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少子化と労働問題5(追記あり)

2005年12月21日 18時23分44秒 | 社会全般
前の記事の続きです。厚生労働省の「労働経済白書」では、無業者に「学校生活を通じて教えてもらいたかったこと」(複数回答)という質問をしていますが、順に書いていきますと、次の通りです(カッコ内は%)。

職業に必要な専門的知識・技能、資格、免許(58.8)
社会人としてのマナー(43.5)
職業の選び方(33.6)
各職業の内容(29.9)
労働者の権利、雇用保険等職業に必要な基礎的情報(27.5)
就職活動のノウハウ(26.4)
ハローワークの利用法(20.4)
各職業の賃金・労働時間等の勤務条件(17.3)
フリーターや無業者のリスク(16.7)
学校で教えてもらいたいことは特にない(14.9)
読み書きや算数・数学などの基礎学力(11.0)
先輩の就職先(6.6)
その他(3.8)

非常に見づらいですが、お許し下さい。このような感じになっています。設問に問題がある、ということも有り得るかもしれませんが、このような質問事項になっていますので。

で、6割くらいは職業的な技能等に関する教育を望んでおり、これも「高専」の就業(高い就職率・内定率)とも関連するかもしれません。職業教育は必要であると考える学生・生徒達が結構多い、ということです。後は社会生活に関する心構え的な、「社会人」教育もして欲しい、ということです。これはちょっと意外ですが、案外そういうことを知りたいと考えている若年無業者がいる、ということですね。他は労働に関する基本的な情報とか、仕事選び・探し方等の相談的なものが結構あります。また、情報格差というのか、「何を、どう調べて、どのように考えていったらよいか」というようなことが相談したりできずに、何となく過ぎてしまったりしているのかもしれませんね。


NPOで無業者への支援を行っている、「ニュースタート」代表の二上氏は、ニートを情報力必要型、社会力必要型、人間力必要型の三つに分類しています。情報力必要型は、まさに就業の情報とか相談を充実させることで解消されるものです。社会力必要型は主に人間関係などの不安とか所謂コミュニケーション能力とかの「社会性」の不安解消が必要ということのようです。一度就職しても、その後に人間関係等でつまずいてしまうと不安が大きくなったりして、就業を躊躇うタイプの人達がおりますので、こうした人達が概ね該当するかもしれません。最後の人間力必要型(笑)ですけれども、これが所謂「引き篭もり」と呼ばれる人達に近いかもしれません。自分への自信とか、「生きる・仕事をする」などへの肯定的な考えが、生まれてこないとか受け入れられないとかなのかもしれません。まずは、自己肯定ができにくいことが問題かもしれないですね。このタイプはどれくらい存在するのかは不明ですが、上の質問事項への回答を見ても、あまり多くはないと思います。就業に関する要望が多い中で、否定的な回答(例えば、「学校で教えて欲しいことは特にない」というような回答)が少ないからです。


このような調査を見ると、働きたいとは考えているが、うまく行動に移せなかったり、相談できる人が周囲にいなかったり、的確な情報を提供できる人がいなかったり、というような環境要因に左右されていることが多いと思われます。ただ情報提供とか就業支援がなされても、従来非労働力人口に算入されていた無業者達がうまく正規雇用の仕事に就けるかどうかは不明です。


企業側の姿勢としては、非正規雇用を維持(又は増加)していく傾向は今後も続くものと思われます。何故なら、人件費を抑制することが経営にとっては重要であるからです。増大していく一方の社会保障費負担が、企業にとっては大きなリスクとなっていると考えられます。今後も毎年続く厚生年金料率アップなどがその典型と思います。企業がこうした社会保障負担を回避する方法を選好することによって、正規雇用を抑制し続ける可能性は有り得ます。


再び厚生労働省の「労働経済白書」からですけれども、非正規雇用の割合が増加しているという結果が窺われます。年齢階級別に見ると次の通りです。「雇用者に占める非正規雇用者の割合」(非農林水産業、在学者・役員を除く)

