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「かんぽの宿」疑惑の波紋~6

2009年02月23日 13時22分48秒 | おかしいぞ
日本の経済紙の社説が何を書いているかといえば、ド素人同然の内容なのだから恐れ入る。

NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋-日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

(一部引用)

西川善文社長は「一般競争入札ではなかった」と説明を修正した。日本郵政の情報開示の遅れも疑念を深めた。総務省は入札参加者などへの調査を始めている。不正があれば日本郵政やオリックスは厳しく指弾されるべきだ。だが日本郵政の公開資料をみる限り、意図的な落札を導いたと断ずるに足る証拠はない。日本郵政は正当というなら情報開示に努めるべきで、白紙撤回は早すぎた。総務相も抽象的な批判でなく、調査を徹底して、誰もが納得する客観的な事実関係を示してほしい。民間企業の契約が政治介入で簡単にほごになるようでは、内外の企業が日本郵政と安心して取引できなくなるという大きな問題を残す。
 (中略)
一括売却の結果で決まった109億円という落札価格について「建設費の2400億円に対して安すぎる」という批判は多い。だがこれは単なる不動産売却ではなく、毎年50億円近い赤字を出す事業を雇用を含めて買い取るという話だ。一括売却方式には合理性があるし、入札が適正である限り価格も妥当なはずだ。総務相は個別に地元業者に譲渡すれば良いと主張するが、不採算施設まで売れるかどうかは疑問だ。売却が1年後なら総額160億円近くで売れないと、オリックスへの売却より不利になる計算になる。

=====

社説子は赤字額が50億円という財務諸表の中身を「公開情報」から確認できたのだろうか?できたのなら、どこにどういった財務諸表が公開されているか、是非とも周知してもらいたい。

このシリーズでは幾度か指摘したが、赤字になる帳簿を作ることは可能。公社時代には損益率が100%以上の「かんぽの宿」はあった。かつては固定資産税などの納税がなかったということも影響していたかもしれないが、赤字の改善しない施設については以前から処分対象となり売却が進められてきたのであり、残されていた「かんぽの宿」は殆どが黒字か黒字転換が見込める比較的「優良物件」だった。

土地建物の評価額が高いと、減価償却額が大きい、固定資産税が大きい、といった帳簿上の問題は発生するので、キャッシュフローがトントン程度か若干の黒字であっても、決算数字は赤字となることは有り得る。現金収入が3億円のプラスであっても、減価償却額が年間20億円あれば赤字に転落する。だが、この固定資産を10億円で購入できれば、減価償却額を10年定額としても年間1億円で済むので、現金収支3億円の水準ならばプラスが期待できる、ということになる。「赤字50億円」という言い分は竹中も同じだが、どういう中身か、財務諸表がないのにどうやって確認したか、というのが問題なのである。見てもいないくせに、それがあたかも当然の事実のように扱うのは大きな誤りではないか。

日経社説で「2400億円の建設費」となっているが、どの物件がいくらで建設され、減価償却された額が公社時代までにはいくらで、残存資産がどの水準だったのか、その後減損損失で処理された額が各物件ごとにいくらなのか、そういうのを調べた結果なのか?
新聞が率先してウソを垂れ流すというのは、大問題ではないのか?これはデマを流しているのと、何が違うのか?
日経新聞が責任を持って「2400億円の建設費」を立証してくれることだろう。どこにそんな事実があると?「かんぽの宿」の建設費が2400億円なんですか?「ラフレさいたま」という施設を含めてもいいですけど、本当にその金額で間違っていませんか?

更に、会社は誰のものか、という話の一環ではあるけれども、株式会社においては会社のモニタリングとして「株主」が重要なのではありませんかね?日経社説子には、そういう原理原則が理解できないのかもしれないが、株主は尊重されるべき存在なのではありませんかね?経営陣が好き勝手にやりたい放題でいいとか言いますかね?
日本郵政の株主とは誰ですか?
財務大臣なんですよ。株主が経営陣に対して注文を出すことは、有り得るのではありませんかね。政治介入云々を言う前に、まず株主の意向が「反対」ということを表明すれば、経営陣は勝手な真似はできない、ということになっているわけです。総務大臣の話は手続的な問題なので、若干は違うと思いますけれども、民営化会社になったからといって、西川が好きなように何でも決定できる・采配できるというのは、大間違い。株主が100%反対すれば、できない、というのが原則なわけで。


こうした日経社説子と似たようなのがコレ>はてなブックマーク - かんぽの宿 5つの論点 - Chikirinの日記

こういうのが賞賛されるというのも、ナンですな。


○論点1について

年間50億赤字だから、来年になれば160億、更に3年だと259億円、経営立て直し費用70億を加えて329億円、とか、素人経営診断ありがとよ、って感じです(オレもか、笑)。デマもいいとこですね。

