ちょっと気になったので、メモ。
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はてなブックマーク - インフレ目標の失敗 - 池田信夫 blog
こういう記事らしい。
『スティグリッツによれば、現在の「新型スタグフレーション」に対応するには、各国で採用されているインフレ目標をやめるべきだという。
いま世界的に起こっているインフレはマネタリーな現象ではなく、天然資源の価格上昇というリアルな要因が各国に「輸出」されたグローバルな現象であり、一国の金融政策ではコントロールできない。中国のインフレは8%、ベトナムは18%を超えている。これを金利の引き上げで2%程度に抑制することは不可能であり、暴力的な金融引き締めを行なえば、不況がさらに深刻化するだけだ。
グリーンスパン時代にアメリカ経済が安定していたのは、彼の巧みな金融政策のおかげではなく、中国などからの輸入デフレによって物価が安定していたからだ。いま起こっているのは逆に、資源コストの上昇による輸入インフレなので、金利を上げても止まらない。必要なのは、先進国も途上国もインフレ目標を廃止し、物価よりも実体経済の安定を目標にした経済運営を行なうことだ。』
池田氏の記述が正しいということにはならない、ということに注意すべきではないかと思う。
=====
★中国やベトナムの高インフレ率は、必ずしも「インフレ目標の失敗」を意味するものではない。
これは言っておくべきかと(笑)。
何故なら、両国とも為替による調節機能が不十分であるからだろうと推測している。ともに管理為替である。
>ベトナム;為替管理制度
あと、インフレ目標の有無には関係なく、アメリカの金融政策で中国やベトナムのインフレ率をコントロールすることはできないし、インフレ目標を設定している国々の金融政策では有効な対処となるはずもないでしょうね。それらの国々では、国内事情の方が大事ですので。
①架空のモデルで考えてみる
通貨「ドル」のA国と通貨「ギル」のB国があるとする。輸出入は完全に均衡していて、双方とも経常収支はゼロ。
通貨の交換比率が1ドル=2ギルであるとする。両国には同じ品物であるパンPがあるものとしよう。A国でPの価格は5ドル、B国では10ギルである。為替通りの価格ということ。
さて、B国でインフレ率が10%であったので、次の年にはPの価格が11ギルになったものとする。すると、為替が変動せず1ドル=2ギルならば、A国でのPの価格は5.5ドルであるはず、ということになる。しかし、A国のインフレ率が20%であったなら、Pの価格は既に6ドルになっているだろう。
ここで、単にA国とB国のPの価格を比較すると、同等品なのであるから等価であるはずで、11ギルのPと6ドルのPは同じ価値ということになります(近頃よくある比較はビッグマック指数とか)。となれば、為替はどうなるかというと、6ドル=11ギルとなるので、1ドル=約1.83ギルということです。前年の2ギルから比べると「ギル高ドル安」になっているはず、ということです。為替が自由に変動する場合には、インフレ率の高いA国と、低いB国ではインフレ率の差が為替で調節され得る、ということだと思います。高インフレ率のA国の通貨は相対的に「減価」となる、ということです。ギルがドルペッグで為替が動かないとなれば、A国で6ドルになってしまうと、B国では12ギルの価格で売られてしまうことになってしまい、高インフレが招かれることになるでしょう。
経済成長率がある程度高く、貿易黒字で利益を獲得していくと、国内通貨での価格表示が増大するか通貨価値が増大して国内通貨表示では大きく変動しないかのいずれか、ということではないでしょうか。
ある期に外貨表示価格100ドルであった財があるとして、それが次の期では外貨表示価格が105ドルになっていれば、国内通貨(ギル)価格表示だとどうなるか。
・為替変動がない場合(1ドル=2ギル):200ギル→210ギル(=105ドル×2)
・為替変動した場合(1ドル=1.95ギル):200ギル→204.75ギル(=105ドル×1.95)
となるので、為替変動で調節された方がB国内での価格表示される数字の大きさは、見掛け上小さくなる。けれども、価値が変わってるわけではなくて、単なる表示される数字の問題です。B国での物価指数を考える時には、これら「国内通貨表示価格」が集められてきて考えることになるので、為替変動がある方が「高インフレ率」を招くのを防ぐ効果が期待できるでしょう。
