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経済学は難しい10

2005年10月02日 03時39分42秒 | 経済関連
9月30日付けの読売新聞朝刊には中々面白い記事が出ていた。福井日銀総裁の発言が発端となり、竹中大臣や谷垣大臣は「デフレ懸念は続いており、量的緩和解除については慎重な判断が必要」との認識を示した。その一方で、岩田日銀副総裁はインフレ目標(参照値とか言ってた。消費者物価と日銀政策の分かれ道)導入を述べており、須田審議委員の解除観測論も別な場所で出されていて、日銀内部の所謂「温度差」(メディアの好きな言い回しですね)が浮き彫りになった形だ。


記者諸君からは、先日の福井総裁の「財政政策とのコンフリクトはない」発言(経済学は難しい8)を受けて、日銀の金融政策とのコンフリクトについての”確認”が相次いで質問されたようである。


勿論、平ちゃんも谷垣くんも「基調判断は(デフレ脱却で)一致しており(日銀金融政策への介入という意味ではなく)、金融政策は日銀が独自に判断すること」というコメントを出している。まあ、順当な回答であり、平ちゃんはいつも「依然(M2+CDが2%以下と)マネーサプライが不十分」と嘆き、谷垣くんは「デフレは収束していない」との見方を示していたので、財政当局としてはCPI の安定的な0以上の推移を見届けることが必要ということなのだろう。福井総裁としては、最近の株式市場の急速な連騰や長期金利上昇とか、都心部不動産価格の下げ止まり(一部の過熱感?)などの局面を迎えて、それこそ「ボラティリティの高いマーケット」にやや神経質になりつつあるのかもしれない。過去のバブル経験に痛い思いをさせられたので、余程の警戒心を抱いているのだろう。心理的には分からないでもないが、現状でのレベルではまだ心配はないと思われるが。それよりもCPI の安定的プラスを確認したいというのが、普通の見方であると思う。


その一方で、「インフレ目標についても幅広く検討していきたい」との見方を示しており、昨今の経済学的議論の一つであるインフレーション・ターゲティング政策の導入についても、政策選択肢として考慮するということである。これは以前から触れている通り、経済財政諮問会議内での専門調査会委員が策定した「21世紀ビジョン」にも記述されている訳ですから、当然金融当局はこれを無視することは出来ないでしょう。この委員には伊藤隆敏・伊藤元重・井堀各東大教授、植田・吉田京大教授ら経済学の学界人、八代日本経済研究センター理事長といった、経済学関係者が多いのですから、十分経済学的評価を行った上でビジョンに盛り込んだことは明らかでしょう。つまりは、日銀と言えどもこれを避けて通る訳にはいかないはずだろう、と。


そういう意味では、ある範囲での金融当局の「インフレ許容」宣言とかがあった方が、株式や不動産などの資産に資金が向かうことによって心理的にも大幅に好転すると思う。インフレ目標というものに抵抗感があるのであれば、例えば「3%程度までは許容したい」というようなアナウンスによって、特別な金融政策を実施しなくともデフレが収束していくのではないかとも思える。結局の所、日銀がどういう決意で金融政策に取り組むか、またデフレ対策に臨むか、ということが市場に評価されるのだろうと思う。


かつて(99年当時)日銀金融研究所長の扇邦雄氏らが、「中央銀行にとって悩ましいのは、構造政策や構造調整の実行が遅れていても、現実に深刻なデフレ・スパイラルの危険に直面すれば、これを防ぐ責任があるということである。実際、経済が大恐慌的なデフレ・スパイラルの入り口に立たされれば、中央銀行は大きな副作用をも認識したうえで、考えられるあらゆる手段を発動してこれを防止するよう努めるであろう。その場合には、通常の手段の限界を超えて、劇的に大量の資金供給を行うことも真剣に検討されるかもしれない。」ということを述べている。財政審が出した建議でも既にデフレ・スパイラルの危険性について言及していたことを思えば、金融政策の発動が遅きに失した感は否めない。日銀の認識が、財政審とは異なったものであったということかもしれないし、日本は「デフレ・スパイラルの入り口」には立たされなかったのだ、という主張なのかもしれない。どの程度であれば、その入り口に立ったと言えるのだろうか?これ程の経済的低迷を続けたというのに。失われた時間は戻ってこないのだから、今更言ってみても仕方がないのであるが。だが、これからの道のりで、過った認識や選択は避けてもらいたいと思っている。


それから、同じ日の読売新聞には、福井総裁の記事と同じページに岩田規久男学習院大教授のインタビューが出ていた。これは「改革を追う」というシリーズで、色々な学者さん達が登場していますが、今までは主に経済学者が連日登場した(因みに1日付けには跡田慶応大教授が出てました、笑)。岩田教授は年金問題等について答えていますが、国民負担増に関連して「年2~3%程度のインフレ目標を定め、名目成長率を引き上げる金融政策が必要だ。インフレ率が低いままでは名目所得が増えず、税収と保険料収入も増えない」と述べており、どうやら経済学者の中にも相当程度、このような金融政策への期待というか要望が出ていると考えるべきであろう。他にも、浜田Yale大教授などもデフレ対策実施を支持している。金融政策決定会合では、こうした学術的理論背景を踏まえて、金融政策を検討するべきだ。


似た話で、isologueの磯崎氏が02年に雑誌に寄せた記事(isologue -by 磯崎哲也事務所 Tetsuya Isozaki & Associates: 財政構造改革と預金課税論(再び))で、「現金・預貯金への課税論」というマイナス金利政策を出していましたが、これはもっと前から深尾光洋慶応大教授が出していた案と同じである。ゲゼルのスタンプ紙幣とか?何とかと似たような理屈らしい。この政策実施については現実的な問題が多いとする経済学者が結構多いように思われるので、「最終兵器」的な手段なのではないかと思われる。磯崎氏は残念であろうが、実施には相当の障壁が存在すると考えた方がいいのではないか、と。もしも実施するとしても、04年の新紙幣発行に間に合うような体制がとられるべきであっただろう。なので、今からは難しいのではないかな。


いずれにしても、今後の金融政策決定には「透明性を高める」というスタンスで臨む、という福井総裁の示唆があったので、将来の予見性を高める方向へと進むだろうと思う。また、金融政策決定会合における議論や政策決定については、経済学者達の論理的評価が重要となってくるであろう。



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