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「かんぽの宿」疑惑の波紋~7

2009年02月24日 14時25分28秒 | おかしいぞ
前の記事にコメントを頂き、長くなるのでこちらに書くことにします。

「かんぽの宿」疑惑の波紋~6

Samさんがご指摘された、『守秘義務など留意すべき事項があるのは理解できますが、この辺りの数字はまず総務省がきちんとチェックし、バイアスを掛けずに必要な開示をして欲しいものです。また国民やメディアとしても、頭から決め打ちしない冷静な議論が必要であると考えます。』というのは、まさしく正論でありまして、私も全くその通りと思います。
そうであればこそ、日本郵政の情報開示を拒否する姿勢や理由というものが、なお一層判りません。きちんと帳簿処理について開示及び説明をすればいいだけなのですから。


更に、ご指摘の3点について、もう少し詳しく書いてみたいと思います。念の為にお断りしておきますが、会計や簿記の専門知識は持ち合わせておりませんので、あくまで普通の一般的な知識の範囲で書いています。

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(以下にコメントの一部を引用)

①今回の譲渡対象資産の簿価は、土地を含めて123億円まで減損されているということなので、減価償却費が年数十億円も出るというのは想定し難いこと、
②対象事業の価値評価に際しては、償却前のCFから設備投資を差し引必要があるので、場合によると損益の赤字よりもCFは更に下に行く可能性もあること
③いずれにせよ、今回のオリックスへの譲渡(予定)価額は日本郵政の減損後簿価を上回っているため、減価償却費が減少する効果はほとんど見込めないこと

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①はあくまで結果であると考えました。それは簿価を意図的に落とす為に大幅な減損処理を行ったのであれば、残っている減価償却費はとても少ないでしょうね、という話です。

②設備投資額が不明なのでCFがどの程度なのかは判りません。ここ2~3年で営業キャッシュフローを大幅に上回る設備投資を日本郵政が決定し行った、という証拠でもあれば別ですが、そうした資料はありません。

③減価償却費が減少する効果、というのは、固定資産が2000億円の簿価の時に減価償却費を今後落としてゆくのと、簿価が110億円で同様に落としてゆくのでは、その他の費目が同じであっても「経常利益の額は変わりますよね」という話です。


バッサリと簡略化した例で書いてみます。
売上高や営業経費等は一定で不変で、法人税等は考えないものとします。
土地建物の減損処理を毎期行うものとし、それら固定資産の簿価は毎期減少していきます。


            1期目     2期目     3期目

経常利益     -10万円   +60万円  +80万円
(減価償却費)  (100万円)  (30万円)  (10万円)

減損損失   -1000万円  -300万円  -130万円
当期損失   -1010万円  -240万円   -50万円

(キャッシュ)  (+90万円) (+90万円) (+90万円)


・3期で達成された固定資産の減損処理額=1430万円
大幅な減損損失を計上するので、固定資産の簿価は毎期減少してゆきます。それに伴い、減価償却費の計上額も縮小する、ということになるのは普通かと思います。
もしも固定資産の取得価額が2000万円、この前の期までにおける減価償却費累積計上額が330万円であると期首の固定資産簿価が1670万円、3期で1430万円の減損損失+減価償却(100+30+10)後となれば合計1570万円分固定資産が減少するので、「残存簿価は100万円」ということになります。また、売上高や減価償却費以外の営業経費が不変ですので、営業キャッシュフローは90万円のままです(*)。帳簿上は赤字となっていても、必ずしもキャッシュが減るということにはならないケースもあるのではないかと思っています。

(*):ちょっと追加ですが、正規会計のキャッシュフロー計算書に出てくる営業キャッシュフローという意味ではありません。普通の会計であると、減価償却費や減損損失が営業キャッシュフローに計上されてしまう為、減損を巨額で行えばその分のキャッシュ増加として計上されてしまいます。


