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貸金業の上限金利問題~その15

2006年10月08日 19時54分48秒 | 社会全般
世の中には、クソみないな言説を信じる人々が存在する。そして、安易な例は誰でも思いつくものです。私もその一部であることは間違いないですけど(笑)。


誰の入れ知恵なのか、どこで仕入れたのか知らないが、民主党の国会議員の割りには大したことを言わないんですね。

いいのか?こんなんで>民主党どの


民主党の金子洋一議員の記事から一部引用してみましょう。

貸金業の上限金利引き下げに疑問あり:民主党三重5区 金子洋一 - AOLダイアリーcommentcomment


こういう例を考えてみてください。あなたが零細企業の社長だとします。最近はあまり経営もうまくいっていないので銀行はお金を貸してくれません。さて、取引先が振り出した手形の割引の期日が1週間先なのですが、資金調達の都合で、どうしても1週間だけつなぎの運転資金が必要になりました。その場合、年利29.2%でもいいからぜひお金を借りたいというケースはたくさんあると思います。これが、上限金利が利息制限法が認める15%に引き下げられた場合、どうなるでしょうか?経営状態のさほど思わしくない会社の場合に対しては、29.2%ならいいが、15%では貸し手がまったくいなくなることが出てきます。あなたの会社がその会社だったら、万事休すです。




中々想像力がありますね。このようなケースは有り得るかもしれませんね(笑)、彼の妄想の中では。
「万事休す」ですか。本当ですか?

零細企業は資金調達が苦しい、というのは確かにあると思います。でも、「借りられない」ということが本当に起こってしまうかどうかを考えてみましょうか。金子議員の主張は、「上限が引き下げられると借りられなくなる」ということですので。

参考記事:貸せなくなるって、本当?


まずこの零細企業が他の債務があるかどうかで大きく条件は変わるかもしれませんが、とりあえず今は固定負債は銀行借入のみ、他のノンバンクや消費者金融からの借入はないものとしましょう。で、社長さんの手には「支払期日が1週間先の手形」がある、ということですね(金子議員の記事では「割引の期日」となっておりますが、意味がちょっとよく判らない。このように表現するのが正しいのでしょうか?多分支払期日のことだと理解しました)。手形を金に換えられるのは1週間先まで待たなければならない、と。それまで自分の所の支払いが滞ったり、不渡りを出したら大変なことになってしまう、と。そんな感じでしょうか。


この手形が現金化できればいいのですから、それこそ「手形割引業者」に持ち込んで現金化すればいいではないですか。業者はかなり沢山ありますよ。手形割引率ですけれども、平均では10~12%程度だった(うろおぼえ、金融庁資料では確かそうだった)と思う。そもそも、「将来キャッシュ」がある程度高い確率で入ってくることが期待されるのであれば、貸す業者はいるでしょうね(笑)。持ち込んだ手形そのものが「不渡り」になる確率がかなり見込まれる、とかってことでなければ、割引業者は現金化に応じると思う。手形の専門的な仕組みは知らないけれど、裏書させることで債務を遡及することが可能になっている(?ハズ)と思う。なので、「裏書」させた上で現金化に応じれば、不渡りのリスクは軽減されるでしょう。これで現金化は可能だろうと思いますが。


手形の金額がある程度大きい場合で、割引が損だ、と思うのであれば、それこそ日賦業者から1週間だけ借りればいいんじゃないの?金利上限が54.75%と高いのですけど、期間が短いので実際に支払う金利分は元金の1%程度だし。貸し手の側からすれば、30%弱の上限で1週間貸すよりも、日賦の高金利で貸す方が得に決まってるでしょ。30%近くで借入できる零細企業が、50%以上の金利で借入できないわけがないですし(笑)。手形担保、或いは売掛金担保融資だってあるのだから、「借りられない」というのは勘違いだろうと思うね。日賦業者ってのは、事業者向け融資以外には「取り扱っていない」のだし(笑、一般消費者に融資はできないことになっているはずです)。


こういう事例は、そもそも「上限金利問題」なんかとは関係ないでしょうね。もっともらしく例示するのはいいが、別な方法がちゃんとあるのですよ。上限金利問題というのは、基本的には事業者向け融資の問題などではないんですよ。

国会議員にしては、こういう底の浅いことしか言わないんですよ。更に、これが正当な理屈だと思い込んでいるところが、腹立たしいんですよね。「事業者が緊急の融資を受けられなくなる」とか言うのは、ニセモノですよ。大手消費者金融業者の事業者向け融資の平均約定金利ですらもっと低いんだから。国会議員ならば、まず金融庁の資料くらい総ナメにして読んでみたらどうだ?議員のブログの上の方には、エコノミストとかって書いてありますが・・・

