったが、大きくて重い。迷わず780円の軽いリュックを買って中身を入れ替えた。

 11月の下旬だというのに山はあまり色づいておらず、美しくなかった。ケーブルカーは使わなかったので、かなり疲れた。持参した日本酒はなぜか頂上では飲まず、麓に降りてきて、どこか田んぼの畦のようなところにレジャーシートを敷いて、そこで飲んだ。寒い日であまりお酒が飲めない私は、いつまでも寒かった。実之さんがほとんど一人で飲み、飲みながら彼はしきりに泣いた。あまり寒いので引き上げて、駅のホームの立ち食い蕎麦屋でコロッケ蕎麦を頼んだ。そこでは私が泣いていて、あまり食べられず、私のどんぶりに乗っているコロッケ2つも実之さんが食べてくれた。

 ところで高尾山で買ったリュックだが、軽くてとても使い勝手がよい。安かったのはたぶんあるブランドのまがい物だったからだが、当時そのんなことは知らず、気にもしなかった。
 高尾登山の翌年、私は勤務先の高校が異動になり、自宅と勤務先が近い者は自家用車通勤が許可されなくなった。それから8年間ほぼ毎日、高尾山で買ったリュックを背負って電車で通勤した。教材を入れ、帰りにはスーパーで買った食材も入れた。勤務最後の3年間はリュックを背負って片道40分を歩いて通勤した。
 このリュック、買って10年後の今も、かなりくたびれたとはいえ日々の買い物に現役で活躍している。