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アメリカの「悪魔的手法」とは何か

2008年01月29日 18時03分40秒 | 経済関連
唐突ですけれども、アメリカが何故これほど投資に精を出すのか、資金引き上げがどうのと言い出すのは何故なのか、ちょっと考えてみましたよ。

以前にちょっと書いたら、中にはビビッてしまった?人がいたのか、円安になったり、原油先物相場は86ドル台に急落したりと、偶然の現象に驚いたよ。まぐれとは、げに恐ろしい(笑)。これはまあ関係ないな。



1)ドルという通貨

最近はどうなのかよく知らないが、かつては途上国において自国通貨に対する信頼性は乏しく、外貨―特にドル―の利用を求められたのではないかと考えられる。それは映画や小説などの描写でもそうであった。

例えばこんな感じ。

商人 「こいつは上物だよ?どうだい?」
客 「うむ…、100ギルでなら買うよ」
商人 「ばか言っちゃいけねえな。150ギルでなら売るぜ」
客 「そんなに払えるか!100ギルだ。びた一文、譲れねえ」
商人 「他にも買いたい客はいっぱいるぜ。150だ」
客 「なら、この話はなかったことにしよう…」
商人 「ちょいと待ちな、ダンナ。じゃあいいぜ、110だ」
客 「始めからそう言っとけばいいんだ。いいだろう」
商人 「ギルはお断りだぜ。ドルかポンド紙幣にしてくんな」

というようなことです。この「ギルはお断り」というのは架空の通貨ですが、自国通貨への信頼がない為にドルで払え、みたいなことになっていたであろうな、と。それは政府や自国銀行がいつ倒れるか、潰れるか判ったものではないですし、政情不安定になれば外国に逃げていかねばならないかもしれない。そうなると、いくら「100ギル持ってるんだよ」とか言っても、隣国で「そんなものは紙屑にしかならないね」と断られたら、どうにもできないからでしょう。その紙幣を持っても、政府転覆後に新政権が樹立されて「今までのお金は使えません、新たにペタ紙幣を発行します」となったら、ゴミにしかなりませんからね。信用されない紙幣とは、単なる紙屑である、ということであり、それはみんなに「約束は守られる」という共通幻想がなければ成立しないからですよね。その点、ドル紙幣はアメリカが破滅しない限り「約束は守られる」という信認があるのであり、アメリカが消えることなど到底考えられない、という主観的確率に支えられているものと思います。

ドルがこうしてグローバルな紙幣として君臨し続ける限り、紙幣発行がいくらでも可能になるのです。特に非合法活動(麻薬や武器密売等)で海外にドルを拡散することは、アメリカ国内にとっては有利に働くことになると思います。米国中銀のバランスシート上は、紙幣発行額が9割くらいだったと思いますけれども、この発行紙幣のうち少なくない量が国外マーケットで流通していると思われます。国外にあれば、極端なインフレは回避されるかもしれませんね。万が一、全世界に流通しているドル紙幣が米国内に戻ってきてしまうと、多分大変なことになるでしょう(笑)。高インフレ率に悩まされることになるかもしれません。


2)双子の赤字問題

これもよく言われていて、昔から続いています。だからといって、米国の経済が混乱したり低成長になったりはしていないわけです。当面何かの不具合が急に起こるということでもないでしょう。でも、何となく腑に落ちない部分があるわけですね。それを考えてみます。

まず財政赤字についてですが、これは大したことはありません。政府の財政収支の酷さは、日本の方が問題にされていると思われ、米国一般政府の債務残高は、対GDP比では問題になるレベルではないでしょう。赤字のもう一つの方、経常収支ですけれども、この赤字幅についても、深刻な問題という程ではないでしょう。それは米国のGDP規模が大きいからであり、赤字は恒常的ですので慣れっこになっている面もあるかと思います(笑)。普通に考えれば、両方の赤字は大袈裟に言う程ではないかもしれない。しかし、ここに実は落とし穴があると思ったのですね。


3)世界最大の借金王、米国

これも前から変わっていません。だからと言って、米国経済がどうにかなる、というものではないでしょう。けれども、これはカラクリがあるのであって、米国が必死で自転車をこぎ続けなければ必然的に借金の負担が重く圧し掛かり、危機に晒されるからでありましょう。