相手がこういう国会議員とかだと、たとえブログ記事だろうとヘンな影響力があったりするしね。適当な空想を広めるのは止めてくれ。


普通の手形割引や無担保の事業資金調達さえ困難になっている事業者というのは、他の消費者金融などから既にある程度の借入があって、既に多重債務者になっちゃっていて早晩破綻が見えてる場合が多いでしょう。将来キャッシュの「入ってくる見込み」が殆ど立たないような場合のみ、ということですよ。保有する担保資産も既に抵当に入ってしまっていて、他に担保に出す資産がないからこそ、無担保融資の高い金利で資金調達せねばならんのだし。動産担保や売掛金担保すらできず、どこから金が入ってくると?いきなり大口契約を取るとかのような、「一発当てる」ってことくらいしかないでしょ。要は、現時点で「多重債務者になってしまっている」事業者が借入困難になるかもしれない、ということでしょう。

このような多重債務に陥った事業者の処理を先延ばしするのが、「経済学的に合理的」と?(笑)



次は産経新聞の主張から。

【主張】貸金業規制強化 利便性殺さぬ努力が必要-コラむニュースイザ!

(以下に一部引用)

しかし、高い金利が、銀行から貸し倒れリスクが高いと判断されて融資を断られた人の受け皿役を果たすのに必要だったのも事実だ。世の中には、高利でも、緊急に資金を調達しなければならない事業者や、給料日までの数日間をしのぐ資金が必要な人は必ず存在する。そんなニーズに配慮せず、一気に金利を下げればどうなるか。審査が厳しくなり、こうした人は融資が受けられず、破綻(はたん)やヤミ金融の利用に追い込まれかねない。




緊急に資金調達が必要な事業者云々、というのは上述したことと同じなので省略。「給料日までの数日間をしのぐ資金が必要な人」というのを考えてみましょう。まず、数日間というのがどのくらいなのか、という問題があるが、ニュアンス的には1週間から10日程度でしょうかね。


①住宅・自動車・教育ローン、クレジット販売等を除いて、他の貸金業者からの借入残高がない場合

これまで延滞などの事故もなく、きちんと返せていたのであれば、平均月給が20万円であっても20万円全額借入可能でしょうね。優良顧客と言えるでしょうから。そのような人の場合、20%以上の金利で借入するメリットは殆どなく、1週間分の金利が無料というノーローンなんかを利用する方が得です。10日間程度であっても、超えた日数分の金利で済むらしいからね。


このような人の「審査が厳しくなって借りられなくなる」って?オイオイ、どこの世界から来たんですか?(笑)

銀行系の18%でも借入OKに決まってるでしょ。キャッシングも18%以下でOKでしょ。20万円。
貸金業界の「高金利でしか貸せない業者」が貸せなくなったら、それはそれでいいですよ、別に。他の業者が貸してくれますから。このような顧客に貸したくない業者は、「貸さなければいい」のですよ。それで済む話でしょ。他に貸してくれるところはありますから。


②他の貸金業者からの借入残高がある場合

問題となるのは、こういう人だけでしょうね。でも、数日後の給料で20万円全額払えるような人は、そもそも多重債務には陥らないでしょう。毎回借入から数日後の給料日に完済していたのなら、債務残高そのものが残る訳がないのだし(笑)。まあいい。不幸にも返せない時があって、債務が残っているとしましょう。


保有している借入枠の大きさにもよりますが、債務残高があっても、枠内ならば借りられますよ。年収240万円程度であっても。枠が50万円、債務残高が30万円なら、20万円借入可能ということですよ。給料が入ってきたら、20万円を払えば問題ないですね。当月返済分は債務残高が増えてしまいますが、来月以降に返せばいいでしょう。1ヶ月以内の短期借入をしたいのであれば、自分で枠に余裕を持たせておくことで問題は解決されます。きっちり返しているなら、15%以下の銀行カードローンやノンバンク系の10%以下の金利で借りる方がお得なのですけどね。ATMが使えるなら、大抵は問題ないと思うが。何度も言うが、「給料日までの数日間だけの借入」なんて人は、多重債務問題には何も関係ないんだってば。


貸金業者が「貸せなくなる」と言ってるのは、既に数社からの借入があって債務残高もそれなりの「多重債務者」だけですよ?50万円未満の債務残高しかなく、1社からの借入だけの人に「グレーゾーンがなくなると貸せなくなる」なんて言ってるの?まあ、貸したくないなら貸さなきゃいいだけです。それで何か問題が?


