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日本再建を考える

2008年12月24日 01時28分08秒 | 社会全般
1)日本の経済の姿を振り返ってみよう

これまでの低迷期間というのは、言うまでもなくデフレであったことが最大の原因でした。名目成長率が実質成長率以下でしかなかったことが、多くの人々の不安を増幅したものと思います。これをどうしても逆転せねばなりません。

日銀が国債買入増額を決定しましたが、今の「百年に一度」という未曾有(笑)の事態には、あまりに過少な額です。更なる増額をするべきです。これは前にも書いた通りです。「お金LOVE」を打ち破らねばデフレの罠からは抜け出せません。財政再建至上主義みたいなものも、即刻棄てるべきです。今、財政規律だの再建だのというのは、墜落する飛行機からパラシュートで脱出するのに、「スカートがまくれて恥ずかしいわ」とか言ってるようなものです。そんなことはどうでもいい。「助かること」こそが最優先であり、先決問題は何なのか、ということを認識するべきです。

さて、日本経済の規模はGDP統計で見ればどうなっているでしょうか。
まず、実質GDPの額の方が大きく、名目GDPは小さいのです。どうしてこんなことが起こってしまっているかといえば、日本が長期間のデフレに陥ってしまっていたからです。先進国のほぼ全部が(調べてないけど)、名目額の方が実質額よりも大きいのです。哀しき日本、ということですね。とりあえず、07年度の実質GDP額で見てみます(厳密には用語や定義は決められています。統計局のHPなどを参照して下さい)。

 ①実質GDP 563兆円=民間消費 308兆円+民間投資 108兆円+政府支出 118兆円+純輸出 29兆円

GDPの基本的性質から、GDP=民間消費+貯蓄+税 ということになっていますので、
(貯蓄-投資)+(税-政府支出)=純輸出 という関係式が成り立ちます。これに①の金額を当てはめれば、

 ②(貯蓄-108)+(税-118)=純輸出 29

となります。②式において、プライマリーバランスが5兆円の財政赤字であると、(税-118兆円)=-5兆円ということなので、税が113兆円ということですね。この税というのは、国税ばかりではなく、地方税やほぼ税と同等の社会保険料も含まれるものと思われます。否みに地方は厳しい財政規律を課せられたので、全国的には数年前からほぼ黒字化(トントンくらいかな)したのですが、血の出るような削減を行った結果なのです。交付税の大幅なカットをされましたしね。国の方はいくらでも国債を発行できるので、削減は遅々として進んでいません。

②式に戻りますが、プライマリーバランスが5兆円のマイナスということであると、貯蓄-108兆円=34兆円となるので、貯蓄投資差額が34兆円、すなわち貯蓄=142兆円ということになります。民間住宅投資が16兆円、民間設備投資が90兆円ですから(他に在庫投資があるが小さいので無視)、投資と貯蓄の差額が大きくなれば、政府支出を増大する(財政赤字額の拡大)か、純輸出額を減る以外にはないわけです。特に97年以降には家計貯蓄率が大幅に下落している中、企業貯蓄は増加してきたわけです。これはどうなっていったかというと、雇用者報酬の増加には回されず、主に企業利益の積み上げ=株主配当へと転換されていった、ということでしょう。

GDPの成長要因としては家計消費が微々たる伸びに留まり、純輸出の増大(=輸出企業が大きく得をした)分は財政赤字拡大と企業貯蓄増大に食われていった、ということです。こうしたGDP統計というのは、経済学の派閥とか学派のモデルとか、そういうのには関係ありません。単なる静的な数値です。観測結果に過ぎませんので、どの経済学派閥であろうと同じです。ケインズの亡霊がいようがいまいが関係なく、新古典派であろうと何だろうと同じです。