敢えて「損をしてもいいから、かんぽの宿の従業員のみなさまの雇用を守りたい、私どもは大赤字を覚悟で今後3年間でざっと220億円ものキャッシュ持ち出してでも、かんぽの宿という貴重な資産を守って参りたい」とか言うような、脳天気ビジネスなんかないとしか思えないわけで(笑)。

まず根本的に施設の数からして間違ってるんじゃないか?(爆)
「かんぽの宿」の営業している施設数はそんなにはないわな。売却された物件には遊休資産も含まれているだろうし、そこで100億回収とかできてしまうなら、他の購入価格はほぼナイに等しいですから。後はキャッシュフローがプラスになってさえいれば、大赤字になんかならないわけでして。世の中の商売なんて、そんなに甘いもんじゃないんじゃないの?特に、金貸しをしぶとくやってきたオリックスさんが、そんなに温情的であるとは思われないわけで。

もしも固定資産価値がこれまでの800億円超から、仮に120億円に下がった場合、他の帳簿上の数字が同じであると、「かんぽの宿」の赤字額はどうなりますかね?そういう数字を帳簿で確認できない限り、赤字垂れ流しだから云々という話は難しいんじゃないか。参考までに、07年9月時点での「かんぽの宿」52施設の赤字額(ディスクロージャーの一覧表における収益-支出差額)は、全部で約4億円だった。半期だから通期になるとどうか、というのはあるけれども、50億もの赤字にはなっていなかった。

それと、「リーマンが2ドルだった」、だから何?
あのね、倒産会社で「大幅な債務超過」になってる会社と、資産価値が高いとか資産超過の会社の売買では、全然違うに決まっているでしょう?
負債総額10億円の電気店が倒産したとしますか。この会社には優秀な技術部門があって職人さんとか蓄積技術が惜しい、というような時には、職人さんごと雇用もまとめて技術部門を買い取る、ということはあるでしょうね。そういう時の買収価格なんて、会社としては債務超過なわけですから、ほぼタダ同然でしょうな。会社の在庫にしても、簿価が1億円分あろうとも、バッタ屋にゴミ価格同然で引き取られていくでしょうね、きっと。仕入れ価格30万円の大型テレビであろうと、数千円とか1万円とか、そういう値段になってしまうでしょう。
債務超過の倒産会社の資産を処分するのと、「かんぽの宿」が同じなんですかね?(笑)
「かんぽの宿」のどこが債務超過施設なのか、教えてほしいもんですな。「ラフレさいたま」でもいいですけれども、長期債務も付けられたままで債務超過な「不良物件」を売ってるとか、そういった数字でもあるなら、是非財務諸表を教えてもらいたいもんです。


○論点2について

日経社説と同じで、建設費が2400億円というその裏付けを見せてもらいたいね。施設ごとに、取得・修繕価格と累積の減価償却額が判るなら、知りたいね。建設に投入された税金が720億円とか、どこに書いてあったんですかね?

確かに「かんぽの宿」の運営は天下り団体がやってきて、非効率経営だったのはきっとそうでしょう。でも、投入された資金が税金としてどの程度使われたか、というのは本当に720億円なんですかね、って疑問は残る。
そもそもは簡保加入者の金でやっていたビジネスですから、必ずしも税金ではないわな。

一応、こちらが参考になる。
会計検査院 平成9年度決算検査報告

この当時において、建設後の平均経過年数が「簡易保険保養センター」で12年、「簡易保険会館」で19年、「郵便貯金会館」で20年だった。今は更に10年経過しているから、「かんぽの宿」の平均経過年数はもっと増えていて、単純にいえば22年ということになる。でも途中で建替えられたり廃止されたりしている施設があるから、何とも言えないけれど。
(悪名高き「日光霧降」は平成9年4月開業したばかり、「伊勢志摩」はまだ建設途中であった…)

建設にあたっては、地元の地方公共団体の設置希望が出されたのであり、それに基づいて建設決定がなされていったわけである。のべつ幕なしに、無軌道建設が認められていたわけではない。昭和50年代以降急速に下火となり、施設数はそれ以降殆ど増加してはいない。どちらかというと、建設に制限が加えられるようになっていったのはかなり昔の話であり、今から20年以上前のことだ。

郵政関連施設の土地と建物の取得費を見ると次の通り。

                 土地   建物
郵便貯金会館        292.1  497.0
郵便貯金総合保養施設   16.6  193.3

簡易保険保養センター    91.7  397.9
簡易保険会館         89.6  181.5
                   (単位 億円)        