また例で書いてみましょう。

ここにある男がいます。とりあえずAと呼ぶことにしますか。Aは貸金から借金していて、100万円の借り入れ(*1)が既にあります。この返済を続けなければなりませんが、その為の収入はいくつかあって、一つは庭のイモを売ること(*2)です。けれど、イモで売ったお金より、自分が買ってしまう額(*3)の方が多いので、常に赤字(*4)になってしまうのです。なので、これでは足りません。で、Aは考えました。どうしたら金を返し続けられるだろうか?
まず友人たちに「俺に金を貸してくれ、そうすればイロを付けて返すからさ」(*5)と誘いをかけました。Aは「自慢じゃないけど、俺のパチスロの腕前(*6)は1級品だ」と言って、パチスロの台でジャンジャン勝っている姿を友人たちに見せつけたのです。すると、友人たちも安心して、「じゃあ、ちょっとお金を預けておくよ」(*7)と、Aにお金を渡したのです。

Aは100万円の借金がありましたが、友人たちから更に500万円を借り入れ、合計600万円としました。この一部を使って、猛烈にパチスロに打ち込み、返済原資を稼ぎ出しました。更に、金に困っている女たちを捜し出してきては、先の500万円のうちから貸し付けていくのです。勿論、友人たちへの返済分に付けている「イロ」よりも多く利息を取ります。こうして、自らの借金を返し続けながら、バランスシート全体の規模を膨張させる、という手段によって恒常的な支出超過分のマイナスを補うことを考え出したのです。Aが倒れたりしない限り、借金は600万円に膨らんでも、貸付やパチスロの稼ぎが返済に回せていればAは破産することなど有り得ないのです(笑)。これは100万円借金ならバランスシートの総額を1000万円に、1000万円借金なら1億円の総額に膨張させることによって持続可能になる、という寸法です。


如何でしょうか?この手法はかつて(というか今でも?)大蔵省が考えて取っていた方法とほぼ同じです。具体的には、たとえば郵政事業がそうでした。仮に、郵貯で100兆円集めますが、貯金者に払う利息を2%とします。100兆円は財投や国債などに投資され、平均利回りを3%とすると、その差額分がサヤとして頂戴できます、ということです。しかも、バランスシートを大きくする為に、郵貯が100兆円を大蔵に回すのではなく資産150兆円とし、負債50兆円(正味100兆円に変わりがない)は大蔵が郵貯に財投資金として貸し付けるので貯金者への利率よりも高い3%の利息を取られる、という寸法なのです。ハア?と思われるでしょう?しかし、このバランスシートを膨張させる手法を取れば、鞘が確実に大蔵に入るという寸法になり、予算規模も150兆円にできるという仕組みだったんですよね。アメリカが取っている手法とは、これと全く同じなのです(笑)。さすが郵貯の研究をやってきただけのことはあるね。

もうちょっと説明します。上の印の部分ですね。
*1:対外純債務ということになります
*2:イモ売りは、簡単に言えば輸出です
*3:自分が買うというのは、輸入です
*4:輸入超過であり、経常収支赤字ということです
*5:株、債券等に対し海外からの投資を呼び込むことです
*6:腕前とは、運用能力であり投資業務やヘッジファンドなどです
*7:主に米国債とか、ドル買いとか、その他直接投資とか


4)米国の戦略

純資産では巨額の対外純債務が残っており、大体GDPの2割程度です。米国は稼ぎ(GDP)が大きいので、借金比率そのものは、あまり大きな問題にはならないでしょう。年収1000万円の人が借入200万とか250万円くらいであれば、問題とはなりませんよね。
で、米国の必須要件としては、①借金の数倍のお金を常に呼び込まねばならない、②付ける利息よりも、運用効率が上回っていなければならない、ということになります。

①に関しては、紙幣を多く刷って海外のお金と交換してもよいですね。国内にそのお金が溜まらないので、酷いインフレにもならないでしょう。ドルになったお金の分を、外の貧乏人に高利で貸すと儲かります(笑)。米国の財務省証券に金利4%を付けて途上国などから資金を調達し、国内にやってきたお金は回りまわって海外の株式ポートフォリオなどと置換される、ということになります。アップルとかグーグルのような魅力的企業の株を買わせ、そのお金は回りまわって何処かの国の工場や不動産などを買って利益を上げればよい、とか。
これまでのところ、オイルマネーを呼び込み、中国や新興国のマネーを呼び込むことに成功してきたので、バランスシート膨張策はうまく回ってきて、純債務の増加にはなってきませんでした。

やはり米国の金を呼び込む魅力というのは、
・グーグルなどに代表される強い企業の魅力
・成長期待
・ヘッジファンドや投資銀行に代表される高い運用成績
などかな、と思います。