        94   04
15~24   10.6  33.3
25~34   11.8  23.4
35~44   19.8  26.3
45~54   20.6  28.9
55~64   26.9  39.6
65~     52.0  66.0

このように94年と比べると、非正規雇用の割合が増加していることが分かります。特に若年層では2倍以上の「非正規雇用者」の増加が見て取れます。就業形態別(03年)では、非正規雇用のうち派遣・契約・嘱託の合計は約5.7%に過ぎず、パートタイム(所謂フリーターも含まれる)は23%も存在します(正規雇用は約65%)。派遣や契約社員はまだ条件がいい方ということかもしれません。


若年雇用の実数はどうなのかというと、国民生活白書では大体次のようになっています(90年と04年の比較)。
若年人口は3453万人から3305万人と148万人減少(少子化の影響ですね)してますが、非労働人口も1477万人から1152万人と325万人の大幅減少となっています。これは結婚して主婦となったりして非労働力人口に算入される人が相当減ったからではないか、と思います。若年者全体数は減って、仕事をしよう、という若者の割合が多くなってる(非労働力人口比率は42.8%→34.9%に減少)のに、仕事に就けないか、非正規雇用となっている、ということです。労働力人口が多いのは、晩婚化や結婚する組数減少なども影響しているかもしれません。で、続きですけれども、失業者は68万人から148万人と80万人も増加しています。正規雇用は1412万人から1325万人と87万人減少する一方で、非正規雇用は261万人から563万人と302万人の大幅増となっています。年々新卒者の非正規雇用の割合が高くなっていけば、若年層全体の非正規雇用者の増加ということになり、高卒者への求人の大幅減少もこれと関係しているかもしれません。それと、自営業者ですが、213万人から86万人と127万人も減少しています。家業を継ぐ人達の割合がかなり減少して、会社勤めを選好するようになっている、ということかもしれません。

大学とか専門学校とかの教育を受けた後に「安定的な会社に就職しよう」という目論みで、小・中・高とかずーっと過ごしてきたのに、最後の数年間でその計画が大幅に狂ったということなのでしょうか?世の中の多くの人達が(特に親世代かな?)「いい学校、いい大学、いい会社」というような幻想を抱いてきたことが、最後の最後で過当競争となってしまったのかもしれません。


このような若年者の就業傾向を見ると、「仕事をしよう」という意欲のある人達の割合はそれ程減ってないが、不本意ながら非正規雇用となっている人達がかなりいる、ということです。そういう周囲環境を見ると、幻滅したり希望を失ったりしてしまい、自分で何かのアクションを起こせない人達やうまく仕事に就けない人達がいる、ということになります。自営のような起業家的な、あるいは家業を継ぐといった、昔ながらの受け皿も大幅に減少してしまってることも何らかの影響があるかもしれません。自営の減少分(127万人)は、若年層の失業者148万人のかなりを補える数です。ただ、平均寿命が延長して、親世代が高齢でも「現役」で頑張っているとなれば、息子が継ごうにも難しい場合もあるかもしれませんね。2世帯(親世代と息子世代)分の収入を稼げるほどにはならない、ということも考えられるからです。そういう社会構造というか、産業構造の変化も、若年層の就業状況に影響しているかもしれません。


一度載せます。


続きです。

最近の雇用状況の変化は内閣府から報告されています。若年者の非労働力人口が労働市場に流れ込んできたのではないか、ということのようです。これによれば、非労働力人口に分類されていた若年者が労働市場に流入してきている、ということが窺えるのではないか、ということです。