②なぜベトナムではインフレ率が高いのか
国内物価を見て金融調節で対応しようとしても、限界がある、ということはあるかもしれません。いくら金融引き締めを行っても、輸出が伸びて獲得外貨が増加し、その富が国内に還流してしまえばマネーが増大していることには違いありません。通常の為替変動相場であると、ベトナム通貨は増価し相対的にドルは下落する、ということになるかと思います。
が、管理為替であるために、その調節弁は十分に機能していないのではなかろうか、ということです。ベトナム経済が輸出のウェイトがあまり大きくなくて獲得利益が国内経済規模に比べて十分小さいのであれば、インフレ率には大きく影響しないかもしれません。けれども、恐らく近年のベトナムの輸出額は増加しているであろうと思いますので、そこから利益が多く得られるならばベトナム国内に還流してしまうのは止むを得ないのではないのかな、と。高インフレ率の大きな要因として、こうした硬直的な為替変動があるのではなかろうか、ということです。中国でも為替変動は極めて小さく管理されているのですから、似たようなものですね。
③日本の狂乱物価を思い浮かべると
finalventさんが今日は沖縄返還の日だ、と日記で述べて(2008-05-15 - finalventの日記)おられましたが、狂乱物価はまさしくその時期でした。沖縄でも返還後には猛烈な物価高となったらしいです。
ニクソン・ショックの71年以降、国際為替の調節はまともに機能しなくなってしまった時期だったのではないかな、と。
>変動相場制 - Wikipedia
そこに追い討ちとなったのが、石油危機でした。中東戦争に端を発するオイルショック、というやつですね。
この時期には先進国で高インフレが軒並みとなり、日本でも異常なまでの物価高となりました。スタグフレーションというのが起こった時期でもありました。
これらが終息していくのは76年頃で、為替というのは色々と問題を起こすことがあるかも、ということかなと。
④狂乱物価はそれだけではないかも
いくら為替による調節機構が十分機能しなくなったとしても、それだけで物価上昇が月単位で数十%ということは中々考え難いわけですね。全くの素人考えなんですけれども、やはり人間の予測行動の問題なのではなかろうか、と。
たとえば中国地震の被災地のような状況を考えてみましょう。
目の前にカップラーメンがあるとして、これが今は150円だとします。自分の周囲の人たちを観察すると、欲しいと考える人たちばかりです。そりゃそうですよね。食べるものが少ないわけですから。で、きっとみんなカップラーメンを買いたがるでしょう。品薄だから、明日とか明後日になれば、2倍か、3倍か、いや、もっと高値になっているかもしれません。そういう心配というか恐怖というか不安が増大しているわけです。
そうすると、誰しも先を争って目の前にある「1個150円のカップラーメン」に飛びつくわけです。この現象が何日か続いてみたらどうなるでしょうか?たぶん毎日、値段が上がっていく一方となるでしょう。
人々の心に、「品物が大量にあって今すぐ買わなくても大丈夫だ、安心だ、これから暫くは値段が上がらないだろう」というような安堵がもたらされるまでは、我先に買いたがるからです。お金として持ってる100円や千円よりも、「現物」つまり実物価値のあるものに置き換えないと「大変なことになる、手に入らなくなる」という恐怖感に支配されると、値段は次々と上がっていき、そのことが更に人々の不安心理を加速してしまうのです。
(例のサブプライムショックで株式市場暴落みたいな、投売り続出のオンパレード状態とも近いかも)
なので、今日150円だったカップラーメンは、明日には300円に、明後日には1000円に、という具合に、優先順位の高いものは価格がうなぎのぼりになっていくはずです。実物信奉じゃないんだけど、ゲンナマよりも実物を最優先にしなくちゃいけないと考える時がある、ということ。その場合には狂乱物価のようなことが起こる。
けれど世の中の物価指数は今すぐに必要じゃないものもたくさんある為に、全ての価格が一気に上昇するとは限りませんよね。ダイエット商品だの、化粧品だの、ゴージャス下着だの(笑)、そういった商品価格が一斉に上がるわけではないので。そうすると消費者物価指数全体では、カップラーメンのような上昇率とはならず、平準化された上昇率ということになるでしょう。
⑤まとめ?
