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続・岩本東大教授の論を信じると、こう騙される

2010年04月01日 15時52分23秒 | 経済関連
前の記事の続きです。

非難ばかりしてもしょうがないので、現実にはどういう手法をとるのか、ということについて書いておきたい。


中央銀行のバランスシート拡張により、状態を変更してゆく、ということが必要になる。
あくまで例示であるが、以下のようなことである。


○初期状態
 《資産》     《負債》
国債  50    銀行券  70
貸付金 40    当座預金 15
その他 10    資本   15


○拡張状態
 《資産》     《負債》
国債  150    銀行券  170
貸付金 40    当座預金 15
その他 10    資本   15


初期状態では資産と負債がそれぞれ100で釣り合っている状態、下の拡張状態は倍の200です。下の状況になっていても、一応銀行券ルールには抵触していません。ルールは守られている、ということです。更に、世の中全部にこの銀行券が回っているかというと、そうとは限りません。日銀の大金庫に積まれているだけかもしれません。この金が人々の財布の中にある必然性というのはないのです。資産と負債が釣り合えば、それでいいということなのです。
これが「銀行券を発行せよ、増やせ」ということの意味です。
(岩本教授なんかには、そういうことが考えられないんだろうなと思いますね。何となくでも、イメージというものが欠如しているんですよ。それは、自分が実務家になった状態、というのを、思い浮かべられないからなんだろうと思うんですよ。)


では、実際にどうやっていくか?
本当に素人考えで申し訳ないですが、私の個人的考え方を書いておきます。

まず、日銀は銀行券発行残高を金庫内でもどこでも(帳簿上でも?)いいので増加させます。その額を徐々に増やしつつ、国債を買ってゆきます。10年債でいいでしょう。市場に出回っている10年債を他の民間金融機関などと競合して買ってゆくというわけです。ゆうちょ銀行なんかに買わせてはいけません。

そうすると、どうなるか?
10年債の需給はタイトになり、価格上昇=金利低下、ということが起こります。銀行などは、そんなに値上がりした国債を買えば、ゆくゆくは下落(=金利上昇)するんじゃないか、と考えるようになるでしょう。
どの水準まで買うとそうなるか、というのは判りません。が、買い進めると、指標金利がかつての0.5%とかのかなり低い水準にまで低下するかもしれませんね。これに乗じて持ってる10年債を売る銀行などがあるかもしれませんが、そうすると、キャッシュに置き換わってしまいますから、それは別な何かに投資しないと預金者に利払いをするのが苦しくなりますよね。その振り向け先を「貸出」や「社債」などに向かうようになれば、世の中全体に金が回るようになってゆくということになるかと思います。0.5%の国債を持つくらいなら、1.5%で貸した方がマシだ、というようなことです。


更に、政府としては、10年債が品薄になってきているのと歩調を合わせて、30年債を発行します。すると、発行条件は有利になるはずです。今でさえ2.3%とかですから、もっと下がるかもしれません。何故なら、10年債が中央銀行に買い進まれてしまっているので、価格の高い10年債に投資するよりは30年債を購入しよう、という動機が生じるのではないか、ということです。

そうすると、政府が30年債を発行しても、市場で引受余地を生じさせることは不可能ではないのではないか、と考えます。で、仮に、この発行額規模を100兆円としますと、政府は市場で消化できることになるわけです。あまりに発行額が増加すると金利上昇(価格低下)を招く可能性があるので、これも中央銀行が市場から買入を並行して行いながら、新発を継続してゆく、ということになるでしょうか。

つまり、中央銀行が国債買入を行うのは、こうした誘導を行う為に他なりません。この買入余地を拡張するには、発行銀行券残高が必要になる、ということです。では、政府はこの国債発行後にどうするかといえば、有効な利用方法を考えて行うべき、ということになります。