こういう記事を見ると、「どこのドイツ」が言ったか知らないが、いかにも「もっともらしい理屈」ってのを、記者が真に受けてるってのがよーくわかるような気がしますね。社会的に信頼性のある”優秀な”経済学信奉者たちが、揃いもそろって似たようなことを言ってたからか?(爆)

まともに「給料日までの数日間だけ借りて返す人」たちは、上限金利が下がると借りられないって?違うでしょ。
どこのガセネタ掴んで来たんだ?マジで言ってるっぽいのがコワイ。まあウソだと疑うなら、記事になんてできんしな。調べもしない記事を新聞に書くのはいい加減に止めてくれ、と言いたいね。ココのような寂れブログ記事とは違うんだからさ。



これまで複数貸金業者が貸し込んできて多重債務になってしまった人には、これ以上「貸し手が現れない」かもしれない、ということなんじゃないの?今まで貸し込んできた連中は、「返せるはずだ」と思って貸したんだから、しょうがないワナ。まさか、「次の貸し手が現れる」と思ってて貸したワケでもあるまい?(笑)もしも貸倒になるんなら、それも仕方ないよね。

別な資金調達先が「きっと何処かにあるハズだ」という理由で貸したワケでもないでしょ?
「今の仕事、給料」で普通に返せるから貸してるんだろ?
上限引下げで平均金利が3%下がるなら、「貸倒率を3%」引き下げればいいだけでしょ?
貸倒率を7%超から2~3%程度に引き下げればいいだけで、何が問題?
ちゃんと営業してたなら返還請求なんてないし、応じる必要もないでしょ?
返還自体は本来「過去の利益」が目減りするだけでしょ?
将来、営業コスト10%、貸倒損失2%で残り利益なら問題ないんじゃないの?



坂野ペーパー支持派の「破産はライフイベントが原因だ」と主張していた人々は、債務残高や貸出金利には無関係ということを言うわけです。その一方で、800万人だか1000万人だかに「貸せなくなる」ということも肯定するのですが、それってオカシイんじゃないか?

「ライフイベント発生確率」の主観的確率分布が事前にあるとすれば、貸出金利が高い層とか低い層があるはずだ。すると、金利の高い層は「ライフイベント発生確率」が高いので「貸倒リスク」が高い、つまり「金利が高い」と「破産確率も高い」ということだ。でも、「金利水準は無関係」ということを彼らは主張するんですよ。「金利の高い層」と「金利の低い層」は、破産の主観的事前確率は差がない(ほぼ同じ)、ということですよね。しかも、ライフイベント発生確率は金利には反映されず、借入金利が高くても低くても破産確率には影響を与えない(差がない)、ということですよね。じゃあ、貸し手にすれば常に高金利がお得じゃないか、と思うけど。

それなのに、何で「高金利帯」の人々から「貸せなくなる」と?これを言う為には、「金利が高いと破産確率が高い」、が成立していることが必要なんじゃないの?金利水準に説明力がないとすれば、「金利はリスクを反映しない」ということに他ならないではありませんか。矛盾してるでしょ。


1社が全額融資している場合には、例えば債務総額が100万円の人と200万円の人の「ライフイベント」発生確率が「同じ」であっても、貸倒損失は2倍の差があります。でも現実には、多重債務者は複数業者からの借入になるので、「ライフイベント」の発生確率が同じであれば、貸出金利が高い方が業者の儲けには有利なのですよ。全ての業者が1社当たり債務者1人に対して均一に30万円融資したとしましょう。債務残高が5社150万円の人のAグループと、7社210万円の人のBグループでは、ライフイベント発生確率が同じであれば、Bグループに高い金利を適用した方が儲かりますよ。金利水準も債務残高も「破産には関係ない」という理屈ですからね。貸し手にとっては、Aの人もBの人も「ライフイベント」発生リスクは同じであり、融資残高も同一ですので、単純に「高い金利」を適用できれば儲けは増えるはずですよね。貸倒損失額も1社当たりでは同じですし。でも、業界全体で見ればBの方がAよりも貸倒損失額は大きい。失敗業者はこの損失のしわ寄せを被ってるかもしれんけどね。


破産が金利水準に無関係なら、貸せるでしょ?(笑)
何故「貸せなくなる」のか言ってみなよ。


業界自主規制の融資枠が原則50万円まで、というのが、逆に破綻リスクを分散して「貸し込み」を招きやすい下地になっていた可能性があるのかもしれません。ただ、「貸し込み」が止まれば、100万円以上の無担保融資が可能な層というのは、今よりも随分と少ないでしょう。親兄弟とか親戚なんかから「引っ張る」方法が可能な業者たちほど、債務総額を膨張させることで「借り手に重大な決心をさせる」ということができてしまうのだろうと思いますね。不動産を担保に取るとか連帯保証を取るという手法も、総額がある程度大きくならないと、そこまでの決心をさせられませんからね。要するに初めは「1人だけの借金」問題であったものが、2人とか3人とかを巻き込んで支えるということになるのでしょう。


ところで、新しい金融担当大臣は、どうも「業界寄り」と評される人物らしいので、今後の法案審議はかなり心配しています。「グレーゾーン金利」をなくすのも、上限引下げにも反対?という立場のようだからね(あくまで推測ですけど)。




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