そういうわけで、為替の調節機能がイカレるとインフレ率は変動する範囲が大きくなることは考えられるかな、と。管理為替制だと外部からの攻撃(アジア通貨危機の時のようなヤツ)には耐性があり、変動幅を小さくできるメリットはあるものの、調節機能を奪っていることが考えられるので、自由な変動による調節が働く方が望ましい。なので、中国やベトナムに限らず、湾岸諸国のドルペッグも含めて、為替による調節機能が働く方が、国内の金融政策は行いやすいのではないかな、と思う。
天然資源の価格上昇があったとしても、各国の輸入(或いは輸出)比率がどの程度なのか、ということがある。日本のように経済規模がある程度大きく、石油依存度が小さくなっていれば、(天然資源価格上昇による)輸入物価上昇が、必ずしも全ての物価上昇を招くわけではない。現に日本だと、これほど天然資源の価格上昇が言われている中で、消費者物価上昇率に与えるインパクトは弱く、高々数%に過ぎない。他の要因―例えば輸入によって低価格が達成されてきたもの、円高で輸入価格が下落したもの、デジタル製品等の性能向上による価値下落、携帯電話料金やネット接続料金の下落―などによって一部相殺されているので、消費者物価指数に対しては資源価格上昇の影響度が高インフレ国みたいに出ているとは思われない。
経済の成熟度がそれほどでもなく、為替による調節機能が弱く、貿易の比重が割と大きい(特に輸出優位の)国においては、高インフレ率となってしまうことが有り得るのではないだろうか、と。
これら現象は、インフレ目標の有無だとか失敗云々という問題ではないのではないかと思われるが、賢明な諸兄はどのようにお考えになるであろうか。
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はてなブックマーク - インフレ目標の失敗 - 池田信夫 blog
こういう記事らしい。
『スティグリッツによれば、現在の「新型スタグフレーション」に対応するには、各国で採用されているインフレ目標をやめるべきだという。
いま世界的に起こっているインフレはマネタリーな現象ではなく、天然資源の価格上昇というリアルな要因が各国に「輸出」されたグローバルな現象であり、一国の金融政策ではコントロールできない。中国のインフレは8%、ベトナムは18%を超えている。これを金利の引き上げで2%程度に抑制することは不可能であり、暴力的な金融引き締めを行なえば、不況がさらに深刻化するだけだ。
グリーンスパン時代にアメリカ経済が安定していたのは、彼の巧みな金融政策のおかげではなく、中国などからの輸入デフレによって物価が安定していたからだ。いま起こっているのは逆に、資源コストの上昇による輸入インフレなので、金利を上げても止まらない。必要なのは、先進国も途上国もインフレ目標を廃止し、物価よりも実体経済の安定を目標にした経済運営を行なうことだ。』
池田氏の記述が正しいということにはならない、ということに注意すべきではないかと思う。
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★中国やベトナムの高インフレ率は、必ずしも「インフレ目標の失敗」を意味するものではない。
これは言っておくべきかと(笑)。
何故なら、両国とも為替による調節機能が不十分であるからだろうと推測している。ともに管理為替である。
>ベトナム;為替管理制度
あと、インフレ目標の有無には関係なく、アメリカの金融政策で中国やベトナムのインフレ率をコントロールすることはできないし、インフレ目標を設定している国々の金融政策では有効な対処となるはずもないでしょうね。それらの国々では、国内事情の方が大事ですので。
①架空のモデルで考えてみる
通貨「ドル」のA国と通貨「ギル」のB国があるとする。輸出入は完全に均衡していて、双方とも経常収支はゼロ。
通貨の交換比率が1ドル=2ギルであるとする。両国には同じ品物であるパンPがあるものとしよう。A国でPの価格は5ドル、B国では10ギルである。為替通りの価格ということ。
