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日銀「2・23事件」(追記後)

2006年03月03日 21時30分47秒 | 経済関連
今日は3月3日のひな祭りですが(特に何も関係ないのですが)、あの日を境に戦況が大きく変わりました。「2・23事件」と勝手に呼ばせてもらいますが、先月23日に行われた参院予算委員会での福井総裁発言の一件で、状況が一気に傾いてしまいました。札割れ事件といい、局長発言といい、全ては用意されていました。材料が出揃った訳ですね。それを背景にして、日銀はどうしても突っ走りたいということだそうです。今日の新聞各紙にも「3月解除説」までが飛び交っています。市場参加者達の狼狽(笑、失礼、笑ったりしてはいけないですよね)をよそに、政府筋の反撃の弱さを見るや否や日銀派は勢いづいています。で、今日のCPI発表、0.5%と涙ぐましい数字ですが、表面上は連続でプラスを達成です。皆分っていたことですけれども。

NIKKEI NET 経済ニュース


(記事より一部抜粋)

日銀は8、9日の次回金融政策決定会合で、今回の消費者物価の内容も含めて経済・物価情勢を詳細に分析。政府の姿勢も勘案しながら、解除後に打ち出す先行きの金融政策運営の「目安」についても具体化を進める。政策決定は各政策委員の合議制のため、メンバーのそれぞれの意見を聞き、総意を集約できれば会合2日目の9日に議長である福井俊彦総裁から解除を提案する可能性を探りたい考えだ。




日銀の強硬派達は、今の状況であれば「突破できる」と踏んでいるようです。このままでは、本当に2000年の二の舞です。後は政府からの強力な政治力に期待するしかありません。「政策協調」という大義名分は、日銀を踏み止まらせる唯一の理由となるかもしれません。ここで何とか、ライジングチーム(「ライジング・タイド・ポリシー」を掲げる竹中・中川一派)の抵抗をお頼みするしか手がありません。小泉総理も「まだ早いんじゃないか」というコメントで微妙に”抵抗”してくれていますけれど。それでも日銀は本気で解除に踏み切る可能性があります。今のような状況の解除では、日銀の金融政策への不透明感は強く、国債金利も乱高下(いや、暴騰)してしまうと思いますね。


アメリカでの目標インフレ率(非公開)は2%ですよ。欧州銀でも0~2%程度と言われています。どうして日本だけが1%未満なんですか?これは明らかにオカシイんですよ。インフレ・ターゲットを採用していないアメリカでの金融政策は、日銀の言う「オーソドックス・スタイル」ですけれども、インフレ率をマイルドに設定しています。それはデフレに陥ってしまうとコントロールが甚だ困難なのであり、現実世界で価格粘着性がある以上、完全な価格伸縮性をモデルの基本とする理論世界と同じではないのですから。それ故、インフレを選択しているんですから。


日銀がそれほどまでに頑なな姿勢を通すのは、何故ですか?その百万分の一でもいいですから、デフレ脱却の姿勢に使って欲しいもんです。「強い姿勢」を示すべき場所が全く違うんですって。「絶対にデフレを止める、ジッチャンの名に賭けて!」じゃなくて、「日銀の名誉に賭けて!」くらい頑張れば良かったんですよ。どうして意地を張る方向がこれ程までに全然違うのだろうか?


量的緩和解除の影響は、金利上昇とそれに伴う円高に跳ね返ってきている。折角昨年円安が進んで、偶然というか「不幸中の幸い」にしてデフレ脱却への補助的効果をもたらしたのに。今円高に逆戻りすると、価格下支え要因が剥落する可能性があるぞ。今の物価上昇の背景は、「原油高+円安」効果によるものだ。為替要因を無くせば、再び逆戻りの可能性も否定出来ない。いつも日銀が言ってるじゃないか。(インフレターゲット採用は)「それを選択すればメリットもあるが、”リスクもある”からできない」「副作用があるからできない」って。何で、「国債金利上昇+円高」というリスクを選択できるんだよ!これまでのデフレ期間中に国民経済が負担した「デフレを継続した時のコスト」の方が、「デフレ脱却に賭けるリスク(副作用)に伴うコスト」よりもはるかに大きかったぞ!


ゴメンね、財務省。疑ってしまったのだけれど、違ったかもしれない。日銀とは一緒ではなかったかも。変な嫌疑をかけてしまって、すまない。でもね、日銀と財務省の政策協調が一番重要なんですから。そのことの意味を一番よく知っているのは、きっと財務省でしょ?何てったって、金利上昇でモロに影響受けるもんね。一部の国債関係の担当の人達はビクビクしてるかも?よく知らないんですけど。参考までに次の資料を挙げておきたいと思います。財務省の中にもこういう人達がいたんだな、と思いました(河合氏は現在東大教授です)。


(以下の部分で追加してます)

黒田財務官、河合副財務官のFT投稿要旨


この中では、中国の人民元切り上げ問題などや円高シンドロームの中国版にも触れられているが、今回は無視ということで、別の部分だけクローズアップすることにします。それは以下の部分です(一部抜粋)。


「日米欧の中央銀行はデフレ防止のために穏健なインフレ目標に基づく積極果敢はリフレ、金融緩和の協調行動をとるべきである。この観点から禁じの米国の利下げはよいことであり、欧州もこれにならうべきである。これ以上の利下げ余地のない日本はとくに、3%程度のインフレを目指して長期国債等の継続的購入によるベースマネーの拡大に取り組むべきである。」


