大福 りす の 隠れ家

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彼女達 第16回

2012年01月08日 01時30分43秒 | 小説
第1作 『僕と僕の母様』 全155回 目次ページ


                                             


『彼女達』


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彼女達 第16回



「ちょっとお泊りって何の事?」 真紗絵が聞いてきた。

「あとで説明する。 志乃ちゃんどうだった?」 真紗絵を制して 秋美がもう一度聞いた。

「こんな分厚いのをもらった」 封筒を見せた。

「ってことは合格ね。 やったー! お泊り決定!」 合格自体を喜んでいるのか お泊り出来る事を喜んでいるのか どちらか分からないが 志乃以上に 秋美が喜んでいる。

「だから何なのよ。 教えてよ」 真紗絵が割っ入ってきた。

「真紗絵も来ない? うちにお泊り」

「わ! 行く行く」 それを聞いていた クラブ員達が

「何ー? 自分達だけお泊りって 私達も行きたい」

「歓迎よ! 賑やかがいいし クラブ員は全員OKよ」

この事をきっかけに秋美は 志乃、真紗絵 そしてクラブ員達と急速に仲良くなっていき それまで遊んでいた バトン部とは遊ばなくなっていった。 

秋美、真紗絵、志乃の周りは 全員が進路を決定している。 卒業式までは学校に行っていても 遊びに来ているようなもの。 その上、学校の休みに日にはしょっちゅう 全員で秋美の家に遊びに行く。 

秋美の両親もクラブ員達が全員ジャージを着て うるさいくらいの大声で挨拶をするものだから それまでの秋美の友達には母親は渋い顔、父親においては睨むような顔をしていたのが 母親は打って変わって満面の笑みだ。

「皆いつも元気だわね。 今フルーツを切ってくるからね。 志乃ちゃん今日も背筋が気持ちいいわね」 そう言って志乃の背中を上下にさする。

父親は無愛想ではあるが「おう、いらっしゃい」 とこんな具合だ。



志乃にとっては 中学からこの高校の練習に通いだした。 

この数年、元旦を除いて364日練習があった。 その為、今までどんな学校行事にも 参加できなかった。 その反動か皆と遊ぶことも勿論、卒業行事での スキー研修や校内の催し行事 全てが楽しくてたまらない。



そんな彼女達にも卒業の日がやって来た。

みんなが泣く中、彼女たちは泣かない。 あった事への寂しさよりも あった事への満足感だけが残っているのだ。

楽しい思い出を心に刻み

高校を卒業し それぞれの道を歩んだ。


歩みだしてからは お互い誰がどうしているのか全く知らない。

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