さて、B国でインフレ率が10%であったので、次の年にはPの価格が11ギルになったものとする。すると、為替が変動せず1ドル=2ギルならば、A国でのPの価格は5.5ドルであるはず、ということになる。しかし、A国のインフレ率が20%であったなら、Pの価格は既に6ドルになっているだろう。
ここで、単にA国とB国のPの価格を比較すると、同等品なのであるから等価であるはずで、11ギルのPと6ドルのPは同じ価値ということになります(近頃よくある比較はビッグマック指数とか)。となれば、為替はどうなるかというと、6ドル=11ギルとなるので、1ドル=約1.83ギルということです。前年の2ギルから比べると「ギル高ドル安」になっているはず、ということです。為替が自由に変動する場合には、インフレ率の高いA国と、低いB国ではインフレ率の差が為替で調節され得る、ということだと思います。高インフレ率のA国の通貨は相対的に「減価」となる、ということです。ギルがドルペッグで為替が動かないとなれば、A国で6ドルになってしまうと、B国では12ギルの価格で売られてしまうことになってしまい、高インフレが招かれることになるでしょう。
経済成長率がある程度高く、貿易黒字で利益を獲得していくと、国内通貨での価格表示が増大するか通貨価値が増大して国内通貨表示では大きく変動しないかのいずれか、ということではないでしょうか。
ある期に外貨表示価格100ドルであった財があるとして、それが次の期では外貨表示価格が105ドルになっていれば、国内通貨(ギル)価格表示だとどうなるか。
・為替変動がない場合(1ドル=2ギル):200ギル→210ギル(=105ドル×2)
・為替変動した場合(1ドル=1.95ギル):200ギル→204.75ギル(=105ドル×1.95)
となるので、為替変動で調節された方がB国内での価格表示される数字の大きさは、見掛け上小さくなる。けれども、価値が変わってるわけではなくて、単なる表示される数字の問題です。B国での物価指数を考える時には、これら「国内通貨表示価格」が集められてきて考えることになるので、為替変動がある方が「高インフレ率」を招くのを防ぐ効果が期待できるでしょう。
②なぜベトナムではインフレ率が高いのか
国内物価を見て金融調節で対応しようとしても、限界がある、ということはあるかもしれません。いくら金融引き締めを行っても、輸出が伸びて獲得外貨が増加し、その富が国内に還流してしまえばマネーが増大していることには違いありません。通常の為替変動相場であると、ベトナム通貨は増価し相対的にドルは下落する、ということになるかと思います。
が、管理為替であるために、その調節弁は十分に機能していないのではなかろうか、ということです。ベトナム経済が輸出のウェイトがあまり大きくなくて獲得利益が国内経済規模に比べて十分小さいのであれば、インフレ率には大きく影響しないかもしれません。けれども、恐らく近年のベトナムの輸出額は増加しているであろうと思いますので、そこから利益が多く得られるならばベトナム国内に還流してしまうのは止むを得ないのではないのかな、と。高インフレ率の大きな要因として、こうした硬直的な為替変動があるのではなかろうか、ということです。中国でも為替変動は極めて小さく管理されているのですから、似たようなものですね。
③日本の狂乱物価を思い浮かべると
finalventさんが今日は沖縄返還の日だ、と日記で述べて(2008-05-15 - finalventの日記)おられましたが、狂乱物価はまさしくその時期でした。沖縄でも返還後には猛烈な物価高となったらしいです。
ニクソン・ショックの71年以降、国際為替の調節はまともに機能しなくなってしまった時期だったのではないかな、と。
>変動相場制 - Wikipedia
そこに追い討ちとなったのが、石油危機でした。中東戦争に端を発するオイルショック、というやつですね。
この時期には先進国で高インフレが軒並みとなり、日本でも異常なまでの物価高となりました。スタグフレーションというのが起こった時期でもありました。
これらが終息していくのは76年頃で、為替というのは色々と問題を起こすことがあるかも、ということかなと。