非労働力人口の労働市場への流入要因


これで見れば、34歳以下の層が約10万人くらい流入したのではないか、ということですね。ただ、労働力人口に分類されていた失業者が多く就業できたということではないようですので、必ずしも喜べる内容ということにはならないでしょう。従来「仕事が出来るチャンスがあれば・・・」と考えていた人々(非労働力に算入されていた人々)が、パートなどに出だしているだけなのかもしれず、若年層の失業率が大幅に改善してきたということは言えないかもしれません。まあ、改善しないよりもましですが。


厚生労働省の諮問機関からの答申では、企業側の人材育成システムを提言したようで、言ってみれば「企業版レジデント」というような感じでしょうか。

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <若年者就労対策>実践型人材養成システムの創設盛る

「resident」はアメリカの医療機関に勤務する若手医師の身分制度というか就業形態から出たものだろうと思います。正規のスタッフと異なり研修主体ですが、実力が認められれば正式なスタッフになれるかもしれない、というものです。実力が及ばなかったり、自分の思っていた仕事・業務とかでないと、別な病院へと移っていったりすると思います。それに近い意味合いがあるかと思います。ただ、一般企業でこうした人材育成システムがうまく機能するかどうかは不明です。政策的に考えたことは、案外と脆かったり、きちんと機能しなかったりすることも多いからですね(笑)。


昔みたいに、大工の棟梁に「バカヤロウ」などとどやされたりしながらも、「カンナはなあ、大工の命なんでい」とか「なんでい、サシガネ忘れてきたのけい」とか「墨つぼ使えねえで、仕事になるかい!」とか「オイ、ウチでメシ食ってくか?」とか、そういうごく平凡な人間関係が良かったのかもしれないですね。かつては中卒で「棟梁に弟子入り」して、大工見習いが現場に出て仕事を教えてもらう、というようなことがあった。まさにレジデント的なシステムが働いていた。ところが今は違う。まずは学校を出て理屈を学んでこないといけないし、現場の場数とか腕で勝負でもなくて、システム的に決まった工法を実行できる人達がいればいい、というようなことになった。そうして大工は減少し、腕で仕事をする人達はかなり少なくなってしまい、組立屋的な人材が増えることとなった。そういうのもちょっと悲しい面があるかもしれないですね。


企業がそういう人材育成システムを実行できるのか、やや懐疑的ではあります。今から出来るのであれば、もっと早くからやっていても良さそうだからです。昔の人達の偉かったことは、何の現場であっても、若者に仕事をさせ、それなりに責任も持たせたり(上司はきっと責任を取ることを仕事としていたことだろう)、教育をしていったことだ。そうやって、技術の伝承とかコツの伝授とか、そういうことを続けてきたことだ。伝統技術は、ほとんどがそうだろうと思う。昔は普通に行われていたことが、今は「制度」としてそういうことをやっていかないと出来ない、ということなんだろうと思います。何となくそういうのも「寂しいな」と感じますね。私が古いタイプの人間だからなのかもしれないですけれども。


若年層の雇用や就業改善というのは、これから暫くは大きな問題となるでしょう。じゃあ、どうすりゃいいの、という答えは中々見つけられないことなのかもしれませんね。


更に追加です。自衛隊のお話を少し。そんなに詳しく判るわけでもないのですけど、ちょっと書いておきます。

結構昔のことかもしれませんが、中卒でも入れるので自衛隊はある意味重宝されていたと思います。実際に戦闘ということを想定することもなかったですし(海外に出て行くなどということは有り得なかったですよね?)。中卒で入ったとしても、内部での教育を受けられたし、高卒と同じ資格を得ることも可能だったと思います。他にも、自動車の運転免許だけではなく、大型特殊とかの免許や、電気関係、無線関係、危険物取扱者関係の免許なども取得可能であったと思います。内部での教育制度があって、本人の意欲や努力があれば各種免許が取得できた。