2)雇用者報酬の名目値はマイナス

97年ショックの時が名目値が最大で約270兆円、98年には-2%と落ち込みました。以後、ITバブルの2000年3月期を除いて、雇用者報酬は軒並みマイナスに陥り、05年度にようやくプラス1.4%となりました。けれども、05年末以降には日銀が「プチバブルだ」とか言い出して、金融引き締めへと無理矢理動き、度重なる利上げを実行した07年度には、雇用者報酬の名目値が僅か0.5%の伸びに終わってしまうことになったのです。06年には景気の減速感があったにも関わらず、敢えて利上げに踏み切り、デフレに逆戻りさせたようなものです。07年度(08年3月期)時点では雇用者報酬が約265.7兆円で、97年の280兆円から見ても、依然として下回っています。97年を100とすると、95くらいの額しかなかったということです。

これも幾度か指摘しましたが、賃金の名目値が上がっていかなければ、消費を増大させようなんてことは中々考えられないわけです。自動車が何故売れなくなったか、なんてのは、所得が下がったから、という当たり前の理由があるとしか思われず、人間というのは給料の額面が消費態度に影響するのではないでしょうか。自業自得なのですよ。愚かな財界人が雁首揃えて揃っておいでで何よりですわな。


3)今年のような不況期にはどうするか

今年度では①式において、純輸出がほぼゼロか若干のマイナスが予想されますので、仮にゼロとしますと、民間消費が減少、民間投資も減少が予想されるなら、消費、投資、純輸出の減少分を政府支出でカバーする以外には、実質成長率をキープすることが極めて困難になります。勿論マイナス成長というのはごく当たり前に有り得るわけですが、これを続けるとかつての悲惨な時期と同じ結果を招いてしまいます。若干のマイナスになるとしても、純輸出29兆円分の落ち込みはかなりの大きさになりますので、日銀が金利を引き下げようとも間に合わないということもあるでしょうから、政府支出を使うより他にはないように思われます。家計消費が急には大幅に落ちない(ラチェット効果などで)、ということであるとしても、他の投資や純輸出がそこそこマイナスになってしまうことは避けがたく、現に多くの企業で投資案件の見送りや延期などが発表されています。

日本が米国のごとく、物価上昇率がそこそこある状態であるなら、実質成長率がマイナスであったとしても、名目値はプラスとなる可能性はあるのですが、デフレ体質が残ったままですので実質がマイナス、名目もマイナス、ということになると、デフレスパイラル真っ只中の頃と同じような状況になってしまいます。これを回避するには、政府支出を急速に発動する以外にはない、ということです。 


4)政府支出の悪しき特徴

これも以前から言われてきたことですが、公共事業バカ、ということですね。過去のバブル期に養成された土木関係の就業者数がかなりの数に上るので、これが今は長き調整期間ということになっています。今年は特に建設・不動産関係が倒産が多かったのですが、それでもまだまだ多い、という状況なのかもしれません。

政府支出で見ると、公的固定資本形成が20兆円と先進諸国に比べると突出して多いのです。これがこれまで道路や空港、或いは橋だの新幹線だのダムだのというような、「土木頼り」という悪しき体質を作り上げてきてしまったわけです。公共事業の削減を謳っていてもなお、GDP比ではかなり大きい額なのです。これを変えるんですよ。固定資本は、GDP統計上では必ず損耗があります。民間企業設備投資でもそれはあるのですが、固定資本にたくさん投入するよりも、「人に投入」した方がはるかに効果的なのです。政府最終消費支出が98兆円、固定資本が20兆円となっていますが、たとえ同じ額であろうともこの配分を変えていけばいいのです。固定資本をGDP比で半減させたって、政府最終消費支出をその分増やせばいいのです。

公的固定資本が減ると、その分の損耗が消えますから、GDP統計上ではプラスに働きます。例えば、働く女性の介護や育児に関する費用負担を個人から政府負担に変えるとか、補助を大幅に増額すればよいのです。「女性の働く機会を増加させられる」ので、少子化社会での労働力確保には有利、保育や介護の民間事業者の拡充に繋がる、など投資効果は将来に渡って期待できます。なので、道路をクレクレ厨、新幹線をクレクレ厨、みたいな老害連中は、先々のことを考えてはいないのです。今、目の前にある、用地買収とか麹費用とか、そういうのに目が眩んでいるだけとしか思えません。そんなものに金をつぎ込む前に、まずは「若い人たちが一生懸命働ける」環境を整えることの方が重要なんです。