こうした買入を金利低下が継続するまでやり続けるということになるかと思います。世の中全体に資金が回るようになると、投資促進効果は生じるし、指標金利が上昇してくるな、という市場の状況になってくると、すかさず中央銀行が国債を買い増ししてくるとなれば、ある水準以上には金利が跳ね上がらない、という状況を継続できるはずです。そうすると、いずれは金利が上がるかもしれないが、当面は上がらないだろう、という予想をもとに行動しようとしますから、借入需要は増加するかもしれませんよね。

で、経済活動が旺盛になっていけば、インフレ率はいずれプラス転化するだろうし、3%、4%、と上がってゆくかもしれません。そういう局面になったならば、金利引き上げという金融政策発動を事前に約束しておけば、そのようになるであろう、と思います。いずれにせよ、少しくらいインフレ率が上がろうとも直ぐには引き締めない、という姿勢を事前に示すことが必要でしょう。


中央銀行が買った国債はどうなるのか?
金庫で眠らせておけばいいだけなのでは。持ってる分には別に問題ないわけで。10年後に政府が金で払えるなら払えばいいだろうし、毎年一部は償却でもいい。20年後とか30年後にインフレ率が順調に経過しているのであれば、払えるはずです。政府はインフレ率がプラスになる間に利払いを確実に続けると共に、プライマリーバランスの黒字化をできるだけ早期に達成しておくことが必要になります。目標としては、大体5年程度、ということになるでしょうか。インフレ率が2%に上昇してくるということになると、これはかなり大変ではないかな、と思いますからね。1年では難しいだろうな、と。

この国債買入をどの時点までやるかというと、少なくとも2~3%くらいにコアコアCPIが到達するか、名目GDP成長率が4%以上を連続で達成できるようになり、名目GDPと実質GDPが完全に逆転するまでは行う、といったことを宣言しておく、というようなことですかね。

最初のきっかけさえ与えれば、ある時点からは金利上昇が来そうだ、という時だけ買い出動でよくなるんじゃないかな、と思います。まずは、プラス圏に行くまで思い切って量を投入しないと、デフレを脱出するのはかなり困難であろうと思いますね。あれだ、宇宙へ飛び出す脱出速度みたいなもので、そこに到達しない限りは引き戻されてしまう、というようなことと似てるかも。



それから、以前に「改めて書く」とか言っておいたままになっていたんですが、補足という意味も含めて、貸出が増加しない、ということなんかも触れておきたいと思います。


まず、銀行の貸出額は減少した。これにはいくつかの側面があると思うが、
・銀行が不良債権化を恐れて回収(所謂『貸し剥がし』)
・企業は負債圧縮に努めた(過剰債務の事後処理という面も)

といったことがあったでしょう。
他には、自営業者の減少(=企業勤務希望が増加?)、新規起業創業の減少、などもあったでしょうか。

一方では、企業の直接調達の増加ということがあるかと思います。間接金融から直接金融へ、という流れがあった。それは、メインバンク制度の弛緩、財閥等グループや系列の解体、なんかも影響していたかもしれません。
そうなると、株式や社債による資金調達が増加したわけです。新規上場による資金集めは今世紀以降盛んにはなりましたが、胡散臭い「ベンチャー」バブルみたいな部分もあったでしょう(功罪両面で、かと)。

なので、貸出は減少した、ということです。企業負債は減少し、貯蓄率は家計が大幅な減少率を記録する中で企業貯蓄率は増大を続けました。これが、企業の「手元資金増大」ということで、銀行預金に戻っているというようなことですかね。企業が投資しなければ、資金需要が増大しない、ということを生んでいるわけです。企業はかつての恐怖がありますから、そう簡単には投資に金を出せない。今回のショックでも、やっぱり手持ちの金が大事だなということは実感したでしょうし。