特に陸上自衛隊は「精強な男子」が必要だったから、若者を沢山入れたがった。言ってみれば契約社員みたいなもので、数年間自衛隊で過ごせば良かった。その間は衣食住は基地内に住めば金がかからないし、衣食住は最低まかなうことができた。契約延長で長く残れる人達もいたし、正規の隊員となれる(正規の特別職国家公務員ですね)人達もいた。たとえ自衛隊に残れなくとも、就職に役立つ各種免許・資格などの取得もあったし、就職斡旋も自衛隊が面倒をみてくれた。ある意味訓練校的な役割を果たしていたと思う。だから田舎では、中卒で行くところが決まってない人達は、結構自衛隊に入隊したりして、地方に残ることが可能だった。除隊しても、予備役というような(予備自衛官?かな、正確には判りません)システムもあるし。


多分、高校進学率が非常に高くなってからは、そういう訓練校的な意味合いは薄れていき、高度成長期などでは民間の給与の方が良くて、自衛隊なんぞはバカらしくて入隊する人達は減少したんだろうと思う(あくまで推測ですが)。特にバブル期などでは、自衛隊員の募集が大変だったと思う(曖昧な記憶です)。人気があったのは、防衛医大のパーティくらいだったろう(笑)。

自衛隊というのは、色んな意味で(特に地方においては)若年者の受け皿として存在していたと思うが、現状はどうなのかは知らない。中卒でも入隊して、勉強を教えてくれたりするのかどうかも分からない。ニートの教育に役立つとかそういうのは分からないが(もしもニートを集めて部隊を作ったら、凄く弱いイメージがありそうです。ゴメンナサイ、差別とかではなく)、若年者雇用の「駆け込み寺」的な存在であったのかもしれない、ということです。

トータルな効果を考えると、若年者を支援する効率的なシステムであると思う。それがニート対策でいいかどうかは別な問題だと思いますけれども。あながち否定出来ない仕組みだった、ということです。現代でもそれが当てはまるかどうか、ということが重要なことだろうとは思いますが。





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4 コメント

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もっとポジティブに (ayasu)
2005-12-21 21:43:32
こんにちは。いつもBlog楽しみにしてます。



無業者の問題は細かいこと言ったら議論はつきませんが、

仕事を選ばなければいろいろ見つかると思うんですけどね。人材派遣会社の営業さんから聞いた話ですが、高校を卒業し1年くらい働かないで、バトミントンばっかやってた人がいて、その会社の紹介で今は外資の会社でエンジニアになっている人がいるそうです。頭空っぽな分スポンジのように技術を吸収してったそうで、今は20歳で月給30万ほど稼いでるそうです。



その話を聞いて、ああ人生何とかなるもんなのかなぁと思いました。
自分で切り開ける人は (まさくに)
2005-12-22 00:30:19
多分あまり問題にはなってこないのかな、と思います。そういう人達ばかりではないようですので、何らかの支援が必要なんだろうな、と。その支援策がどういったものが効果的なのかは、やはり難しい問題であります。



自分で努力できる人、何かに打ち込んだり頑張れる人は、きっとうまくやっていけることが多いのかもしれません。お話されてる方はバドミントンに打ち込んでおられた方のようですので、そこでの体験が生きていたかもしれないですね。多くの若い人達が何かをきっかけにして、自分なりの道を歩んでくれるといいな、と思ってます。因みに、私はかなりの楽観派です(笑)。
Unknown (Unknown)
2005-12-22 23:48:49
何故、ニートなる人種を生んだのか、考えてみても分かる思いますが、危険、汚い、臭い、この言葉が生まれた時からで、おまけに高学歴志向の世の中の風潮、誰が悪いの!政治(家)も悪いが国民にも責任が有る、小金持ちの小市民が食うことの厳しさを忘れたからで分相応でいればと思う、その気なればいくらでも仕事はある甘ったれんな。
コメント有難うございます (まさくに)
2005-12-24 09:53:21
「仕事はある、甘ったれんな」は、多くの人がそう考えると思いますが、それだけでは中々解決が難しい問題でもあります。



複合的に考えるべきかな、と思います。

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