④狂乱物価はそれだけではないかも
いくら為替による調節機構が十分機能しなくなったとしても、それだけで物価上昇が月単位で数十%ということは中々考え難いわけですね。全くの素人考えなんですけれども、やはり人間の予測行動の問題なのではなかろうか、と。
たとえば中国地震の被災地のような状況を考えてみましょう。
目の前にカップラーメンがあるとして、これが今は150円だとします。自分の周囲の人たちを観察すると、欲しいと考える人たちばかりです。そりゃそうですよね。食べるものが少ないわけですから。で、きっとみんなカップラーメンを買いたがるでしょう。品薄だから、明日とか明後日になれば、2倍か、3倍か、いや、もっと高値になっているかもしれません。そういう心配というか恐怖というか不安が増大しているわけです。
そうすると、誰しも先を争って目の前にある「1個150円のカップラーメン」に飛びつくわけです。この現象が何日か続いてみたらどうなるでしょうか?たぶん毎日、値段が上がっていく一方となるでしょう。
人々の心に、「品物が大量にあって今すぐ買わなくても大丈夫だ、安心だ、これから暫くは値段が上がらないだろう」というような安堵がもたらされるまでは、我先に買いたがるからです。お金として持ってる100円や千円よりも、「現物」つまり実物価値のあるものに置き換えないと「大変なことになる、手に入らなくなる」という恐怖感に支配されると、値段は次々と上がっていき、そのことが更に人々の不安心理を加速してしまうのです。
(例のサブプライムショックで株式市場暴落みたいな、投売り続出のオンパレード状態とも近いかも)
なので、今日150円だったカップラーメンは、明日には300円に、明後日には1000円に、という具合に、優先順位の高いものは価格がうなぎのぼりになっていくはずです。実物信奉じゃないんだけど、ゲンナマよりも実物を最優先にしなくちゃいけないと考える時がある、ということ。その場合には狂乱物価のようなことが起こる。
けれど世の中の物価指数は今すぐに必要じゃないものもたくさんある為に、全ての価格が一気に上昇するとは限りませんよね。ダイエット商品だの、化粧品だの、ゴージャス下着だの(笑)、そういった商品価格が一斉に上がるわけではないので。そうすると消費者物価指数全体では、カップラーメンのような上昇率とはならず、平準化された上昇率ということになるでしょう。
⑤まとめ?
そういうわけで、為替の調節機能がイカレるとインフレ率は変動する範囲が大きくなることは考えられるかな、と。管理為替制だと外部からの攻撃(アジア通貨危機の時のようなヤツ)には耐性があり、変動幅を小さくできるメリットはあるものの、調節機能を奪っていることが考えられるので、自由な変動による調節が働く方が望ましい。なので、中国やベトナムに限らず、湾岸諸国のドルペッグも含めて、為替による調節機能が働く方が、国内の金融政策は行いやすいのではないかな、と思う。
天然資源の価格上昇があったとしても、各国の輸入(或いは輸出)比率がどの程度なのか、ということがある。日本のように経済規模がある程度大きく、石油依存度が小さくなっていれば、(天然資源価格上昇による)輸入物価上昇が、必ずしも全ての物価上昇を招くわけではない。現に日本だと、これほど天然資源の価格上昇が言われている中で、消費者物価上昇率に与えるインパクトは弱く、高々数%に過ぎない。他の要因―例えば輸入によって低価格が達成されてきたもの、円高で輸入価格が下落したもの、デジタル製品等の性能向上による価値下落、携帯電話料金やネット接続料金の下落―などによって一部相殺されているので、消費者物価指数に対しては資源価格上昇の影響度が高インフレ国みたいに出ているとは思われない。
経済の成熟度がそれほどでもなく、為替による調節機能が弱く、貿易の比重が割と大きい(特に輸出優位の)国においては、高インフレ率となってしまうことが有り得るのではないだろうか、と。
これら現象は、インフレ目標の有無だとか失敗云々という問題ではないのではないかと思われるが、賢明な諸兄はどのようにお考えになるであろうか。