なので、借り手というのは、昔に比べると減っている、ということだろうな、と。



別な面は、政府系の問題です。
一つは、特殊法人改革とか、財投改革です。

陰謀かどうかは判りませんが(笑)、根本的には「日本の国債がこんなに少ないというのはオカシイんじゃないか?」という、米国の「借金漬け大国基準」による難癖みたいな面があったのでは?(実際、そう言われたかどうか、判りません)
だって、経済規模では米国に次ぐのに、こんなに借金が少ないわけがない、というのを思ったんだろうと思いますね。米国は赤字が酷いのに、なんで日本政府はこんなに借金が少ないんだ、ということで。つまり、『国債発行額が少なすぎる』ということなんですね。

で、どうなったか?
米国側の思惑としては、当然「債券取引」という超ビッグでオイシイ”狩場”を求めていたわけですよ。それには、日本の国債発行額が少ないのを変えろ、と、どつかれたわけなんです。護送船団方式で国債を協調的に購入したり割当消化をしているのが元凶で悪いんだ、と、往復ビンタされたりしたんですよ。

そうして、日本の借金システムの徹底研究をされたわけです。すると、預託金制度という、恐るべき「隠れ借金システム」が判明した、ということです。この制度は、国債には現れないのに、政府が借りているというもので、郵政で集めたお金が政府系の道路公団をはじめ、種々の特殊法人に貸し出されているものだった。こういうのを、「債券化しろ」と強硬に要求されたということなんですね。

そう、時代は、「債券化」ということだったんですよ。
海の向こうでは、債券化技術を用いてサブプライムローンみたいなものの商品開発が進んでいましたから、日本のウブな銀行等金融機関なんていい餌食、ということなんでは。 
そうして、国の審議会だのといったレベルでも、債券化というのを推進せよ、ということだったんでしょう。これもまた、銀行借り入れを減少させる一因となっていったのではないかな、と(逆に、社債投資を銀行が行うことで個別貸出をしなくてもいい、ということもあるかな)。

この債券化業務というのは、受託でも儲かる、取引でも儲かる、ということで、喜ばれたわけでなんです。これが、かつての預託金から、国債・財投債・財投機関債等へと置き換わっていった、ということです。良い面というのもちょっとあって、日本政府の借金が、昔だと大蔵とかの特殊な人たちにしか判らなかったものだったのが、今度は誰でも見て判り易くなった、ということですかね。

なので、元からあった借金は国債に振り替えられたりした部分があって、これが銀行の資金逃避先となってしまった、ということですね。借入先を探すよりは、楽だから、ということはあります。
増加してくる国債、貸出先の減少、そういう変化があったが故の、銀行等金融機関は毎年国債の持ち高を増やしてきた、ということなんですね。実際、郵貯の預託金は国債に置き換わってしまいましたから。もう一つが、この郵政改革だった、ということです。



まあ、要するに金融危機などのショックによって、金を使う主体というのが政府だけに大きく偏ってしまい、企業は金のかき集めに必死になった、家計は減少する収入に抵抗できず使わなくなった、ということです。その結果、国債発行は増加し債券の供給が増える、銀行は貸出先がないので国債投資を増やす、民間大企業や大銀行は家計から収入を奪ってキャッシュを増やす、企業借入(銀行融資、社債の合計残高)を減らす、ということが継続してきたということですかね。


銀行は国債投資を行うのは、それでもプラスになってしまうから、でしょう。だったら、国債そのものを高価なもの=金利低下、ということにしない限りは、銀行から国債を引き剥がすことなどできないのではありませんか、ということです。
その引き剥がしをやるのが、中央銀行の役割でしょう、と言っているわけですよ。銀行が投資対象を求めるのに、たとえば金利5%より1%であれば探しやすいはずでしょう、と。


銀行等の国債持ち高が減少してゆく過程で、インフレ率が上がってゆく、ということが起こるわけですから、金利上昇=国債評価額下落ということであっても、貸出利息の利益率の方が大きければ問題ないはずだ、というのが、私の推測です。





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