1200兆円借りても、1000兆円を貸し出しているので、その利払いバランスが均衡している限り、負債が負担になることはない、ということですね。けれども、貸し手がいなくなるとバランスシートは収縮し、借金の返済負担がダイレクトに圧し掛かってくる為に、国全体としては苦しくなります。この1000兆円を呼び込む力というのが、米国にはある、ということだろうと思います。

あと、サブプライムローンの債券なんかも、この「海外からの金を呼び込む」という餌であり、実際世界中から金をかき集めてきたことは確実です。この呼び込んだ金が吹き飛ぶと、バランスシートから消えてなくなるので、純債務との大きさの比率が変わるので、借金の返済負担は相対的に重くなるでしょう。

②については、もう言わずもがな、でしょうね。オイルマネーやSWFから金を集め、その金を元手に海外債権を保有して、そこからの収益率が支払利息を上回る限り得をする、という寸法ですね。しかも、巨額資金を集めているので、海外株式にその3割を投入すれば、「自分たちが買いの主体」となって、各国市場の値上がりを演出することさえ可能になります。原油先物相場の急騰と似たような原理ですな。借金大国の米国ではあっても、バランスシートが膨大であるので、貸出額も世界最大となっている為です。最大の債権国というのが日本、というのは、対外純債務を比べると日本が世界で一番の金持ちですけれども、現実に貸してる金は米国が一番大きく2倍以上なのです。

参考:平成18年末本邦対外資産負債残高の概要

「貸してる」といっても、米国の場合には、例えば日本株、中国株、インド株、という具合に株に投資しているので、この「貸し」を引き上げるとその国の株式市場は大暴落する、という寸法になるのです。特に、米国が投資対象としている国について、うるさく「お前ら、効率をアップせよ、成長率を上げろ、上げろ」と注文を付けるのは、この為です。金貸し市場をよこせ、金利を高くしろ、としつこく絡んでくるのも、その為です(笑、ホントは違うかも)。

全世界広しと言えども、米国の対外債権10兆ドルに対抗できる資金力を持っているのは、日本くらいなものでしょう。EUの資金量は調べてませんが、債務国もそこそこ含まれているでしょうから、キャッシュの動員力で言えば、日本しか対抗できないでありましょう。それ故、日本について脅威であると考えているでしょう。実は、米国の膨張したバランスシートを単独で凌駕できる国など、世界中のどこにもないのですよ。だからこそ、日本をどうにかして「骨抜き」にしておかねばならない、ということなんです。

中国は金持ちが多く存在していても、国全体の資金量としては、日本には遠く及ばないでしょう。経常収支の大幅なプラスで外貨準備高の世界一となったにせよ、せいぜい100~200兆円規模ではないかと思われます。その金は、米国国債とか米国企業株などという「米国資産」に投資されている限り、本格的な脅威にはなり得ません。米国が中国に貸している金(具体的には上海や香港株式市場に投入している金とか、直接投資とか)の方が破壊力があるからでしょうね。そうは言っても、現在中国が米国の経常収支悪化の第一人者であることから、元への圧力が強まるでしょう。中国は米国の通貨戦略を封じる意味でも、バスケットを採用しているので、通貨危機のようなことは回避されますからね。アジア諸国や韓国とかがどんな目にあったか一目瞭然ですから(笑)。


日本はAさんのように、必死でパチスロに取り組まずとも、海外に貸してる方が多いので、金は入ってくる方だ。出て行かない。国債も海外保有比率は5%未満と国外の脅威に曝される危険性は小さい。長期的に見れば、日本の方が健全な体質である。

米国の最大の心配は、「バランスシートの縮小」だ。これは日本が停滞に陥ってから多くの企業取った「誤った処置」と同一なのである。即ち、「借金を減らして、バランスシートを縮小する」ということをやれば、米国のように債務額が大きい場合には、倒れる心配が出てくるのである。特に、サブプライム問題のようなことが起これば、呼び込んだ100兆円規模の金がパアになってしまいかねず、するとバランスシート上では海外からの投資額は純減となり、100兆円規模で金を呼び込めるだけの「魅力的な何か」を用意できない限り、バランスシートは回復されない。確実に小さくなるのである。条件①のところで、バランスが崩れてしまうのである。株式相場下落によっても、海外に貸し出していた債権部分は小さくなったことも、大きな打撃となるのだ。