このように財務省の高級官僚が連名で述べるというのも珍しいことではないかな、と思いました。こんな話が昔あったとは知りませんでした。でも当時は、財務官として不適切とか何とか批判があったような気もします(異例、とか何とか。定かではありませんが。ミスター円の後釜であったことも災いしたのかな?)。



それからゼロ金利解除直前の2000年7月の時点で、日銀には次のような指摘があった。


・Meltzer(カーネギーメロン大)

「中央銀行は経済危機の局面においては国民経済を守るためにリスクを取るべきである、とバジョットは述べている。中央銀行は利潤最大化動機に基づかない固有の目的のもとで運営されており、決済システム等の公共財供給を行うほか、マクロ経済全体にかかるリスクを自ら吸収し、社会全体への影響を小さくする役割を担っており、日本銀行はリスクの低い政府短期証券のオペに限定することなく、もっと大胆にリスクを取るべきである。

実質通貨残高に対する超過需要状態にあり、これを解消するに必要な名目通貨供給拡大が行われなかったため、デフレにより実質通貨残高が増加するかたちで調整が行われており、依然としてデフレのリスクから脱出できていない。インフレとでデフレのいずれも回避して物価安定を実現することに向けて、デフレ脱却に必要な金融緩和政策を実行することが求められている。」


・Taylor(スタンフォード大)

「金融政策運営におけるGDPギャップの役割については、preemptiveな政策対応を行う上での有用な手掛りである。GDPギャップを測定するには潜在GDPの推計が必要であり、その推計値に計測誤差が存在する場合、GDPギャップに対する金融政策の反応係数を小さくするべきか、大きくするべきかについては見解が分かれるのは事実であるが、GDPギャップが金融政策運営において重要な情報であることは違いがない。

量的金融指標の代表であるM2+CDが3%程度の伸びに留まっているが、日本では正常な経済状態のもとでは7~8%の伸びになるはずであり、量的緩和は必要である。日銀が主張するマネタリー・ベース制御の困難さは理解でき、それゆえ外貨を買うべきであると考える。ゼロ金利解除の際には、新しい金融政策について将来における政策意図を明確に伝えることのできるような方法をとる必要がある。」


・Beebe(サンフランシスコ連邦準備銀行)

「長期的に見ても、企業のリストラと雇用不安、年金財政悪化、財政赤字等のマイナス要因が存在し、こうした状況においては追加的緩和政策のリスクやこれに伴うコストよりも、むしろ経済状況の悪化がもたらす社会的コストを重視するべきである。インフレ率の明示的な目標を示してその達成に向けて強くコミットすることが不確実性を低下させ、リスク・プレミアムの縮小を通じてむしろ長期金利の低下につながるのではないか。ゼロ金利の維持、国債買入オペ、円の一時的な減価からなる政策パッケージを表明し、1~2%のマイルドなインフレのもとでの持続的な経済成長の実現に強くコミットすることにより日本経済の先行き見通しを改善させることができる一方、その社会的コストは小さい。」


・Cargill(ネバダ大)

「1930年代における日本の経験は、マネタイゼーションによる量的金融緩和が少なくとも短期的には有効であることを示すものであり、財政規律喪失の悪影響を回避するためには、インフレーション・ターゲティングを導入すればよい」


・White(国際決済銀行)

「米国の大恐慌、ドイツのハイパー・インフレーション、日本のマネタイゼーションと、どの国も過去における政策失敗の経験を引きずり過ぎる傾向がある。中央銀行のバランスシートに与える影響を甘受してでも、国民の経済厚生を向上させることを優先することが、本来的な公共政策の役割である。」


これらの人々は一般的な理解としては、信頼性に厚く言説には一定の説得力があるはずである。しかし、これらの忠告などを無視して日銀はゼロ金利解除を強行してしまいました。この後は皆さんもご存知のように、泥沼のようなデフレが継続されたのです。それまでの時期(97~00年)よりもさらに粘着性の高い「ガンコなデフレ」へと変わって行きました。失業率も過去最悪の時期へ向かって突き進んでいったのです。この時にも日銀はデフレ脱却チャンスをむざむざと失い、自らの手で国民経済をどん底に突き落としたのです。まさにデフレ・スパイラルの只中に、多くの国民を放り込んだのです。多くの国民は、未曾有の荒れ狂う巨大な竜巻に弄ばれる小さな木の葉のように、長きにわたるデフレ・スパイラルによって振り回されたのですよ。


日銀はありとあらゆる不利を引き受けたとしても、国民経済を救済しなければならなかった。どんなに非難や悪口を受けようとも、「決死の覚悟」で経済厚生を優先させ、デフレ脱却を達成せねばならなかった。にもかかわらず、日銀のちっぽけな体面や、卑怯な責任逃れや、下らない意地のせいで、国民は”単年度分”のGDPで100兆円以上の損失を被ることとなったのだ(マクロ経済の闇に消えた利息収入の比ではないことは明らかである)。


過去の失敗を引きずるというよりも、「学習能力が欠如している」と言うべきかと思う。最も深刻なトラウマとなっているのは、90年頃の「バブル」というだけだろう。資産価格―特に株価―は金融政策の目標としては不適切である、と言われているじゃないか(笑)。


日銀の愚かな選択を回避させるように、財務省も頑張ってくれ。ライジングチームにも本当にお願いします。数年後には悪名高き「日銀2・23事件」とかって、バッシングされることになる(笑)でしょうから、これを回避するという意味でも日銀は「勇み足」を避けるべきです。




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