上2つが郵政省、下2つは簡易保険福祉事業団(いわゆる特殊法人と呼ばれた天下り団体だ)の所管ということだ。特別会計に一般会計からの繰入があったかもしれないが、建設に当たっては大半が「簡保加入者の保険料」の運用収益から支払われたのはないかと思われる。つまり、「かんぽの宿」(簡易保険保養センター)の取得価額約500億円に税金が使われた、というのは、どの程度なのか不明であり、かなり不正確ではないかと思う。
ただ、築年数が相当経過していることもあって、修理修繕費用などの追加負担がこの後にも継続してきたのでしょうから、それにも税金が投入されてきたであろう、ということは予想される。しかしながら、「建設費が2400億円」というのは、どういった数字なのか、各施設ごとに見てみないと何とも言えないのではないだろうか。単純に合計数字(2400億円)だけ出しても中身がわからず、実際の取得費は土地代と当初建設費の計500億円ですので。伊勢志摩みたいに多額の費用がかかっているケースはあるわけで、何がいくらなのか、というのを時系列で見ないとどうしようもないね、という話。


○論点3

疲れてきたので、流していきますが、昔、「地域の郵便局幹部の縁故採用があった」という話が、オリックスへの売却話が正当であったかどうかと、どういった関係があるのでしょう?国家公務員になるのに、そうした縁故採用が可能というのは初めて知りましたが、郵便局長さんの家族とか知り合いを職員にしている、とかですか?(笑)
そういう慣行が公社時代にもあったんですか?よく知りませんけど。「かんぽの宿」の売却価格が適正かどうか、という話と、一体何の関連があるのか、全く判りませんな。どうでもいい論点。というか、論点でさえない。


○論点4

売れ残ったらどうすんだ?という話ですが、これを言うのであれば、国鉄だろうと電電公社であろうと専売公社であろうと、何でも同じでは。資産や株式の売れ残り危惧というのは、どういった場面でも有り得るわけでして、責任追及は国会なり何なりがやってくれるんではないでしょうかね。一括譲渡に拘る理由というのも判らないままですし。

まずは、赤字がどんどん積みあがっていってしまう、毎年50億円ずつ国民が損をする、という、その前提となっている事情について、裏付けとなる証拠を出すべき。それがないのに、実はキャッシュが積みあがってゆく、ということなら、今すぐ売る必要性がなくなるわけで、つまりは自らの前提としている条件について明らかにすべき、ということ。

どうでもいい論点に話が移っているので、論点5は割愛。



他にも、例えば「メルパルクの事業譲渡が適正な手続だったか」とか「他の事業者を募集しなかったのは何故か」とか「定期建物賃貸借契約の契約料金は妥当か」とか、そういうのは不明点が多かったりします。

ああ、それから、日本郵政が払うという事業計画の16億円超のコンサル料だけど、これって例のメリルに払うものですか?どの相手に、いくらずつ払ったのか、公開してほしいですな。


まとめると、

①「年間50億円の赤字」の証拠を出して:
「かんぽの宿」の財務諸表を施設ごとに出してくれ、遊休施設についても個別に不動産鑑定額や評価額を出してくれ。

②「建設費2400億円」の根拠を示して:
これも財務諸表を見なければ判らない。当初建設費と土地取得価額からは500億円、税金投入額も不明。

③「16億円超のコンサル料」は誰にいくら払ったのか出して:
あまり重要ではないけど、内部のメンツを確認するのに役立つかもしれないから。

④白紙撤回した理由を教えて:
正当なのだと主張していたのだから日経も言うように、撤回する必要はない。やましいことなど、何もないのでしょう?笑
だから、資料等の情報公開をきちんとしてね。




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3 コメント

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フェアで冷静な議論を (Sam)
2009-02-23 22:49:28
正確な財務諸表が無いと断定的なことを言えないというのは仰る通りかと思います。ただ物件の価値評価に関連して、以下程度のことは概ね推測できますよね。

①今回の譲渡対象資産の簿価は、土地を含めて123億円まで減損されているということなので、減価償却費が年数十億円も出るというのは想定し難いこと、
②対象事業の価値評価に際しては、償却前のCFから設備投資を差し引必要があるので、場合によると損益の赤字よりもCFは更に下に行く可能性もあること
③いずれにせよ、今回のオリックスへの譲渡(予定)価額は日本郵政の減損後簿価を上回っているため、減価償却費が減少する効果はほとんど見込めないこと

守秘義務など留意すべき事項があるのは理解できますが、この辺りの数字はまず総務省がきちんとチェックし、バイアスを掛けずに必要な開示をして欲しいものです。また国民やメディアとしても、頭から決め打ちしない冷静な議論が必要であると考えます。
返信する
お答えは (まさくに)
2009-02-24 14:56:34
次の記事に書いてみました。
返信する
一般競争入札 (一般競争入札)
2009-03-11 10:16:28
全国の政府調達情報(一般競争入札)を公開
返信する

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