GDP比で見れば、家族政策に関する政府支出はOECD諸国中でも最低水準です。教育に関する支出もそうです。固定資本ではなく、そういう「ソフト」路線に支出を拡大する方がはるかに役立つのです。じゃあ、建設・土木の人たちをどうするんだ、失業したままでいいというのか、みたいに言う人がいるかもしれませんが、そういう方々には別な仕事口を見つけるか就業支援の支度金ではないけど賃金補助などの「人に直接渡す」方がいいのです(参考:続・農業と建設土木へのお答え)。


5)輸出企業に依存しない経済構造が必要

ここ5年程度は輸出企業が日本経済を牽引してきた、というのは事実でしょう。それは、日本だけではなくて、米国との利害一致もあったが故なのです。しかしながら、今世紀に入ってから、欧米企業を中心に「株価を高める」「企業価値を高めることこそ企業の使命」「株主価値を最大化する」というようなことを目標にやってきたわけです。その結果が今、ということでしょう。どうなったかといえば、株主価値は大幅に毀損されたし、企業価値なんてゼロになってしまった米国企業だって出たわけです。そういう企業の目標としてきたことは、従業員の雇用を守るだの正規社員の価値を守るだのといったことではなかったはずでありましょう。別に、日本企業の正社員が終身雇用でそいつらの価値増大を企業経営者が考えてしまうので、株価が下がるとか企業価値が下がるということではない、ということではないでしょうか。端的に言えば、株価最大化、株主価値最大化を最優先目標としてやって来たって、やはり百年以上の歴史ある企業でさえ倒れてしまう、ということなのではないでしょうか。

野球でもサッカーでもいいのですが、個々のプレイヤーの力を最大限に引き出せるように考える事が経営者の役割であって、それは結果的には企業利益に繋がり株主価値を高める、ということに他ならないのではないでしょうか。株主が今のように広く一般にいなくたって、かつて創業者が全部株を持っているようなオーナー経営者たちだとしても、「自分の利益最大化」を考えないはずがないのですから。そんな聖人君子みたいな人たちばかりが経営者だったとは思えませんね。でも、長年の経験から、企業価値が高まるのは「従業員が一生懸命働いてくれる」状態を作り出せた時にそうなる、ということを知ったのではないでしょうか。株主が1人だろうと100万人だろうと、企業が成長して儲けてくれ、というのには違いないわけでして。ただ、たった1人の株主であった場合、それがオーナーであれば尚更、失敗することもある、ということが判っただけでは。経営トップ=大株主(自分)ということになってしまうと、まずいことは起こり得ますね、ということなのでは。別に大昔の経営者たちがバカだったわけではない、むしろ会社の利益の為によく考えていたと思えます。


GDP統計上では、輸出額が80兆円超くらいでしたが、これは国内消費に比べると極めて大きいわけではありません。日本にとっては、貿易自由化の推進が国内産業の再編には大いに役立つであろうと思いますので、保護貿易的な姿勢は必要ありません。また、家計最終消費支出約300兆円のうち、耐久財は37兆円、半耐久財は22.3兆円、非耐久財が75.7兆円ですが、サービスは167.5兆円と最大です。就業人口比で見ても多いので当たり前と言われればそうですが、消費の約56%がサービスなのだ、ということです。輸出企業の不振をカバーできるには、家計消費を増加させること、特にサービスの消費額を増大させることが海外競合となる財には影響を受けにくくなる体質であると考えます。