例えば、借入1200兆円、貸出1000兆円だったものが、借入1100兆円、貸出900兆円となるので、純債務200兆円の比率は全体の中で大きくなるのである。1200兆円が4%の利払いであれば、48兆円の利息を払うことになるが、運用が上手なので貸してる1000兆円のリターンが4.8%あれば、利払いのバランスが取れていることになるのだ。しかし、1100兆円となれば、44兆円の利払いがあるが、貸出も900兆円に減少しているので、運用は約4.9%が必要になってくるのである。これに類することがいくつも起こっていくと、「米国からの資金引き上げ」となるので、バランスシートが縮小していくことになり、純債務の返済負担だけが重くなっていくであろう。もしも借入600兆円、貸出400兆円であれば、4%利払いなので24兆円必要となるが、400兆円からのリターンとして6%の運用成績が必要になるのである。つまり、バランスシートが縮小すれば「必要となる鞘」が拡大していくことになり、それが達成できなければ返済負担が重くなる、ということになるだろう。


5)将来的には

米国の全世界に対するGDPのウェイトが低下していくだろう。日本もそうだけど、中国、ロシア、インド、ブラジルなどの成長によって、現在の主要先進国の相対的な割合が低下するだろう。なので、米国の「金を呼び込む戦略」というものが、いつまで継続可能なのかは判らない。米国に投資すべき理由みたいなものが減っていくと、金が向かわなくなるかもしれない。それまでに対外純債務を減らしていくとか、保護貿易的な姿勢に転換するとか、そういう何かの策を打ってくるかもしれないね。

個人的考えとしては、日本が本気を出すこと、怒る時は本気で怒ること、米国との距離を置くこと、かな。
日本の態度があやふやでは、いつまで経っても敗戦国の奴隷扱いからは抜け出せないであろう。そして日本は、彼らの金を上回る金を持っているのだ、ということを知るべきだろう。




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2 コメント

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詳しいので (ろっし)
2008-01-30 08:02:59
 あまりにも詳しいので、そうなんだと思いながら理解しているところです。知っていた部分もありますが、概要だけで中身(本質)までは、知らなかった部分もあります。

 米国が中国に貸している金(具体的には上海や香港株式市場に投入している金とか、直接投資とか)の方が破壊力があるからでしょうね。そうは言っても、現在中国が米国の経常収支悪化の第一人者であることから、元への圧力が強まるでしょう。中国は米国の通貨戦略を封じる意味でも、バスケットを採用しているので、通貨危機のようなことは回避されますからね。アジア諸国や韓国とかがどんな目にあったか一目瞭然ですから(笑)。

 この部分は、為替をやっていたこともあり詳しいのでコメントします。後の部分は、私が低レベルでコメントできないので。中国は、記載されてあるとおり外貨保有世界第一です。これは、貿易黒字なのに自国通貨を固定にしているためです。ロシアも近年、比率が上がってますね。ご存知でしょうが、ドルに関して言えば、中、日の順になります。中が、大量のアメリカ債権を保有しているのが嫌らしく、けん制した米政府首脳の発言が目立ちます。また、通貨については、国際的にも批難の対象となっています。アメリカのFFが高いとき、日本の低金利政策が各国から批判されていたのと似ています。どこまで、外貨を保有し続けるかで、元の変動為替への移行が決まるでしょう。上海なんか10数年連続、2桁成長。これだけ、経済が強くなり国全体が日本のGDPを抜くところまで来ているため、おかしいともいえます。

 確かに、中国へのアメリカからの投資は、半端じゃないでしょう。撤退するリスクの方が、中国側からしたら大きいでしょう。しかし、世界最高の旨み(運用利率)を考えると、撤退することはないでしょう。為替が固定である限り、中国の外貨資産は増え、外国からの投資は安定しているだろう。そうすると、国際的な発言力は増すであろう。

 インドは、資本流入が凄いので制限をかける方針だと言う。世界中がいい運用を求めているので、そういう結果になるんだろうなあ。BRICSの記載がありましたが、VISTAも注目です。特にトルコ。EU申請が許可されれば、益々の発展になるだろう。
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Unknown (まさくに)
2008-01-31 17:44:17
元に関しては、以前の(ほぼ)固定から変動制へ、その後バスケットへと移ってきまして、一応は固定ではありませんが、当局が変動幅を制御できるのでダイナミックな変動はありませんね。日本はかつて、急激な切り上げを求められたし、為替を政治利用されてきた可能性があるので、中国はまだ楽です。番長の嫌がらせを突っぱねられるだけの政治力もありますからね。

外貨準備高については、以前書いた話がコレです。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/28e6c8eb4fd267438c481e0925bce438

兌換元について。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/9b654f867e6cc0551762433a97ecddbb

有望な国々は今後も多く出てくるでしょうね。今度はVISTAですか。勉強になります。
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