つまり、「営業キャッシュフローがプラス」、「残存簿価が取得価額の20分の1(100万円)」、「赤字決算」、というのを満たすことは不可能ではないのではないか、ということを言っているのです。ここでの残存価値として簿価の100万円が正しい、ということが言えるならこうした処理は正当であると主張できるでしょうが、果たして「簿価が100万円」というのが正しいということを、誰がどうやって示せるのか、というのが問題なのです。意図すれば、こうした処理は可能だから、です。それを確かめねばならないのではありませんか、ということを申し上げているわけです。


しかも、帳簿の中身によらず、最終的な損益の数字である「-50万円」をもって、赤字の垂れ流しだ、という安易は批判は必ずしも妥当ではない場合もあるのではないかと思えます。
たとえば竹中をはじめ「赤字が50億円」と言い募る連中は、この最終的に出された当期損失だけしか言わないので、これは問題があるのではありませんか、ということです。


今回騒動以前に売却された保養センター物件は、関東圏を全く含まない13物件で売却価格は12.5億円でした。今回の物件とは異なり、赤字の程度が酷く、尚且つ北海道、東北、中国、九州などの地方に存在する物件だったので、売却価格が低くなることはあると思います。それでも1施設当たり約1億円だったわけです。今回の売却対象施設には関東圏の13物件をはじめ、有利な立地にあるものです。安すぎやしないか、と感じるのは普通ではないかと思います。


更に、土地の取得時期や価格という疑問があります。

主に85年以前に取得された土地であると、購入時の簿価が異常に高かった、という可能性は少なく、現時点の評価額の方が高いのではないか、ということがあります。一つ前の記事で指摘したように、会計検査院の報告書では保養センター施設の土地取得額は約92億円で、もし取得当時よりも土地評価額が高いのであれば、建物の評価額がほぼゼロになっているとしても、土地売却に見合う価額でなければならないはずです。

大雑把に言って85~95年くらいの間に取得された土地であると、バブル崩壊後の土地価格下落傾向があったので、取得価額が高く現在価値の方が低い可能性がないわけではありません。しかし、「保養センター」の設置建設が行われた時期は、大半が昭和60年以前、つまり土地価格が値上がりしていった時期より前であるということです。指数などで見ると、85年水準の土地価格よりは現在価格の方が上回ることは多いので、例えば70年代に取得された土地であると簿価よりも高い評価額である可能性は十分有り得ると思われます。


「ラフレさいたま」の建物の評価額が低いとしても、土地代だけでどの程度の評価額になるのか、ということが問題ですし、都内の社宅の土地評価額がいくらなのか、というのも不明のままです。もしも、都内の社宅が50億円とかで売却できるなら、残りの「かんぽの宿」を59億円で手に入れることができる、ということになり、「ラフレさいたま」の土地代だけで50億円とかの価値が付くなら、ほぼタダ同然で「かんぽの宿」をゲットできてしまいます。青梅の施設やその他関東圏の物件の売却益が期待できる、というなら、更にお得な買い物ということになるかな、と。


まとめますと、

ア)簿価の妥当性について根拠の提示がない
イ)減損損失の計上は妥当か確認できない
ウ)赤字額だけではなく、キャッシュフローなどの資料公開がない
エ)各施設の土地取得時期と価格が不明のまま
オ)都内の社宅物件の詳細や土地評価額が曖昧
カ)「ラフレさいたま」の土地評価額は妥当か

これらを資料に基づいて検討している報道機関もなければ、論者もいない。
日本郵政側は一切説明なし、郵政民営化委員会及び、郵政民営化財産承継委員会のメンバーからも、何らの釈明や説明もなし。これは異常でしょ。

もしも何ら不都合がなく、全て帳簿通りで、全部正しい、ということを言えるなら、誰に聞いても同じく答えられるはず。きちんと資料公開も説明も、できるはず。入札過程云々を言う前に、まず旧公社時代の帳簿を示せ、日本郵政になってからの数字を全部出して、と言っているのであって、オリックスがどうとか取引相手がどうという以前の問題。