それから、為替のことがありますが、成長率がある程度の水準にある時には円高となってしまうことは避けがたいと思います。その度に輸出企業が文句を言い、為替介入して円安誘導を行っても日本経済には長期的メリットがないようにも思われます。家計消費支出の約4分の1でしかない輸出の為に、全国民が交易損失を受け入れるべきだ、ということにはならないように思うからです。輸出企業が成長したからといって、日本経済に与えるプラスのインパクトはかなり頑張っても1%程度しかなかったわけで、それならサービスを0.5%頑張ればいいわけで、そちらの伸びシロの方が期待できると考えます。ESRIのペーパー(茂呂、2004)では、通貨価値上昇の方が経済成長にはプラスと報告されており、一般的に考えてもその方が整合的であると考えます(逆に通貨安が起これば極端な例ではアイスランドや韓国のような状況となってしまいます)。


6)今後には

将来の消費税増税に関しては、非難がかなりあるかと思います。確かに、景気が悪い中で増税しようという発想には批判が出るのは止むを得ないかもしれませんが、私自身は増税は何処かの時点でやるべきと考えています。理由はいくつかあります。

日本は、国民負担率がOECD平均に比べても低いことは確かです。一般政府の税収が上記1)で推定したように113兆円しかなく、これだと対GDP比が20%に過ぎないのです。デンマークやスウェーデンは50%と高い水準ですが、成長率が必ずしも低いということにはなっていません。「小さな政府」代表とも言うべき米国でさえ、17%程度です。米国には日本ほどの公的年金制度や医療保険制度がないにも関わらず、それだけの収入を確保しているのです。英国に至っては日本よりもはるかに「大きな政府」となっています。

米国の場合、家計所得の約18~19%が医療保険関係費です。日本では約5%くらいしかありません。その分の支出余力で見ても、個々に支出せずとも税として平均的に薄く徴収し、同額の給付をすることがそんなにマイナスになるとは思っていません。政府収支差額には関係ないし、名目GDPは増加させることができます。


消費税増税には制約条件を設けるべきで、仮に20兆円集めたら20兆円は国民への給付に回し、借金返済には充てない、ということが必要かと思います。政府の社会保障費への繰入額についても、現状水準以下にはしない、という約束をさせる、ということです。返済には、もっと別な努力を求めるべき、ということですね。他の歳出からカットして、それを返済に充てるべき、ということです。

また、収入が減るのに税金だけ上げる、ということがないように、当初は政府が支援することを約束するべきではないかと考えています。非正規雇用の労働者の権利関係も改善が必要ですが、更には賃金引上げを同時に求めるべきだと思います。名目賃金を引き上げさせる、ということです。これには、最低賃金引き上げという方法もありますが、これは望ましくはないであろうと思いますので、企業に賃金引上げ分の減税を行う、ということをやってみてはどうかと考えています。

例えば一定の高額所得者(特に役員たちとか、高級取りの役職者)以外の、一般の労働者の給与総額(ボーナスは除くべきかな)に対して、もし1%引き上げを行えばその1%分の法人税を相殺する、ということです。ある年の給与総額が100億円で、翌年101億円に賃金引上げをしたなら、1億円の法人税を免除する、ということです。賃金引上げに応じて減税を受けられるとなれば、増やしてもよい、という企業が増えるかもしれないかな、と。名目賃金が上がれば、物価上昇率にはプラスに働く可能性が高いと思いますし。企業内で個々の労働者に成果主義的に配分を変える自由は残されています。ある人は据え置きで、別な人は2%上昇というような自由度は残される、ということです。全体として、引き上げ方向になっていればよいのかな、と。

これと税金引き上げを同時に行えば、政府の再分配機能は高まる、名目賃金額が増加させられ恒常所得増大に繋がる、デフレに陥るのを防げるかな、というようなことです。利益があまりない企業は法人税の相殺には届かない、ということがありますので、業績が思わしくなければ賃金を引き上げずとも済みます。それは企業ごとに変えてもらってもよいでしょう。けれど、社会全体として見た場合には、賃金引上げになっているべき、ということです。賃金が上がれば、所得税の支払額も若干は増加するでしょう。政府の運営を効率的に行ってもらうには、一般政府自身が消費する分を抑制してもらえればいいだけで、移転的支出が増えることは実質的に大きな政府にはなりませんし、再分配機能が高められると考えます。




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