※後からチラッと見返すと、ポロポロ、足し算・引き算の間違いがあって、チョコチョコっと間違いを直したよ。ごめんね。会計士とか経理職には向かないかも。


またまた、しつこく追加ですけれども、上では3期目まで例示しましたが、この次以降にはどうなるかと言えば、減価償却すべき残存簿価が100万円でこの値段で売却されると帳簿上では固定資産取得価額は変わりませんね。

で、減価償却費が10万円で売上高や経費が不変ならば、経常利益は3期目と同じ80万円となり、これまでの減損損失が「かぶせられて」いたのが一切なくなりますので、特別損失が消えますから、当期損益は経常利益と同じ「80万円の黒字」が達成されます。これ以降の期においても、売上高や経費に変動がなければ、利益水準は同じようになるでしょう。
細かいことを言えば、固定資産税負担が減少してゆく為、利益が出るということになると思います。老朽化して設備投資が必要になりそうだ、という時には、売却しちゃうと儲かるかもしれませんね。もうその頃になると、以前の民営化の時の話とか忘れて関心がなくなるし、既に「民間会社の持ち物」となってしまっているのなら、言われ無き非難とか売却に文句を言われることもないでしょうからね。

ウハっと儲かるわな、という将来像が、ボクの目の奥には見えてくるんだよなあ。

例示したのは、あくまで架空の会計の話だから、現実のビジネスとは違うんだろうけどさ。でもね、オリックスさんみたいな、東証一部上場企業になってですね、プロ野球の球団所有になるほどに有名になった企業が、「儲けの出ない、赤字をモロにおっかぶりましたよ~」みたいな、安易な投資話に「最後の1人」になるまで、頑張り通しますかね?

経営者の能力が高ければ高いほど、そんな甘ちゃんな金の出し方なんてしないでしょうよ。
前にも書いたけど、目の前で毎年50万円ずつ消えてゆくという、恐るべき「100万円の束」を、たった今、100万円出して買ってもいいですよ、なんていう温情派の殊勝なビジネスマンがいると思いますか?(笑)

そんなバカな投資を実行されたら、株主訴訟でも提起という話になったりするんじゃないですかね。たたでさえ、外人保有比率が高い企業ですよ?そうなったら、困ることになるのは、親会社であるオリックスなんじゃないですかね。

何ら「うまい話」ではないのだよ、という、本当に「かんぽの宿が可哀想」みたいなお情けでオリックス不動産が名乗りを上げた、なんてことが通用すると考える人の方が、相当にアレげな感じの「頭の中を見せてもらっていいですかい?」ってなことなんですわ。


こういったスキームを考えたり、アドバイスしたり(笑)する役割の人たちが、それこそ優秀な○○系だののコンサルだか投資銀行金融マンだかの、高給取りなんじゃないでしょうか。私ごときでは、所詮ド素人なわけですし、専門知識を駆使してくる方々に太刀打ちできるわけではありませんがね。




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1 コメント

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なるほど (Sam)
2009-02-24 22:46:35
ありがとうございます。
記事を拝見していて、何となく認識のギャップの在り処が分かってきたような気がします。
私の前のコメントは、減損はもう暫く前に終わっていて(普通は分社化した06年度あたりにごっそりやっていそうに思います)、現状言われている「赤字40億円」というのは減損後の償却レベルによるもの(記事の例で言うと、4期目以降で経常赤字40億円)、という前提でした。だから、営業CFも相当の赤字なんだろうな、と。なお、国会質疑や報道を見ると、ここで言う40億円の赤字は経常赤字みたいですよ。
でも、確かにそうは断定できないですから、やはり数字を開示して欲しいですよね。まあ少なくとも総務省は分かっている筈ですから、鳩山さんきちんと見て下さいよ~
しかし「隠語まで使っている!」には笑いました。

なお、オリックスが赤字を継続させるつもりで応札したのではないのは当然でしょう。従業員等は暫く雇用しつつ料金改定・コスト圧縮で一段階目の改善を図り、数年経ったらやはり不採算な設備は閉鎖し更地にして売却、という感じでは?
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